就職氷河期世代とブラック企業

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ブラック企業とはなにか

ブラック企業は俗語であり、学術的には明確な定義はありません。ある人にとってはブラック企業であると感じられても、他の人にとってはブラック企業とは感じられない場合もあります。あくまでも主観的な概念であると言えます。例えば、年収が300万円で週に80時間働いたとして、それは労働基準法など何らかの法律に違反するとしても、本人がブラック企業だと思わなければブラック企業であるとは言えないわけです。極端な場合、年収が1000万円で定時に帰れたとしても本人がブラック企業であると思えば、ブラック企業です。概念があまりにも広くいまだに学術的な定義づけされておらず、また、行政もきちんと定義していなことからもブラック企業の問題が根深いことが分かります。

例えば、労働に正当な対価を支払わない企業も当てはまります。本来ならば、500万円貰えるような仕事をしていても、200万円しか支払わないような収奪的な労働環境を放置しているような企業が当てはまります。例えば、スーパーで対価であるお金を払わないで出ていくと捕まりますが、労働の場合は正当な対価を支払わなくても捕まることはあまりありません。労働基準監督署などもありますが、ほとんど機能しておらず、労働者のなかには収奪されていることに気が付かない人もいます。

また、労働者を都合よく利用することを考えて精神的に支配するような企業もブラック企業の特徴です。新入社員を合宿で集めて、創業者や企業の理念を覚えるまで帰さなかったり、軍隊的な行動を強要するなどして、新入社員を従順な労働者に仕込むなどは序の口です。そこで従順になれなかった人間は、自主退職するように仕向けられるか、パワハラを受け病んでしまうかという世界になります。

なぜ日本にブラック企業が生まれたか

日本におけるブラック企業の問題は、複数の要素が組み合わさって生じています。以下に主な要因を挙げます。

過酷な労働文化: 日本には「働きづめ」や「残業が当然」といった過酷な労働文化が根強く存在します。このような文化は、企業が長時間労働や休日出勤を強制する環境を生み出し、ブラック企業を助長する傾向があります。

経済的な困難: バブル崩壊後の経済的な困難は、企業がコスト削減を優先し、労働者の権利や福祉を犠牲にすることを促進しました。これは、特に非正規雇用者の増加と関連しています。

労働法の適用と監督の問題: 日本の労働法はある程度の保護を提供していますが、その適用や監督に問題があります。法律が十分に適用されない場合や、違反が適切に罰せられない場合、企業は労働者の権利を侵害する可能性が高くなります。

求職者の情報不足: 求職者が企業の労働環境について十分な情報を持っていないと、ブラック企業に入社するリスクが高まります。特に新卒者や若年労働者は、自分の労働権利や適切な労働環境について十分な知識を持っていないことが多く、ブラック企業の犠牲になる可能性が高いです。

過度の正社員中心主義: 日本の労働市場は伝統的に正社員中心であり、一度入社した企業で終身雇用と年功序列が保証されるという考え方がありました。しかし、経済状況の変化とともに、このシステムは崩壊し、多くの企業が正社員を削減し、代わりに非正規の労働者を増やす傾向にあります。これにより、労働者が不安定な雇用状況に置かれ、ブラック企業に就職するリスクが増えました。

これらの要素が複雑に絡み合い、日本にブラック企業が存在する背景を形成しています。社会全体でこれらの問題を解決することで、ブラック企業の問題を減少させることができるでしょう。

就職氷河期世代とブラック企業

インターネットが普及しだしてからは、ある企業がブラック企業であるかどうかの情報を得ることがかなり容易になりました。ブラック企業を番付化した掲示板が存在したり、ブラック企業を逆表彰するような動きもインターネット上では見られました。新入社員が会社名を入力すれば、ブラック企業かどうか思っている人が多いかどうかが分かるようにはなってきています。

就職氷河期世代が就職活動をする頃には、インターネットの利用が広まっており、志望会社がブラック企業であるかどうかはある程度分かるようになっていました。しかし、就職氷河期世代のひとの多くは、内定を得るために苦労した為、志望会社がブラック企業であると分っていても生活の為入社せざるを得ない場合が多数存在しました。その心中察するに余りあります。

日本に寄生するブラック企業

安い日本という言葉が流行りだしてだいぶ経過しますが、その裏には安い労働があることを忘れてはいけません。理由なく良質で安いものを届けることなどまず不可能です。顧客が安いものを求めるから企業が安く物を作る。企業が安く物を作るためには賃金を下げなければいけない。この連鎖が日本を苦しめてきました。

顧客が安い商品やサービスを提供するために企業はブラック化せざるを得なかった側面もあります。ブラック企業を正当化するわけではなく、卵が先か鶏が先かという話になってしまいますが、高品質の商品やサービスに対して労働者つまりは消費者が正当な対価を払えるようにならないと日本自体を滅ぼしかねないです。労働者の質が低下し、高品質な商品やサービスが提供できなくなれば、大した資源のない日本はその地位を下げていくばかりでしょう。

正当な金額の給料が支払われないと、労働者は子供を産み育てることすらできません。現在起こっている少子高齢化の原因の一つは、結婚適齢期の就職氷河期世代を行政や産業界が無策のまま放置したツケです。子どもはぜいたく品とまで考えられているようです。このままでは国の存亡にまで関わります。

ブラック企業を減少させるためにはどうすればよいか

ブラック企業の問題に対処するための詳細なアプローチについて説明します。

労働法の適用と強化: 既存の労働法の徹底的な適用が必要です。また、現行法が不十分な場合や適用範囲が限定的な場合は、法改正を通じて労働者の権利をさらに保護することが重要です。たとえば、労働時間の規定を厳格にする、違法な解雇を防ぐための規定を設ける、賃金未払いに対する罰則を強化するなどの措置が考えられます。

監査と検査の強化: 労働基準監督署などの公的機関は、企業が労働法を遵守しているかどうかをチェックする役割を果たします。これらの機関の人員を増やし、より頻繁に検査を行うことで、法令遵守の確保と違反企業の摘発が可能になります。

情報の透明性: 企業の労働環境に関する情報が透明であると、求職者はブラック企業を避けることが容易になります。企業の評判や労働環境についての情報を公開するプラットフォーム(企業評価サイトなど)の利用を推進することも有効です。

教育と意識の啓発: 労働者自身が自分の労働権利を理解し、それを守るために必要な行動をとるための教育が重要です。学校教育や職場教育の一環として、労働法や働き方についての教育を強化することが有効です。

働き方改革: 長時間労働や過度なストレスを引き起こす働き方を改革することも必要です。これには、労働時間の短縮、リモートワークやフレキシブルワークの導入、労働者の健康と福祉に配慮した職場環境の整備などが含まれます。

このような取り組みを進めるためには、政府の政策、労働者の意識、企業の経営方針など、さまざまな要素が結びつくことが求められます。特に、労働者の権利を尊重する企業文化を形成することが、ブラック企業問題の解決に向けた重要なステップとなります。

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