はじめに——「現金で十分」は年間1万円を捨てている
「キャッシュレス?よくわからないから現金でいい」。氷河期世代にこう考える人は多い。PayPay、Suica、クレジットカード、QRコード決済。種類が多すぎて何を使えばいいかわからない。設定が面倒。セキュリティが不安。だから現金で払う。
だが現金で払うたびに、ポイント還元を「もらい損ねている」。年間の支出が100万円だとする(家賃を除く生活費。手取り16万円−家賃5万円=月11万円×12ヶ月=132万円)。この132万円を1%還元のキャッシュレスで支払えば、年間13200円分のポイントが貯まる。現金なら0円。差は13200円。年間13200円は発泡酒約100本分。100本の発泡酒を、「よくわからないから」という理由で捨てている。
このガイドでは、キャッシュレスに縁がなかった氷河期世代が「最小限の手間で最大限のポイントを得る」方法を解説する。複雑なポイント二重取り・三重取りの話はしない。「これだけやれば年間1万円得する」シンプルな方法だけを示す。
ステップ1:「クレジットカード1枚」で基本の1%還元を確保する
キャッシュレスの基本はクレジットカードだ。別の記事(マネー14)で「クレジットカード1枚選び」を解説したが、ここではマネー術の観点から要点だけ再確認する。
選ぶカードの条件は3つ。年会費無料。ポイント還元率1%以上。ポイントの使い道が広い(コンビニやスーパーで使える、またはNISAのポイント投資に使える)。
この条件を満たすカードの例。楽天カード(還元率1%、楽天ポイント、楽天証券でポイント投資可能)。三井住友カード(NL)(還元率0.5%だが、対象のコンビニ・飲食店で最大7%還元)。リクルートカード(還元率1.2%、Pontaポイントに交換可能)。
1枚だけ選ぶなら「楽天カード」が最も無難。還元率1%、楽天市場での買い物は3%以上。楽天ペイとの連携でQRコード決済も可能。ポイントは楽天証券でNISAの投資信託購入に使える。「ポイントをお金に変換する」最も簡単なルート。
カードを作ったら、日常の支出をできるだけカード払いにする。スーパーでの買い物、ドラッグストア、ネット通販、光熱費の支払い、通信費の支払い。現金で払っていたものを片っ端からカード払いに変える。年間100万円をカード払いにすれば、年間10000ポイント(=10000円分)が自動的に貯まる。
ステップ2:「QRコード決済」で追加のポイントを拾う
クレジットカードに加えて、QRコード決済(PayPay、楽天ペイ、d払い等)を1つだけ使う。QRコード決済はキャンペーンが頻繁に行われ、通常のポイント還元に加えて「追加ポイント」が得られることがある。
おすすめは「楽天ペイ」(楽天カードを持っている場合)。楽天カードからチャージして楽天ペイで支払うと、還元率が1.5%になる(カードの1%+楽天ペイの0.5%)。年間50万円を楽天ペイで支払えば、年間7500ポイント。カード直接払い(1%=5000ポイント)より2500ポイント多い。
PayPayを選ぶ場合。PayPayはユーザー数が最も多く、使える店舗が広い。特に個人経営の小さな店舗(ラーメン屋、定食屋、床屋等)ではPayPayしか使えないことがある。還元率は基本0.5%だが、キャンペーン期間中は5〜20%還元になることがある。キャンペーンを狙って使えば、高還元率を得られる。
「2つも管理するのは面倒」なら、QRコード決済は省略してもいい。クレジットカード1枚だけで年間1万ポイントは確保できる。QRコード決済はあくまで「追加」だ。
ステップ3:「固定費」をカード払いに変える
固定費は毎月確実に発生する支出だ。これをカード払いにすれば、毎月確実にポイントが貯まる。
カード払いに変更できる固定費。電気代。ガス代。水道代(カード払いに対応していない自治体もある)。スマートフォン料金。インターネット料金。NHK受信料。サブスクリプション(Netflix、Amazon Prime等)。保険料。
これらの合計が月15000〜20000円だとすると、年間180000〜240000円。還元率1%で年間1800〜2400ポイント。「変更手続きをするだけ」で年間2000ポイント前後が自動的に貯まる。変更手続きは各サービスのウェブサイトで「支払い方法の変更」から行う。各社10〜15分の作業。全社合計で1〜2時間。1〜2時間の作業で年間2000円。時給1000〜2000円の「仕事」と同じだ。
ステップ4:「ポイントの使い道」を決めておく
ポイントは「使わなければ0円」だ。貯めっぱなしにして、有効期限が切れて消えるのが最もったいないパターン。ポイントの使い道を「事前に」決めておく。
使い道1は「NISAのポイント投資」。楽天ポイントなら楽天証券でNISAの投資信託購入に使える。ポイントが「投資元本」に変わり、複利で増える。最も「お金に変換する効率」が高い使い方。
使い道2は「スーパーやコンビニでの買い物に使う」。楽天ポイントはファミリーマート、マクドナルド、ミスタードーナツなどで使える。Pontaポイントはローソンで使える。dポイントはファミリーマートで使える。日常の買い物にポイントを使えば、「実質的な値引き」になる。
使い道3は「通信費に充てる」。楽天モバイルなら楽天ポイントで通信費を支払える。月の通信費990円をポイントで支払えば、通信費が「実質0円」になる月もありうる。
使わない使い道。「ポイントで不要なものを買う」。ポイントがあるからといって、必要のないものを買うのは「ポイントに使われている」状態だ。ポイントは「必要なものに使う」。必要のないものには使わない。
「キャッシュレスのリスク」への対処
キャッシュレスへの不安を解消するために、リスクとその対処法を示す。
不安1は「不正利用」。クレジットカードの情報が漏洩し、不正に使われるリスク。対処法は、カード会社の「利用通知メール」を設定すること。利用があるたびにメールが届くので、身に覚えのない利用をすぐに検知できる。不正利用が発覚した場合、カード会社に連絡すれば補償される(60日以内に届け出が必要)。
不安2は「使いすぎ」。現金と違い、キャッシュレスは「お金を使っている実感」が薄い。気づかないうちに使いすぎる。対処法は、「月の予算をアプリで管理する」こと。家計簿アプリ(マネーフォワード等)にカードを連携すれば、支出がリアルタイムで把握できる。「今月はあとX円使える」が常にわかる状態にする。
不安3は「災害時に使えない」。停電でレジのシステムが停止すると、キャッシュレスは使えなくなる。対処法は、「現金も最低限持ち歩く」こと。財布に3000〜5000円の現金を入れておく。普段はキャッシュレスで払い、災害時は現金で。「キャッシュレス100%」にはしない。「キャッシュレス90%+現金10%」が最適バランス。
「ポイント二重取り」はやりすぎない
ネットには「ポイント二重取り」「三重取り」の情報があふれている。「○○カードでチャージして、△△ペイで払い、□□ポイントカードを提示すれば還元率3%!」。確かに理論上は可能だが、手順が複雑すぎて日常的に実行するのは面倒だ。面倒なことは続かない。続かなければ意味がない。
このガイドの方針は「シンプルに1%還元を確保する」。複雑な二重取り・三重取りで2〜3%を狙うより、シンプルに1%を確実に得るほうが、手間とリターンのバランスが良い。年間の支出が100万円なら、1%で1万円。2%にするために毎回の買い物で3つのアプリを操作する手間を考えれば、1%で十分。
「年間1万円のポイント」が20年後にいくらになるか
年間1万円のポイントをNISAに投資する。年利5%で20年間運用すると約33万円。「毎年1万ポイントをNISAに入れるだけ」で、20年後に33万円の資産が生まれる。キャッシュレスに変えなければ、この33万円はゼロだった。「よくわからないから現金でいい」の代償は33万円。
まとめ——「カード1枚」で年間1万円を拾う
やることは3つだけ。クレジットカードを1枚作る。日常の支出をカード払いにする。貯まったポイントをNISAに入れる。この3ステップで、年間約1万円のポイントが自動的に貯まり、20年後に33万円の資産に育つ。
3ステップの手間は「カード申込み30分+固定費の支払い方法変更1〜2時間+NISA設定30分」=合計約3時間。3時間の作業で、20年間のリターンが33万円。時給に換算すれば11万円。世界一割の良い「仕事」かもしれない。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

