独身非正規の「有給休暇」完全取得マニュアル——捨てている有給を全部使い切る技術

この記事は約7分で読めます。

はじめに——「有給を使う」は権利であり義務でもある

「有給休暇?使ったことがない」。こう答える派遣社員は少なくない。「派遣だから有給がない」と思っている人もいる。だがこれは完全な誤解だ。派遣社員にも有給休暇はある。パート・アルバイトにもある。法律(労働基準法第39条)で定められた「すべての労働者の権利」だ。

6ヶ月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、10日間の有給休暇が付与される。1年6ヶ月で11日、2年6ヶ月で12日、3年6ヶ月で14日、6年6ヶ月以上で20日。最大20日間。手取り16万円の月給で20日の有給を使えば、「休んでも給料がもらえる日」が年間20日ある。20日×日給約7300円(月給16万÷22日)=約146000円分。この14.6万円を「使わずに捨てている」人が大量にいる。

2019年4月からは「年5日の有給取得」が法律で義務化された。会社は従業員に最低5日の有給を取得させなければならない。つまり「有給を使う」のは権利であると同時に、会社に課された「義務」でもある。使わないのは自分が損をしているだけだ。

「有給が使えない」と思い込む5つの理由と反論

思い込み1は「派遣社員には有給がない」。反論。ある。労働基準法は雇用形態を問わず適用される。派遣社員の有給は「派遣元」が付与する。派遣元の担当者に「有給は何日ありますか」と確認する。確認すれば、必ず答えが返ってくる。

思い込み2は「派遣先に迷惑がかかる」。反論。有給を取ることで業務に支障が出る場合は、会社が「時季変更権」を行使して別の日に変更を求めることができる。だが「有給を取らせない」ことはできない。早めに申請すれば、派遣先も調整できる。2週間前に申請すれば、ほぼ確実に通る。

思い込み3は「有給を使うと契約更新されないのではないか」。反論。有給取得を理由に契約更新を拒否することは違法だ。「有給を使ったから切られた」場合は、労働基準監督署に相談できる。ただし「有給以外の理由」で切られるリスクはゼロではない。だからといって有給を使わない理由にはならない。有給を使わずに契約更新されても、14.6万円を捨てた事実は変わらない。

思い込み4は「周囲が有給を取っていないから自分も取れない」。反論。「周囲が取っていない」のは「周囲が権利を放棄している」だけ。自分が放棄する必要はない。先陣を切って有給を取ることで、周囲も「取っていいんだ」と気づく。自分が最初の一歩を踏み出す。

思い込み5は「有給を取っても何もすることがない」。反論。何もしなくていい。布団で1日寝ていてもいい。散歩しても、本を読んでも、もやし炒めを研究してもいい。「何もしない日」を有給で確保することが、心身の回復になる。何もしないことの価値は、別のエッセイ(総合01「タイムスケジュール」)で解説した。

有給の「申請方法」——派遣社員の場合

派遣社員の有給は「派遣元」に申請する。派遣先ではない。派遣先の上司に「有給を取りたい」と直接言うのではなく、派遣元の担当者に連絡する。

ステップ1は「派遣元に有給の残日数を確認する」。電話またはメールで「有給休暇の残日数を教えてください」と問い合わせる。派遣元のウェブシステムで確認できる場合もある。

ステップ2は「希望日を伝える」。「○月○日に有給を取得したいです」と派遣元に伝える。2週間〜1ヶ月前に申請するのが望ましい。直前の申請でも法的には問題ないが、派遣先の業務調整のために早めが安全。

ステップ3は「派遣先にも伝える」。派遣元から派遣先に連絡が行く場合もあるが、自分からも派遣先の上司に「○月○日はお休みをいただきます」と一言伝えておく。伝えることで、業務の引き継ぎや調整がスムーズになる。

ステップ4は「有給を取得する」。申請が承認されれば、その日は休み。給料は通常通り支払われる(有給なので)。給与明細で「有給取得日」が記載されているか確認する。記載がなければ、派遣元に問い合わせる。

有給を「戦略的に」使う——年間20日の配分設計

有給20日を「戦略的に」使う方法を示す。ただ漫然と使うのではなく、「効果が最大化される使い方」を考える。

配分1は「体調不良への備え」に5日。風邪、腰痛、歯の治療。急な体調不良で休む場合に有給を充てる。欠勤(無給)にするのではなく有給を使えば、収入が減らない。5日分を「体調不良用」として確保しておく。

配分2は「通院・手続き」に3日。歯科検診、人間ドック、市役所での手続き、銀行での手続き。平日にしかできない用事に有給を使う。半日有給(半休)が使えれば、午前中に用事を済ませて午後は出勤、またはその逆。

配分3は「帰省」に2〜3日。お盆やお正月の帰省に有給を追加して、連休を作る。土日+有給2日で4連休。4連休あれば、ゆっくり帰省できる。

配分4は「リフレッシュ」に4〜5日。何の予定もない「完全な休日」を、有給で意図的に作る。月に1回、平日に有給を取って「一人の休日」を楽しむ。平日の美術館はガラガラ。平日の公園は静か。平日の映画館は貸し切り状態。「平日に休む贅沢」を味わう。

配分5は「年末年始・GW・お盆の前後」に2〜4日。連休の前後に有給をつけて、長い休みを作る。GWの前日に有給を取れば、飛び石連休が大型連休に。「有給をつけるだけ」で休日の質が劇的に上がる。

配分6は「緊急予備」に2〜3日。使い道を決めず「予備」として残す。年末に余ったら、12月に消化する(有給は翌年に繰り越せるが、2年で消滅する。使わなければ消える)。

「半日有給」(半休)を活用する

半日有給(半休)が使えれば、1日分の有給で2回休める。午前半休を取って、午前中に通院し、午後から出勤。または午後半休を取って、午前中だけ出勤し、午後は自由。

半休の活用例。歯科検診(午前半休で午前中に受診、午後出勤)。市役所の手続き(午前半休で午前中に済ませる)。人間ドック(午前半休で受診、午後出勤。または午前出勤、午後半休で受診)。美容室(午後半休で夕方に行く。空いている時間帯で待ち時間ゼロ)。

半休が使えるかどうかは、派遣元の制度による。派遣元に「半日有給は使えますか」と確認する。使えれば、有給の活用の幅が大きく広がる。

有給を「捨てない」ための仕組み

有給は2年間で消滅する。付与された年度に使わなくても、翌年度に繰り越せる。だが翌々年度には消える。消えた有給は戻ってこない。「使わなかった有給=捨てたお金」だ。

捨てないための仕組み1は「有給カレンダーを作る」。年度の初めに、「この月にこの有給を使う」計画を立てる。計画をスマートフォンのカレンダーに入れておけば、「あ、来月有給を取る予定だった」とリマインドされる。

仕組み2は「毎月1日は有給を確認する日」にする。毎月1日に有給の残日数を確認する。「残り10日。あと6ヶ月。月に1〜2日使えば使い切れる」。計算して、計画を調整する。

仕組み3は「消滅直前の有給を優先的に使う」。古い有給(前年度分)から先に使う。新しい有給(今年度分)は翌年度まで繰り越せるので後回し。「古い順に使う」ルールで、消滅を最小化する。

有給が「拒否された」場合の対処法

有給申請が拒否されることは「原則として」ない。労働基準法では、労働者が有給を申請すれば、会社は「与えなければならない」。ただし「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、時季変更権(別の日に変更する権利)がある。「拒否」ではなく「別の日にしてくれ」は合法。

「別の日にしてくれ」と言われた場合は、別の日を指定して再申請する。それでも拒否される場合は、派遣元の担当者に相談する。派遣元が対応してくれなければ、労働基準監督署に相談する。労働基準監督署は無料で相談を受けてくれる。「有給を取らせてもらえない」は労働基準法違反であり、監督署が是正勧告を行う。

「相談するのは大げさではないか」と思うかもしれない。だが14.6万円の権利を侵害されている。14.6万円。もやし4866袋分。これだけの金額の権利を「大げさ」で済ませてはいけない。

「有給を全部使った年」に起きた変化

仮に20日の有給を全部使ったとする。月に約1.7日の追加休日。週5日勤務が、実質週4.6日勤務に。この「0.4日の余裕」が、生活に大きな変化をもたらす。

変化1は「疲労が軽減される」。月に1〜2日の追加休日が、慢性疲労の回復に充てられる。回復すれば仕事のパフォーマンスが上がる。パフォーマンスが上がれば、ミスが減り、評価が上がり、契約更新の確率が上がる(有給を取ったから評価が下がるのではなく、有給で回復してパフォーマンスが上がれば評価は上がる)。

変化2は「平日にしかできないことが片付く」。通院、役所の手続き、銀行の手続き。これらを有給で片付ければ、休日を「自分のための時間」に使える。休日の質が上がる。

変化3は「精神的な余裕が生まれる」。「いつでも有給を使える」という安心感が、日常のストレスを軽減する。「体調が悪くても休めない」という不安がなくなる。不安がなくなれば、心が少し軽くなる。

まとめ——「有給を捨てるな。年間14.6万円を拾え」

有給休暇は「無料でもらえるお金」と同じだ。20日の有給を使えば、20日分の給料を「働かずに」もらえる。使わなければ、20日分の給料を「捨てている」。14.6万円を捨てている。捨てる理由は「使いにくいから」「申し訳ないから」「周りが使っていないから」。どれも「14.6万円を捨てる理由」としては弱すぎる。

明日、派遣元に電話しよう。「有給の残日数を教えてください」。残日数を確認する。確認したら、来月の「有給取得日」を1日決める。1日決めたら、申請する。申請すれば、承認される。承認されれば、休める。休めれば、給料がもらえる。これが「有給」だ。使わない理由がない。

このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

タイトルとURLをコピーしました