ハッシュタグが、相場を動かす —— ゲームストップ事件と、群衆が記号になった日

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Gamestonk という、一語

2021年1月26日、一人の男が、短い一語を投稿しました。Gamestonk。投稿したのは、イーロン・マスク。テスラとスペースXのCEOです。これは、ゲームストップという会社名と、ネットスラングで株を意味する綴り間違いの言葉を掛け合わせた造語で、意味などほとんどありません。そして彼は、掲示板サイトの、ある投資フォーラムへのリンクも貼りました。

その一語で、株価が跳ねました。ゲームストップの株価は、この日、百四十八ドル近くで引けました。年初、十七ドル前後だった株です。そして、この造語の投稿は、歴史的な事件のクライマックスへの号砲でした。翌々日の1月28日、ゲームストップの株価は、寄り付き前の時間外取引で一時五百ドルを超えます。年初から、三十倍近く。モールの片隅にある、時代遅れのゲームソフト店。その株が、掲示板の群衆と、一つの造語によって、三十倍になったのです。

この文章は、ゲームストップ事件、つまりハッシュタグと掲示板の群衆が、ウォール街の巨大ヘッジファンドを叩きのめした、あの二週間の物語です。そして、これは私が書いてきた「記号が相場を動かす」一連の記事の、最も激烈な一章です。ティッカー取り違えでは、文字列の混同が資金を動かしました。社名変更では、ブロックチェーンという単語が株価を吊り上げました。そしてゲームストップでは、掲示板の合言葉と、群衆の連帯そのものが相場を動かしました。これまでの記事の記号は、番号や名前でした。しかしゲームストップの記号は、もっと生々しい。何があっても売らないという決意を表す「ダイヤモンドハンド」や、死んでも持ち続けろという合言葉といった、群衆の意志そのものでした。市場が、企業価値ではなく、群衆の連帯という記号を売買した。これが、この事件の核心です。

死にかけたゲーム店と、それに賭けた男たち

まず、ゲームストップという会社を説明します。ショッピングモールなどに実店舗を構える、ゲームソフト・ゲーム機の小売チェーンで、2000年代にはアメリカの若者にとってゲームを買う場所の定番でした。しかし2010年代、時代が変わります。ゲームは、店で箱を買うものから、オンラインでダウンロードするものになった。モールの客足も減り、ゲームストップの業績は悪化し、株価も低迷していきました。2020年、コロナ禍が追い打ちをかけ、実店舗はまさに時代の逆風のど真ん中にいました。

この死にかけた会社に、ウォール街のヘッジファンドは空売りを仕掛けました。空売りとは、株を借りて売り、値下がりしたところで買い戻して差益を得る取引で、この会社は潰れる、に賭ける行為です。そして、ゲームストップへの空売りは常軌を逸していました。発行済みの浮動株の、約百四十パーセントが空売りされていたのです。読み間違いではありません。百四十パーセント。存在する株よりも多くの株が空売りされていた。同じ株が複数回貸し出されるため理論上はこういうことが起こりえますが、これは異常な数字でした。市場に存在する株より、売られた株のほうが多い。ヘッジファンドは、それだけ強く、ゲームストップは死ぬと確信していたのです。

一方、この会社を死んでいないと見た人々もいました。その象徴が、キース・ギルという個人投資家です。ネット上では「吠える子猫」などを名乗っていました。彼は2019年から、動画サイトや掲示板で、地道に主張を続けていました。ゲームストップは過小評価されており、しかも空売りされすぎている、これは買いだ、と。自ら五万三千ドルほどをゲームストップのオプションに投じていました。そして、彼の確信は、ある投資フォーラムの何千人もの個人投資家に伝染していきました。空売り百四十パーセントという異常な数字は、逆に言えば絶好の標的でした。もし個人投資家が団結して株を買い上げれば、空売りしたヘッジファンドは買い戻しを迫られ、その買い戻しがさらに株価を押し上げる。踏み上げ、いわゆるショート・スクイーズが起きる。掲示板の群衆は、それを狙いました。

数字で見る、狂騒の二週間

2021年1月の価格の動きを追います。数字は資料により多少の幅がありますが、大きな流れはこうです。年初、一株およそ十七から十八ドル。1月13日、突然、株価が約五割急騰し、踏み上げが始まる。1月22日頃には、株を買う権利であるコールオプションの建玉が爆発的に増え、オプションの売り手が、自らのリスクを打ち消すために株を買わざるをえなくなる。1月26日、マスクの投稿で百四十八ドル近くで引け。1月27日、株式・オプションの一日の取引高が米国市場で史上最高を記録し、終値は三百四十八ドル近く。空売りしていたヘッジファンドが壊滅的な損失で撤退。そして1月28日、寄り付き前に一時五百ドル超。年初の約三十倍。わずか二週間ほどで十七ドルが五百ドルへ。この間、株価上昇率は一時千六百パーセントを超えたと報じられています。

このとき、空売りしていた側は天文学的な損失を被りました。空売り筋の損失は、集計によって合計六十億ドルとも、あるいは二百億ドル前後とも報じられました。代表格のヘッジファンドは、一月だけで価値の五割以上を失い、生き延びるために他社から数十億ドルの資金注入を受けました。死ぬに賭けた者たちが、逆に死にかけた。これが踏み上げの威力です。株を借りて売った以上、いつかは買い戻さねばならない。株価が上がり続ければ、買い戻しの損失は、理論上、無限大になりうる。

この暴騰には、三つのエンジンが重なっていました。一つは踏み上げ。空売り筋が買い戻しに殺到し、買いが買いを呼ぶ。一つはガンマ・スクイーズ。個人が大量に買ったコールオプションを売った業者が、リスクを打ち消すために原株を買わざるをえず、株価が上がるほどもっと買わねばならない。これも買いが買いを呼ぶ構造です。そしてもう一つが、群衆の連帯。これが最も重要です。掲示板の群衆は、売らないことを合言葉にしました。何があっても握り続けるダイヤモンドハンド、死んでも持ち続けろという合言葉。誰も売らなければ株価は下がらず、むしろ空売り筋の買い戻し圧力だけが残り、上がり続ける。前の二つは金融工学の必然ですが、この三つ目は人間の意志です。そして、この三つ目こそが、ゲームストップ事件を単なる踏み上げから社会現象に変えたのです。

買いボタンが、消えた日

そして、事件は最も物議をかもす瞬間を迎えます。2021年1月28日、個人投資家に人気の証券アプリが、突然、ゲームストップ株の買いを制限しました。売ることはできる。しかし、新しく買うことはできない。買いボタンが消えたのです。この措置はゲームストップだけではなく、同じく空売りされていた他のミームストックも軒並み対象になりました。結果、株価は暴落します。買い手が締め出されれば価格は下がる。この日、ゲームストップは日中の高値から終値へと大きく下げ、ある分析では、買い制限による即座の下落は四割以上に達したとされます。

個人投資家は激怒しました。彼らの見立ては、自分たちが勝ちかけた瞬間に、胴元が買いボタンを消した、ヘッジファンドを守るためにゲームが仕組まれていた、というものでした。この怒りは政治的な党派を超えて広がり、共和党の議員も民主党の議員も、そろってこの証券アプリを批判しました。普段は正反対の立場の政治家が、この一点で一致したのです。アプリのレビューは評価が急落し、集団訴訟も起こされました。ある訴状は、前例のない株価上昇のさなかに、意図的に、故意に、承知の上で株を取引プラットフォームから除外し、個人投資家が市場で投資する能力を奪った、と主張しました。

では、この証券アプリは、なぜ買いを止めたのか。説明はこうでした。清算機関から巨額の担保を要求されたから、と。ここで、SWIFTの記事でも触れた、金融の決済の裏側が出てきます。株を売買しても、その決済は即座には終わりません。当時は約定から二営業日後に決済する仕組みがあり、そのあいだ、取引を仲介する証券会社は決済不履行のリスクを負います。そのリスクを担保するため、証券会社は清算機関に証拠金を積まねばならない。ゲームストップの取引が爆発的に増え、価格が乱高下したため、清算機関は巨額の追加証拠金を要求しました。報道によれば、当初の要求は約三十億ドル。アプリ側には、それだけの現金がなかった。だから、リスクを減らすために買いを制限した、というのが主張です。実際、買いを制限した後、要求は約七億ドルに引き下げられたと報じられています。このアプリのCEOは、議会公聴会で、我々はヘッジファンドに従っているのではない、何百万もの小さな投資家に仕えているのだ、と証言しました。

では、真相はどちらなのでしょうか。正直に言えば、両方に真実の要素があります。清算機関から巨額の担保を要求されたのは事実で、会社の資金繰り上、買い制限は避けられなかった側面がある。しかし、その結果として、空売りしていたヘッジファンドが救われたのも事実です。買い制限による株価下落が、ヘッジファンドに買い戻しの機会を与えた。つまり、ヘッジファンドを守るための陰謀ではなかったかもしれないが、結果としてヘッジファンドを利したことは確かなのです。意図はどうあれ、構造的に、個人投資家は不利な立場に置かれた。後にこのアプリは、この一件を含む複合的な理由で、金融業界の自主規制機関から史上最高額の制裁金を科されました。

これは、記号の反乱だった

ここから、この文章の核心に入ります。ゲームストップ事件は、単なる踏み上げではありませんでした。それは、群衆が一つの記号として結集し、その記号が相場を動かした事件でした。考えてみてください。投資フォーラムの参加者、数百万人。彼らは互いに顔も名前も知りません。しかし、いくつかの合言葉によって、一つの意志として結集しました。何があっても売らないという決意を表すダイヤモンドハンド、死にものぐるいで持ち続けろという合言葉、株価は月まで上がるという信念、そして、個人投資家が自らを猿と呼んで連帯を誇った言葉。これらの記号が、群衆を一つの力に変えました。個々人はバラバラの弱い個人投資家です。しかし、ダイヤモンドハンドという記号のもとに結集すると、ウォール街の巨大ファンドを叩きのめす力になった。記号が群衆を組織し、組織された群衆が相場を動かしたのです。

ティッカー取り違えの記事で、私はケインズの美人投票を紹介しました。市場とは、他人がどう動くかを予測して動くゲームだ、と。ゲームストップは、この美人投票の究極の形態でした。なぜなら、参加者たちは、みんなが売らないなら株価は上がる、株価が上がるならみんなが買う、という自己成就する予言を、意識的に作り出したからです。しかも、彼らは掲示板で公然とその予言を共有していました。みんな売るなよ、ダイヤモンドハンドで握れ。この呼びかけ自体が、他の参加者に、他人は売らないだろうと信じさせ、その信念が実際に売らない行動を生んだ。記号である合言葉が期待を作り、期待が行動を作り、行動が価格を作った。これは、社名変更の記事で書いた「名前が期待を約束に変える」の集団版です。個人が名前で自分を縛るように、群衆は合言葉で自分たちを縛った。ダイヤモンドハンドと宣言した以上、売れば裏切り者になる。記号が、群衆に規律を課したのです。

そして、この事件でも、企業の実体価値は価格とほとんど無関係でした。ゲームストップの事業は、二週間で変わっていません。相変わらず、モールでゲームソフトを売っている苦境の会社です。その会社の株価が十七ドルから五百ドルへ。五百ドルの株価がゲームストップの事業価値を反映していたと考える人は、誰もいませんでした。買っている本人たちですら、これは企業価値ではないと分かっていた。彼らが買っていたのは、踏み上げが起きるという期待であり、群衆の連帯という記号であり、ウォール街に一泡吹かせるという物語でした。市場は、企業を売買していなかった。記号を売買していた。ただし、ゲームストップの記号は、文字列の混同ではなく、もっと能動的で、もっと政治的な、群衆の意志という記号でした。

勝ったのは、誰だったのか

ゲームストップ事件で、勝者はいたのでしょうか。います。早く乗って高値で売り抜けた個人投資家は、大儲けしました。十七ドルで買って数百ドルで売れば数十倍で、人生を変える利益を得た人が確かにいました。キース・ギルの五万三千ドルは、一時、数千万ドルに膨れ上がったと報じられました。そして、ヘッジファンドを叩きのめしたという勝利の物語も、確かに手にしました。代表格のヘッジファンドは大打撃を受け、後に閉鎖に追い込まれました。小さな個人が巨大なウォール街に勝ったという物語は、本物でした。

しかし、勝者は少数でした。ゲームストップの株価は、二月に入ると急落し、二月初めには百ドルを割り込みました。遅れて参加した人、そしてダイヤモンドハンドの合言葉を信じて売らなかった人の多くは、大損しました。ここに、残酷な非対称があります。売らないという連帯は、株価を支えるあいだは美しい。しかし、株価が崩れ始めたとき、売らないを守った人が最も損をする。早く裏切って売った人が助かり、最後まで忠実だった人が、袋を持たされる。みんなで売らなければ勝てるという記号の連帯は、囚人のジレンマでもありました。全員が協力すれば全員が勝てる。しかし、抜け駆けして先に売る者が必ず現れ、そして抜け駆けした者が勝つ。だから、連帯は必ず崩れる。記号の連帯は、崩れる瞬間に、それを最も信じた者を裏切ったのです。

この事件は、何を変えたのか

ゲームストップ事件は、金融の世界に深い問いを刻みました。市場は、本当に公平なのか。個人投資家が勝ちかけた瞬間に、買いボタンが消えた。たとえそれが清算機関の担保要求という技術的な理由であれ、結果として、大きな資本を持つ側が守られ、小さな個人が締め出された。この事件は、市場のインフラそのものが大きな資本に有利にできているのではないか、という疑念を広く植えつけました。この疑念は根拠のないものではありません。SWIFTの記事で書いたとおり、金融の配管である清算、決済、証拠金は、平時には見えません。しかし危機のとき、その配管が誰を守り誰を切り捨てるかを決める。ゲームストップは、その配管を白日の下に晒しました。

2021年10月、米証券取引委員会は、長文の報告書を公表しました。その結論は意外なもので、委員会は、ゲームストップの株価急騰を、単なる踏み上げではなく、前向きな市場心理と個人投資家の買いによって駆動されたものだ、と結論づけました。これは重要な指摘です。踏み上げだけでは、あの暴騰は説明できない。むしろ、群衆の熱狂そのものが価格を押し上げた。言い換えれば、委員会自身が、これは金融工学の現象というより群衆心理の現象だったと認めたのです。先に書いた記号の反乱を、規制当局が公式に裏書きした形です。

事件を受けて、いくつかの変化が起きました。二営業日だった株式決済を一営業日に短縮する流れが加速しました。決済が速くなれば証拠金リスクが減り、買いボタンが消える事態が起きにくくなる。また、この証券アプリが個人の注文を取引業者に回して手数料を得る仕組みが、公聴会で厳しく問われました。無料の取引アプリは本当に無料なのか、個人は商品ではないのか、という問いです。そして何より、この事件は、SNSで結集した個人投資家がウォール街を揺るがす力を持つことを証明しました。

日本に、ミームストックは来るか

ここで日本に目を向けます。日本では、ゲームストップのような大規模なミームストック現象は、まだ本格的には起きていません。なぜか。ここからは私の推測を含みますが、いくつか理由が考えられます。一つは、空売りの構造が違うこと。あの暴騰の起点は浮動株の百四十パーセントが空売りされていた異常な状況でしたが、日本で個別銘柄がここまで極端な空売りを積み上げることは相対的に稀で、踏み上げの燃料が溜まりにくい。一つは、掲示板文化が違うこと。巨大で、攻撃的で、連帯を煽る英語圏の投資フォーラムに匹敵するものが、日本にはまだありません。群衆を一つの記号に結集させる広場の規模が違う。そしてもう一つは、個人投資家の層が違うこと。日本の個人投資家は相対的に高齢で、長期・分散を志向する層が厚く、祭り的・政治的な投機への熱量が異なります。

とはいえ、日本が永遠に無縁とは限りません。SNSの発達、若い個人投資家の増加、新しい少額投資制度による投資人口の拡大。群衆が記号のもとに結集する条件は、日本でも整いつつあります。そして、日本にはすでに連想で株価が動く土壌があります。ティッカー取り違えの記事で書いた、位置情報ゲームの流行に沸いた任天堂株。あれはゲームストップとは違う形ですが、群衆の熱狂が実体を超えて株価を動かした点では同根です。記号が群衆を動かし、群衆が相場を動かす。この現象は、SNS時代の普遍的な力学です。日本がその力学からずっと自由でいられる保証は、どこにもありません。

群衆は、記号になれる

長い道のりでした。最後に、いちばん言いたかったことを書きます。

2021年1月、モールの片隅の、死にかけたゲーム店の株が三十倍になりました。その株価は、企業価値を反映していませんでした。反映していたのは、掲示板に結集した数百万の群衆の、連帯の記号でした。ダイヤモンドハンド、持ち続けろ、月まで上がる。これらの合言葉が、バラバラの個人を一つの力に変え、その力が、ウォール街の巨大ファンドを叩きのめした。あの二週間、市場は、企業ではなく、群衆の意志という記号を売買していたのです。

記号と相場をめぐる私の記事は、ここで新しい段階に達しました。ティッカー取り違えは文字列の混同が資金を動かす話、社名変更は単語が株価を吊り上げる話、そしてゲームストップは群衆の連帯という記号が相場を動かす話でした。これまでの記号は番号や名前という静的な記号でしたが、ゲームストップの記号は、群衆の意志という、動的で、政治的で、生きた記号でした。言葉にすれば、記号は番号や名前だけではない、群衆の連帯そのものが記号になりうる、そして群衆が記号として結集したとき、その力は企業価値も金融工学もウォール街の巨人も一時的に凌駕する、ということになります。

しかし、忘れてはならないことがあります。群衆の記号は崩れます。ダイヤモンドハンドの連帯は、株価が上がるあいだは美しかった。しかし、崩れ始めたとき、その連帯を最も信じた者が最も損をしました。記号の連帯は囚人のジレンマの上に立っており、抜け駆けする者によって必ず裏切られる。これは、記号と実体の乖離をめぐる、一連の記事に共通する結論の、最も痛切な形です。記号が作った価値は、実体が伴わなければ必ず清算される。ゲームストップの群衆は、束の間、記号の力で実体を凌駕した。しかし、実体である苦境のゲーム店は変わっていなかった。だから、記号が作った株価は崩れたのです。

意味のない造語を、もう一度思い出してください。その一語が三十倍の暴騰の号砲になりました。なぜなら、それは単なる造語ではなく、群衆よ結集せよという、記号への呼びかけだったからです。私たちは、記号の時代に生きています。番号が世界を識別し、名前が価値を作り、そして群衆の合言葉が相場を動かす。ゲームストップ事件は、その最も鮮烈な証明でした。群衆は記号になれる。そして、記号になった群衆は、束の間、世界を動かす。ただし、その記号が実体から乖離しているとき、動かされた世界は、必ず、元の場所へと戻っていくのです。


参考資料

一次資料・公式報告

一、米国証券取引委員会「Staff Report on Equity and Options Market Structure Conditions in Early 2021」(2021年10月)  https://www.sec.gov/files/staff-report-equity-options-market-struction-conditions-early-2021.pdf  この記事の背骨にあたる一次資料です。株価急騰を、踏み上げだけでなく前向きな市場心理と個人の買いによって駆動されたと結論づけた公式報告で、決済、証拠金、注文回送の仕組みへの分析の出典です。

二、米国下院金融サービス委員会 公聴会「Game Stopped?」(2021年2月〜)  キース・ギル、証券アプリのCEO、取引業者のCEOらの証言。ヘッジファンドに従っていないという証言、清算機関からの約三十億ドルの証拠金要求の出典です。記録は委員会サイトで公開されています。

三、GameStop short squeeze(Wikipedia)  https://en.wikipedia.org/wiki/GameStop_short_squeeze  浮動株の約百四十パーセントが空売りされていたこと、集団訴訟の訴状の文言の出典です。二次資料のため、重要事実は一次報道で裏取りしています。

四、Cato Institute「The GameStop Episode: What Happened and What Does It Mean?」(2021年)  https://www.cato.org/cato-journal/fall-2021/gamestop-episode-what-happened-what-does-it-mean  1月13日からの急騰の始まり、買い制限の経緯、個人投資家層の性格分析の学術的出典です。

五、TheStreet「An in-depth timeline of the GameStop short squeeze saga」(2023年)  https://www.thestreet.com/investing/stocks/a-timeline-of-the-gamestop-short-squeeze  詳細な時系列。マスクの投稿、取引高の記録、キース・ギルの経緯の中核的出典です。

六、SmartAsset「GameStop Stock Price Spike」(2023年)  https://smartasset.com/financial-advisor/gamestop-stock-price-wallstreetbets-reddit  買い制限による即座の下落、証拠金要求の引き下げ、千六百パーセント超の上昇、両党の議員の批判の出典です。

七、Bitget「GameStop Stock Scandal Explained」(2026年)  https://www.bitget.com/wiki/gamestop-stock-scandal-explained  決済と証拠金要求の技術的説明、ヘッジファンドの価値喪失、委員会報告書の結論、合言葉の用語の説明の出典です。

八、TradingSim「The GME GameStop Short Squeeze Explained」(2026年)  https://www.tradingsim.com/blog/the-gme-gamestop-short-squeeze-explained  史上最高額の制裁金、三つのエンジン、日付別メカニズムの出典です。


事実と推測の区別

一次資料・報道で確認できる事実としては、次のものがあります。空売りが浮動株の約百四十パーセントに達していたこと。株価が2021年1月に約十七ドルから寄り付き前五百ドル超へ急騰したこと。マスクの投稿。1月28日に買いが制限されたこと、その理由(清算機関の証拠金要求)。ヘッジファンドの価値喪失と巨額損失。両党の議員がそろって批判したこと。集団訴訟の存在と訴状の主張、史上最高額の制裁。委員会の2021年10月報告書の結論(市場心理と個人買いが主因)。

一方、次のものは筆者の解釈です。群衆が記号になった、記号の反乱、という定式化。三つのエンジンのうち群衆の連帯を最重要とする評価。買い制限の意図をめぐる「両方に真実がある」という評価(訴訟の帰趨や真の意図は確定していません)。記号の連帯を囚人のジレンマとして読む分析。ケインズの美人投票の最終形態とする位置づけ。日本でミームストックが起きにくい三つの理由(私の推測であり、実証されたものではありません)。これらを事実として引用なさらないようお願いします。とりわけ、買い制限の真の動機については、陰謀説・弁明の双方があり論争的ですので、断定を避けてください。

情報の鮮度・正確性について

この事件の数値(株価のピーク、空売り損失額など)は資料により幅があります。本記事は複数資料を照合しましたが、主要な数字は一次資料で確認してください。ゲームストップとキース・ギルは2024年にも再び相場を賑わせるなど、その後の展開があります。関連する訴訟・規制の動向も継続中の可能性があります。

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