最も特異なポジションにいる個人投資家・ようこりん氏である。専業主婦でありながら20年以上の投資歴を持ち、現在は資産1.8億円。優待株400銘柄超を保有する優待界のスーパースターであり、Amebaブログ「ほんわかようこりん」のトップブロガーとしても知られる。
私がようこりん氏に強く惹かれるのは、彼女が「専業主婦」というカテゴリーから日本トップクラスの個人投資家になったという事実だ。BNF・cis・テスタ・片山・五味・かぶ1000・桐谷・御発注──いずれも男性である。日本のスター投資家の世界は、長らく男性中心だった。ようこりん氏は、その壁を破った人物である。今回はこの「主婦投資家のレジェンド」を、私なりに独自視点で深掘りしていきたい。
1995年、知らずに買った日本金銭機械
ようこりん氏の投資デビューは、極めて軽い気持ちから始まる。最初に買ったのは優待銘柄。ただ、それはたまたまで、優待銘柄とは知らなかった。もう20年ほど前のことですが、友人に「日本金銭機械(6418)という貨幣製造会社の株が上がるだろうから買ってみたら」と勧められたんです。その頃、500円玉が新しくなるという話があったので。それで、証券口座を開設し、少しだけ買ってみました。すると、友人が言った通り株価が上昇して、かなり稼がせてもらった。その銘柄が優待銘柄で。その後しばらく、カタログギフトが年に一度届くのが不思議でしょうがなかったんです(笑)。後で、これが株主優待だったのかと知った。
このエピソードに、私はようこりん氏の本質を見る。彼女の投資デビューは、計画的・戦略的なものではなかった。友人に勧められて、何となく買って、何となく儲かった──偶然と幸運から始まっている。
しかし重要なのはその後だ。多くの人なら、この成功体験で終わってしまう。ようこりん氏は違った。「儲かった」という経験を、「もっと知りたい」という探究心に変えた。これが彼女のキャリアの起点である。
2005年、本格スタート──カレンダー投資法との出会い
ようこりん氏が本格的に投資の世界に入るのは、2005年のことだ。ようこりんさんが本格的に投資をはじめたのは2005年12月。書店で『木村佳子のカレンダー投資法 決定版』を手に取ったことがきっかけ。それよりも前の1995年に、なんとなく日本金銭機械(東証プライム・6418)の株を買っていた。ただ、当時の私は株について何も知らず、友人に勧められるまま購入して放置。優待のカタログギフトも毎年届いていたのですが、”これはなんだろう。長期保有のお礼か何かかしら?”と思いながらも、詳しく調べようとすることすらしなかった。それが『カレンダー投資』を手に取ったことで、眺めていたカタログギフトが株主優待であったこと、日本金銭機械の株価が10倍に伸びていたことなどを知り、株式投資に興味を持ち始める。コツコツ貯金していたお金をかき集め、元手1,000万円で投資を本格スタートさせた。
10年放置した株が10倍になっていた──これは衝撃的な気づきだ。何もしないことが、最大の投資戦略になり得るという証明である。
そして「日本金銭機械は、”このあたりが高値だな”と思いすぐに売りました。プラスの経験からスタートさせてもらったことで、”株は儲かるもの”という頭でずっとやってきました。楽しみながら上手く資産を増やせましたね」というエピソードは、私には貴重な学びを示している。
最初の体験で「株は儲かるもの」という認識を持てたかどうかが、その後のメンタリティを決める。最初の体験で大きく負けると、株式投資にトラウマを持ってしまう人が多い。ようこりん氏は最初がプラスだったから、ずっと楽しく続けられた。
私の独自視点では、これは「最初の体験設計」の重要性を示している。投資を始めるときは、絶対に少額・低リスクで始めるべきだ。最初に勝てれば、その先の長い旅路が楽しくなる。最初に大きく負けると、二度と立ち上がれない。
1,000万円という元手──主婦としての「コツコツ貯金」
ここで重要なのは、ようこりん氏が本格スタート時に1,000万円の元手を持っていたという事実だ。
主婦が1,000万円を貯めるというのは、容易なことではない。家計を切り盛りしながら、コツコツと積み立ててきた金額である。これは御発注氏のコジ活と同じ思想だ。種銭の蓄積こそ、投資の基本である。
私の独自分析では、ようこりん氏の家計管理能力が、後の投資能力にも直結している。家計を切り盛りする主婦は、毎月の収支、節約のポイント、価格の妥当性などを、肌感覚で理解している。これは「企業の業績を読み解く」能力に直結する。家計を上手く回せる主婦は、企業の財務諸表も上手く読める。
リーマンショックの試練──「泣き続けた日々」
ようこりん氏の投資人生にも、決定的な試練があった。2008年のリーマンショックだ。億り人のようこりんさんは、暴落相場にどう立ち向かうのか。投資を本格的に始めて約20年、資産は約1.8億円にのぼる。「今回の4月上旬の暴落のタイミングでは、これまで買いたかったけれど買えなかった株や、将来への種まきとして安値の株を大量に買いました」と振り返るようこりんさんだが、そうした行動を取る背景にはリーマン・ショックでのつらい経験とそこからの復活があった。
別のメディアでは「リーマン・ショックで泣き続けた日々」「心中するつもりで買ったトヨタ株」というエピソードも紹介されている。これらの言葉から、当時のようこりん氏が感じた絶望の深さが伝わってくる。
私の独自視点では、この「泣き続けた日々」こそ、ようこりん氏を本物の投資家にした試練である。多くの主婦投資家は、リーマンショックで撤退した。しかしようこりん氏は留まった。むしろトヨタ株を「心中する覚悟で」買い増した。この覚悟が、後の復活と1.8億円達成につながっている。
「ほんわか優待投資家」の二面性──実は勝負師
ようこりん氏のブランドイメージは「ほんわか」だ。Amebaブログのタイトルも「ほんわかようこりん」。優待品の写真を載せて、ほのぼのとした暮らしぶりを発信している。
しかし「ほんわか優待投資家」ではない、もう一つの「下げ相場に強い投資家」としての顔も持っている。心臓を握られるような局面を何度も乗り越え、約1億5,000万円の資産を築いてきた。主婦でもある優待投資家。投資歴は20年以上で、保有する株主優待銘柄は400を超える。株主優待はじめ投資情報や日常を発信するブログ「ほんわかようこりん」を運営し、ほぼ毎日更新。普段は愛知県で生活しながらも、東京近郊で行われる株主総会出席のため、2019年には東京に家を購入した。
「ほんわか」と「勝負師」の二面性──これがようこりん氏の真の姿である。優待品の写真を載せながら、裏では暴落時に大量買いをする勝負師。表のイメージと裏の実態にギャップがあるからこそ、彼女は唯一無二の存在になっている。
私はこの二面性に、ようこりん氏の人間的な深みを感じる。明るく親しみやすい表情の奥に、20年の相場経験で鍛えられた強靭なメンタルがある。これは、桐谷さんの「自転車のおじいちゃん×レジェンド億り人」の組み合わせと似ている。
株主総会出席のために東京に家を購入
ようこりん氏のエピソードで最も印象的なのが、株主総会出席のために東京に家を購入したという話だ。普段は愛知県在住だが、3月・6月に集中する株主総会のために、わざわざ東京に拠点を構えた。
これは尋常ではない投資への情熱だ。普通の主婦投資家は、株主総会には出ない。書面で議決権を行使するか、あるいは行使すらしない。しかしようこりん氏は、一銘柄一銘柄の株主総会に足を運ぶ。経営者の話を直接聞き、自分の目で経営を判断する。
私の独自視点では、これがようこりん氏の銘柄選定能力の源泉である。「キャピタルゲイン(値上がり益)を狙って集中投資もしますし、株主総会で社長の説明を聞き、いいと思った時には総会の最中にその会社の株を買い増したこともあります」。総会で経営者を見て、その場で判断して買い増す──これは機関投資家にも難しい行動だ。
投資手法──ファンダメンタル分析+長期保有のバリュー
ようこりん氏の投資手法は、本格派のファンダメンタル分析である。「本当は優待品は2番目で、私が好きなのは株式会社。日本人なので、株式投資で日本企業を応援したいんです」とも言います。なのでその投資手法は本格的で、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)や業容・業績を調べて長く持てる企業を選び、10年、20年といった長期のチャートで株価水準を確認した上で投資する。
「優待品は2番目で、好きなのは株式会社」というスタンスが重要だ。ようこりん氏は「優待目当て」だけで投資する人ではない。優先するのは「企業の本質的価値」であり、優待は副次的な楽しみでしかない。
そして「私の投資スタイルはバリュー投資なので、いろいろな業界の株価が右肩上がりの中で、下がりすぎている業界や銘柄はつい気になって、仕込みのタイミングをうかがいます。最近、株価が下がりすぎだな、と注目しているセクターは陸運業と化学ですね」と語っている。
これはかぶ1000さんの哲学に近い、本格的なバリュー投資である。市場で人気のあるセクターを買うのではなく、嫌われて下がっているセクターから掘り起こす。これは逆張りの王道だ。
「違和感」の重視──主婦の直感が武器に
ようこりん氏の独自の視点として、私が最も注目するのは「違和感」を重視するスタンスだ。「株式投資をするうえで、情報はとても大切です。しかし、情報を手にしたら、自分で考えるというワンクッションを入れるようにしてください。特に先ほどセクターの話でお伝えしたような”違和感”というのを大事にしてほしいです。『なぜこういう情報ばかり流れてくるんだろうか?』『この情報の背景にはなにがあるのか?』という風に、視点を広くもつことが、社会を知ること、そして企業を知ることに繋がります。市場ではぜんぜん話題にならない銘柄の中にも、実は財務内容や株主構成がしっかりしている企業もあります。そういう違和感のある企業こそ、狙い目だと私は思います」。
「違和感」というキーワードに、私はようこりん氏の投資哲学の本質を見る。
第一に、これは主婦としての日常感覚から来ている。買い物をしていて「最近あの店、人が減ってきたな」「この商品、急に値上げしたな」という違和感を察知する能力は、主婦のほうが圧倒的に強い。サラリーマンや専業投資家は、生活者として感じる違和感を捉えにくい。
第二に、これはアカデミックな効率的市場仮説への挑戦である。「市場で誰も注目しない銘柄に、隠れた価値がある」というスタンスは、効率的市場を否定するアプローチだ。これがバリュー投資の根本思想と一致する。
第三に、これは情報過多時代へのアンチテーゼだ。SNSで誰もが同じ情報を共有する時代に、「違和感」という個人的・主観的な感覚を信じることは、独自性を保つ手段である。
暴落こそチャンス──「ワクワクを楽しむ」勝負観
ようこりん氏の真骨頂は、暴落時の行動にある。「世界的な暴落があった時こそ勝負に出てワクワクを楽しみたい」と語る。
「暴落でワクワク」──この発想は、普通の主婦投資家とはかけ離れている。多くの主婦投資家は、暴落で資産が減ると恐怖に陥る。しかしようこりん氏は、リーマンショックで泣き続けた経験から、「暴落は最大のチャンス」という確信を得た。
これは実体験で身につけた哲学だ。リーマンショックで底値で買った銘柄が、その後5倍・10倍に化けた。コロナショックでも同じ経験をした。だから次の暴落でも「ワクワク」する。
私の独自視点では、これがようこりん氏が単なる優待投資家を超えた本質的な強さだ。優待だけを目的にする投資家は、暴落で買えない。なぜなら、優待よりも資産保全のほうが優先になるからだ。しかしようこりん氏は、優待投資家でありながらバリュー投資家でもある。だから暴落時こそ攻められる。
400銘柄の優待ポートフォリオ──主婦ならではの活用法
ようこりん氏の保有する優待株400銘柄超は、桐谷さんの1,000銘柄超に次ぐ規模である。「もともとは届いた優待品を一時入れておくとか、タカラトミーの株主限定のオリジナルリカちゃん人形を飾っておく部屋だったんですが、優待品があまりにもたくさん来るので人にあげても使い切れず、今では倉庫のようになってしまいました」──という状態だ。
タカラトミーの株主限定オリジナルリカちゃん人形を集めるエピソードは、主婦投資家ならではだ。男性投資家ではこの優待は活用しきれない。女性ならではの楽しみ方が、ようこりん氏の投資ライフに彩りを与えている。
そして優待の活用も、主婦ならではの工夫が光る。子供の誕生会をカラオケ「まねきねこ」(コシダカホールディングス)の優待で開く。化粧品の優待でアクシージアの目元シートを試す。アパレルブランドのハニーズ、AB&Companyのヘアケア──いずれも女性ならではの優待の活用法だ。
私の独自視点では、これは「投資を生活と完全に統合する」発想である。男性投資家は、投資を「お金儲け」として独立させがちだ。しかし女性投資家、特に主婦投資家は、投資を「生活を豊かにするツール」として位置づけている。これは生活者としてのリアリティが投資判断に結びつく、実に強い武器だ。
「夫が給料ダウンの時も優待が助けてくれた」──リアルな体験
ようこりん氏のもう一つの重要なエピソードに、夫の給料ダウン時に優待に助けられたという話がある。これは現代日本の家計管理にとって、極めてリアルなテーマだ。
専業主婦として、家計の最後の砦となるのが妻である。夫の給料が下がっても、家計を回さなければならない。その時、優待で食料品や日用品が届くことの安心感は、計り知れない。
これは桐谷さんの「リーマンショック後の優待で食いつないだ」エピソードと共通する。経済的危機の時、優待は単なる楽しみではなく、生命線になる。
著書とブログ──情報発信の一貫性
ようこりん氏は情報発信も精力的だ。手堅く稼ぐ主婦投資家が教える おいしく始める株投資。この本はそこを重視して、基本を教えるだけでなく、現実の投資ではどうなのかを現役の投資家「ようこりん」に教えてもらいます。「割安株(バリュー株)」という言葉をご存知ですか? 力があるにも関わらず株価が評価されていない株のことです。この株を見つけ、投資することで評価が正当に評価された際には大きな実りとなります。この割安株に投資し、大きな成果を得たのが主婦投資家ようこりんです。
ブログ「ほんわかようこりん」は、Amebaブログの株予想・為替ジャンルでトップブロガーである。毎日更新を続けている。
私の独自視点では、ようこりん氏の発信の特徴は「親しみやすさと本格派の両立」である。文体は柔らかく、優待品の写真を多用する「ほんわか」スタイル。しかし内容は本格的なバリュー投資の解説。この二面性が、初心者から上級者まで幅広い読者を獲得している秘訣だ。
我々がようこりん氏から学べること
最後に、ようこりん氏から我々個人投資家、特に女性投資家・主婦投資家が学べる教訓を、5点に整理しておきたい。
第一に、「主婦という強みを活用する」こと。日常の買い物・家計管理で培った「金銭感覚」「商品の目利き」は、投資判断の強力な武器になる。男性のサラリーマンには持てない優位性だ。
第二に、「違和感を大切に」する。情報過多の時代に、自分の生活感覚から生まれる違和感こそ、独自性ある投資判断の源泉である。「みんなが見ている情報」ではなく「自分が感じる違和感」に従う。
第三に、「暴落でワクワクする」マインドセット。下落こそチャンスという発想を持てれば、長期投資は強力な武器になる。リーマンショックで泣き続けた経験を、ようこりん氏は「次の暴落で勝つ」資産に変えた。
第四に、「優待を生活に統合する」こと。優待を投機の対象としてだけ見るのではなく、生活を豊かにするツールとして組み込む。これは主婦投資家の最大の強みだ。
第五に、「ブログという発信の力」。アウトプットすることで、自分の投資哲学が深まる。ようこりん氏が毎日ブログを更新できるのは、それが彼女の思考の整理になっているからだ。
結びに──「主婦投資家の星」が示す未来
ようこりん氏は、日本の個人投資家の中で「最も新しい時代を体現する」存在である。BNFやcisが「天才の領域」を作り、桐谷さんが「優待ライフスタイル」を作ったとすれば、ようこりん氏は「主婦×バリュー投資×優待×ブログ発信」という新しい組み合わせで、独自の道を切り拓いた。
そして彼女が証明したのは、「投資は男性だけのものではない」という事実だ。長年、日本の投資界は男性中心だった。雑誌の表紙、テレビのコメンテーター、書籍の著者──ほぼすべて男性。ようこりん氏は、この性別の壁を破った。彼女に続く女性投資家は、これから無数に現れるだろう。
私が最も学ぶべきだと感じるのは、ようこりん氏の「投資を人生の一部にする」姿勢である。投資は、特別な時間に特別な道具を使う特殊な行為ではない。日常の買い物の延長線上にある、自然な営みだ。家計を回すように銘柄を選び、家族の楽しみのように優待を消費する。これは投資の最も健全な形である。
次に株主総会の招集通知を受け取るとき、それを「ただの紙切れ」として捨てるのではなく、「経営者の話を直接聞ける機会」として捉えてみてほしい。愛知県のどこかで、今日も愛知から東京へ通いながら株主総会に出席し、経営者を見極めようとする一人の主婦投資家がいる。彼女の背中は、すべての女性投資家にとっての希望の光である。
そして男性投資家にとっても、ようこりん氏は重要な学びをくれる。家庭・生活・人間関係を捨ててお金だけを追うのではなく、それらすべてを統合して「楽しい投資ライフ」を築くという選択肢。これこそ、令和時代の日本における、最も豊かな投資家像なのではないかと、私は確信している。

