就職氷河期世代が転職面接で言ったこと・言わなかったこと・言えばよかったこと【面接の裏側全記録】

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転職面接は、人間が最もよく「嘘をつかずに演じる」場所だと思っている。

嘘はつかない。でも全部は言わない。言えないことがある。言えばよかったと後で思うことがある。就職氷河期世代として40代で複数回の転職活動を経験した私が、面接室で実際に交わされた言葉の記録を、裏側も含めて書く。

面接官には見せなかった側面も含めて、全部。

「前職を辞めた理由は何ですか」への回答

言ったこと:「新しいことに挑戦したいという気持ちが強くなりまして、今の環境では難しいと感じ始めたことが大きな理由です。」

言わなかったこと:上司との関係が限界だったこと。正確には、私が限界だったのではなく、「この上司の下で3年続けたら自分が変質する」という恐怖があった。その上司は能力が低いわけではなかったが、人に対して基本的に不誠実で、それが毎日積み重なる疲弊になっていた。「新しいことへの挑戦」という言葉は嘘ではないが、それが全部でもなかった。

言えばよかったこと:「環境の変化を求めていました」くらいの正直さは出せたかもしれない。「新しいことへの挑戦」という言葉は前向きすぎて、逆に信憑性が薄い。面接でのポジティブな言葉への過度な信頼が、却って「何かを隠している」印象を与えることがある。

「長所と短所を教えてください」への回答

言ったこと:「長所は、仕事を丁寧に進めることです。短所は、完璧を求めすぎるあまり時間がかかることがあります。」

言わなかったこと:短所は本当は「完璧主義」ではない。私の本当の短所は「人間関係において過度に気を遣い、言うべきことを言わないことで問題が大きくなる」ことだ。でもこれは面接で言えない。「対人関係に問題があります」と言っているようなものだから。

長所についても「丁寧」は嘘ではないが、より正確には「仕事を引き受けた後に諦めない粘り強さ」が私の長所だと思っている。でも「粘り強さ」という言葉は、就職氷河期世代として長年の困難の中で培ったものだという文脈込みでないと伝わらず、その文脈を面接で説明する時間はない。

言えばよかったこと:「短所は自覚していますが、まだ完全に克服できていません」という正直さ。「短所を長所に言い換える」という婉曲は、面接官が最もよく使われる手として熟知している。むしろ「本当の短所と向き合っています」という率直さの方が印象に残ることがある。

「5年後のビジョンを教えてください」への回答

言ったこと:「御社での業務を通じてスキルを深め、専門性を持ったうえで、チームに貢献できるポジションを目指したいと思っています。」

言わなかったこと:5年後のビジョンを、あの時の私は正直なところ持っていなかった。就職氷河期世代として生きてきた経験が、「5年後の計画」を立てることを困難にしていた。計画を立てても社会が変わる・会社が変わる・自分の状況が変わる——という経験を繰り返してきたため、「5年後はこうなっていたい」という確信が持てなかった。

言えばよかったこと:「5年後の具体的なビジョンより、目の前の仕事に真剣に向き合うことを重視しています」という答えの方が、誠実だったかもしれない。ただしこの回答は「計画性がない」と受け取られるリスクがある。どちらが良かったかは、今でも判断できない。

「当社を選んだ理由は何ですか」への回答

言ったこと:「御社の事業内容と、これまでの私の経験が合致していると感じたからです。特に〇〇という事業は、私が以前から関心を持っていた分野で…」

言わなかったこと:正直に言うと、この会社が第一志望ではなかった。求人を見た時に「可能性がある」と思って応募した会社の一つだった。「以前から関心を持っていた」という部分も、応募後に関心を持ち始めたという順序で、「以前から」は正確ではなかった。

言えばよかったこと:何も。これは言えなかったことで正解だと思っている。面接には「言えないことを言わない」というスキルが必要で、それ自体は誠実さと矛盾しない。

採用の連絡が来た面接・来なかった面接の違い

複数回の転職活動を振り返ると、採用の連絡が来た面接には共通点があった。

「自分が自然に話せていた面接」が採用につながっていた。具体的には、面接官との会話の中で「そうなんですよ」「実はそれが一番大変でして」というような、台本にない言葉が出てきた面接は、採用になることが多かった。

逆に、不採用になった面接では「言わなかったこと」が多い傾向があった。準備しすぎて、準備した言葉だけを言い続けた面接。面接官の質問に対して「この答えを用意していた」という言葉を当てはめる作業をしていた面接。これらは不採用になっていた。

就職氷河期世代として、面接への恐怖は強い。就職活動で何十社も落ち続けた経験が、「面接で正直に話すと落とされる」という刷り込みを作っている。でも40代になって振り返ると、正直に話した面接の方が採用になっていた。刷り込みと事実の乖離を認識するのに、20年かかった。

面接で「言えなかったこと」は全部正しかったのか

言わなかったことが、後から「言えばよかった」と思うことがある。「本当の転職理由」「本当の短所」——これらを言えていたら、入社後の「こんなはずじゃなかった」という感覚が減ったかもしれない。会社側も「こんな人だとは思わなかった」という状況が起きにくかったかもしれない。

面接は「売り込みの場」として設計されているが、実態は「マッチングの場」であるべきだ。採用側も求職側も、お互いの「本当のところ」を把握した上でマッチングの判断をする方が、入社後の実態に近い。でも面接という場の設計が「売り込み」を促進するため、双方が必要以上に自分を良く見せようとする。

就職氷河期世代として「売れなかった経験」が長かったからこそ、「売ろうとしすぎた面接」の苦さが記憶に残っている。売ることより「合うかどうかを確認すること」に転換できた面接の方が、入社後も長く続いた。

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