はじめに——「時間がない」は本当か
「勉強したいけど時間がない」。公務員試験を目指す派遣社員の最大の悩みだ。朝7時に起きて、8時間働いて、帰宅して、夕食を作って食べて、風呂に入って、もう22時。勉強する時間なんてない——ように見える。
だが「時間がない」は「時間の使い方を最適化していない」の言い換えだ。1日24時間。睡眠7.5時間。仕事(通勤含む)10.5時間。残り6時間。この6時間の中に「家事」「食事」「入浴」「自由時間」「勉強」を入れる。6時間すべてが「不可侵の予定」で埋まっているか?検証してみよう。
1日の時間を「見える化」する
まず、現在の1日の時間の使い方を「見える化」する。紙に1日24時間のタイムラインを書き、「何に何時間使っているか」を記録する。
典型的な平日の例。6:30起床。6:30〜7:00身支度・朝食(30分)。7:00〜7:40通勤(40分)。7:40〜8:00出社前の待機(20分)。8:00〜17:00仕事(9時間。休憩1時間含む)。17:00〜17:40帰宅の通勤(40分)。17:40〜18:10着替え・夕食準備(30分)。18:10〜18:30夕食(20分)。18:30〜20:30スマートフォン・テレビ(2時間)。20:30〜21:00入浴(30分)。21:00〜22:30スマートフォン・テレビ(1.5時間)。22:30就寝。
この例で「スマートフォン・テレビ」に使っている時間は2時間+1.5時間=3.5時間。3.5時間。ここから2時間を「勉強」に置き換えれば、まだ1.5時間の自由時間が残る。「時間がない」のではなく「スマートフォンとテレビに時間を使っている」のだ。
「勉強時間」を1日のどこに入れるか——3つのパターン
パターン1は「帰宅後に2時間」。18:30〜20:30の「スマートフォン・テレビ」の時間を「勉強」に置き換える。帰宅→着替え→夕食→勉強2時間→入浴→自由時間1時間→就寝。
メリット。まとまった時間が確保できる。集中しやすい。デメリット。仕事の疲労が残っている時間帯。集中力が低い場合がある。「帰宅後にもう一仕事」の精神的ハードルが高い。
パターン2は「早朝に1時間+帰宅後に1時間」。5:30起床→5:30〜6:30勉強1時間→6:30〜7:00身支度・朝食→通勤→仕事→帰宅→夕食→18:30〜19:30勉強1時間→自由時間→入浴→22:00就寝。
メリット。朝は頭がクリアで集中力が高い。「朝1時間+夜1時間」に分割するので、1回あたりの負担が軽い。デメリット。5:30起床は辛い。睡眠時間が7.5時間を切る可能性がある。睡眠を削ると翌日のパフォーマンスが落ちる。
パターン3は「通勤時間を活用+帰宅後に1時間」。通勤の電車内で40分×2回=80分を勉強に充てる。スマートフォンで問題集アプリ(無料のものがある)を解く。テキストの要点をスマートフォンにメモして読み返す。YouTubeの講義動画を聴く(イヤホンで)。帰宅後に1時間の勉強を追加すれば、合計2時間20分。
メリット。「わざわざ勉強の時間を作る」必要がない。通勤時間を「死に時間」から「勉強時間」に変換するだけ。デメリット。満員電車ではテキストを開けない。スマートフォンでの勉強は画面が小さくて不便。
おすすめはパターン3の「通勤時間活用+帰宅後1時間」。通勤時間は「すでに存在する時間」なので、新たに時間を捻出する必要がない。帰宅後の1時間は、スマートフォンを遠ざけてテキストを開くだけ。合計2時間以上の勉強が、最小限の生活変更で実現する。
「スマートフォンの時間」を「勉強の時間」に変換する
平日の自由時間のうち、最大の「時間泥棒」はスマートフォンだ。SNS、動画、ニュース。これらを「だらだら見る」時間を削減すれば、勉強時間が自動的に生まれる。
変換のコツ1は「勉強中はスマートフォンを別の部屋に置く」。物理的に手の届かない場所に置く。手元にあると、つい触ってしまう。なければ触れない。触れなければ勉強に集中できる。
コツ2は「スクリーンタイムの制限を設定する」。SNSの利用時間を1日30分に制限する。制限を超えるとロックがかかる。ロックを解除するには「あと15分だけ」ボタンを押す必要があり、「自分は今、勉強時間を浪費しようとしている」と自覚する瞬間が生まれる。
コツ3は「スマートフォンを勉強ツールに変える」。スマートフォンをだらだら見る代わりに、「公務員試験の問題集アプリ」を開く。無料の公務員試験アプリがいくつかある。通勤中、昼休み、寝る前の10分。スキマ時間に数問解くだけで、1日20〜30問の演習量になる。1ヶ月で600〜900問。これだけで筆記試験の基礎力が身につく。
「休日」の勉強時間を最大化する
平日の勉強時間が1〜2時間なら、休日に「まとまった勉強時間」を確保して補う。休日に3〜5時間の勉強ができれば、週の合計は平日10時間+休日8時間=18時間。月に72時間。3ヶ月で216時間。合格に必要な200時間を超える。
休日の勉強スケジュール例。8:00起床。8:30〜9:00朝食。9:00〜11:00勉強(2時間)。11:00〜11:30休憩(散歩)。11:30〜12:30勉強(1時間)。12:30〜13:30昼食・休憩。13:30〜15:00勉強(1.5時間)。15:00〜自由時間。合計4.5時間の勉強。午後3時には終了し、残りの時間は自由。「休日が勉強だけで終わった」にはならない。
勉強場所。自宅でもいいが、集中できない場合は「図書館の自習室」を使う。図書館なら冷暖房完備、静か、無料。「勉強する場所に行く」行為自体が、「勉強モード」へのスイッチになる。
「勉強の習慣化」——意志力に頼らない仕組み
勉強を「毎日続ける」ことが最大の課題だ。意志力に頼ると、疲れた日や気分が乗らない日にサボってしまう。意志力ではなく「仕組み」で習慣化する。
仕組み1は「トリガー(きっかけ)を設定する」。「帰宅して着替えたら、テキストを開く」。着替えがトリガー。「着替えたら勉強」を繰り返すうちに、着替えた瞬間に「テキストを開く」行動が自動化される。考えなくても体が動くようになる。
仕組み2は「最低ライン」を設定する。「今日は30分だけ」。30分なら「面倒だな」と思っても始められる。始めれば、30分が40分に、1時間に延びることがある。延びなくても30分でOK。「ゼロよりはまし」。30分×30日=15時間。15時間はゼロの∞倍だ。
仕組み3は「勉強記録をつける」。カレンダーに「勉強した日」に○をつける。○が連続すると「連続記録を途切れさせたくない」心理が働き、「今日もやろう」というモチベーションになる。○が30個並んだカレンダーを見ると、「1ヶ月続けた自分」を褒められる。
仕組み4は「テキストを開きっぱなしにする」。テキストを本棚にしまわない。机の上に開いたまま置いておく。目に入れば「やらなきゃ」と思い出す。しまうと忘れる。「視界に入れる」が習慣化の第一歩。
「疲れて勉強できない日」の対処法
仕事で残業した。体調が悪い。精神的に参っている。こうした日は「勉強できない」。これは仕方がない。無理に勉強しても頭に入らない。入らなければ時間の無駄だ。
対処法1は「勉強しない日を許容する」。週に1〜2日は「勉強しない日」があっても構わない。「毎日絶対にやらなければならない」と思い込むと、できなかった日に「ダメな自分」と自責し、モチベーションが落ちる。「今日は休み。明日やる」で十分。
対処法2は「勉強の最低ラインを下げる」。通常は2時間。疲れた日は「10分だけ」。テキストを開いて、1問だけ解く。解けなくてもいい。解説を読むだけでいい。「テキストを開いた」事実が、「勉強した」としてカウントされる。ゼロよりまし。
対処法3は「聴く勉強」にする。テキストを読む気力がなければ、YouTubeの公務員試験講義動画を「聴く」。ソファに横になりながら、イヤホンで聴く。目を閉じていてもいい。耳から情報が入る。完全な「ながら勉強」だが、ゼロよりまし。
「3ヶ月の勉強計画」具体例
試験まで3ヶ月の場合。週の勉強時間:平日10時間(2時間×5日)+休日8時間(4時間×2日)=18時間。月72時間。3ヶ月216時間。
月1(数的推理・判断推理に集中)。平日:問題集を1日4〜5問ずつ解く。休日:問題集をまとめて解く+YouTube講義で苦手分野を補強。月末までに問題集を1周完了。
月2(文章理解+時事+数的推理2周目)。平日:文章理解を毎日1題+数的推理の2周目を1日3〜4問。休日:『速攻の時事』を通読+数的推理の復習。月末までに時事問題と文章理解の基礎を固める。
月3(過去問演習+総復習)。平日:過去問を1日1セットずつ解く(タイマーで本番と同じ時間配分)。休日:過去問の復習+間違えた問題の総復習+面接対策の開始。試験1週間前は復習に集中。新しい問題には手を出さない。
まとめ——「1日2時間」で人生が変わる
1日2時間。3ヶ月で216時間。この時間を「スマートフォンとテレビ」に使うか「公務員試験の勉強」に使うか。どちらに使っても1日は24時間。同じ24時間の「使い方」だけが違う。
スマートフォンに使えば、3ヶ月後も同じ生活。勉強に使えば、3ヶ月後に公務員試験を受験できる。受験して合格すれば、人生が4000万円分変わる。4000万円の可能性が、1日2時間の「時間の使い方」にかかっている。
今夜、帰宅したら、テレビをつけずにテキストを開く。スマートフォンを別の部屋に置く。1時間だけ勉強する。1時間で終わりにして、残りの時間は発泡酒を飲んでいい。この「テレビの代わりにテキストを開く」が、4000万円への第一歩だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

