就職氷河期世代の「セーフティネット住宅・居住支援法人」活用ガイド【高齢・低収入・単身でも入居を拒否されない住まいの探し方】

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就職氷河期世代の「セーフティネット住宅・居住支援法人」活用ガイド【高齢・低収入・単身でも入居を拒否されない住まいの探し方】

はじめに——「入居を断られる」時代に備える

年齢が上がるほど、賃貸の選択肢は狭まる。高齢の単身者は孤独死リスクを理由に入居を拒否されることがある。低収入者は家賃滞納リスクを理由に審査で落とされる。障害のある人、外国人、ひとり親家庭。これらの人々は「住宅確保要配慮者」と呼ばれ、民間の賃貸市場で住まいを見つけることが困難になりがちだ。

氷河期世代の多くは、10年後、20年後にこの問題に直面する。50代、60代で単身、非正規、低年金。民間の賃貸市場から締め出されるリスクは年々高まる。このリスクに備えるために、セーフティネット住宅と居住支援法人という二つの制度を知っておく必要がある。

セーフティネット住宅とは

セーフティネット住宅は、2017年に改正された「住宅セーフティネット法」に基づく制度だ。住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を、都道府県に登録する仕組み。登録された物件は「セーフティネット住宅」として公開され、住宅確保要配慮者が検索・申込みできる。

「入居を拒まない」がポイントだ。通常の民間賃貸では、大家が入居者を選ぶ。高齢者や低収入者は、大家の判断で拒否されることがある。セーフティネット住宅に登録された物件は、登録時に「住宅確保要配慮者の入居を拒まない」ことを宣言している。つまり、年齢や収入を理由に入居を断られることがない(ただし家賃の支払い能力の確認は行われる)。

住宅確保要配慮者の定義は幅広い。低額所得者(月収15.8万円以下、地域により異なる)、高齢者、障害者、子育て世帯(18歳未満の子がいる世帯)、被災者、外国人、DV被害者、刑務所出所者など。氷河期世代で低収入の単身者は「低額所得者」として対象になる可能性が高い。

セーフティネット住宅の探し方

セーフティネット住宅は「セーフティネット住宅情報提供システム」というウェブサイトで検索できる。国土交通省が運営する公的なサイトだ。URLは「safetynet-jutaku.jp」。エリア、家賃、間取り、住宅確保要配慮者の種類(高齢者向け、低額所得者向けなど)で絞り込み検索ができる。

検索の際に注意すべき点がある。まず登録物件数が地域によって大きく異なること。都市部は比較的多いが、地方は少ない場合がある。次に、登録されていても空きがない物件もある。検索結果に表示されても、実際に入居できるかは問い合わせてみないとわからない。

また、セーフティネット住宅には「専用住宅」と「登録住宅」の二種類がある。専用住宅は住宅確保要配慮者のみが入居できる物件で、家賃が低廉化されている場合がある(国と自治体からの補助で家賃が引き下げられている)。登録住宅は一般の入居者も受け入れるが、住宅確保要配慮者の入居を拒否しないことが条件。専用住宅のほうが家賃が安い傾向にあるが、数は少ない。

居住支援法人とは

居住支援法人は、住宅確保要配慮者の住まい探しを支援する法人だ。都道府県知事が指定するNPO法人、社会福祉法人、株式会社などが居住支援法人として活動している。2024年時点で全国に800以上の法人が指定されている。

居住支援法人が提供するサービスは多岐にわたる。物件の紹介・あっせんでは、民間の不動産市場で見つけにくい物件を、独自のネットワークで紹介してくれる。大家との交渉や、入居審査のサポートも行う。保証人代行サービスでは、保証人がいない人の代わりに、法人が保証人になってくれる場合がある。入居後の見守りサービスでは、定期的な訪問や電話で安否確認を行い、孤立を防ぐ。生活支援サービスでは、生活上の困りごと(福祉サービスの利用、就労支援、家計管理など)の相談に乗ってくれる。

居住支援法人の利用料金は法人によって異なる。無料で相談できる法人もあれば、サービスによって有料の場合もある。まずは相談してみることが第一歩だ。

居住支援法人の探し方と相談の流れ

居住支援法人の一覧は、国土交通省のウェブサイトで公開されている。都道府県別に指定法人が一覧化されており、法人名、所在地、連絡先、対応する要配慮者の種類(高齢者、低額所得者、障害者など)が記載されている。

自分の居住地(または転居予定地)の居住支援法人を探し、電話またはメールで連絡する。「住まいの確保について相談したい」と伝えれば、担当者が対応してくれる。相談は無料のことが多い。

相談の際に伝えるべき情報は、現在の住居状況(住んでいるか、住居を失うリスクがあるか)、収入と雇用状態、保証人の有無、希望するエリアと家賃の上限、その他の困りごと(介護、健康、就労など)。これらの情報をもとに、居住支援法人が最適な支援プランを提案してくれる。

居住支援協議会の活用

居住支援法人とは別に「居住支援協議会」という組織もある。居住支援協議会は、地方公共団体、不動産関係団体、居住支援法人が連携して、住宅確保要配慮者の支援を行う組織だ。都道府県や市区町村レベルで設置されている。

居住支援協議会に相談すると、地域の複数の居住支援法人を紹介してもらえる。「どの法人に相談すればいいかわからない」という場合は、まず居住支援協議会に連絡するのが効率的だ。居住支援協議会の連絡先は、自治体の住宅課や福祉課で教えてもらえる。

セーフティネット住宅と居住支援法人を使う際の注意点

注意点1は「制度の存在自体が知られていない」こと。セーフティネット住宅も居住支援法人も、一般にはあまり知られていない。不動産屋に行っても、セーフティネット住宅を勧められることは稀だ。自分から情報を取りに行く必要がある。

注意点2は「物件の質にばらつきがある」こと。セーフティネット住宅に登録されている物件は、新しくてきれいなものから、古くて設備が貧弱なものまで様々だ。内見をして、実際の状態を確認することが重要。

注意点3は「すぐに入居できるとは限らない」こと。特に家賃低廉化された専用住宅は数が少なく、空きが出るまで待つ必要がある場合がある。急いで住まいを確保したい場合は、居住支援法人に事情を伝え、優先的に対応してもらえないか相談する。

注意点4は「居住支援法人の質もばらつきがある」こと。800以上の法人があるが、すべてが同じ水準のサービスを提供しているわけではない。対応が遅い法人、サービスの範囲が限定的な法人もある。複数の法人に相談してみて、自分に合ったところを選ぶのがよい。

今から準備しておくこと

セーフティネット住宅や居住支援法人は、「住まいに困ったとき」に使う制度だ。だが「困ってから調べる」では遅い場合がある。困る前に、以下の準備をしておくことを勧める。

準備1は「自分の居住地の居住支援法人を調べておく」こと。国土交通省のウェブサイトで一覧を確認し、連絡先をメモしておく。スマートフォンの連絡先に「居住支援法人」の名前と電話番号を登録しておけば、いざというときにすぐ連絡できる。

準備2は「セーフティネット住宅情報提供システムのサイトをブックマークしておく」こと。ブックマークしておけば、必要なときにすぐアクセスできる。

準備3は「住居確保給付金の申請窓口を確認しておく」こと。前のガイドで解説した住居確保給付金と、セーフティネット住宅・居住支援法人は、併用できる場合がある。両方の窓口を知っておけば、住まいの危機に対して複数の手段で対応できる。

準備4は「自分が住宅確保要配慮者に該当するか確認しておく」こと。低額所得者の基準は地域によって異なるので、自治体の住宅課に確認しておく。該当すれば、セーフティネット住宅への入居や、居住支援法人のサービスを利用しやすくなる。

まとめ——「拒否されない住まい」が存在する

高齢者は入居をお断り。低収入者は審査で不合格。保証人なしでは契約できない。民間の賃貸市場では、これらの壁が立ちはだかる。だがセーフティネット住宅なら、入居を拒否されない。居住支援法人なら、住まい探しを手伝ってくれる。

これらの制度は完璧ではない。物件数は十分ではなく、地域による偏りもある。だが「存在する」ことに意味がある。壁にぶつかったとき、「壁を迂回する道」があることを知っていれば、絶望しなくて済む。

氷河期世代が60代、70代になったとき、住まいの確保は最大の課題の一つになる。その課題に直面する前に、セーフティネット住宅と居住支援法人の存在を知っておくこと。知っておくだけで、将来の選択肢が一つ増える。選択肢が一つ増えることの価値は、選択肢がゼロに近づいた人間にしかわからない。

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