溢れる投資本について
世の中には投資をテーマとして書かれた書籍が山のようにあります。書店に行けば、毎週のように新しい投資本が並びます。しかし、多くは再現性に欠けており、科学的根拠に薄いものが大多数です。まさに玉石混合と言ってよいでしょう。ほとんどは石で、玉はほとんどありません。私も投資家の端くれとして、多くの投資本を読んできましたが、ほとんどの書籍は、全く役に立ちません。例えば、「誰でも10億円稼げる」とか煽り文句だけは一人前ですが内容が全くない書籍や、個人の才能や投資をした時期に成功が依存しているような本が目立ちます。リーマンショックの頃、日経平均が7000円くらいの時に投資を始めた人が大儲けできることは容易です。もちろん、リーマンショックの時に投資の世界に飛び込んだ才覚は評価されるべきです。しかし、それは特殊な状況にあったときに投資を始めたからであって、個人の努力や方法の要素は小さくなります。どんな状況でもある程度の利益が出せるような、普遍的な投資手法について述べている書籍について主に取り上げていきたいと思います。
また、最近はキンドルなど電子書籍でも書籍が読めるようになり、個人でも書籍が簡単に発行できるようになりました。そうした環境のもと、個人投資家の方でも素晴らしい書籍を書いている方がいます。こうしたマイナーな書籍も役に立つと思えば、紹介していきたいと思います。
投資は芸術か、科学か
投資は芸術であり、科学とは言えないとよく言われます。芸術のように個人の才能や才覚に依存している状況が大きく、再現性が低いと思われているのでしょう。芸術は真似や理論立てることは非常に困難ですが、科学はある一定の条件を満たせば再現することが可能です。例えば、モナリザの絵を知らない人がモナリザの絵を思いつくことはあり得ませんが、酸素と水素を用いて化学反応を起こすことは条件さえ整えば科学知識がなくても可能です。投資は芸術であるのか、科学であるのかについてはこれまで様々な論争がありました。
投資が科学であるとする立場としては、モダンポートフォリオ理論や効率的市場仮説が挙げられます。これらの理論でノーベル賞を受賞した人もいます。しかし、この理論の問題点としては、市場が完全に合理的であり、情報は瞬時に全ての投資家に伝わるというあり得ない前提に基づいている点です。これは誰が考えても分かりますが、無理な前提です。しかし、現代ではコンピュータやインターネットにより情報が広がるスピードは著しく短縮されました。米国の大型株のような何十人ものアナリストがウォッチしているような銘柄では、効率的市場仮説はかなりの確度で成り立っているように思えます。
結局、投資とは、芸術のように投資家の才能のような属人的要素を含みつつ、科学的な要素も含んでいると考えるのが中庸で妥当な考え方です。
私の当サイトでの立場も、インデックスファンド理論の土台として用いられる効率的市場仮説を完全否定はしません。ウォーレン・バフェット氏や、ベンジャミン・グレアム氏、ピータ・リンチ氏など長期に渡り市場をアウトパフォームしている存在があるからことと、効率的市場仮説を否定することはまた別の問題だからです。
投資の再現性について
世界有数の富豪であるウォーレン・バフェット氏は株式投資を、勝ち上がると賞金がもらえるコイントス大会に例えています。コイントス大会で勝ち上がった人は、自分には特別な才能や能力があるように思うかもしれませんが、実際は単なる偶然です。しかし、コイントスで勝ち上がった人がある地域に集中して住んでいたとしたら、ある職業に集中していたとしたら、それは単なる偶然ではなくやはりコイントスにも勝つ方法があるという仮説が成り立つということです。その仮説が成り立つかどうか、すなわち再現性があるということは、投資は科学の要素を含んでいるのではないでしょうか。ある一定の考え方や手法に基づいて投資すれば、ある程度のリターンを得ることが可能であるということを示唆しています。バフェット氏は、バリュー投資の祖として知られるベンジャミン・グレアム氏の弟子です。グレアム氏の用いた手法は形を変えて、現代でも投資ファンドで使われています。こうしたことからも、投資には一定の再現性があることが伺えます。
もし、再現性があるとしたら、その法則性を学ぶことは投資リターンを向上させる一助になる為、学ぶ価値があるということになるでしょう。