日本の個人投資家を一人挙げよと言われたら、多くのバリュー投資家は「かぶ1000」の名前を最初に挙げるだろう。中学2年生から株式投資を始め、専業投資家歴37年。岐阜県在住、累計利益4億円超。Xフォロワー数34万人超のベテラン投資家である。
私はかぶ1000さんを語るとき、「修行僧のような投資家」という言葉が頭に浮かぶ。派手なリターンも、テンバガーの逸話も、メディア出演の派手さもない。しかし、地道に、淡々と、30年以上にわたってバリュー投資の修行を続け、誰よりも深く日本市場を理解してきた人物である。今回はこの寡黙なベテランの哲学を、私なりにじっくり読み解いていきたい。
1988年、中学2年生の40万円スタート
かぶ1000さんの物語は、岐阜県の一中学2年生から始まる。中学2年生の時に40万円を元手に株式投資を始め、日本のバリュー株投資で資産を1,000倍以上に増やしたベテラン個人投資家。岐阜県在住40代。専業投資家歴30年以上の大ベテラン。Twitterのフォロワーは21万人(2023年1月現在)を超え、個人投資家の間で絶大な人気を誇る。
ここで興味深いのは、彼が株式投資を始めた経緯である。恥ずかしながら実家が裕福ではなかったので、幼い頃からおこづかいやお年玉は、なるべく使わずに貯金していた。当時は郵便貯金の金利が7%あり、10年定額貯金の金利が11%あった時代だった。そのお陰もあって、郵便局に預けていた定額貯金は順調に増えていき満期になる頃には40万円まで増えていた。ところが、中学2年生となる1988年になると預金金利が1%台半ばに下がってしまった。少なからず衝撃を受け、もっと金利のいいものはないか…と探していた。ちょうどその頃、祖母が営む喫茶店に置いてある新聞で利回り30%の投資信託があることを知り、「これを買おう!」と思った。
私はこのエピソードに、かぶ1000さんの本質を見る。彼は「お金の本質」を5歳から考えていた子供だった。家が裕福でないからお金を使わない、定期預金の金利を計算する、金利が下がったら別の運用先を探す──これは経済感覚として極めて早熟である。中学2年生で「金利が下がった」ことに衝撃を受けて、別の運用先として株式投資にたどり着いたのは、論理的な必然だったのだ。
そして40万円という金額。前回紹介した五味氏の100万円より少ないが、それでも中学生としては大金である。実家が裕福でない中で、5歳から地道に貯めてきた40万円。これを株式投資に投じるという決断には、相当な覚悟があったはずだ。
バブル期の経験──「ジャージ姿で証券会社通い」の伝説
かぶ1000さんの中学・高校時代は、日本のバブル期と完全に重なっている。中学時代は体育のジャージ姿で、地元の証券会社に通い詰め、年寄りの投資家たちにかわいがられ、バブル紳士には金儲けのイロハを教えてもらった。中学3年で300万円、高校1年で1,000万円、高校2年で1,500万円へと株式資産を増やし、会計系の専門学校卒業後、証券会社からの就職の誘いを断って専業投資家の道へ。
「ジャージ姿で証券会社通い」というディテールに、私は震えた。1988年〜1990年のバブル絶頂期、中学生がジャージ姿で証券会社に通い、年配の投資家たちと相場談義をする。当時はネット証券などなく、証券会社の店頭に行って注文を出す時代だった。中学生に対しても、証券会社の営業マンは普通に対応していたのだろう。
そして「バブル紳士には金儲けのイロハを教えてもらった」というのも重要だ。バブル紳士たちは、その後の崩壊で多くが姿を消した。しかし彼らから学んだ知識は、かぶ1000さんの中に残った。これはトップクラスの実地教育である。中学生でこの環境に身を置いたことが、後のキャリアの土台になった。
1990年代の試練──バブル崩壊からの再起
かぶ1000さんが体験した相場の荒波は壮絶だ。専業投資家のかぶ1000です。私は中学2年で株式投資を始めました。高校に進学した後も、株式投資漬けの毎日が続き、高校2年生になる頃には、株式資産はピーク時1,500万円に達しました。専業投資家として生きてゆくことを目指し、大学進学には目もくれず独立独歩で投資家への道を歩んできた。1990年のバブル崩壊、1991年の湾岸戦争、1997年のアジア通貨危機、2000年のITバブル崩壊など、幾多の荒波を乗り越えて、2001年からは現在の投資スタイルである「バリュー株投資」を本格的に始めました。
ここに私はかぶ1000さんの真の物語を読む。多くの記事は「中学から株を始めて4億円」と簡略化するが、実際にはバブル崩壊・アジア通貨危機・ITバブル崩壊という3つの大暴落を、20代までに経験している。1,500万円という資産も、バブル崩壊で大きく減ったはずだ。
バブル相場で稼いだ若者の多くは、崩壊で全てを失って退場した。かぶ1000さんは生き残っただけでなく、そこから新しいスタイル(バリュー投資)を確立した。これは並大抵のメンタルではない。
私の独自視点では、この「バブル経験→崩壊→再起」のプロセスこそ、かぶ1000さんの哲学の根源だ。彼が現在もバリュー投資を頑なに守るのは、グロース投資の幻想を若いうちに体験して、その儚さを骨身で知っているからである。20代で天国と地獄を見た投資家は、強い。
専門学校卒業時の決断──証券会社の誘いを断った
ここで重要なターニングポイントがある。会計系の専門学校卒業後、証券会社の就職の誘いを断って専業投資家の道へ。2011年に1億円プレーヤーの仲間入りを果たすと、その後も順調に資産を増やし、2016年に3億円、2019年に累積利益4億円を突破した。
証券会社の誘いを断る──これはBNF氏が孫正義の運用依頼を断ったエピソードと並ぶ、個人投資家ならではの選択である。組織に入れば、月給と社会的地位が手に入る。一方、専業投資家として独立すれば、自由と引き換えに収入の保証がなくなる。
20代前半の若者がこの選択をした重みは、想像を絶する。私の独自分析では、ここにかぶ1000さんの「自分との約束」がある。中学2年から専業投資家になることを目指してきた──その目標を曲げないという信念だ。
この選択は、結果的に正解だった。組織に入っていれば、彼の独自のバリュー投資スタイルは束縛されていた。自由に動けるからこそ、ネットネット株という地味な領域で20年以上磨きをかけられた。
バリュー投資という選択──ベンジャミン・グレアムとの出会い
かぶ1000さんの投資手法は、現代日本における最も古典的なバリュー投資である。ここからはかぶ1000さんの投資手法について。中学の頃からバリュー投資派だったのではない。当時は割安かどうかなんてまったく意識していなかった。というか、株を始めたのは好景気に沸いていた時代だったので、割安株なんてほとんどなかったのだ。
バブル期に始めた投資が、最終的にバリュー投資に落ち着いたのは、ある意味で必然である。バブル崩壊で「高値で買った株が割安になる」体験を生々しくした人間は、二度と高値で買いたくないと思う。それを学術的に裏付けたのが、ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」だった。
かぶ1000さんは、PMV(プライベートマーケットバリュー)やカタリストを重視した資産バリュー株、かぶ1000流ネットネット株への投資を得意としている。中学2年生から投資をはじめており、ずっと専業投資家であるという特徴がある。2021年1月には、「貯金40万円が株式投資で4億円〜元手を1000倍に増やしたボクの投資術」を出版された。
PMV(プライベートマーケットバリュー)とは何か。PMV(プライベートマーケットバリュー)とは、「企業を買収しようと考えている人が、その企業を買収するために支払う額」のこと。資産バリュー株とは、「本来の資産価値よりも安い値段が付いている会社の株」のこと。かぶ1000流ネットネット株とは、「流動資産からすべての負債を差し引いた正味流動資産と比べて、時価総額が低い株」のこと。現金及び預金+受取手形及び売掛金+有価証券+投資有価証券-貸倒引当金-総負債 > 時価総額で計算できる。
簡単に言えば、かぶ1000流ネットネット株とは「会社を全部買収して、すべての資産を売り払い、すべての負債を返した後でも、買収者にプラスのお釣りが残る」ような株のことだ。極論すれば「タダで会社をもらって、しかもお釣りまでくる」という状況である。
「1万円札の入った財布が5,000円で売られている」
かぶ1000流ネットネット株の本質を、もう少し深く解説したい。バリュー株投資とは、企業価値に対して割安に放置されている株に投資することで、企業の利益成長によって株価が右肩上りになるグロース株(成長株)投資に比べると、地味で株価の反応は限定的なため、株価上昇には時間がかかることが多く、リターンを得るのに時間が掛かると思われている。そのバリュー株投資の中でも特にかぶ1000氏が資産を大きく増やすのに貢献したというのが、ネットネット株である。これは、バリュー株投資の父と呼ばれる米国の投資家、ベンジャミン・グレアム氏が提唱した投資法だ。「1万円札の入った財布が5,000円で売られているような株」のことで、流動資産から総負債を差し引いた「正味流動資産」に対して、株価が割安な株を指している。
「1万円札の入った財布が5,000円で売られている」──この比喩こそ、ネットネット株の本質を完璧に表している。財布を5,000円で買い、中身の1万円を取り出せば、5,000円の利益が確実に出る。リスクは極小、リターンは確実。これがネットネット株の魅力である。
しかしここで疑問が生じる。なぜそんな美味しい株が市場に放置されているのか? 答えは「人気がないから」「成長性がないから」「地味だから」「事業がイケてないから」だ。市場参加者は、地味で成長性のない会社の株を見向きもしない。だから割安で放置される。
かぶ1000さんは、この「市場の偏見」を逆手に取る。地味で割安な株を買い、「カタリスト(株価を動かすきっかけ)」を待つ。TOBとは、「株式公開買い付け(Take Over Bid)の略称で、上場企業の発行する株式を、通常の市場売買でなく、あらかじめ買い取る期間、株数、価格を提示して、市場外で一括して買い付ける」のこと。たとえばTOBが提案されれば、株価は一気にプレミアム価格まで上がる。これが「カタリストを重視する」という意味だ。
「誤発注」改名エピソードとは違う──かぶ1000の「投資家としての規律」
ここで重要な独自視点を述べたい。かぶ1000さんのスタイルは、近年の派手な投資家(BNF・cis・テスタなど)とまったく異なる。彼らは「複利で爆発的に増やす」ことを目指すが、かぶ1000さんは「安定して負けないこと」を最優先にしている。
資産を短期間で大きく増やしたい個人投資家に人気なのは、バリュー株投資より「成長株投資」。成長株投資は利益の伸びが大きく、株価の上昇が続く銘柄をいち早く見つけて投資する手法。利益と株価が右肩上がりになる成長株のチャートを見ると、大きなリターンを期待したくなる。私が実践するバリュー株投資で目標としているのは、年20%の利益。それでも複利で投資を続けると10年後には6倍、20年後には38倍になる計算。それよりも控えめな年10%の利益で計算しても、10年後には2.5倍、20年後には6.7倍になる。
年20%という目標。これは派手な数字ではないが、複利で考えると驚異的だ。20年で38倍というのは、1,000万円が3.8億円になる計算である。実際、かぶ1000さんは40万円が4億円になっており、30年で1,000倍だ。これは年率複利25%程度に相当する。地味なバリュー投資でも、長期で続ければ十分に資産は築ける。
私の独自視点では、これが「修行僧のような投資家」という比喩の意味である。かぶ1000さんは派手な勝負はしない。一発逆転も狙わない。代わりに、毎日コツコツとネットネット株を発掘し、買い、待ち、売る。この単調な作業を37年続けてきた。お坊さんの修行のような淡々とした営みだ。
著書の影響力──バリュー投資の伝道師
かぶ1000さんは、SNSとブログで圧倒的な発信力を持っている。かぶ1000投資日記。中学2年(1988年)から株式投資を始め、専業投資家歴37年目。PMV(事業家的市場価値)とカタリストを重視したネットネット株や資産バリュー株への投資がメイン。年20%の運用利回り目標。著書「賢明なる個人投資家への道」「貯金40万円が株式投資で4億円〜元手を1000倍に増やしたボクの投資術」。
著書「貯金40万円が株式投資で4億円」は2021年1月の出版以来、ベストセラーになっている。著書「賢明なる個人投資家への道」も累計4.5億円超の達成を踏まえ、より深い投資哲学を解説した書籍だ。
私の独自分析では、かぶ1000さんは現代日本の「バリュー投資の伝道師」である。ベンジャミン・グレアムやウォーレン・バフェットの哲学を、日本市場で実証し、それを丁寧に発信している。彼の影響を受けてバリュー投資を始めた個人投資家は数万人を下らないだろう。
しかも本人は「いやあ、かぶ1000なんてショボいって言われるくらいがちょうどいいですよ(笑)」と謙遜する。「自分の頭で考える自立した投資家になって欲しいと思う。株価が下がると不安になって、他人の意見を求めたくなる気持ちはわかる。私自身も、はじめはベンジャミン・グレアムの著書『賢明なる投資家』の影響を受けた。しかしそこから先は、『自分の考えを持たなければ、他力本願な投資家になってしまう』という思いで必死に勉強した」と語る。
「自分の頭で考える自立した投資家」──この言葉に、かぶ1000さんの教育者としての真摯さが表れている。彼は「私の銘柄を真似しろ」とは言わない。「私の考え方を学んで、自分の頭で銘柄を選べ」と言う。これは投資教育の正道である。
「株主資本成長率」を重視──かぶ1000流の数値分析
かぶ1000さんの投資手法には、一つの特徴的な数値がある。投資スタイルはPMV(事業家的市場価値)とカタリストを重視したネットネット株、資産バリュー株がメイン。株主資本成長率を最も重視している。
「株主資本成長率」を最重視している点が、私には印象的だ。これは何を意味するか。一般的にはPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)を見るのがバリュー投資の入口だが、かぶ1000さんはさらに進んで「株主資本がどう成長しているか」を見る。
株主資本成長率とは、企業が稼いだ利益のうち、どれだけ内部留保として積み上がっているかを示す指標だ。これが高いほど、企業は持続的に価値を増やしている。たとえば株主資本成長率が年10%の企業なら、10年後には株主資本が2.6倍になる。配当を出さなくても、株主の取り分は確実に増えている。
これはバフェットが「ROE×内部留保率」で見ているのと同じ思想だ。バリュー投資の入口は「割安に買う」だが、その先には「成長性のある割安株を買う」というGARPの思想がある。かぶ1000さんは、グレアムからバフェットへと自然に進化したバリュー投資家である。
「コア・サテライト戦略」の進化──50代に向けた再設計
近年、かぶ1000さんは投資戦略を進化させている。サテライトでは、スキャルピングやスイングトレードなど短期的に利益が得られそうな事象があった時に回転売買や、同じ銘柄を繰り返し売買することで利鞘を稼ぐ戦略。コアでは、従来通りの資産バリュー株に投資する戦略。メインが資産バリュー株投資であることに変わりはない。
これは興味深い変化だ。長年の純粋なバリュー投資家が、サテライトでスキャルピング・スイングトレードを取り入れている。
私の独自分析では、これは「資金規模の拡大」に対応するための進化だ。資産が4億円規模になると、ネットネット株だけでは消化しきれない。サテライトで別の戦略を取り入れることで、機会損失を減らしている。
そしてもう一つの仮説は、「相場環境の変化」への対応だ。日本市場でPBR1倍割れが減り、ネットネット株の質が下がっている。だからサテライトで違う収益源を確保している。これも合理的な進化である。
「妻も母も億り人」──家族への影響力
かぶ1000さんの哲学が興味深いのは、家族にも投資の習慣を広めている点である。「投資未経験だった私の母やかみさんも、私の影響で株式投資を始め、2人とも『億り人』になりました」。
母親もかみさんも億り人。これは何を意味するか。かぶ1000さんの投資哲学が「再現性のある教育プログラム」になっているということだ。投資の素人だった人が、彼の指導を受けて億り人になっている。
私はこの事実を、かぶ1000さんが本物の教育者である証明だと考えている。本人だけがすごいスター投資家ではなく、自分のメソッドを他人に伝えられる人物。これは投資業界では希少だ。多くのスター投資家は、自分の天才性に依存していて、再現性がない。かぶ1000さんは違う。彼のスタイルは学習可能で、訓練可能で、誰にでも応用可能である。
ツイキャスとSNS──日々のコミュニケーション
かぶ1000さんは、ツイキャスでも積極的に発信している。朝まで生ツイキャス元旦SP / かぶ1000の株式投資をまじめに考える / 朝まで生ツイキャス元旦SP#かぶ1000 / 中学2年から株式投資を始め、専業投資家歴35年。PMV(事業家的市場価値)とカタリストを重視。元旦から朝まで生ツイキャスで投資を語る──こうした活動を続けている。
元旦から朝までツイキャスで投資を語る。普通の感覚なら異常だ。しかしかぶ1000さんにとって、株式投資は「人生最高の友」である。「株式投資は人生最高の友」であり、株の話なら10時間でもノンストップで熱く語れる。
私の独自視点では、かぶ1000さんが10時間でも語れるのは、彼が投資を「ゲーム」や「金儲け」とは別物として捉えているからだ。彼にとって投資は人生そのものである。中学2年から37年間、毎日株のことを考えてきた。それは「仕事」というより「呼吸」に近い。だから語れる。だから飽きない。
我々がかぶ1000さんから学べること
最後に、私たち凡庸な個人投資家がかぶ1000さんから学べる教訓を、5点に整理しておきたい。
第一に、「派手なリターンを求めない」こと。年20%目標は、派手ではないが複利で考えれば十分。むしろ年100%リターンを狙う人より、年20%を30年続ける人のほうが、最終的な資産は大きい。
第二に、「ネットネット株という入口」。「1万円札の入った財布が5,000円で売られている」状態の株を探す。日本市場には今もそんな銘柄がいくつもある。これは個人投資家にも探せるシンプルなスクリーニングだ。
第三に、「自分の頭で考える」こと。誰かの銘柄を真似しても、長期では勝てない。自分のスクリーニング基準を持ち、自分で四季報を読み、自分で判断する。これがかぶ1000さんの一貫したメッセージだ。
第四に、「下落相場こそ買い場」という胆力。バリュー投資家にとって、暴落は最大のチャンスである。誰もが恐怖で売る時こそ、安い財布を買い漁れる時である。
第五に、「投資を人生の一部にする」こと。週末だけ・空いた時間だけの趣味としての投資では、複利の威力を最大化できない。毎日10分でも考える、毎日四季報を眺める、毎日銘柄をリサーチする。これを30年続けると、4億円という結果が訪れる。
結びに──「中学生バリュー投資家」が証明したこと
かぶ1000さんの37年は、日本のバリュー投資史そのものである。バブル絶頂期に始まり、崩壊を経験し、ITバブルとリーマンショックを乗り越え、アベノミクスを楽しみ、新NISA時代に著書を出している。彼の人生は、日本市場の縮図と言ってもいい。
そして彼が証明したのは、「派手な才能なしでも、規律があれば資産は築ける」という事実である。BNFのような超人的な反射神経はいらない。cisのような順張りの胆力もいらない。テスタのような100種類の手法もいらない。必要なのは、ネットネット株を地道に発掘する忍耐と、それを長期保有する精神力だけだ。
これは現代の個人投資家にとって、最も希望のあるメッセージである。なぜなら、再現可能だからだ。中学生のかぶ少年が40万円から始めて、37年で4億円。同じことを今から始める人もできる。年20%の複利で、30年あれば1,000万円が23億円になる。バリュー投資はゆっくりだが確実な資産形成の道なのだ。
次に四季報をめくるとき、PBR0.5倍以下、PER10倍以下、ネットキャッシュ豊富──そんな地味な銘柄を探してみてほしい。そこには、かぶ1000さんが今も見ている世界がある。岐阜県のどこかで、今日も淡々と四季報を読み込んでいる修行僧のような投資家。彼の背中を遠くから眺めながら、私たち自身も、自分なりの「修行」を続けていきたいものである。

