- はじめに ~ 「選択と集中」で生まれ変わった巨人
- 日立製作所の歴史 ~ 創業から大変革まで
- 日立製作所のビジネスモデル ~ 3つのセクター
- Lumada ~ 社会イノベーションのデジタル基盤
- 「選択と集中」と社会イノベーション事業への転換
- 業績の推移と新経営計画「Inspire 2027」
- 弱点1:巨大組織(28万人)の統合
- 弱点2:大型買収(グローバルロジック等)の負担
- 弱点3:グローバル競争(IT・エネルギー・鉄道)
- 弱点4:Lumadaの実態・定義
- 弱点5:景気変動・設備投資への依存
- 弱点6:大型プロジェクトの遂行リスク
- 弱点7:為替変動
- 弱点8:生成AI・デジタルの競争
- 弱点9:脱炭素・エネルギー転換への対応
- 弱点10:成長の持続性とROEの維持
- まとめ ~ 「選択と集中」で生まれ変わった社会イノベーション企業
- 参考資料
はじめに ~ 「選択と集中」で生まれ変わった巨人
かつて日立製作所は、「総合電機メーカー」の代表でした。家電(テレビ、冷蔵庫)、半導体、ハードディスク、発電所、鉄道、建設機械、化学品まで――ありとあらゆる製品を手がける、巨大なコングロマリット(複合企業)。しかし、2009年には当時の製造業として過去最大の約7,873億円という巨額赤字を計上し、経営危機に陥りました。
そこから日立は、徹底した「選択と集中」を断行。上場子会社(日立化成、日立金属、日立建機等)を次々と売却・整理し、家電・半導体・テレビからも撤退。一方で、米グローバルロジック(デジタルエンジニアリング)、スイスABBの送配電事業、米JR(鉄道車両)等を買収し、事業ポートフォリオを大きく転換しました。
そして日立が掲げたのが、「社会イノベーション事業」。IT(情報技術)×OT(制御・運用技術)×プロダクト(製品)を組み合わせ、社会課題を解決するビジネスです。その中核となるのが、デジタル基盤「Lumada(ルマーダ)」。日立が納入してきた発電所・鉄道・工場設備等のデータを、AI・デジタルツインで活用し、顧客価値に変えます。
株式会社日立製作所(証券コード6501、東証プライム)は、新経営計画「Inspire 2027」のもと、「Lumada売上収益比率80%、Lumada Adj. EBITA率20%」を目指す水準として設定。2024年度のLumada関連売上は約2.33兆円。グループ28万人の力を「真のOne Hitachi」として統合し、企業価値向上を目指しています。
しかし、日立のビジネスモデルにも、複数の弱点があります。巨大組織の統合、買収の負担、グローバル競争、Lumadaの実態、景気変動――。
本記事では、日立製作所の「Lumada×社会イノベーション事業」モデルを多角的に分析し、その独自の強さと弱点の両面に迫ります。
日立製作所の歴史 ~ 創業から大変革まで
日立製作所の起源は、1910年(明治43年)、小平浪平が茨城県日立市で創業した電機修理工場(久原鉱業所日立鉱山の工作課)です。
1910年、創業。国産初の5馬力モーターを製作。
「日立」の社名は、創業地の茨城県日立市に由来。
戦前・戦後、モーター、発電機、家電、重電、産業機械等へ多角化。総合電機メーカーへ。
1950年代~1980年代、家電(テレビ、冷蔵庫)、半導体、コンピュータ、発電所、鉄道、産業機械等。日本を代表する総合電機・重電メーカー。
1990年代~2000年代、巨大なコングロマリット。多数の上場子会社(日立化成、日立金属、日立建機等)。
2009年3月期、リーマンショックで約7,873億円の巨額赤字(当時の製造業最大)。経営危機。
2010年代、川村隆・中西宏明氏らのもと、徹底した「選択と集中」。上場子会社の売却・整理、家電・半導体・テレビからの撤退。社会イノベーション事業への転換。
2016年、Lumada(ルマーダ)を立ち上げ。IoTプラットフォーム。
2020年代、米グローバルロジック(約1兆円)、ABBの送配電事業、米JR等を買収。デジタル・グリーン・イノベーションへ。
2024年度、Lumada関連売上約2.33兆円。
2025年4月、新経営計画「Inspire 2027」を発表。德永俊昭社長兼CEO。
現在、日立は、「社会イノベーション企業」へと生まれ変わり、Lumadaを軸に成長を目指しています。
日立製作所のビジネスモデル ~ 3つのセクター
日立製作所のビジネスモデルは、3つのセクターから成り立っています。
第一に、「デジタルシステム&サービス(DSS)」(成長の中核)。
- ITサービス、システム構築・運用
- グローバルロジック(デジタルエンジニアリング)
- 金融、公共、ヘルスケア等のシステム
- Lumadaの中核
第二に、「グリーンエナジー&モビリティ(GEM)」。
- エネルギー(送配電、原子力、再生可能エネルギー)
- 日立エナジー(旧ABB送配電事業)
- 鉄道(日立レール、英国・欧州等の鉄道車両・信号)
- 脱炭素・グリーン
第三に、「コネクティブインダストリーズ(CI)」。
- 産業機器、産業用システム
- ビルシステム(エレベーター・エスカレーター)
- 計測・分析、水・環境
- 産業のデジタル化
その他(持分法等):
- 日立建機(一部売却)
- 日立ハイテク等
事業の特徴:
- 社会イノベーション事業(IT×OT×プロダクト)
- Lumada(デジタル基盤)が横断
- デジタル・グリーン・イノベーション(鉄道)
- グローバル展開(28万人)
日立製作所は、デジタル(DSS)、エネルギー・鉄道(GEM)、産業(CI)の3セクターで、社会イノベーション事業を展開する、日本最大級の製造業です。
Lumada ~ 社会イノベーションのデジタル基盤
日立製作所の戦略の核心が、デジタル基盤「Lumada(ルマーダ)」です。
Lumadaとは:
- 日立が推進する社会イノベーション事業のデジタル基盤
- IT×OT×プロダクトを組み合わせて顧客と共創するプラットフォーム
- 「Illuminate(照らす)」+「Data(データ)」の造語
- 2016年に立ち上げ
Lumadaのビジネスモデル(顧客協創フレームワーク):
- PLAN(顧客課題の理解とソリューション創出)
- BUILD(IT×OT×プロダクトのソリューション実装)
- OPERATE(運用)
- MAINTAIN(保守)
- この4象限のサイクル
Lumadaの進化:
- Lumada 1.0(2016年〜):IoTプラットフォーム
- Lumada 2.0(2024中計):グローバルロジック買収でデジタルエンジニアリング力強化
- Lumada 3.0(Inspire 2027):ドメインナレッジで強化したAIで社会インフラ全体を変革
インストールベースの活用:
- 日立が納入してきた発電所、鉄道、工場設備等
- 既に社会で稼働している資産がデータの源泉
- データをAI・デジタルツインで活用し顧客価値に変換
Lumadaの業績:
- 2024年度のLumada関連売上 約2.33兆円(前年比12%増)
- FY2021〜2024でCAGR20%以上
- 「Inspire 2027」でLumada売上比率80%を目指す
Lumadaは、日立の「IT×OT×プロダクト」という強みを結集したデジタル基盤。日立が長年納入してきた社会インフラ(発電所、鉄道、工場)のデータを、AI・デジタルツインで活用し、顧客の課題を解決します。これが、日立の社会イノベーション事業の中核です。
「選択と集中」と社会イノベーション事業への転換
日立の最大の経営的成果が、「選択と集中」による事業ポートフォリオの大転換です。
「選択と集中」の歴史:
- 2009年の巨額赤字(約7,873億円)を契機に断行
- 上場子会社(日立化成、日立金属、日立建機、日立物流等)の売却・整理
- 家電、半導体、テレビ、HDDからの撤退
- コングロマリットからの脱却
買収(成長分野へ):
- 米グローバルロジック(約1兆円、デジタルエンジニアリング)
- スイスABBの送配電事業(日立エナジー)
- 米JR(鉄道車両)、イタリア・アンサルドブレダ(鉄道)
- デジタル・グリーン・イノベーション(鉄道)へ集中
社会イノベーション事業:
- IT×OT×プロダクトで社会課題を解決
- 2015中計から2021中計まで事業ポートフォリオ改革
- 2024中計でオーガニック成長へモードチェンジ
- Lumadaを主軸に
「Inspire 2027」(2025年4月発表):
- Lumada売上収益比率80%、Lumada Adj. EBITA率20%を目指す水準
- グループ28万人を「真のOne Hitachi」として統合
- ハーモナイズドソサエティ(環境・幸福・経済成長の調和)
生成AI・マイクロソフト提携:
- グループ全体で生成AIに3,000億円を投資、5万人のAI人材
- マイクロソフトとの戦略的提携(Azure OpenAI等)
日立は、2009年の巨額赤字を契機に「選択と集中」を断行し、コングロマリットから「社会イノベーション企業」へと大変革。これは日本企業の事業ポートフォリオ改革の代表的な成功例とされています。
業績の推移と新経営計画「Inspire 2027」
日立製作所の近年の業績推移を整理しておきましょう。
事業構造:
- デジタルシステム&サービス(DSS)
- グリーンエナジー&モビリティ(GEM)
- コネクティブインダストリーズ(CI)
- Lumadaが横断
Lumadaの成長:
- 2024年度のLumada関連売上 約2.33兆円(前年比12%増)
- FY2021〜2024でLumada関連収益が約1.5兆円→2.33兆円
- CAGR20%以上
- 事例累計1,409件、ソリューション221件
新経営計画「Inspire 2027」(2025年4月発表):
- Lumada売上収益比率80%、Lumada Adj. EBITA率20%を「めざす水準」
- DSSセクターのAI活用を成長ドライバー
- FY2024〜FY2027に年率7〜9%の収益成長
- 調整後EBITA率16%以上
- グループ28万人を「真のOne Hitachi」として統合
成長ドライバー:
- 社会インフラへのAI適用
- 生成AI(3,000億円投資、マイクロソフト提携)
- デジタル・グリーン・イノベーション(鉄道)
経営:
- 德永俊昭社長兼CEO
- オーガニック成長へのモードチェンジ
日立は、Lumadaを軸に成長を続け、「Inspire 2027」でLumada売上比率80%、社会インフラへのAI適用を目指しています。
弱点1:巨大組織(28万人)の統合
日立製作所の課題の一つが、巨大組織(28万人)の統合です。
巨大組織の課題:
- グループ28万人
- グローバルな組織(買収企業含む)
- 「真のOne Hitachi」への統合
- 多様な事業・文化
リスク:
- 巨大組織の統合・管理
- 買収企業(グローバルロジック、日立エナジー等)の統合
- 組織文化の違い
- 意思決定の複雑さ
日立は、グループ28万人、グローバルな組織(買収企業含む)を抱える巨大企業。「真のOne Hitachi」として統合することを目指していますが、多様な事業・文化・地域の統合は容易ではありません。巨大組織の統合が、課題です。
弱点2:大型買収(グローバルロジック等)の負担
日立は、大型買収で成長分野を強化していますが、その負担があります。
大型買収:
- グローバルロジック(約1兆円、デジタルエンジニアリング)
- ABBの送配電事業(日立エナジー)
- 鉄道(米JR、イタリア・アンサルド等)
リスク:
- 買収の負担(のれん、有利子負債)
- 買収企業の統合(PMI)
- のれん減損リスク
- 買収価格の妥当性
日立は、グローバルロジック(約1兆円)、日立エナジー等の大型買収で成長分野を強化しましたが、これらは多額ののれん・負債を生みます。買収企業の統合・シナジー創出、のれん減損のリスク。大型買収の負担が、課題です。
弱点3:グローバル競争(IT・エネルギー・鉄道)
日立は、各事業分野でグローバルな競合に直面しています。
主要競合:
- IT・デジタル:アクセンチュア、IBM、富士通、グローバルIT
- エネルギー(送配電):シーメンス、GE、シュナイダー
- 鉄道:シーメンス、アルストム、ボンバルディア、中国中車(CRRC)
- 産業:シーメンス、GE等
競争のポイント:
- デジタル・AI
- グローバル展開
- 技術力
- 価格
リスク:
- 各分野のグローバル巨人との競争
- シーメンス(IT・エネルギー・鉄道で競合)
- 中国メーカー(鉄道等)
日立は、IT(アクセンチュア等)、エネルギー(シーメンス、GE)、鉄道(シーメンス、アルストム、中国中車)等、各分野でグローバル巨人と競争。特にシーメンスは、IT・エネルギー・鉄道で日立と競合する強力なライバル。グローバル競争が、構造的な課題です。
弱点4:Lumadaの実態・定義
日立のLumadaは、その実態・定義に議論があります。
Lumadaの課題:
- Lumada売上収益比率80%を目指す
- しかし、Lumadaの定義・範囲が広い
- 「Lumada関連売上」に何が含まれるか
- 純粋なデジタル事業との区別
リスク:
- Lumadaの定義の曖昧さ
- 実態(どこまでが「デジタル」か)
- 投資家の評価
- 数字の信頼性
日立は「Lumada売上比率80%」を目指していますが、Lumadaの定義・範囲が広く、「Lumada関連売上」に従来の製品・サービスがどこまで含まれるかという議論があります。純粋なデジタル事業との区別が曖昧との指摘も。Lumadaの実態・定義が、評価上の課題です。
弱点5:景気変動・設備投資への依存
日立の事業は、景気変動・設備投資に依存しています。
景気変動の影響:
- 産業機器、鉄道、エネルギー、ITは企業・政府の投資に依存
- 景気循環
- 設備投資の変動
- インフラ投資
リスク:
- 景気後退による投資抑制
- 設備投資の減少
- インフラ投資の変動
- 大型プロジェクトの変動
日立の事業(産業、鉄道、エネルギー、IT)は、企業・政府の設備投資・インフラ投資に依存します。景気後退は、投資を抑制し、日立の業績に影響。景気変動・設備投資への依存が、構造的なリスクです。
弱点6:大型プロジェクトの遂行リスク
日立は、大型・長期のプロジェクト(鉄道、エネルギー等)が多く、遂行リスクがあります。
大型プロジェクトの課題:
- 鉄道車両・信号システム
- 発電・送配電プラント
- 大型ITシステム
- 工期・コスト
過去の事例:
- 英国の鉄道事業(車両のトラブル、契約見直し)
- 大型プロジェクトのコスト超過
リスク:
- 大型プロジェクトのコスト超過・損失
- 工期遅延
- 技術的リスク
- 海外プロジェクトのリスク
日立は、鉄道(英国・欧州等)、エネルギー、ITの大型・長期プロジェクトが多く、コスト超過・工期遅延のリスク。過去には英国の鉄道事業でトラブルも。大型プロジェクトの遂行リスクが、課題です。
弱点7:為替変動
日立は、グローバルに事業を展開しており、為替変動の影響を受けます。
為替リスク:
- ドル、ユーロ、ポンド(英国鉄道)、各通貨
- グローバルな事業(海外売上比率が高い)
- 円安:海外利益の円換算額増加(プラス効果)
- 円高:円換算額減少
日立は、グローバルに事業を展開し(海外売上比率が高い)、為替変動の影響を受けます。円安は海外利益の円換算額を増やしますが、円高転換すれば円換算業績にネガティブ影響。為替変動が、グローバル企業・日立の業績に影響します。
弱点8:生成AI・デジタルの競争
日立は、生成AI・デジタルの競争に直面しています。
生成AI・デジタルの課題:
- 生成AIへの3,000億円投資、マイクロソフト提携
- LumadaへのAI適用
- アクセンチュア、グローバルIT、クラウド大手との競争
- AI技術の世代交代
リスク:
- 生成AIの競争
- デジタル人材の確保
- クラウド大手との関係
- 技術の急速な変化
日立は、生成AIに3,000億円を投資し、マイクロソフトと提携してLumadaへのAI適用を進めていますが、アクセンチュア・グローバルIT・クラウド大手との競争は激しい。デジタル人材の確保、AI技術の世代交代も課題。生成AI・デジタルの競争が、課題です。
弱点9:脱炭素・エネルギー転換への対応
日立のエネルギー事業は、脱炭素・エネルギー転換の影響を受けます。
脱炭素の課題:
- 日立エナジー(送配電):再生可能エネルギーの送配電
- 原子力
- グリーン・イノベーション
- 脱炭素対応
リスク:
- 脱炭素政策の変化
- 原子力の社会的受容
- 再エネ・送配電投資
- エネルギー転換のスピード
日立のエネルギー事業(日立エナジー、原子力)は、脱炭素・エネルギー転換の影響を受けます。再生可能エネルギーの送配電は成長機会ですが、原子力の社会的受容、脱炭素政策の変化、投資負担というリスク。脱炭素・エネルギー転換への対応が、課題です。
弱点10:成長の持続性とROEの維持
日立は、「選択と集中」後の成長の持続性とROEの維持が課題です。
成長持続性の課題:
- 「選択と集中」は成功
- オーガニック成長へのモードチェンジ
- Lumadaの成長持続
- ROE・利益率の維持向上
リスク:
- 構造改革後の成長の持続
- Lumadaの成長鈍化リスク
- ROE・EBITA率の維持
- 次の成長ドライバー
日立は、「選択と集中」で生まれ変わり、Lumadaを軸に成長してきましたが、今後はオーガニック成長(自律的成長)への転換が課題。Lumadaの成長持続、ROE・利益率(Adj. EBITA率20%目標)の維持向上、次の成長ドライバーの創出が必要。成長の持続性とROEの維持が、課題です。
まとめ ~ 「選択と集中」で生まれ変わった社会イノベーション企業
日立製作所のLumada×社会イノベーション事業モデルを、改めて整理しましょう。
強みとしては、1910年創業の歴史、日本最大級の製造業(グループ28万人)、2009年の巨額赤字からの「選択と集中」による大変革、社会イノベーション事業(IT×OT×プロダクト)、Lumada(デジタル基盤、2024年度売上約2.33兆円、CAGR20%以上)、3セクター(DSS、GEM、CI)、グローバルロジック(デジタルエンジニアリング)、日立エナジー(送配電)、日立レール(鉄道)、インストールベース(社会インフラのデータ)、生成AI投資(3,000億円、マイクロソフト提携)、新経営計画「Inspire 2027」(Lumada売上比率80%目標)、德永社長CEOの経営。
ただし弱点も多数あります。巨大組織(28万人)の統合、大型買収(グローバルロジック等)の負担、グローバル競争(シーメンス等)、Lumadaの実態・定義、景気変動・設備投資への依存、大型プロジェクトの遂行リスク、為替変動、生成AI・デジタルの競争、脱炭素・エネルギー転換への対応、成長の持続性とROEの維持。
日立製作所の本質的な強さは、「2009年の巨額赤字を契機とした徹底した『選択と集中』により、総合電機のコングロマリットから『社会イノベーション企業』へと生まれ変わった」点にあります。
日立は、かつて家電から半導体、発電所まで手がける巨大なコングロマリットでしたが、2009年の約7,873億円という巨額赤字を契機に、徹底した「選択と集中」を断行。上場子会社や家電・半導体・テレビから撤退する一方、グローバルロジック(デジタル)、日立エナジー(送配電)、日立レール(鉄道)等を買収し、事業ポートフォリオを大転換しました。
そして掲げたのが「社会イノベーション事業」。日立が長年納入してきた社会インフラ(発電所、鉄道、工場)のデータを、デジタル基盤「Lumada」とAI・デジタルツインで活用し、顧客の課題を解決します。IT×OT×プロダクトという日立独自の強みを結集したこのモデルは、日本企業の事業改革の成功例とされています。
私たちが乗る鉄道、暮らしを支える電力(送配電)、工場やビルのシステム、そして社会全体のデジタル化――これらすべての背後に、日立製作所の115年の歴史、「選択と集中」の大変革、Lumada、社会イノベーション事業――これらが結晶しています。
ビジネスを設計する人にとって、日立製作所の事例は「危機(巨額赤字)を契機とした大変革」「『選択と集中』の断行」「コングロマリットからの脱却」「IT×OT×プロダクトの融合(社会イノベーション)」「デジタル基盤(Lumada)の構築」「大型M&Aによる事業転換」――多面的な教訓を提供してくれます。
10年後、日立はLumada売上比率80%を達成しているでしょうか。社会インフラへのAI適用を実現しているでしょうか。シーメンス等のグローバル巨人と competeできているでしょうか――。それは、現代日本の製造業・経営における興味深いテーマの一つです。
参考資料
- 株式会社日立製作所 公式IRサイト https://www.hitachi.co.jp/IR/
- 日立製作所「新経営計画 Inspire 2027(2025年4月28日)」https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2025/04/0428/f_0428pre.pdf
- 日立製作所「統合報告書2024」https://www.hitachi.co.jp/IR/library/integrated/2024/ar2024j.pdf
- 週刊BCN+「日立製作所、長期目標でLumadaの売上比率を全社の80%に」https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20250501_209710.html
- note「[LumadaでIoT王者?] 日立製作所 2025年3月期決算説明会」https://note.com/honest_murre2984/n/n5e7d80fa9053
- 「日立製作所のLumada事業の最新動向と分析(2024〜2025年)」https://yorozuipsc.com/uploads/1/3/2/5/132566344/a2d6d9e4e9e9b944cda3.pdf
- シーメンス、GE、アクセンチュア、アルストム、富士通等競合企業の公式情報
- 小平浪平・日立製作所の企業史関連書籍、川村隆・中西宏明氏らの経営改革に関する書籍
- 日本経済新聞、東洋経済オンライン、週刊BCN等の日立製作所関連報道

