全落ちした場合の「プランB」——公務員試験に不合格でも人生は終わらない

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はじめに——「不合格」を想定しておくことの重要性

公務員試験の倍率は高い。全力で対策しても、不合格になる可能性は十分にある。3つの自治体を受験して、3つとも不合格。「全落ち」。この結果を突きつけられたとき、精神的なダメージは甚大だ。100社落ちた22歳のトラウマが蘇る。「やっぱり自分はダメなんだ」。

だが「全落ち」は「人生の終わり」ではない。「公務員になれなかった」だけであり、「人間として価値がない」のではない。公務員試験は「スキルの試験」であり「人間性の試験」ではない。不合格は「今回のスキルが基準に達しなかった」だけ。来年また受ければいい。来年が無理なら、別の道がある。

この記事では「全落ち」した場合の精神的な立ち直り方と、「プランB」(公務員以外の選択肢)を示す。公務員試験は「人生の唯一のチャンス」ではない。複数の選択肢を持つことで、「全落ち」のダメージを最小化する。

「全落ち」の精神的ダメージから立ち直る

全落ちの通知を受け取った直後は、落ち込んでいい。悔しい。悲しい。怒りがある。これらの感情は自然だ。無理にポジティブになる必要はない。1週間は落ち込む。発泡酒を余分に1本飲む。もやし炒めを食べる。布団にくるまる。これでいい。

だが1週間を過ぎたら、「次」を考え始める。「次」には2つの方向がある。方向1は「来年もう一度受験する」。方向2は「公務員以外の道に進む」。

方向1「来年もう一度受験する」。公務員試験は毎年実施される。今年ダメでも来年がある。今回の不合格で「自分の弱点」がわかったはずだ。筆記が足りなかったのか、面接で落ちたのか。弱点を特定し、来年までに克服する。1年間の追加勉強で、合格圏内に入る可能性は十分にある。「2回目の挑戦で合格」した人は実際にいる。

方向2「公務員以外の道に進む」。公務員だけが「安定した正規雇用」ではない。民間企業の正社員、契約社員から正社員への登用、起業、フリーランス。選択肢は複数ある。公務員にこだわりすぎて、他の選択肢が見えなくなるのは危険だ。

プランB-1:「来年再挑戦する」ための戦略

来年もう一度受験すると決めた場合、「同じ勉強を繰り返す」だけではダメ。不合格の原因を分析し、「今年と違う対策」をする。

筆記で落ちた場合。勉強量が足りなかった→勉強時間を増やす。苦手分野を放置していた→苦手分野を重点的に対策する。時間配分が悪かった→本番形式の模擬試験を繰り返し、時間配分を体に叩き込む。

面接で落ちた場合。志望動機が弱かった→自治体の政策を深く調べ、より具体的な志望動機を作る。自己PRが伝わらなかった→エピソードを具体化し、数字を入れる。緊張しすぎた→模擬面接の回数を増やす。ハローワークの模擬面接を月に1回受ける。

「受験先を増やす」のも有効な戦略。今年3つ受けたなら、来年は5つ受ける。受験先が増えれば、「どこかに合格する」確率が上がる。全国どこの自治体でも受験可能なら、「住んでもいい地域」を広げて受験先を増やす。

プランB-2:「民間企業の正社員」を目指す

公務員がダメなら民間企業の正社員を目指す。45歳の正社員就職は厳しいが「不可能」ではない。特に以下の業種は、中年未経験者でも正社員採用がある。

介護業界。慢性的な人手不足。45歳未経験でも採用される。介護職員初任者研修(5〜10万円)を取得すれば、選択肢が広がる。正社員で月給18〜22万円。ボーナスあり。退職金制度がある事業所もある。

警備業界。中高年の男性が多く活躍する業界。正社員採用あり。月給18〜25万円。夜勤がある場合は手当が加算される。体力的にはきついが、安定雇用が得られる。

ビル管理・マンション管理。中年以降に人気の職種。正社員または契約社員(正社員登用制度あり)。月給15〜22万円。体力的な負担が比較的軽い。

運輸・配送。ドライバー不足で採用ハードルが低い。普通免許があれば応募可能。正社員で月給20〜30万円。体力的にはきつい。

IT系のヘルプデスク・カスタマーサポート。IT系のスキル(基本的なPC操作)があれば、ヘルプデスクの正社員求人がある。月給20〜25万円。コールセンター経験があればさらに有利。

プランB-3:「契約社員→正社員登用」を狙う

最初から正社員として採用されなくても、「契約社員として入社→正社員に登用される」ルートがある。多くの企業が「正社員登用制度」を持っている。契約社員として1〜3年働き、実績を認められれば正社員に登用される。

正社員登用率が高い業種。小売業(スーパー、ドラッグストア)。外食産業(チェーン店の店長候補)。介護(実績を積めば登用される可能性が高い)。製造業(派遣→契約社員→正社員のステップアップ)。

注意点。「正社員登用制度あり」と求人に書いてあっても、実際の登用率は企業によって異なる。面接時に「過去○年間で何人が正社員に登用されましたか」と質問する。具体的な数字が出てこなければ、制度が形骸化している可能性がある。

プランB-4:「資格を取ってスキルアップ→転職」

公務員試験の勉強で身につけた「勉強する習慣」を活かし、民間で評価される資格を取得する。資格があれば、転職市場での評価が上がり、正社員の求人に応募しやすくなる。

おすすめの資格(公務員試験の勉強と相性がいいもの)。日商簿記2〜3級(事務系の転職に有利)。宅地建物取引士(不動産業界で必須。年収アップに直結)。社会保険労務士(受験資格に注意。合格すれば専門職として独立も可能)。介護福祉士(介護業界でのキャリアアップに直結)。

公務員試験で「数的推理」「社会科学」を勉強した経験は、簿記や宅建の勉強にも活きる。「勉強する筋肉」がすでに鍛えられているので、新しい資格の勉強もスムーズに進む。

プランB-5:「今の派遣を戦略的に続ける」

公務員にも正社員にもならず、派遣社員を「戦略的に」続ける。前のエッセイ(転職01)で解説した「ゆるい働き方」の戦略だ。

戦略的な派遣の選び方。厚生年金に加入できる案件を選ぶ。時給が高い案件を選ぶ(資格やスキルで時給交渉する)。スキルアップにつながる案件を選ぶ。副業が可能な派遣元を選ぶ。

派遣を続けながら、NISAで資産形成を進める。月25000円の積立を20年間で1028万円。公務員にならなくても、NISAの1028万円+年金で「最低限の老後」は確保できる。公務員ほどの生涯賃金は得られないが、「生き延びる」ことはできる。

「全落ち」しても失われないもの

全落ちしても、公務員試験の勉強で「得たもの」は消えない。

得たもの1は「勉強する習慣」。200時間の勉強で身につけた「毎日1〜2時間学ぶ」習慣。この習慣を別の資格勉強に転用できる。得たもの2は「基礎学力の回復」。20年ぶりの勉強で、数学的思考力、読解力、論理的思考力が回復した。これらは仕事でも日常でも役立つ。得たもの3は「挑戦した自分への自信」。「やってみた」経験は、「やらなかった」よりも確実に自信になる。不合格でも「挑戦した自分」を褒められる。得たもの4は「自分の弱点の把握」。筆記が苦手なのか、面接が苦手なのか。自分の弱点がわかれば、次の挑戦(公務員に限らず)で対策できる。

これらの「得たもの」は、不合格でも消えない。消えないどころか、次の挑戦の「武器」になる。全落ちは「終わり」ではなく「次の始まり」の材料だ。

まとめ——「プランBがある」安心感が、プランAの合格率を上げる

逆説的だが「不合格でも大丈夫」と思えている人のほうが、面接でリラックスして話せる。リラックスして話せる人のほうが、面接で好印象を与える。好印象を与える人のほうが、合格する。つまり「プランBを持っている人」のほうが「プランA(公務員合格)の成功率が高い」。

プランBは「保険」であると同時に「プランAの後押し」でもある。プランBがあるから、プランAに全力で臨める。全力で臨めるから、合格する。合格すれば、プランBは不要になる。不要になったプランBは、引き出しにしまっておく。「必要なかった保険」として。

公務員試験を受ける前に、プランBを1つだけ決めておこう。「不合格だったら介護の資格を取る」「不合格だったら来年もう一度受ける」「不合格だったら簿記2級を取って事務職の正社員を探す」。1つ決めておくだけで、心が軽くなる。軽くなった心で、公務員試験に臨む。

このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

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