銘柄備忘録(土地含み資産銘柄)

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土地の価格とは

株子さん
株子さん

土地の価格ってどうやって決まるんですか?

株師匠
株師匠

皆が価値があると思うから、土地は価値があるという側面があるんだよ。価値があると思って買いたい人が多ければ、価格が上がるんだ。

土地の価格は、皆が価値があると思うから価値があるという、不換紙幣にも似たところがあります。不換紙幣のような紙切れでも、中央銀行が価値を保証すれば価値があるということは、現代の経済において暗黙の了解です。1980年代の日本における土地バブルを引き合いに出すまでにもありません。古くはオランダのチューリップ投機のように球根1つが家1軒に相当すると思われれば、それは皆が決めた”妥当な”価格なのです。東京銀座の土地が1平米でいくらしようとも皆が”妥当”と思えば、それが価格なのです。
逆に、過疎地の土地のように皆が価値がないと思えば価値がなくなります。本来は、東京銀座の土地であろうが、過疎地の土地だろうが、家や建物を建てることは可能です。土地を使えるという意味では価値が変わりませんが、おカネと交換する際には雲泥の差が出ます。

賃貸等不動産含み益

賃貸等不動産含み益の絶対額の大きさは、やはり本業が不動産業で創業が古く好立地の物件が多い三菱地所、三井不動産、住友不動産がトップスリーを占めます。例えば、三菱地所は東京駅前の丸の内一帯が一面の野原だったころからの地主で、”丸の内の大家さん”と呼ばれるほど由来が古いのです。もちろん、三菱地所は丸の内の価値を上げる為にイメージ戦略や多額など企業努力をしてきましたが、土地の取得原価も現在からみればタダ同然です。

その他には電鉄系や小売デベロッパー系、倉庫系なども多いです。

例えば、電鉄系においては、小林一三が発展させた阪急電鉄に代表されるように、都市郊外に鉄道を引いて土地の価格を高め、鉄道事業をコアとした事業展開をした例が挙げられます。もとは、原野に近い土地も買収して鉄道の利便性により価値を高めた場合が多いため、創業が古い電鉄系会社の場合、土地の取得原価は低い場合が多いです。

小売デベロッパ―系ではイオンなどの大手小売業が展開する店舗の土地が含み資産が多額に上ります。店舗の土地は郊外にあることが多く、創業は比較的新しい土地が多いです。

倉庫系企業では、倉庫が都心臨海部に多いという性質上対象の土地が埋め立て地である場合が少なくありません。こうした土地の取得原価は現在においてはタダ当然ですから、当然含み益も大きくなります。創業が古い企業が多く、その分取得原価は低めです。

その他にも工場の創業が古い場合などは、メーカー系の土地に莫大な含み益が存在する場合があります。ただし、対象の土地の上に工場が建っている場合には、創業が古ければ土壌汚染などのリスクもあり得ます。

株子さん
株子さん

三菱地所の他にも、いろんな種類の企業が含み益を持った土地を所有しているんですね。

株師匠
株師匠

賃貸用不動産として以外に、工場や店舗など本業で使っている不動産を保有している場合もあるんだよ。

なぜ含み資産銘柄の株価は上昇するのか

土地を所有しているのはあくまで会社です。株主が直接的に土地を持っているわけではありません。例えば、銀座に100平米の土地を持っている会社の株を10%所有しているからと言って、会社に10平米土地を下さいとは言えないのです。ですが、市場は株主が会社の土地を自由に売買できると想定して、株価を値付けすることがあります。例えば、バブル期のウォーターフロント相場です。証券マンがめぼしい土地を持っていそうな会社に目を付け、この会社の土地は何百億円も価値があると分析しそれに比べると株価は割安だと顧客に喧伝しました。その結果、東京都臨海部に広大な土地を持つ会社の銘柄は大きく値上がりました。しかし、実際は工場や店舗などがある為、利益を実現することは困難です。平時においては、含み益銘柄は低い評価のままとどまっている事が少なくありません。


また、リーマンショック前までは外資系ファンドがこうした含み資産銘柄に投資して、株主提案を通じて強引に土地の含み益を実現化しようとしました。その結果、含み資産銘柄の多くが高騰しました。しかし、その後法廷闘争で株主の権利濫用だと烙印を押された外資系ファンドの中には、撤退を余儀なくされた所も少なくありません。
土地の価格が高騰することも含み資産銘柄の株価が上昇する要因の一つです。間接的にとは言え、株主として土地を所有することができるからです。会社の資産価値が向上すれば株主の持ち分としての株価が高騰することは言うまでもありません。個人では所有することが困難な都心の一等地をイメージ上所有しているような気になれる点も、人気化する原因の一つなのかもしれません。


含み資産銘柄が上昇するためには何らかのカタリスト(株価を上昇させる要因)が必要なのです。わかりやすい例としては、新宿コマ劇場を運営していたコマ・スタジアムが2008年に1株7400円で(買収前過去1か月の終値単純平均値が1559円)東宝に買収された事例です。約375%の株価プレミアムが付いた計算になります。

株子さん
株子さん

コマ・スタジアムの事例がすごいですね・・・。

株師匠
株師匠

多くの銘柄は、長期低迷していることが多いんだ。じっくり待てる人にとっては土地含み資産への投資は面白いかもね。

参考記事:含み資産銘柄とは何か

買収防衛策について調べる

TOB(株式公開買い付け)には、会社が同意している友好的TOBと、会社が同意していない敵対的TOBがあります。企業が保有する資産価値に目を付けたファンドや企業などが株式を市場内外で買い付けた際に、敵対的買収から企業を防衛できる仕組みを整えている企業があります。こうした買収防衛策を整えている会社は、旧態依然とした株主持ち合いを行い、株主還元もおろそかである傾向があります。

買収防衛策には各種手法がありますが、日本企業の買収防衛策は経営陣の保身の為にあるようなものです。上場するということは、当然に合併や買収される可能性を秘めているわけですが、日本企業の経営陣にはそうした基本中の基本が分かっていないようです。”市場は会社の財布”程度の認識しかないような経営陣も中にはいるので注意が必要です。

買収防衛策で経営陣が保身を図っているような企業は、TOB成立の可能性が低いので、当然、外資系ファンドも投資しようとしないですし株価も上がりません。どんなに割安であっても、投資するファンドや個人がいないのですから、バリュートラップに嵌る可能性が高くなります。特に、大企業同士が株式持ち合いをしている場合には、強く現状維持の力が働きます。

アクティビストと呼ばれる、”企業買収を通じて企業価値の向上を図る”という大義名分を掲げているようなファンドが入っている場合には、大きなカタリストとなりますので、検討してみる価値はあります。

主要含み資産銘柄

・昭和飛行機工業 PBR2.00倍(2019年実績値)

中央線沿線の一等地にある含み資産銘柄の定番。戦後直後まではこの辺りには飛行場や軍需工場があったため、広大な土地を一企業が保有している。かつてはこの付近に広大な土地を保有する立飛企業や新立川航空機などの上場企業が存在したが、MBO(経営陣などによる株式公開買い付け)などを経て現在は非公開企業となっている。

・三菱地所 PBR1.24倍(2019年実績値) 株価1602.5円

言わずと知れた”丸の内の大家さん”。明治政府から創業者の岩崎弥太郎が、現在の価値からすればタダ同然で丸の内一帯の土地払い下げを受けた。その後、年を経て現在の一大ビジネス街に成長させた。

・東日本旅客鉄道 PBR0.90倍(2019年実績値) 株価7474円

鉄道沿線に良質かつ広大な土地を保有する。不況にも比較的強いディフェンシブ銘柄の要素がある。

・ニッピ PBR0.36倍(2019年実績値) 株価3,530円

東京都足立区千住大橋の再開発が行われているため、近辺に広大な土地を持つと当社は注目されている。最近、土地を売却したため、キャッシュも豊富である。iPS細胞関連の側面も持つ。その割には時価総額は、極めて低い評価しかされていない。


・よみうりランド PBR0.95倍(2019年実績値) 株価3,550円

所有する船橋と川崎の競馬場と、船橋のオートレス場にて歩合家賃を受け取るビジネスが儲かっている。その他にも遊園地やゴルフ場なども所有。

   
・東京都競馬 PBR1.54倍(2019年実績値) 株価3,595円

大井競馬場や東京サマーランド、伊勢崎オートレス場などを保有する。その他、倉庫、ビル、商業施設も展開。


・東京ドーム PBR0.71倍(2019年実績値) 株価773円

東京都文京区に所在する東京ドームやその周辺の施設が大きな含み資産を有する。都心の一等地である。


・帝国ホテル PBR1.74倍 株価1,776円

言うまでなく、都心の一等地にホテルを構える。最近は三井不動産の資本が入っている。


・藤田観光 PBR1.27倍 株価1,698円

都心に椿山荘という広大な敷地を持つホテルがある。箱根の小涌園にも土地を保有し、ビジネスホテルのワシントンホテルも展開する。

・ 片倉工業 PBR0.71倍 株価1,143円

東京都心のほか、地方都市の一等地にも土地を保有。主要事業も優良事業が多い。

・飯野海運 PBR0.49倍 株価340円

海運会社であるが、不動産事業にも熱心である。東京都千代田区内幸町にイイノビルを保有。株価は海運市況の影響を受けやすい。

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