TOB(株式公開買付け)というと、なんだか儲かりそうなイメージがありますよね。さまざまな戦術を駆使した派手な買収合戦、それに伴う買い付け価格の値上がり。
何となく儲かりそうな気がしてしまいます。
しかし、TOBのかなりの部分は株主にとって必ずしもよいものとは限りません。
TOBには大きく分けて、2種類あります。敵対的TOBと友好的TOBです。
敵対的TOBは、買収されようとしている企業がその買収に対して反対している場合のTOBを指し、友好的TOBは買収されようとしている企業がその買収に対して賛成しているTOBを言います。
常識的に考えて、どちらが買い付け価格が高くなりやすいのかは分かりますよね。
もちろん敵対的TOBです。企業が買収に反対するとき(敵対的TOB)は、被買収ターゲット企業のいわば”お友達”であり、かなりの割合の株式を保有するメインバンク、取引先、創業者一族(被買収企業が子会社の場合は親会社)などが株式買収に反対することが多いのです。
よって、”お友達”以外から多くの株式を買い集めることが必要になります。こういった人たちは、取引上のしがらみで株式を持ち合っているわけではないので、TOB買付価格の高低がTOBに応じるかどうかの基準です。自然とTOB買付価格は高くなりがちです。
一方、友好的TOBの場合には、会社側がTOBに賛同しているので、”お友達”である取引先や取引先金融機関、創業者一族(被買収企業が子会社の場合は親会社)などはTOBに応じる可能性がかなり高くなります。これらの存在は、大株主であることが多いため、買付価格を重視する一般株主に配慮する必要性が低くなりTOB買付価格が低くなる傾向にあります。
特に友好的TOBに言えますが、買い付け価格の決定過程の不明瞭さ、既存株主に対する買い付け条件の低さを見ると、TOBは投資のリスク要因でも言えます。
特に、長期投資のつもりで購入した銘柄が一時的な業績不振により株価が低迷したときにTOBが行われ上場廃止基準に達した場合に低いTOB買付価格で応募しなければならなかったり、成長企業への投資機会が失われるなど悔しい思いをする可能性があります。ですから、TOB(特に友好的TOB)が発生する可能性の高い銘柄は投資対象として注意が必要です。
具体的に、TOB(特に友好的TOB)のリスクに対し、どのような銘柄の場合気をつけるべきかというと、他企業の子会社になっている場合は要注意です。
特に、社名の一部に親会社名称が用いられている場合は、親会社の経営方針次第でのTOBも覚悟するべきです。
例えば、親会社が総合電機メーカーや自動車メーカーなど製造業関連や、総合商社である場合に、親会社の名称の一部を冠した子会社が多数上場している場合が良く見られます。
また、近年では経営陣によるMBOが行われるようになってきたため、オーナー一族の持ち株比率が高すぎる場合も注意が必要でしょう。