就職氷河期世代の「先取り貯蓄」で意志力ゼロでもお金が貯まる仕組みの作り方

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就職氷河期世代の「先取り貯蓄」で意志力ゼロでもお金が貯まる仕組みの作り方

はじめに——「余ったら貯金」は永遠に貯まらない

お金を貯められない人に共通するパターンがある。「月末に余ったら貯金しよう」。このパターンの人は、永遠にお金が貯まらない。なぜか。「余る」ことがないからだ。

人間の脳は「あるお金は使う」ように設計されている。給料が16万円入れば、16万円分の消費欲求が湧く。15万円に減れば、15万円分の欲求に調整される。つまり、いくら収入があっても、手元にある分だけ使ってしまう。行動経済学で「パーキンソンの法則」と呼ばれる現象だ。「支出は収入に比例して増大する」。

この法則を逆手に取るのが「先取り貯蓄」だ。給料が入ったら、最初に貯蓄分を「見えない場所」に移す。残りの金額だけが「使えるお金」として認識される。手取り16万円から2万円を先取りすれば、脳は「手取り14万円」と認識し、14万円の範囲で生活するよう自動調整する。2万円は「最初からなかったお金」として扱われる。

この仕組みを一度作ってしまえば、意志力は不要だ。自動で貯まる。毎月「貯金しなきゃ」と自分を奮い立たせる必要がない。仕組みが勝手に貯めてくれる。

先取り貯蓄の具体的な設定方法

先取り貯蓄の仕組みを作るには、銀行の「自動振替」機能を使う。以下の手順で設定する。

手順1は「貯蓄用の口座を開設する」こと。メインの給与振込口座とは別の銀行に口座を開設する。別の銀行にする理由は「簡単に引き出せないようにする」ためだ。同じ銀行なら、ATMで数分で引き出せる。別の銀行なら、引き出すのに手間がかかる。この手間が心理的な壁になり、安易な引き出しを防ぐ。

おすすめの貯蓄用口座は、ネット銀行(住信SBIネット銀行、楽天銀行、auじぶん銀行など)。普通預金の金利が大手銀行(0.001%程度)より高い(0.01〜0.1%程度)。ATM手数料や振込手数料が月に数回無料のところが多い。口座開設はスマートフォンで完結する。

手順2は「自動振替を設定する」こと。給与振込口座(メイン口座)から、貯蓄用口座(サブ口座)に、毎月決まった日に決まった金額を自動で振り替える設定を行う。振替日は給料日の翌日が最適。給料が入った翌日に自動で貯蓄分が移動するので、「使う前に貯まる」。

設定方法は銀行によって異なるが、大手銀行ならインターネットバンキングの「振込予約」「定額自動送金」「自動振替」などのメニューから設定できる。設定は一度だけ。以降は毎月自動で実行される。

手順3は「金額を決める」こと。最初は無理のない金額から始める。手取り16万円なら、月5000〜10000円が現実的。「これだと生活がきつい」と感じたら、3000円に下げてもいい。金額は後からいつでも変更できる。大切なのは「ゼロにしないこと」。1000円でもいいから、先取り貯蓄の仕組みを止めない。

「目的別口座」で貯蓄を分ける

住信SBIネット銀行には「目的別口座」という機能がある。一つの口座の中に、複数の「仮想口座」を作れる。「生活防衛資金」「旅行費用」「家電買い替え費用」「冠婚葬祭費」など、目的ごとに分けて管理できる。

この機能を使えば、「生活防衛資金は50万円まで貯める」「旅行費用は年1回1万円」「冠婚葬祭費は常に3万円をキープ」というように、目的別に管理できる。目的が明確だと、「何のために貯めているか」がわかるので、取り崩す誘惑に負けにくくなる。

目的別口座がない銀行でも、スプレッドシートやメモ帳で「仮想的に」分けて管理すれば同じ効果が得られる。「口座残高20万円のうち、15万円は生活防衛資金、5万円は予備費」とメモしておく。メモするだけで、お金に「色」がつく。色がつくと、無駄遣いが減る。

「使えるお金」を可視化する

先取り貯蓄で2万円を移動した後、メイン口座に残るのは14万円。この14万円が「今月使えるお金」だ。14万円から固定費(家賃5万円、光熱費1万円、通信費1万円、交通費1万円)を引くと、残りは6万円。この6万円で食費、日用品、医療費、衣服費、交際費、予備費を賄う。

6万円を4週間で割ると、1週あたり15000円。1日あたり約2100円。この「1日2100円」が、日常の出費の上限だ。毎日の出費がこの上限を超えなければ、月末に赤字にならない。超えた日があっても、翌日に調整すればいい。

「1日2100円ルール」を意識するだけで、支出のコントロールが格段に楽になる。「今日は1500円しか使っていない→600円余った→明日は2700円まで使える」。この感覚は、ダイエットの「カロリー計算」に似ている。カロリーを意識するだけで食事量が自然に減るように、「1日2100円」を意識するだけで出費が自然に減る。

先取り貯蓄の金額を段階的に増やす

先取り貯蓄の金額は、最初は少額から始めて、慣れたら段階的に増やす。いきなり月3万円を先取りすると、生活が苦しくなって挫折する。段階的に引き上げることで、体(生活)を慣らしていく。

スケジュール例。1〜3ヶ月目:月5000円。4〜6ヶ月目:月8000円。7〜9ヶ月目:月10000円。10〜12ヶ月目:月15000円。13ヶ月目以降:月20000円。

このスケジュールなら、最初の3ヶ月は月5000円しか減らないので、生活への影響は最小限。6ヶ月目までに生活パターンが「先取り後の金額」に適応する。適応したら金額を上げる。上げても適応する。この繰り返しで、1年後には月20000円の先取りが「普通」になっている。

1年間のこのスケジュールで貯まる金額は、5000×3+8000×3+10000×3+15000×3=114000円。1年で11万円以上。10万円の壁を1年で突破できる。

先取り貯蓄と「臨時収入」の合わせ技

先取り貯蓄は「毎月の安定的な積立」だが、これに「臨時収入」を上乗せすると加速する。

臨時収入の例。ボーナス(あれば)。確定申告の還付金。ふるさと納税の控除分。メルカリの売上金。ポイントの現金化。残業代(通常月より多い場合の差額)。

これらの臨時収入を「全額貯蓄に回す」ルールを設ける。臨時収入は「ないものとして扱う」のが鉄則。あったら嬉しいが、なくても生活に支障がない。だから全額貯蓄に回しても、生活レベルは変わらない。

確定申告の還付金が1万円あれば、1万円を丸ごと貯蓄口座に入れる。メルカリで5000円分売れたら、5000円を丸ごと貯蓄口座に入れる。これだけで年間2〜5万円の上乗せになる。先取り貯蓄の11万円と合わせれば、年間13〜16万円。2年で26〜32万円。3年で40〜48万円。50万円が射程圏内に入る。

先取り貯蓄の「落とし穴」と対策

先取り貯蓄にも落とし穴がある。事前に知っておけば対処できる。

落とし穴1は「先取りした分を引き出してしまう」こと。貯蓄口座から簡単に引き出せる状態だと、「今月ちょっと足りないから」と引き出してしまう。対策は前述の通り「別銀行の口座にする」「キャッシュカードを持ち歩かない」。物理的に引き出しにくい状態を作る。

落とし穴2は「先取り金額が大きすぎて生活が破綻する」こと。無理な金額を先取りすると、月末に食費が足りなくなり、消費者金融やクレジットカードのキャッシングに手を出すことになる。本末転倒だ。対策は「無理のない金額から始める」「段階的に増やす」。生活に支障が出たら、迷わず金額を下げる。

落とし穴3は「貯蓄が目的化する」こと。「お金を貯めること」が人生の目的になり、「お金を使うこと」が罪悪感になる。歯医者に行くべきなのに「お金がもったいない」と先延ばしにする。必要な出費まで削るのは節約ではなく「ケチ」だ。貯蓄は手段であり目的ではない。「何のために貯めるか」を常に意識する。

先取り貯蓄を「NISAの積立」に応用する

先取り貯蓄の仕組みは、NISAの積立にそのまま応用できる。証券会社の「自動積立」機能を使えば、毎月決まった日に決まった金額で投資信託を自動購入できる。設定は一度だけ。以降は毎月自動で購入される。意志力ゼロで資産形成が進む。

「先取り貯蓄(銀行)」と「先取り投資(NISA)」を併用すれば、安全資産(銀行預金)とリスク資産(投資信託)のバランスが自動的に取れる。例えば月20000円のうち、15000円を銀行の先取り貯蓄、5000円をNISAの積立に振り分ける。銀行に生活防衛資金を貯めつつ、NISAで長期の資産形成を進める。この二本柱が、氷河期世代のマネー戦略の基本形だ。

まとめ——「仕組み」が意志力を超える

貯蓄できない理由は「意志が弱いから」ではない。「仕組みがないから」だ。意志力は有限であり、疲弊すると機能しなくなる。仕組みは無限に動き続ける。自動振替を一度設定すれば、給料日の翌日に、毎月、何年でも、自動で貯蓄が進む。

仕組みを作るのに必要な時間は30分。銀行のインターネットバンキングにログインし、自動振替を設定する。30分の作業で、数年後に50万円、100万円、200万円が貯まる仕組みが完成する。

30分の作業。これが「意志力ゼロで貯まる」の正体だ。意志力に頼らない。仕組みに頼る。仕組みは裏切らない。裏切るのは意志力だ。だから仕組みを作る。作った仕組みに身を任せて、あとは日常を過ごす。日常を過ごしているうちに、気づいたら貯蓄が積み上がっている。これが先取り貯蓄の醍醐味だ。

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