就職氷河期世代の「もらう・借りる・シェアする」完全ガイド——買わずに手に入れる生活術と、頼れる無料サービスの全リスト
はじめに——「買う」以外の選択肢を持つ
何かが必要になったとき、反射的に「買おう」と思う。食料が必要→スーパーで買う。本が読みたい→書店で買う。工具が必要→ホームセンターで買う。この「必要=買う」の等式は、社会に深く根付いている。
だが「買う」以外にも、必要なものを手に入れる方法はある。もらう。借りる。シェアする。この三つの選択肢を持つだけで、出費は大幅に減る。「買わなくても手に入る」ものは、思っている以上に多い。
このガイドでは、「もらう」「借りる」「シェアする」の三つのカテゴリに分けて、無料または低コストで必要なものを手に入れる方法を網羅的に解説する。
「もらう」——無料で手に入るもの
世の中には、無料で提供されているものが驚くほど多い。知っていれば「もらえる」のに、知らないから「買っている」ものがたくさんある。
もらえるもの1は「フードバンク・フードパントリーの食品」。フードバンクは、企業や個人から寄付された食品を、生活に困っている人に無料で提供する活動だ。全国に約200以上のフードバンク団体がある。米、缶詰、レトルト食品、パスタ、調味料など。利用条件は団体によって異なるが、「生活に困っている」ことが条件で、所得制限や審査がある場合が多い。
フードパントリーは、定期的に食品を無料で配布するイベントだ。NPOや自治体が主催している。「○○市 フードパントリー」で検索すると、近くの開催情報が見つかる。利用に恥ずかしさを感じるかもしれないが、食品ロスの削減にもつながる社会的な活動だ。「もったいない食品を救っている」と捉えれば、堂々と利用できる。
もらえるもの2は「ジモティーの無料出品」。ジモティーでは、不要になった家具、家電、衣服、食器、書籍などが「0円」で出品されていることがある。引っ越しや断捨離で不要になったものを、処分費を払うよりタダで譲りたい、という出品者が多い。「取りに来てくれる人限定」の条件が多いが、近所なら自転車や徒歩で取りに行ける。
もらえるもの3は「企業のサンプル・試供品」。化粧品、健康食品、洗剤、飲料。企業がプロモーションのために無料サンプルを配布することがある。駅前のサンプリング、ドラッグストアの試供品コーナー、ネットで応募できるサンプルキャンペーン。「サンプル百貨店」というウェブサイトでは、様々な商品のサンプルに無料または送料のみで応募できる。
もらえるもの4は「自治体の配布物」。防災グッズ(防災マップ、ホイッスル、保存水など)を無料で配布する自治体がある。ゴミ袋を無料配布する自治体もある。赤ちゃんがいる家庭にはおむつや衣服のセットを配布する自治体もある。自治体のウェブサイトや広報誌をチェックすれば、意外な「無料配布」が見つかることがある。
もらえるもの5は「知人からのお下がり」。同僚や知人が「もう着ない服があるんだけど、いる?」と聞いてくれることがある。遠慮せずにもらう。「いりません」と断るのは、相手の善意を拒否することでもある。もらったものが自分に合わなければ、リサイクルショップに持ち込むか、ジモティーで次の人に譲ればいい。
「借りる」——所有しなくても使えるもの
「使うけど持つ必要がない」ものは、借りるのが最も合理的だ。借りれば購入費がかからない。保管場所も不要。使い終わったら返す。
借りられるもの1は「図書館の本・雑誌・CD・DVD」。図書館については何度も書いてきたが、改めて。本を買えば1冊1500円。図書館で借りれば0円。月に3冊読む人なら、年間54000円の節約。CDやDVDを貸し出している図書館もある。新刊は予約待ちになることがあるが、数週間待てば読める。急いで読む必要のない本は、予約して待つ。
借りられるもの2は「工具のレンタル」。DIYで工具が必要になったとき、購入すると数千円〜数万円。1回しか使わないなら、レンタルのほうが安い。ホームセンター(カインズ、コーナンなど)では、電動ドリル、サンダー、高圧洗浄機などの工具をレンタルしている。レンタル料は1日数百円〜数千円。購入の10分の1以下。
借りられるもの3は「シェアサイクル」。自転車を持っていなくても、シェアサイクル(ドコモバイクシェア、LUUP、Helloサイクリングなど)を使えば自転車移動ができる。料金は15分70〜150円程度。短距離の移動なら電車より安い場合がある。月額プラン(月1000〜2000円)もある。
借りられるもの4は「カーシェア」。車を持っていなくても、タイムズカーシェアやdカーシェアを使えば車が利用できる。料金は15分220円〜。ガソリン代、保険代込み。月に数回しか車を使わないなら、カーシェアのほうが自家用車より圧倒的に安い。自家用車の年間維持費(駐車場代、保険、車検、ガソリン、税金)は年間30〜50万円。カーシェアなら月に2〜3回利用しても年間5〜10万円で済む。差額は年間20〜40万円。
借りられるもの5は「衣服のレンタル」。礼服・喪服のレンタルは冠婚葬祭ガイドで紹介した。それ以外にも、普段着のサブスクレンタルサービス(メチャカリ、airClosetなど)がある。月額3000〜6000円で、毎月数着の服が届く。着なくなったら返却。「クローゼットが増えない」「常に違う服が着られる」のがメリット。ただし月額費用がかかるので、ユニクロで最低限の服を買うほうが安い場合もある。自分の衣服へのニーズに合わせて判断する。
借りられるもの6は「社会福祉協議会の緊急小口資金」。お金が一時的に足りなくなったとき、社会福祉協議会の「緊急小口資金」を借りることができる。貸付限度額は10万円以内。無利子または低利子。返済期間は12ヶ月以内。給料日までの「つなぎ」として利用できる。消費者金融で借りると利息が年15〜18%つくが、緊急小口資金は無利子。知っていれば、高利の借金を避けられる。
「シェアする」——一人で持つより分け合う
一人で所有すると高いものも、複数人でシェアすれば一人あたりのコストが下がる。
シェアできるもの1は「Wi-Fi」。前述の無料Wi-Fiスポットの活用に加え、集合住宅のインターネット共有がある。アパートやマンションによっては、建物全体で一つのインターネット回線を共有し、入居者は追加費用なしで利用できる物件がある。物件選びのときにチェックするポイントだ。
シェアできるもの2は「新聞・雑誌」。職場に置いてある新聞や雑誌を休憩時間に読む。自分で購読する必要がなくなる。コンビニでの「立ち読み」も一種のシェアだ(長時間の立ち読みはマナー違反だが、数分の確認は許容範囲)。
シェアできるもの3は「スキル」。自分のスキルと他人のスキルを交換する。「私がExcelを教えるので、あなたは英語を教えてください」。スキルの物々交換。金銭のやり取りなし。お互いが得をする。地域のスキルシェアイベントや、オンラインのスキル交換コミュニティがある。
シェアできるもの4は「食事」。一人で作るより、複数人で作って分けるほうが材料費が安い場合がある。大量に作ったカレーを小分けにして友人に渡す。友人が大量に作った煮物をもらう。この「おすそ分け文化」は、日本の伝統的なシェアリングだ。一人暮らしだと「おすそ分け」の相手がいないことが多いが、職場の同僚や近所の顔見知りに「多く作りすぎたので」と渡すことで、人間関係の構築にもなる。
「所有しない」ことのメリット
「もらう・借りる・シェアする」の共通点は、「所有しない」ことだ。所有しないことには、金銭的なメリット以外にもメリットがある。
メリット1は「物が増えない」こと。6畳一間の部屋で、物が増えると生活スペースが圧迫される。借りれば使い終わったら返す。もらっても不要になったら譲る。物の流れを作ることで、部屋がスッキリ保てる。
メリット2は「メンテナンスが不要」なこと。車を所有すれば車検、保険、修理が必要。工具を所有すれば保管場所が必要。借りれば、メンテナンスは貸主がやってくれる。
メリット3は「身軽さ」。引っ越しのとき、持ち物が少なければ引っ越し代が安い。物が少なければ、新居の選択肢も広がる(狭い部屋でも住める)。身軽であることは、不安定な雇用で引っ越しが多い氷河期世代にとって、大きなアドバンテージだ。
「もらう」ことへの心理的抵抗を乗り越える
「もらう」ことに抵抗を感じる人は多い。「施しを受けるのは恥ずかしい」「借りを作りたくない」「プライドが許さない」。
だがフードバンクは「施し」ではない。企業が廃棄するはずの食品を、必要な人に届ける仕組みだ。利用することは「食品ロスの削減に貢献する」ことでもある。社会的に意義のある行為だ。
ジモティーの無料出品も「施し」ではない。出品者は「処分費をかけずに不要品を手放したい」のであり、引き取ってくれる人に感謝している場合が多い。「もらう側」が申し訳なく思う必要はない。「引き取ってあげている」のだから、対等な関係だ。
「借りを作りたくない」という気持ちもわかるが、「借りる」のはサービスの利用であり、人間関係の「借り」ではない。図書館の本を借りても「図書館に借りがある」とは思わない。カーシェアを利用しても「タイムズに借りがある」とは思わない。サービスとして提供されているものを、正当に利用しているだけだ。
プライドを守って「買う」ことにこだわれば、お金は減る。プライドを少し下ろして「もらう・借りる・シェアする」を取り入れれば、お金は残る。残ったお金は、本当に必要なとき(医療費、緊急時の出費)に使える。プライドと生存のどちらを優先するか。答えは明らかだ。
「もらう・借りる・シェアする」で得られる年間の節約額
ここまで紹介した方法を実践した場合の年間節約額を概算する。
図書館利用(本を買わない)で年間18000〜54000円。フードバンク・フードパントリー利用で年間12000〜36000円(月1000〜3000円分の食品)。ジモティーで家具家電をもらう(引っ越し時)で1回あたり10000〜50000円。カーシェア利用(自家用車を持たない)で年間200000〜400000円。工具のレンタル(年に数回のDIY)で年間5000〜10000円。
すべてを実践した場合の年間節約額は、数万円〜数十万円。特にカーシェア(自家用車を手放す)の効果が大きい。車を持っている人が手放せば、年間20〜40万円の維持費がなくなる。車を持っていない人は、すでにこの節約を実現している(意識していないかもしれないが)。
まとめ——「買う」の前に「もらえないか」「借りられないか」「シェアできないか」を考える
何かが必要になったとき、反射的に「買おう」と思う前に、3秒だけ立ち止まる。「これ、もらえないかな」「借りられないかな」「シェアできないかな」。この3秒の問いかけが、月に数千円〜数万円の節約を生む。
「もらう・借りる・シェアする」は、ケチではない。賢さだ。限られた資源を効率よく使う能力だ。この能力は、氷河期世代が長年の生活の中で培ってきたものだ。もやし料理の23種類を開発する創意工夫と同じ根っこから生えている。
「買う」だけが選択肢ではない。「もらう」「借りる」「シェアする」が選択肢に加われば、生活のコストは下がり、財布の中身は増え、人生の選択肢は広がる。選択肢が広がることの価値を、氷河期世代は身をもって知っている。選択肢がゼロに近づいた経験があるからこそ、一つでも多くの選択肢を持つことの重要性がわかる。
「もらう・借りる・シェアする」は、選択肢を増やすための、最もコスパの良い方法だ。

