はじめに——「持っているもの」で人生がわかる
6畳のワンルーム。この部屋にあるものが「自分のすべて」だ。実家に置いてあるものを除けば、この6畳の空間に「自分の持ち物のすべて」が収まっている。広さは約9.9平方メートル。9.9平方メートルに「45年間の人生で蓄積したもの」が詰まっている——いや、「蓄積しなかったもの」のほうが多い。正社員の同級生の部屋にはソファがある。大型テレビがある。本棚いっぱいの本がある。子どものおもちゃがある。自分の部屋には——もやし炒めのフライパンがある。
「持たない暮らし」は「ミニマリズム」と呼ばれ、近年は「おしゃれなライフスタイル」として注目されている。だが氷河期世代の「持たない暮らし」は「おしゃれ」ではない。「買えないから持っていない」だけだ。「選んで持たない」のと「買えなくて持てない」のは違う。だが結果として「持ち物が少ない部屋」は同じだ。同じなら「持たない暮らしのプロ」として胸を張ろう。23年間の「強制ミニマリズム」で身についた「少ない持ち物で快適に暮らす技術」を公開する。
第1章 6畳ワンルームの全持ち物——カテゴリ別完全リスト
寝具。敷き布団1枚(ニトリ。5000円で購入。5年目)。掛け布団1枚(同。4000円。3年目)。枕1個(100均。550円)。シーツ2枚(ニトリ。各1000円。洗い替え用)。枕カバー3枚(100均。各110円)。毛布1枚(ニトリ。2000円。冬用)。計8点。推定総額:約1万4000円。
衣類。仕事用チノパン2本。仕事用ポロシャツ3枚。Tシャツ3枚。ジーンズ1本。パーカー1枚。ダウンジャケット1枚。下着3枚。靴下5足。ベルト1本。喪服一式(ジャケット+パンツ+白シャツ+黒ネクタイ+黒靴下+数珠)。部屋着(着る毛布1枚+スウェットパンツ1枚)。靴2足(通勤用スニーカー+サンダル)。計約30点。推定総額:約4万円。
キッチン用品。フライパン1個(ニトリ。1500円)。片手鍋1個(ニトリ。1000円)。包丁1本(ホームセンター。1500円)。まな板1枚(100均)。菜箸1膳(100均)。お玉1個(100均)。ターナー1個(100均)。計量スプーン(100均)。茶碗2個(100均)。皿3枚(100均。大中小)。マグカップ2個(100均)。箸2膳(100均)。スプーン2本(100均)。フォーク1本(100均)。コップ2個(100均)。ボウル1個(100均)。ザル1個(100均)。タッパー3個(100均)。ラップ(100均)。アルミホイル(100均)。ジップ袋(100均)。スポンジ(100均)。食器用洗剤(100均)。ふきん3枚(100均)。計約35点。推定総額:約6000円。
家電。冷蔵庫1台(中古。リサイクルショップで1万5000円)。電子レンジ1台(中古。5000円)。炊飯器1台(中古。3000円)。電気ケトル1台(ニトリ。2000円)。洗濯機1台(中古。1万円)。扇風機1台(ニトリ。3000円)。ドライヤー1台(100均ではないが安いもの。1500円)。スマートフォン1台(中古。1万5000円)。充電ケーブル2本(100均。各110円)。計9点。推定総額:約5万5000円。
掃除用品。クイックルワイパー(100均)。重曹(100均)。クエン酸(100均)。メラミンスポンジ(100均)。トイレブラシ(100均)。ゴミ箱2個(100均)。ゴミ袋(100均)。雑巾3枚(100均)。計約10点。推定総額:約1200円。
浴室・洗面用品。歯ブラシ(100均)。歯磨き粉(100均)。石鹸(100均)。シャンプー(100均)。タオル5枚(100均。各110円)。バスマット(100均)。洗濯ネット2枚(100均)。洗濯用洗剤。柔軟剤。ハンガー10本(100均)。洗濯ばさみ(100均)。計約15点。推定総額:約2500円。
収納・家具。突っ張り棒3本(100均)。カラーボックス1個(ニトリ。1000円)。折りたたみテーブル1個(ニトリ。2000円)。座椅子1個(ニトリ。2000円)。カーテン1セット(ニトリ。1500円)。時計1個(100均)。計6点。推定総額:約7000円。
その他。財布1個(3年前に1000円で購入)。リュック1個(ワークマン。2000円)。折りたたみ傘1本(500円)。水筒1本(100均。550円)。ノート3冊(100均)。ボールペン3本(100均)。印鑑1本(100均)。通帳(銀行)。保険証。年金手帳。緊急連絡先カード。エンディングノート(100均のノート)。本15冊(図書館から借りた分は除く。中古で平均200円。計3000円)。発泡酒(常時冷蔵庫に3本。500円分)。もやし(冷蔵庫に1袋。30円)。計約20点。推定総額:約8500円。
全持ち物の合計点数:約133点。推定総額:約13万4200円。「人生の全持ち物が133点で13万4000円」。正社員の同級生の持ち物(推定500点以上。推定総額200万円以上)と比べると——比べる意味がない。自分には自分の持ち物がある。133点の1つ1つが「自分の人生を支えている」。13万4000円の中に「23年間の生活の知恵」が凝縮されている。
第2章 「持っていないもの」のリスト——持たない理由と代替手段
テレビ。持っていない理由:NHK受信料(月1100〜2200円)の節約。YouTube とradikoで代替。年間約1万3000〜2万6000円の節約。ソファ。持っていない理由:6畳にソファを置くと「部屋が狭くなる」。座椅子で代替。ソファ3〜5万円の節約。ベッド。持っていない理由:布団のほうが「畳めるので日中のスペースが確保できる」。ベッド2〜5万円の節約。自動車。持っていない理由:駐車場代(月1〜3万円)+保険+税金+ガソリン代=年間30〜60万円。公共交通機関と徒歩で代替。パソコン。持っていない理由:スマートフォンで代替。NISAの管理もネットバンキングもスマートフォンで完結。パソコン5〜10万円の節約。
「持っていないもの」の節約効果。テレビ年間2万円+ソファ5万円(一括)+ベッド3万円(一括)+自動車年間40万円+パソコン8万円(一括)=初年度56万円+翌年以降年間42万円。「持たないことで年間42万円を節約している」。42万円はNISAの年間積立額(月1万円×12ヶ月=12万円)の3.5倍。「持たないことがNISAの原資を生んでいる」。
第3章 「フライパン1個」の哲学——最も使い込んだ持ち物の物語
133点の持ち物の中で「最も使い込んだもの」はフライパンだ。現在のフライパンは3代目。1代目は100均のフライパン(28歳。もやし炒めデビュー。2ヶ月でテフロンが剥がれた)。2代目はニトリのフライパン(29歳。1500円。3年使った)。3代目もニトリのフライパン(32歳。1500円。現在13年目。テフロンはとっくに剥がれ、鉄フライパンのように「油を馴染ませて使う」スタイルに移行)。
3代目のフライパンで作ったもやし炒めは推定2000回以上。1回10分として2万分=約333時間。「333時間をこのフライパンと過ごした」。人間関係で言えば「月に1回2時間会う友人と14年間の付き合い」に匹敵する時間。フライパンは「最も長い付き合いの相棒」だ。友達がゼロでも、フライパンはいる。フライパンは裏切らない。もやし炒めを焦がしても、それはフライパンのせいではなく自分のせいだ。
第4章 「持ち物の総資産額13万4000円」が意味するもの
全持ち物の推定総額が13万4000円。この金額は「1ヶ月の手取り以下」だ。「全持ち物を今日すべて失っても、来月の給料で全部買い直せる」。これは「失うものがない」ことの証明であり、ある意味では「最強の状態」だ。「持っているもの」への執着がない。家が燃えても「フライパンだけ持って逃げればいい」。あとは100均とニトリで買い直せる。
正社員の同級生は「失うもの」が多い。マイホーム(3000万円のローン残債)。自動車(200万円)。大型テレビ(15万円)。ソファ(10万円)。「持っているものを守る」ためにローンを払い、保険をかけ、セキュリティシステムを入れる。「持っていること」にコストがかかる。「持たないこと」にはコストがかからない。「持たないことの自由」。これは氷河期世代の「不本意なミニマリズム」がもたらした「副産物的な自由」だ。
第5章 「持ち物を増やさない」ルール——133点を維持する技術
ルール1は「1 in 1 out」。何か1つ買ったら、何か1つ捨てる。靴下を1足買ったら、穴の開いた靴下を1足捨てる。マグカップを1個買ったら、古いマグカップを1個捨てる。持ち物の総数を「133点前後」に維持する。
ルール2は「24時間ルール」。何か欲しいと思ったら「24時間待つ」。24時間後にまだ欲しければ買う。24時間後に忘れていれば「本当には欲しくなかった」。衝動買いの80%は「24時間ルール」で防げる。
ルール3は「コストパー使用回数」を計算する。1500円のフライパンを2000回使えば「1回あたり0.75円」。110円の歯ブラシを30日使えば「1回あたり3.7円」。「1回あたりのコストが低いもの」を選ぶ。「安くても使わないもの」は「1回あたりのコストが無限大」なので買わない。
ルール4は「収納スペースに入らないものは買わない」。6畳のワンルームには「物理的な限界」がある。カラーボックス1個と押し入れだけ。「入らないなら買わない」。収納スペースが「購買の上限」を自動的に設定してくれる。
結論——「133点で生きている」ことの誇り
133点。13万4000円。この数字が「自分の人生のスケール」だ。小さい。小さいが「十分」だ。フライパンがある。もやしがある。発泡酒がある。布団がある。NISAの口座がある。ノートとペンがある。133点の1つ1つが「生きるための道具」であり「人生のパートナー」だ。
「たくさん持っている人」が幸せとは限らない。「少なく持っている人」が不幸とは限らない。133点で幸せか。毎日もやし炒めを食べて、発泡酒を飲んで、散歩して、本を読んで、NISAの残高を確認する。これが「133点の幸せ」だ。500点あっても「使わないもの」が400点なら「実質100点」。133点のうち133点すべてが「使っているもの」。使用率100%。これこそ「持ち物の最適解」だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

