就職氷河期世代の電気工事士・設備管理系資格で手に職をつける完全ガイド【一生食える技術を40代50代から身につける全戦略】
はじめに——「手に職」の王道は電気工事士
「手に職をつけろ」。この言葉は、氷河期世代が親から何度も言われた言葉だろう。だが何の「職」をつければいいのか、具体的な答えは示されなかった。40代50代になった今、改めてこの問いに向き合うなら、「電気工事士」は最も現実的な回答の一つだ。
電気工事士は、建物の電気設備(配線、コンセント、照明、分電盤など)の工事・保守を行う技術者だ。国家資格であり、この資格がないと電気工事はできない(業務独占資格)。つまり資格を持っていれば、「法律上、自分にしかできない仕事」がある。これが「手に職」の本質だ。
電気は、あらゆる建物に必要だ。住宅、オフィスビル、商業施設、工場、病院、学校。電気がない建物は存在しない。つまり電気工事士の需要は、建物がある限りなくならない。さらに、老朽化した建物の電気設備の更新工事、太陽光発電設備の設置工事、EV(電気自動車)充電設備の工事など、新しい需要も増えている。
第二種電気工事士——最初に取るべき資格
電気工事士には「第一種」と「第二種」がある。第二種は一般住宅や小規模な建物の電気工事ができる。第一種はビルや工場など大規模な建物の電気工事もできる。まずは第二種から取得する。
試験は年に2回(上期と下期)実施される。筆記試験と技能試験の二段階。筆記試験はマークシート方式で、電気の基礎理論、配線設計、電気機器、法規などが出題される。合格率は60%前後。技能試験は、実際に電線やスイッチ、コンセントを使って回路を組み立てる実技試験。合格率は70%前後。
学習時間は、筆記試験が100〜150時間、技能試験が30〜50時間。合計130〜200時間。1日1時間の学習で、4〜7ヶ月。費用は、受験料9300円、テキスト代2000〜3000円、技能試験用の工具セット約1万円、練習用の電線・器具セット約1〜2万円。合計約3〜4万円。
筆記試験は暗記中心なので、理系でなくても合格可能だ。計算問題も出題されるが、パターンが決まっているので、過去問を繰り返し解けば対応できる。技能試験は、YouTubeの解説動画を見ながら練習すれば、独学でも合格できる。候補問題(技能試験の出題範囲)は事前に公表されるので、すべての候補問題を練習しておけば、本番で慌てることはない。
電気工事士の就職事情
第二種電気工事士を取得した後の就職先としては、電気工事会社が最も一般的だ。住宅の新築工事やリフォーム工事の電気配線を担当する。年収は、未経験スタートで280〜350万円、経験3年以上で350〜450万円、ベテランで450〜600万円が目安。
40代50代で未経験から電気工事会社に就職できるか。答えは「可能だが簡単ではない」。電気工事の現場は体力が求められる。天井裏や床下での作業、高所での作業、重い資材の運搬。20代の若手と同じ体力は期待されないが、最低限の体力は必要だ。
40代50代の場合、電気工事会社の中でも「保守・メンテナンス」部門を狙うのが現実的だ。新築工事よりも、既存建物の電気設備の点検・修理・交換作業のほうが体力的な負担が軽い。ビルメンテナンス会社への就職もこのルートだ(ビルメンについては別のガイドで詳しく解説した)。
電気工事士の求人は、ハローワーク、転職サイト、業界専門の求人サイトで見つけられる。「第二種電気工事士」で検索すると、多数の求人がヒットする。資格保有者の求人は、無資格者の求人より条件が良い傾向がある。
第一種電気工事士へのステップアップ
第二種電気工事士を取得した後、さらに上を目指すなら第一種電気工事士だ。第一種を取得すると、工場やビルなど大規模施設の電気工事もできるようになる。対応できる工事の範囲が広がり、年収も上がる。
第一種の試験は、第二種より難易度が上がる。筆記試験の合格率は50%前後、技能試験の合格率は60%前後。学習時間は200〜300時間。受験料は11300円。
注意点として、第一種電気工事士の免状を取得するには、試験に合格するだけでなく、3年以上の実務経験が必要だ。つまり第二種で就職し、3年間実務を積んでから第一種の免状を取得する、というステップになる。
電気工事士と組み合わせるべき資格
電気工事士単体でも就職は可能だが、他の資格と組み合わせることで、さらに強力な武器になる。
組み合わせ1は「第三種電気主任技術者(電験三種)」。発電所や変電所、ビルの受変電設備の保安監督ができる国家資格。合格率は10%前後と難関だが、取得すれば「電気のスペシャリスト」として高く評価される。年収500〜800万円のレンジが見えてくる。電気工事士で実務経験を積みながら、電験三種の取得を目指す長期戦略が有効だ。
組み合わせ2は「消防設備士」。消防設備(自動火災報知設備、消火器、スプリンクラーなど)の工事・整備・点検を行うための国家資格。甲種と乙種があり、乙種は整備・点検のみ、甲種は工事もできる。電気工事士と消防設備士を両方持っていると、「電気+消防」の両面で対応できる技術者として重宝される。合格率は乙種で35〜45%、甲種で25〜35%。
組み合わせ3は「エネルギー管理士」。工場やビルのエネルギー使用量を管理する国家資格。省エネルギーの推進が社会的に求められている中、エネルギー管理士の需要は高まっている。電気工事士+エネルギー管理士で、「施工もできて省エネ提案もできる」技術者になれる。
電気工事士で独立する道
電気工事士は、個人事業主として独立することも可能だ。独立すれば、会社に雇われるのではなく、自分で仕事を取って自分で施工する。年収は実力次第で500万〜1000万円以上も可能だ。
ただし独立には条件がある。電気工事業の登録が必要であり、主任電気工事士の配置が義務づけられている。主任電気工事士になるには、第一種電気工事士の免状、または第二種電気工事士の免状+3年以上の実務経験が必要。つまり、独立するまでに最低3〜5年の実務経験が必要だ。
独立後の最大の課題は「顧客の獲得」。工務店やハウスメーカーとの取引関係を構築するか、個人顧客(住宅のリフォーム等)を直接獲得するか。営業力が問われる。だが電気工事は需要が安定しているため、一度取引先を確保すれば、継続的な仕事が見込める。
40代50代が電気工事士を目指す際の注意点
注意点1は「体力」。電気工事の現場は体力が必要だ。天井裏での作業は狭い空間での作業になる。脚立に上がっての高所作業もある。腰痛や膝痛がある人は、事前に主治医に相談することをおすすめする。
注意点2は「未経験者としてのスタート」。40代50代で未経験から電気工事業界に入ると、20代の若手と同じ「見習い」からのスタートになる。年下の先輩に教わる。指示を受ける。このプライドの問題を乗り越える必要がある。だが技術職の世界では、年齢よりもスキルが重視される。スキルが身につけば、年齢に関係なく評価される。
注意点3は「初期の給与が低い」可能性。未経験スタートの場合、最初の1〜2年は月給18〜22万円程度になる可能性がある。現在の派遣事務の収入と同等か、やや低いかもしれない。だが経験を積めば昇給する。3年後、5年後を見据えた投資と考える。
まとめ——電気工事士は「一生モノ」の資格
電気工事士は、一度取得すれば一生有効な資格だ。更新の必要がない。年齢を重ねても、体が動く限り使える。電気がなくなることはないから、需要がなくなることもない。
取得費用は3〜4万円。学習期間は4〜7ヶ月。この投資で「一生食える技術」が手に入る可能性がある。副業セミナーの3000円よりも、MOSの13000円よりも、はるかにリターンの大きい投資だ。
「手に職をつけろ」。40代50代になった今、この言葉の意味がようやくわかる。手に職をつけるとは、「自分にしかできない仕事を持つ」ことだ。電気工事士は、法律上「資格がなければできない仕事」を持てる。この独占的な位置づけが、安定した需要と収入を保証する。
遅いかもしれない。でも遅くても始められる。始めなければゼロのまま。始めれば、ゼロから前に進む。電気工事士の資格は、その前進の確実な一歩だ。

