就職氷河期世代の派遣社員の「厚生年金vs国民年金」問題——将来の年金額に数万円の差がつく仕組みを解説

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就職氷河期世代の派遣社員の「厚生年金vs国民年金」問題——将来の年金額に数万円の差がつく仕組みを解説

はじめに——年金は「入っている制度」で将来が変わる

氷河期世代の中には、人生の中で「厚生年金」と「国民年金」を行ったり来たりしている人が多い。正社員のときは厚生年金。派遣の契約が切れて無職のときは国民年金。次の派遣先が決まれば厚生年金。また契約終了で国民年金。この繰り返し。

この「行ったり来たり」が、将来の年金額に大きな影響を及ぼす。厚生年金と国民年金では、将来受け取れる年金額に月数万円の差がつく。月数万円は、年間で数十万円。老後の30年間で数百万円〜1000万円以上の差になりうる。

このガイドでは、厚生年金と国民年金の違い、将来の年金額への影響、そして氷河期世代が年金額を最大化するためにできることを解説する。

国民年金と厚生年金の基本的な違い

国民年金(基礎年金)は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「1階部分」の年金だ。自営業者、フリーランス、無職の人が第1号被保険者として加入する。保険料は月額16980円(2024年度)。定額。所得に関係なく一律。40年間満額納付した場合の老齢基礎年金は月約68000円(2024年度)。

厚生年金は、会社員や公務員が加入する「2階部分」の年金だ。国民年金に上乗せされる。保険料は給与の約18.3%を労使折半(自己負担は約9.15%)。所得に比例するので、給与が高いほど保険料も高いが、将来の年金額も高くなる。

厚生年金に加入している期間は、自動的に国民年金(基礎年金)にも加入している扱いになる。つまり厚生年金加入者は「1階(基礎年金)+2階(厚生年金)」の2階建ての年金を受け取れる。国民年金のみの加入者は「1階(基礎年金)」だけ。

この差が、将来の年金額に直結する。厚生年金に20年加入した人と、国民年金のみで40年加入した人では、月の年金額に5〜8万円の差がつくことがある。

年金額のシミュレーション——厚生年金の加入期間で差がつく

具体的な年金額をシミュレーションしてみよう。

ケース1。厚生年金に30年加入。平均月収25万円。老齢基礎年金:月約68000円(40年満額の場合。実際は未納期間があると減額)。老齢厚生年金:月約41000円(25万×5.481÷1000×360ヶ月)。合計:月約109000円。

ケース2。厚生年金に15年加入+国民年金のみ25年。平均月収25万円。老齢基礎年金:月約68000円(40年満額の場合)。老齢厚生年金:月約20500円(25万×5.481÷1000×180ヶ月)。合計:月約88500円。

ケース3。厚生年金に5年加入+国民年金のみ35年(うち免除期間10年含む)。平均月収25万円。老齢基礎年金:月約55000円(免除期間10年分は半額反映で減額)。老齢厚生年金:月約6800円(25万×5.481÷1000×60ヶ月)。合計:月約61800円。

ケース1(厚生年金30年)とケース3(厚生年金5年)の差は、月約47200円。年間約566000円。30年間で約1700万円。厚生年金の加入期間の差が、老後の生活水準を決定的に分ける。

氷河期世代の「年金の穴」

氷河期世代は、キャリアが不安定なため、厚生年金の加入期間に「穴」が空きやすい。

穴のパターン1は「非正規雇用の期間」。2016年10月以前は、パート・アルバイトの厚生年金加入条件が「週30時間以上勤務」だった。週20〜30時間のパートは厚生年金に加入できず、国民年金のみ。2016年以降は「週20時間以上+月額88000円以上+従業員101人以上の企業」に拡大されたが、それでも小規模企業のパートは対象外の場合がある。

穴のパターン2は「失業・無職の期間」。派遣の契約終了から次の仕事が見つかるまでの空白期間。この間は国民年金に切り替わる。空白が数ヶ月ならまだしも、1年以上続くこともある。

穴のパターン3は「国民年金の未納・免除期間」。失業中に国民年金保険料を払えず、免除を受けた期間。免除期間は基礎年金には半額反映されるが、厚生年金の上乗せ分はゼロ。

これらの「穴」が積み重なると、将来の年金額が大幅に減る。ケース3のように、厚生年金の加入期間が5年しかなければ、厚生年金の上乗せ分は月6800円程度。ほぼ基礎年金のみの水準だ。

年金額を「今から」増やすための戦略

過去の「穴」は埋められない。だが「今から」できることはある。

戦略1は「厚生年金に加入できる仕事を選ぶ」こと。派遣社員でも、週20時間以上・月額88000円以上の勤務であれば、厚生年金に加入できる(従業員数の要件あり。2024年10月から51人以上の企業に拡大)。仕事を選ぶ際に「厚生年金に加入できるか」を基準の一つにする。同じ時給でも、厚生年金に入れる仕事と入れない仕事では、将来の年金額が大きく異なる。

戦略2は「国民年金の免除期間を追納する」こと。過去に免除を受けた期間の保険料を、後から納める(追納する)ことで、基礎年金額を満額に近づけられる。追納は免除を受けた月から10年以内。追納にはまとまった金額が必要だが、少しずつでも追納すれば年金額が増える。

戦略3は「任意加入制度を使う」こと。60歳時点で国民年金の加入期間が40年(480ヶ月)に満たない場合、60歳〜65歳の間に「任意加入」して不足分を補うことができる。満額に近づけることで、月の基礎年金額が増える。

戦略4は「年金の繰下げ受給を検討する」こと。65歳から受給を開始せず、70歳まで繰り下げると年金額が42%増。75歳まで繰り下げると84%増。受給開始を遅らせることで、少ない年金額を増やすことができる。ただし、繰下げ期間中は年金が入らないので、その間の生活費を別途確保する必要がある。

戦略5は「iDeCoで老後資金を自分で作る」こと。年金制度だけに頼らず、iDeCo(個人型確定拠出年金)で自分の老後資金を積み立てる。掛金は全額所得控除の対象で、運用益は非課税。60歳以降に受け取れる。公的年金の不足分を、自分で補う仕組みだ。

「ねんきんネット」で自分の年金を確認する

自分の年金の現状を把握するには、「ねんきんネット」(日本年金機構のウェブサイト)にアクセスする。マイナンバーカードまたは基礎年金番号でログインすれば、以下の情報が確認できる。

加入記録。国民年金と厚生年金の加入期間が月単位で表示される。空白期間(未加入・未納期間)があれば、一目でわかる。年金見込額。現在の加入状況が60歳まで続いた場合の、老齢基礎年金と老齢厚生年金の見込額が表示される。繰下げ受給した場合の見込額も確認できる。

この情報を定期的にチェックし、「このままだと将来の年金はいくらか」を把握しておく。把握していれば、対策が立てられる。把握していなければ、「65歳になって初めて年金額を知ってショックを受ける」ことになる。

厚生年金の保険料は「半分を会社が負担している」

厚生年金の保険料は約18.3%だが、自己負担は約9.15%。残りの約9.15%は会社(派遣元)が負担している。つまり、厚生年金に加入している限り、会社が保険料の半分を「タダで」払ってくれている。

国民年金は全額自己負担(月16980円)。厚生年金は半額会社負担。同じ金額を自己負担しても、厚生年金のほうが将来の年金額が多い。会社負担分が「ボーナス」のように上乗せされるからだ。

この「会社負担」のメリットを享受するためにも、厚生年金に加入できる仕事を選ぶことが重要だ。「厚生年金に入れるかどうか」は、時給と同じくらい重要な求人の判断基準だ。

まとめ——年金は「今の行動」で変えられる

年金は「国が勝手に決めるもの」ではなく、「自分の加入履歴で決まるもの」だ。厚生年金に加入する期間を1年増やすだけで、将来の年金額が月数千円増える。月数千円は、30年間で数百万円の差になる。

氷河期世代は過去に「穴」がある。穴は埋められないが、「今から穴を増やさない」ことはできる。厚生年金に加入できる仕事を選ぶ。国民年金の免除を受けたら追納する。iDeCoで自分の年金を作る。これらの行動が、将来の自分を救う。

今日、ねんきんネットにログインして、自分の年金の現状を確認してみてほしい。確認した数字が予想より少なかったら——焦らなくていい。焦る代わりに、行動する。行動すれば、数字は変えられる。変えられるうちに変える。それが「今の行動で将来を変える」ということだ。

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