番号は、誰のものか —— 識別子を所有して課金する、という静かなビジネス

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ダウンロードしてはいけない九桁

前回、リーマン・ショックとLEI(取引主体識別子)について書きました。そのなかで、CUSIP(キューシップ)というアメリカの証券識別番号に、少しだけ触れました。民間が識別子を独占するとどうなるか、その反面教師として、です。

けれど書き終えてから、どうしても引っかかっていることがありました。CUSIPをめぐる問題は、リーマンの話の脇役にしておくには、あまりに面白すぎるのです。そこには、識別子を所有し、その使用に課金するという、ほとんど誰も意識していないビジネスのかたちが、まるごと横たわっているからです。

象徴的な一文があります。CUSIPを運営する会社の利用規約には、こう書かれているとされます。あなたは、当ウェブサイトからCUSIP番号と証券の説明をダウンロードしてはならない、と。

番号を、ダウンロードしてはならない。考えてみてください。証券を識別するための番号です。トヨタの証券コードが7203であるように、アメリカのアップル株には037833100というCUSIPが振られている。それは、いわば証券の住所です。その住所を、勝手に書き写してはいけないというのです。

この文章は、番号は誰のものか、という素朴でありながら底の深い問いをめぐる物語です。前回のLEIの話が「識別子が無いと世界は凍りつく」というものだったとすれば、今回は「識別子が有る、しかしそれが誰かの私有財産だったら何が起きるか」という話です。コインの裏表です。識別子は、無くても困る。けれど、誰かに独占されても困る。その後者を、CUSIPは半世紀にわたって体現してきました。

CUSIPとは何者か

まず基本を押さえます。CUSIPは、アメリカとカナダの証券を識別する九桁の英数字コードです。株式、社債、米国債、地方債、上場投信、投資信託と、アメリカで取引されるほとんどの金融商品に、この九桁が振られています。名前は「証券統一識別手続委員会」の頭文字からきていて、1964年、米国銀行協会の主導でこの委員会が発足しました。

背景には、切実な事情がありました。1960年代のウォール街は、取引量の急増で紙の証券を手作業で処理しきれなくなり、決済が滞って証券会社が次々に倒れる、いわゆる「書類危機」に苦しんでいました。その一因が、証券を識別する統一的な方法がなかったことでした。会社ごと、証券会社ごとにバラバラの番号を使っていたのです。日本の証券コードが生まれた動機と、まったく同じです。取引を処理するには、何を取引しているかを一意に特定しなければならない。だから番号を振る。CUSIPは、アメリカ版の証券コードとして生まれました。

ただしCUSIPには、日本の証券コードにはない特別な地位があります。国際証券識別番号、いわゆるISINの一部として組み込まれているのです。アメリカ企業のISINは、国コードのUSに続いてCUSIPの九桁、そして末尾の確認用一桁、という構造になっています。たとえばアップルのISINはUS0378331005で、真ん中の037833100がまさにCUSIPそのものです。つまり、アメリカの証券を国際的に識別しようとすると、必ずCUSIPを通ることになる。迂回路はありません。裁判資料もこの点を突いています。アメリカ企業が外国の取引所で取引される際、その金融商品を識別するISINの中核要素として、CUSIPを使わざるをえない、と。逃げ場がない。これが、CUSIPをめぐる問題のすべての出発点です。

番号を作るのと、番号を使うのは、違う

CUSIPのビジネスを理解する鍵は、課金のポイントが二つあることです。一つは、企業や政府が新しく債券などを発行するとき、新しいCUSIP番号の取得料を払うこと。一つあたり約280ドルとされます。もう一つは、CUSIP番号を使ったり配布したりする市場参加者、つまり金融機関やデータ会社が、ライセンス料を払うことです。

前者は、まだ分かります。番号を新しく発番するには管理コストがかかり、その対価を取る。日本の証券コードにも、付番にあたっての協議会の運営コストがあります。問題は後者です。すでに存在する番号を、使うだけで金を払え、というのです。

これがどれほど奇妙か、日常の例で考えてみましょう。あなたの家の住所を、友人が手帳に書き写し、宅配業者が伝票に書き、あなた自身が名刺に印刷する。そのたびに誰かに使用料を払う必要があるでしょうか。ありません。住所は、書き写すためにあります。使われることこそが、その目的です。CUSIPも本来そうあるべきもので、証券を識別するための番号なのだから、識別に使われてこそ意味がある。金融機関が取引記録にCUSIPを書き、データ会社がデータベースに載せ、投資家が売買報告で参照する。これは番号の正しい使い方です。ところが、その正しい使い方に課金される。

改革派の論者は、運営会社の姿勢をこう描写しています。もし運営会社が、ある企業がライセンスなしにCUSIP番号を使っているのを見つけると、使用中止を求めるか、ライセンスの購入を要求する。そのライセンスは年間で数万ドルから数十万ドルに達しうる。さらに、CUSIP番号を自社サイトに表示している組織には、サイト訪問者にまで制限的な利用規約を課すことを強制する、と。冒頭の「ダウンロードしてはならない」は、この文脈から出てきます。番号を、公共の識別記号ではなく、私有のコンテンツとして囲い込む。これがCUSIPビジネスの本質です。

どうやって「所有」が生まれたのか

では、そもそもなぜ、識別子を所有できることになったのでしょうか。訴訟資料が描く歴史が、これを鮮やかに説明しています。

かつてCUSIPの運営者は、金融機関と直接の契約関係を持っていました。金融機関は、CUSIP番号が全部載った物理的な本を購入していたのです。日本の証券コードブックとまったく同じ形で、番号の一覧を本にして売る。買った人だけが番号を知る。この段階では、ビジネスは自然でした。情報を本という媒体で売る、ごく普通の出版です。

ところが1980年代に転機が訪れます。ブルームバーグのようなデータ会社が登場し、株価やニュースといった付加価値データを金融機関に直接、電子的に提供するようになった。そして、そのデータのなかにCUSIP番号も含まれていたのです。これによって、金融機関はもはや本を買う必要がなくなりました。端末を見れば、株価もニュースもCUSIP番号も全部そこにある。その結果、運営者は金融機関との直接の契約関係を失いました。金融機関は、データ会社経由でCUSIP番号を手に入れ、運営者に一銭も払わずに使う。訴状は、この状況を「十年以上享受してきた独占を脅かした」と表現しています。

ここからが、この物語の核心です。直接の契約を失った運営者は、どうしたか。訴状によれば、データ会社との契約に新しい条項を挿入し、CUSIP使用の支配権を取り戻そうとしたというのです。かつては本を売って金融機関と直接つながっていた。それがデータ会社に断ち切られた。そこで、データ会社との契約に条項を入れ、その条項が金融機関にまで及ぶようにして、契約という新しい鎖で支配を取り戻す。技術が独占を壊しかけると、独占者は契約という法で独占を再構築した、というわけです。

ここに、私は深い教訓を見ます。独占は、技術で崩れかけても、法で再生する。情報が自由に流れそうになった瞬間、契約条項という堤防が築かれ、流れがせき止められた。そして、その堤防の法的な根拠として持ち出されたのが、著作権でした。

番号に、著作権はあるのか

2022年、アメリカで集団訴訟が起こされました。原告はブローカーのダイナソー・フィナンシャル・グループと、スイスの資産運用会社。被告は、S&Pグローバル、CUSIPの運営部門、米国銀行協会、そしてデータ会社のファクトセットです。この訴訟の中心には、たった一つの、しかし極めて根源的な問いがありました。番号に、著作権はあるのか。

被告側は長年、こう主張してきました。CUSIP番号には米国銀行協会が持つ著作権がある、だからその使用にライセンス料を課す権利がある、と。原告側はこれを真っ向から否定しました。CUSIPは事実的・体系的な性質のものであり、ゆえに著作権の対象にならない。したがって、その使用に継続的なライセンス料を課す権利など、そもそも存在しない、と。

この論点は、著作権法の根幹に触れます。著作権は、創作的な表現を保護するものです。小説、音楽、絵画、写真。人間の創作性が宿ったものが守られる。逆に、事実には著作権がありません。富士山の標高が3,776メートルだという事実に著作権はなく、誰が最初に測量したとしても、その数字自体は誰でも自由に使えます。事実は、発見されるものであって、創作されるものではないからです。では、CUSIP番号は創作なのか、事実なのか。原告の主張は、体系的な手続きに従って機械的に割り振られる番号は、創作ではなく事実に近い、というものでした。ある証券に規則どおり九桁を振る。そこに小説を書くような創作性はない。だから著作権では保護されず、使用料を取る法的根拠がない。

この論点には有名な先例があります。1991年のファイスト判決という、著作権法の教科書に必ず載る最高裁判決です。電話帳の内容、つまり名前と住所と電話番号の羅列に著作権があるか、が争われた事件で、最高裁は、事実の単なる集積には著作権がない、と判断しました。電話帳をアルファベット順に並べただけでは創作性がないから、他社が書き写しても著作権侵害にはならない、と。規則に従って振られた番号の集積に著作権があるのか、という問いは、電話帳に著作権があるのか、という問いと構造が同じです。原告は、反トラスト法と著作権法を根拠に被告らの行為を違法だと主張し、過去数年に支払われた十億ドル、日本円で千五百億円を超える返還と損害賠償を求めました。番号一つの著作権をめぐって、千五百億円が動く。識別子がいかに巨大なビジネスになりうるかを示す数字です。

ヨーロッパは、先に怒っていた

じつは、CUSIPとその国際版であるISINをめぐる問題は、アメリカの訴訟より前に、ヨーロッパで火を噴いていました。2009年11月、EUの執行機関である欧州委員会が、S&Pを問題視したのです。理由は、S&PがISINコードの唯一の提供者としての地位を濫用し、欧州の金融機関やデータ会社に、ISINの使用に対するライセンス料の支払いを強制している、というものでした。

欧州委員会が特に重視したのは、代替手段が存在しない、という一点でした。ISINは国際標準であり、アメリカ企業のISINにはCUSIPが埋め込まれている。使わない選択肢がない。使わざるをえない番号の使用に課金される。これは独占的地位の濫用ではないか、と。

ここに、独占禁止の重要な考え方があります。代替手段がある独占は、それほど問題になりません。高すぎれば、みんな別のものに乗り換えるからです。けれど、代替手段がない独占は深刻です。乗り換え先がないので、利用者は言い値を飲むしかない。ISINやCUSIPは、まさに後者でした。国際標準であるがゆえに代替がなく、代替がないがゆえに独占が強力に効く。

これは、識別子という財の、宿命的な性質です。識別子は、みんなが同じものを使うからこそ識別子として機能します。半分の人が違う番号を使っていたら、識別子の意味がない。だから識別子は自然に一つに収束し、そして一つであることは、そのまま独占を意味します。識別子は、その本質からして独占になりやすい。CUSIPが特別に悪辣だったという話ではなく、識別子という財の構造的な性質なのです。なお、S&Pは欧州委員会の見解には同意しないとしつつ、欧州の市場参加者向けに一部のISINを低コストで提供する代替フィードを作ることを申し出て、事態を収めました。

番号が、二千九百億円で売買された

CUSIPをめぐる物語には、もう一つ象徴的な出来事があります。2022年3月、S&PグローバルがCUSIPの運営部門を、ファクトセット社に19.25億ドル、日本円で約2,900億円で売却したのです。番号を管理する事業が、2,900億円で売買された。名義上の所有者は今も米国銀行協会で、収益の一部を得ています。

ここには静かな驚きがあります。番号を割り振り、その使用に課金する権利が、2,900億円の値札のついた資産だった、ということです。日本では、証券コードは取引所とほふりの寄り合いが公共インフラとして運営していて、誰かが所有して売買する対象ではありません。アメリカでは、識別子が2,900億円で売買される私有資産だった。この日米の対比は、両国の識別子観の根本的な違いを、金額という即物的な形で突きつけます。

なぜ、ただの番号の管理事業に、それほどの価値があるのか。答えは、逃げ場のない課金にあります。アメリカの証券を扱う限りCUSIPを使わざるをえず、使えば課金される。逃げ場のない課金は、景気が良かろうが悪かろうが、証券取引がある限り発生し続ける、極めて安定したお金の流れを生みます。この安定性こそが、2,900億円という評価額の源泉です。投資の世界では、こういう事業を料金所ビジネスと呼びます。橋の料金所のように、みんなが必ず通る場所に陣取って通行料を取る。通る人が多く、迂回路がないほど儲かる。CUSIPは、アメリカ証券市場という橋の料金所でした。そして、その料金所が2,900億円で売買されたのです。

日本の証券コードは、なぜ無料なのか

ここで日本に目を戻します。日本の証券コードは、証券コード協議会が付番しています。全国の証券取引所と証券保管振替機構によって、公共性の観点から運営されている業界の寄り合いです。そして、証券コードの7203を手帳に書き写しても、ブログに書いても、証券会社が取引画面に表示しても、誰も使用料を請求しません。なぜ日本の証券コードは無料で、アメリカのCUSIPは有料なのでしょうか。

ここからは私の解釈ですが、決定的な違いは、最初に誰が、どういう思想で作ったか、にあると思います。日本の証券コードは、取引所という公共的な主体が市場インフラとして付番したから、公共財として無料で開放される。CUSIPは、業界団体が主導し、その運営を民間企業が担ったから、商品として課金される。出自が、その後の性格をずっと規定しています。証券コードの記事で、番号の振り方に作った人の世界観が刻まれると書きましたが、同じように、番号の値付けにも作った人の世界観が刻まれる。日本は識別子を公共の道路として作り、アメリカは私営の有料橋として作った。どちらも人を通すという機能は同じですが、思想がまるで違うのです。

では、どちらが正しいのか。簡単には答えられません。有料モデルには有料モデルの言い分があります。番号の品質を途切れなく保つにはコストがかかり、無料だと誰も真剣に維持しない、品質は対価があってこそ保たれる、と。無料モデルにも言い分があります。識別子は道路や上下水道と同じ公共財で、まして代替のきかない識別子への課金は独占の濫用だ、維持コストは取引所の手数料など別の形で薄く広く負担すればいい、と。

私自身は、識別子の使用に課金するのは筋が悪いと考えています。番号を新しく作る手間に対価を求めるのは分かりますが、すでにある番号を使うだけで課金するのは、住所を書き写すたびに金を取るようなもので、識別子の本来の目的である「自由に参照されること」に反します。ただし、これは私の意見です。現にCUSIPは半世紀にわたって途切れることなく高品質に運営されてきて、その安定性がアメリカ証券市場を支えてきたことも、また事実です。公平のために、そのことも書き添えておきます。

識別子ビジネスは、あなたの周りにもある

ここまでCUSIPを扱ってきましたが、識別子を所有して課金するビジネスは、じつは身の回りにあふれています。商品のバーコードは管理団体があり、事業者は登録料や年会費を払って事業者コードを取得します。本の裏のISBNも、出版者は取得にコストを払う。インターネットの住所であるドメイン名も、年間料金を払い続けなければ使えなくなる。電話番号ですら、私たちは持っていると思っていますが、実際には通信会社から借りているだけで、契約が切れれば返却されます。識別子は、しばしば有料で、その多くがCUSIPと同じ料金所ビジネスの性質を持っています。

ただ、私たちは普段これに気づきません。課金される主体が、私たち消費者ではなく事業者だからです。バーコードの登録料を払うのはメーカー、ISBNの料金を払うのは出版社、CUSIPのライセンス料を払うのは金融機関で、末端の消費者や投資家は直接は払っていないように見える。けれど、そのコストは必ず価格に転嫁されています。商品の値段に、本の値段に、金融サービスの手数料に、識別子のコストは薄く溶け込んでいる。私たちは気づかないうちに、無数の識別子の使用料を払っているのです。空気のように意識されない識別子は、空気のように意識されないコストを、私たちに課しています。

だからこそ、LEIが無料の公共財として作られたことの意味が、あらためて際立ちます。LEIは、識別子は有料であるのが当たり前だという世界に対する、静かな反逆だったのです。リーマン・ショックという危機のなかで、世界は識別子の重要性を思い知りました。そして、その識別子を作るとき、あえて無料・中立・公共財という思想を選んだ。それは、CUSIPが半世紀かけて体現してきた「識別子は所有し、課金する商品だ」という常識への、意識的な訣別だったのです。

番号の値札を、見つめる

長い道のりでした。最後に、いちばん言いたかったことを書きます。

前回のLEIの話で、識別子は空気だ、あって当たり前で意識されない、と書きました。この文章で明らかになったのは、その続きです。その空気には、こっそり値札がついていることがある。CUSIPは、私たちが証券の住所として無意識に使っている番号でした。しかしその裏には、ダウンロードするなという利用規約があり、年間数十万ドルのライセンス料があり、2,900億円で売買される事業があり、千五百億円をめぐる訴訟があった。空気だと思っていたものが、じつは誰かの私有財産で、その使用に課金されていた。これが、CUSIPが私たちに突きつける、居心地の悪い真実です。

このシリーズを貫くのは、記号は実体から剥がれていく、というテーマでした。この文章は、そこに新しい一面を加えます。記号は、意味を持ち、実体を指し、そして所有される。記号は、中立で透明な道具ではありません。記号には、作った人の世界観が刻まれ、値札がつき、独占が生まれ、その独占をめぐって法廷闘争が起きる。記号は、権力なのです。誰が記号を所有し、誰が課金し、誰が使用を許されるか。そこには、静かだが確固たる権力構造があります。

今度、金融商品を取引するとき、バーコードのついた商品を買うとき、ドメイン名を登録するとき、思い出してください。その番号は、誰かのものかもしれません。そして、あなたはその番号を使う対価を、気づかないうちに払っているかもしれません。番号は誰のものか。この問いは、一見どうでもいい些細な問いに見えて、じつは情報は誰のものか、公共財とは何か、事実に所有権はあるか、というデジタル時代の最も重い問いに、まっすぐつながっています。CUSIPの九桁は、その問いの、最も古く、最も純粋な標本なのです。


参考資料

一次資料・訴訟資料

一、米国ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所 訴状(Dinosaur Financial Group LLC, Swiss Life Investment Management Holding AG 対 S&P Global 他、2022年)  https://competitionlawpartners.com/wp-content/uploads/2022/12/221221-SAC.pdf  この記事の背骨にあたる一次資料です。アメリカ企業が外国取引所で取引される際、ISINの中核要素としてCUSIPを使わざるをえないこと、1980年代のデータ会社の登場で運営者が金融機関との直接契約を失い、使用の支配権を取り戻すため契約に新条項を挿入した経緯、CUSIPブックを販売していた時代の記述の出典です。

二、WatersTechnology「Class-action lawsuit takes aim at Cusip, S&P, FactSet & ABA」(2023年7月)  https://www.waterstechnology.com/regulation/7936086/class-action-lawsuit-takes-aim-at-cusip-sp-factset-aba  被告が「数十年にわたり競争を排除するため共謀した」、ライセンス料の根拠が疑わしい、という訴状の核心的文言、CUSIPがISINの一部をなすという構造の出典です。

三、Reason Foundation「Class action lawsuits against CUSIP could improve government transparency」(2022年3月)  https://reason.org/commentary/class-action-lawsuits-against-cusip-could-improve-government-transparency/  2022年3月のファクトセットへの19.25億ドルでの売却、所有名義が米国銀行協会にあり収益の一部を得ていること、発行体課金と利用ライセンスの二つの収益源、無許可使用者への使用中止要求と年間数万〜数十万ドルのライセンス、「ダウンロードしてはならない」という利用規約の出典です。

四、Kehoe Law Firm「Alleged Conspiracy to Extract Artificially Inflated Payments for CUSIPs」(2022年3月)  https://kehoelawfirm.com/antitrust/cusip-numbers-cusip-licensing-fees  発行体への課金が一つあたり約280ドルという水準、データ会社にもライセンス料を課す二重構造の出典です。

五、Business of Business「How CUSIP numbers became a Wall Street battleground」(2022年3月)  https://www.businessofbusiness.com/articles/curious-story-how-cusip-numbers-became-a-wall-street-battleground/  2009年11月に欧州委員会が、ISINの唯一の提供者としての地位の濫用を問題視したこと、代替手段が存在しないという指摘、S&Pが低コストの代替フィードを提供して収拾したことの出典です。

六、Asset ID Bridge「The Hidden Costs of CUSIP Licensing」(2025年5月)  https://assetidbridge.com/the-hidden-costs-of-cusip-licensing-and-how-to-mitigate-them/  訴訟が反トラスト法違反を問うこと、CUSIPが事実的・体系的性質ゆえ著作権の対象にならずライセンス料を課す権利はないという原告の中核的主張、十億ドル超の返還・損害賠償の請求の出典です。

背景資料

七、Feist Publications, Inc., v. Rural Telephone Service Co.(1991年、米国最高裁)  事実の単なる集積には著作権がない、とした著作権法の重要判例。CUSIP訴訟の著作権論点の背景として参照しました。判決全文は米国最高裁の公開資料で入手できます。

八、ISO 6166(ISIN)および ISO 17442(LEI)規格  ISINの構造(国コード二桁+基本番号九桁+チェックデジット一桁)、アメリカのISINにCUSIPが埋め込まれる仕組み。ISO公式で参照できます。

九、CUSIP Global Services および米国銀行協会(ABA)の公式説明  CUSIPの正式名称、1964年のABA主導での発足、1960年代の書類危機との関係の確認元です。公開前に現行の公式説明をご確認ください。


事実と推測の区別

一次資料・報道で確認できる事実としては、次のものがあります。CUSIPが九桁で、アメリカ・カナダの証券を識別し、1964年に米国銀行協会主導で発足したこと。CUSIPがアメリカ企業のISINの中核要素であること。発行体課金(約280ドル)と利用ライセンスの二重課金構造。制限的な利用規約の存在。データ会社の登場による直接契約の喪失と、契約条項による支配の再構築(訴状の主張)。2009年の欧州委員会によるISINの問題視と、S&Pの代替フィード提供。2022年3月のファクトセットによる19.25億ドルでの買収。2022年の集団訴訟の存在と、著作権・反トラスト法をめぐる主張、十億ドル超の請求。

一方、次のものは筆者の解釈であり、事実ではありません。識別子はその本質からして独占になりやすい、という一般化。CUSIPを料金所ビジネスと性格づけたこと。日本の証券コードが無料でCUSIPが有料な理由を出自の思想の違いに帰した説明。識別子の使用への課金は筋が悪い、という価値判断(反対の立場にも合理性があることは本文に明記しました)。記号は権力である、というテーマ化。これらを事実として引用なさらないようお願いします。とりわけ、訴訟は係争中の可能性があり、原告の主張が正しいと決まったわけではありません。原告の言い分を、確定した事実として引用しないでください。

情報の鮮度について

CUSIP集団訴訟は執筆時点で係争中の可能性があり、その後に和解・判決・上訴などの進展があり得ます。ライセンス料の水準、運営体制、各種手数料も変わりえます。正確かつ最新の情報は、訴訟の最新状況、CUSIP Global Services の公式サイト、および関連報道でご確認ください。

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