医療費がかかった年に確定申告で「医療費控除」を申請することで、税金が戻ってきます。でも、この制度を正確に理解して活用している方は意外と少ない。
40代・50代になると、健康診断・歯の治療・婦人科・眼科・整形外科——様々な医療機関への通院が増えます。年間に支払った医療費を正確に集計して申告することで、数万円の還付を受けられることがあります。この記事では、就職氷河期世代が医療費控除・セルフメディケーション税制を正確に理解して・確実に活用するための全手順を解説します。
医療費控除とは何か:基本的な仕組み
医療費控除とは、1月1日〜12月31日の1年間に本人または生計を共にする家族のために支払った医療費が、一定の金額を超えた場合に、超えた部分を所得から差し引ける(控除できる)制度です。
控除できる金額の計算式は、(年間の医療費合計)−(保険金等で補填される金額)−(10万円または総所得金額の5%のいずれか少ない方)=控除額です。一般的な所得の方(年収250〜300万円以上)の場合、10万円が基準となります。つまり、年間の医療費が10万円を超えた部分が所得から差し引かれます。
実際の還付額の計算例を示します。年収400万円(税率10%)の方が、年間に15万円の医療費を支払った場合、15万円−10万円=5万円が控除額。5万円×10%(所得税率)=5,000円の所得税還付+住民税も5万円×10%=5,000円の削減で、合計1万円の節税効果があります。医療費が多ければ多いほど、還付額も大きくなります。
医療費控除の対象になるもの・ならないもの
医療費控除の対象範囲を正確に知ることが、漏れなく申告するための重要なポイントです。対象になるものと対象外のものを解説します。
医療費控除の対象になるものとして、医師・歯科医師による診察・治療費(保険適用外の治療費も含む)・治療のための薬代(処方薬・市販薬の一部)・入院費(食事代の標準負担額を含む)・治療のための通院交通費(電車・バス代・タクシー代も状況によって可)・妊娠・出産に関する費用(定期健診・入院費・出産費等)・介護保険サービスの自己負担額(一部)・歯の治療費(インプラント・矯正も治療目的であれば対象)——これらが主な対象です。
医療費控除の対象にならないものとして、美容整形・審美歯科(見た目の改善が目的)・人間ドック(疾病が見つからなかった場合)・健康増進・予防のためのビタミン剤・サプリメント・マッサージ(治療目的でない場合)・自家用車での通院ガソリン代・駐車場代——これらは原則対象外です。
医療費控除の対象になる交通費として、電車・バス代は全額対象です。タクシーは電車・バス利用が困難な場合(夜間・緊急時・体が不自由で公共交通機関が使えない等)に限り対象です。自家用車でのガソリン代・駐車場代は原則対象外です。
医療費の正確な集計方法:漏れなく集めるためのシステム
医療費控除を最大限に活用するためには、1年間の医療費を漏れなく集計することが重要です。
領収書の保管方法として、医療機関で受け取った領収書を専用の封筒・ファイルに月別に保管することをおすすめします。「捨てないようにとりあえずまとめておく」だけでも、年末に集計することができます。クレジットカード・電子マネーで支払った場合は明細が証拠になりますが、領収書も保管しておくことが確実です。
健康保険組合からの「医療費通知」の活用もおすすめです。多くの健康保険組合は、1年間に加入者が利用した医療費の明細を「医療費通知」として郵送または電子通知します。この通知を確定申告に利用することで、個別の領収書の提出が不要になり手続きが簡略化されます。
「医療費控除の明細書」の作成として、確定申告時には「医療費控除の明細書」に医療機関ごとの費用・交通費等を記入して申告します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」ではウィザード形式で入力できるため、難しくありません。
セルフメディケーション税制:医療費が10万円以下でも使える控除
医療費が10万円に届かなかった年でも「セルフメディケーション税制」を活用できる場合があります。
セルフメディケーション税制とは、定期健康診断・がん検診等の一定の取り組みを行っている人が、特定の市販薬(スイッチOTC医薬品)を年間12,000円以上購入した場合に、12,000円を超えた部分(上限88,000円)を所得から差し引ける制度です。
この制度が使える条件として、①定期健診・特定健診・インフルエンザ予防接種等の「一定の取り組み」を受けていること②スイッチOTC医薬品(指定の成分を含む市販薬)を年間12,000円以上購入していること——の両方を満たす必要があります。
スイッチOTC医薬品とは、以前は医師の処方が必要だった成分が市販薬に転用された薬品です。痛み止め・風邪薬・花粉症薬・胃薬・水虫薬など、ドラッグストアで購入できる多くの薬が対象です。購入時のレシートに「★」や「セルフメディケーション税制対象」の表示がある薬が対象商品です。
医療費控除とセルフメディケーション税制は、同じ年に両方を利用することはできません。どちらか有利な方を選択する必要があります。一般的に、医療費の合計が10万円を超える場合は医療費控除・10万円以下でスイッチOTC医薬品が12,000円を超える場合はセルフメディケーション税制を選ぶことが有利なことが多いですが、個別の金額に応じて計算してください。
家族の医療費もまとめて申告できる
医療費控除は、本人だけでなく「生計を共にする家族」の医療費も合算して申告できます。この点を見落としている方が多く、大きな機会損失になっています。
生計を共にする家族として、同居の家族だけでなく、仕送りをしている別居の家族(親・子ども等)も対象になります。「生計を共にしている」とは、必ずしも同居を意味せず、経済的に支えている関係があれば認められます。
家族の医療費をまとめることで、10万円の壁を超えやすくなります。例えば、本人の医療費が6万円・配偶者の医療費が7万円の場合、単独では控除対象外ですが、合算すると13万円となり、3万円が控除対象になります。
所得が高い方の名義で申告することが節税効果を最大化します。医療費控除の節税効果は所得税率が高い方が大きくなります。夫婦のどちらの名義で申告するかを、所得税率を比較して決めることをおすすめします。
まとめ
医療費控除・セルフメディケーション税制は、就職氷河期世代が確定申告で取り戻せる最も身近な節税手段のひとつです。年間の医療費を漏れなく集計する・生計を共にする家族の医療費も合算する・セルフメディケーション税制の対象商品のレシートを保管する——これらを習慣にすることで、毎年数千円〜数万円の還付を確実に受け取ることができます。今年から、医療費の領収書を捨てずに保管することから始めてください。

