バリューとグロース
株式投資の手法には、大きく分けてバリューとグロースがあります。
バリューとは株式本来の価値を市場価格が下回っている状況をいいます。
1000円分の価値があると思われる銘柄を500円で買えば儲かる可能性は高いでしょう。ただし、バリュー銘柄に見えても資産価値が思ったより少なかったり、負債が思ったよりも多かったりするなど、実際にはバリューとはいえない銘柄もあるので注意が必要です。
グロースとは、成長性を考慮すると割安と考えられる銘柄です。
例えば、1株あたり収益が100円で、株価が2,000円だとするとPERは20倍になります。
これだけだとさほど安くないように見えますが、収益の年間成長率が100%だとすると次年度には1株あたり収益は200円になりPERは10倍、その次の年にはPERが5倍になります。
バリューとグロースは、まったく異なる概念のように思えますが、実際にはバリューでグロースという銘柄もありえます。
たとえば、株式市場全体が大暴落したときです。
グロース投資とバリュー投資
株式の投資戦略には、大きく分けて2種類あります。
第一に、成長性の高い企業に投資し、成長に伴う株式の値上がり益に期待して投資するグロース投資です。
ジャスダック市場や東証マザーズ市場に多く上場しています。
成長性の高い企業は、上場から時間が経つにつれ、大きく成長して莫大なリターンをもたらす可能性があります。
一方で、思ったように成長しなかったり、事業が失敗して倒産してしまう可能性もあります。
第二に、企業の価値に比べて株価が大きく下回って放置されている銘柄に投資するバリュー投資です。
企業の価値がいずれ見直されることに期待して投資する手法です。
PERなどの投資指標から見て割安だったり、同業他社から見て割安な銘柄に投資します。
最高なパターンは、グロースとバリューの要素を同時に備えた銘柄を購入することです。成長性のあるグロース銘柄を割安な価格で購入できれば、成長性の割りに大きなリターンを得ることができます。
バリュー投資とは何か?
バリュー投資と聞くと難しく聞こえますが、実は当たり前のことです。
例えば、1000円の価値のある株式を800円や500円で買うことを言います。
株価はいずれ本来の価値である1000円になると考えられるので、本来の価値と購入した際の価値の差が利益となります。
つまり、株価が株式の価値を下回っている株式に対し投資を行うことをバリュー投資と言います。
バリュー投資がなぜ成り立つかというと、市場は必ずしも合理的ではないからです。
市場全体が悲観的になると1000円の価値がある株を500円だとしても売りたい人が多く現れます。
市場がいつも合理的なら1000円の価値がある株はいつでも1000円で売買されるはずですが、実際の市場では市場参加者の感情が株価に大きく影響を与えます。
ただし、バリュー投資は、株式の価値を見極めることが難しいという問題があります。
株式の価値の分析方法には複数通りあり、それぞれの方法ごとに異なる価値が算出されます。
同様の方法だとしても、条件を少し変えるだけで異なる株式の価値が算出されます。
つまり、株式の妥当価値は考え方により変わるので、絶対のものではありません。
PBR1倍割れは割安か
市場ではよく、PBR1倍を割れると「割安」だと言われます。
理論上は、会社を全部売り払ったときの金額を株価が下回っているということになるので、「解散価値」を下回った状態であるとも言われます。
例えば、1株あたり株主資本が1000円の銘柄があったとして、1000円を下回ると割安だということになります。
実際には、東証1部に上場している大企業でもPBR1倍を下回っている銘柄は多数あります(2013年6月現在)。
こうしたことからも、PBR1倍は、下値のメドとしては弱いと言えます。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
第一に、資産が簿価では売れない可能性があるということです。
例えば、簿価で10億円の設備があったとして実際に10億円で売れるかというと、とても売れないでしょう。二束三文で買い叩かれるのがオチです。
会社全体で見れば、簿価より高く売れる資産があるかもしれませんが、おそらくほとんどの企業では、実際の資産価値は簿価より低いのが実情だと思われます。
第二に、マイナスの収益が織り込まれているということが考えられます。
一株あたり株主資本が1000円あったとしても、今期や来期その先に赤字が続けば、一株あたり資産価値は減り続けます。
もしかしたら、大赤字を出して、株主資本を食い潰してしまうかもしれません。
このような状況では、PBR1倍が割安とは言えないことになります。
安全域
安全域とは、投資においてのゆとりのことを言います。
ある人がいうには、海で荷物を波打ち際におくと濡れてしまう可能性がありますが、ゆとりを持って海から離れた場所においておけば濡れる可能性が低くなるというたとえを用いています。
投資の世界でも同様に、見込み違いなどで本来の株式の価値を見誤ってしまうことがありますが、安全域があれば、そのような失敗でもある程度カバーすることができるのです。
投資の世界に完璧はない以上、ある程度の安全域をもってゆとりを持った投資をしたいものです。