はじめに——帰宅したら全部「ピカッ」と光っている
帰宅する。玄関の電気をつける。リビングの電気をつける。テレビをつける。パソコンをつける。スマートフォンの充電器を挿す。電気ケトルでお湯を沸かす。電子レンジで夕食を温める。6畳の部屋のあちこちで家電が「ピカッ」と光り、「ブーン」と唸り、「ジー」と稼働する。当たり前の夜の風景。
だがこの「当たり前」には電気代がかかっている。帰宅後5時間(18時〜23時)の電力消費。照明100W×5時間=0.5kWh。テレビ150W×3時間=0.45kWh。電気ケトル1300W×0.1時間=0.13kWh。電子レンジ1000W×0.1時間=0.1kWh。スマートフォン充電5W×5時間=0.025kWh。合計約1.2kWh。電気代にして約37円/日。月30日で1110円。年間13320円。
「たった月1110円」と思うかもしれない。だがこの1110円を「週に1回、電気を使わない夜にする」ことで月270円削減し、さらに「電気なしでも楽しい夜の過ごし方」を発見することで、日常の電力消費意識が変わり、月全体で1000円以上の削減が見込める。
「電気を使わない夜」のルール
ルール1。帰宅後、照明・テレビ・パソコンをつけない。ルール2。スマートフォンは使わない(緊急連絡用に電源はオン。だが画面は見ない)。ルール3。使っていい電気は「冷蔵庫」のみ(食品の保存は止められない)。ルール4。調理は「火」を使う(ガスコンロはOK。電子レンジはNG)。ルール5。照明の代わりに「キャンドル」または「LEDランタン」を使う(100均で110円)。
「電気を使わない夜」を週に1回。月に4回。水曜日の夜を「ノー電気ナイト」に設定する。水曜日は週の真ん中であり、「デジタルデトックス」の効果で木曜〜金曜の後半戦のエネルギーが回復する。
「電気なしの夜」の過ごし方——5時間の使い方
18時。帰宅。電気をつけない。窓を開ける。夕方の自然光がまだ残っている(夏なら19時頃まで明るい)。着替える。
18時30分。夕食の準備。ガスコンロで料理する。キャンドルの灯りで調理する(暗い場合は100均のLEDランタンを台所に置く)。もやし炒めを作る。キャンドルの灯りで食べるもやし炒めは、いつものもやし炒めとは違う味がする。気のせいかもしれない。だが「雰囲気」が違う。雰囲気が変われば、味も変わる(主観)。
19時。入浴。シャワーを浴びる(給湯器の電気は使うが、浴室の照明はLEDランタンで代用)。暗い浴室のシャワーは、最初は怖いが慣れると「リラクゼーション効果」がある。暗い空間+温かいお湯=副交感神経が活性化し、心身がリラックスする。
19時30分。読書。キャンドルの灯りで本を読む。電子書籍ではなく紙の本。キャンドルの灯りは「暖色系の柔らかい光」であり、ブルーライトがゼロ。目に優しい。1時間の読書が、驚くほど集中できる。テレビやスマートフォンの「通知」がないから。通知がなければ集中が途切れない。途切れなければ、本の世界に没入できる。
20時30分。ストレッチ。暗い部屋でストレッチをする。テレビの音がない静かな空間。自分の呼吸の音だけが聞こえる。ストレッチの一つひとつの動きに集中できる。15分のストレッチで、体の凝りが解消される。
21時。日記を書く。キャンドルの灯りでノートに日記を書く。「今日あったこと」「感じたこと」「明日やりたいこと」。スマートフォンに打ち込むのではなく、紙に手書きする。手書きの行為自体が「瞑想」に近い効果を持つ。頭の中の「ぐるぐる」が、紙の上に固定される。固定されると、頭が軽くなる。
21時30分。キャンドルを消す。布団に入る。通常の就寝時刻は22時30分。1時間早く布団に入る。暗い部屋で目を閉じる。スマートフォンのブルーライトを浴びていないので、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が正常。入眠が早い。深い睡眠。翌朝、いつもより頭がスッキリしている。
「電気なしの夜」の効果——電気代以外のメリット
メリット1は「睡眠の質が向上する」。ブルーライト(テレビ、スマートフォン、パソコンの画面)は睡眠ホルモンの分泌を抑制する。「電気なしの夜」はブルーライトがゼロ。メラトニンの分泌が正常化し、入眠が早くなり、睡眠が深くなる。翌日のパフォーマンスが上がる。
メリット2は「デジタルデトックスになる」。スマートフォンを5時間見ない。SNSのタイムラインを5時間スクロールしない。この「5時間のデジタル断食」が、脳をリフレッシュする。情報過多で疲弊した脳が回復する。回復した脳は、翌日の仕事でのパフォーマンスが上がる。
メリット3は「『静けさ』の価値に気づく」。テレビの音がない。スマートフォンの通知音がない。パソコンのファンの音がない。「静けさ」の中に身を置くことで、「普段どれだけ騒音に囲まれているか」に気づく。静けさは「贅沢」であり「回復」だ。
メリット4は「電気に感謝する」。翌日、照明のスイッチを入れたとき、「明るい」ことに感謝を感じる。テレビをつけたとき、「映像が映る」ことに感動する。当たり前のありがたさ。電気がある生活の「ありがたさ」を、電気がない夜に知る。
「月1000円削減」の内訳
直接的な削減。「電気なしの夜」月4回×1日の電気代37円=月148円。少ない。だがこれは「直接的な削減」にすぎない。
間接的な削減。「電気なしの夜」の経験が、日常の電力消費意識を変える。「テレビをつけっぱなしにしなくてもいい」「帰宅後すぐに照明をつけなくてもいい(夏なら自然光で十分)」「スマートフォンの充電は寝る前の1時間で十分(つけっぱなし不要)」。これらの「意識の変化」が、日常の電気代を月500〜1000円下げる。
合計で月650〜1150円の削減。目標の1000円は達成圏内。年間7800〜13800円。NISAに月1000円追加で20年運用すれば約41万円。「週に1回、電気を消す」だけで20年後に41万円。
「キャンドルの灯り」を「趣味」にする
キャンドルは100均で110円。ティーライトキャンドル(10個入り110円。1個11円)。1回の「電気なしの夜」で1〜2個使用。月4回で4〜8個。月44〜88円。「趣味」としては最安レベル。
キャンドルの灯りは「映え」る。6畳の部屋がキャンドルの灯りで「バーのような雰囲気」に変わる。もやし炒めがバーのつまみに見える(見えない)。発泡酒がワインに見える(見えない)。だが「雰囲気が変わる」のは事実。雰囲気が変われば、気分が変わる。気分が変われば、同じ6畳の部屋が「少しだけ豊かな空間」に感じられる。
注意。キャンドルの取り扱いは火災に注意。安定した場所に置く。可燃物の近くに置かない。就寝前に必ず消す。「電気を使わない代わりに火事になった」では本末転倒。安全第一。
まとめ——「暗い夜」が「豊かな夜」に変わる
「電気を使わない夜」は「不便な夜」ではなく「豊かな夜」だ。静けさ、キャンドルの灯り、紙の本、手書きの日記、早い入眠、深い睡眠。これらの「豊かさ」は、電気がある夜にはない。電気がないからこそ見える景色がある。聞こえる音がある。感じる静けさがある。
次の水曜日、帰宅したら電気をつけないでみてほしい。キャンドルに火をつける。もやし炒めを作って食べる。本を読む。ストレッチする。日記を書く。キャンドルを消す。布団に入る。翌朝、「昨夜は良く眠れたな」と感じたら、その夜が「豊かな夜」だった証拠だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

