就職氷河期世代と節約

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就職氷河期世代の就職と収入事情

就職氷河期世代の人たちは、新卒時に極度の不況にあり企業が新卒採用を絞っていた為キャリア形成が上手くいっていない人が多く、前後の世代と比べると統計上年収がやや低いとされています。勤続年数に応じて年収が増える賃金体系ではない中小企業に就職している人が多く、また、勤続年数と年収があまり関係がないパートや派遣社員など非正規雇用の人が多いからであるという説が有力です。

正社員は勤続年数が増加していくにつれ、職位が上昇することで役職手当がついたり、年功序列により年収が増えていく傾向があります。一般的には50歳前後で年収は最高になる場合が多いようです。定年間際になると役職定年になり、年収が減少する傾向がありますが、ほぼ右肩上がりの年収体系となっています。企業の業績が好調であれば多額のボーナスも期待できます。また、大手企業であれば多額の退職金を受け取ることが出来ます。

就職氷河期世代において多いとされる派遣社員やパートなど非正規雇用は勤続年数が増加しても年収がほとんど増加しません。長く勤務することで生産性が向上したとしても評価はされず、ほぼ同じ賃金です。また、経済不況が訪れると真っ先に”雇用の調整弁”として解雇される為、キャリアの一貫性を保つことが難しく、市場価値が低くなってしまいがちです。非正規雇用の人に対しては、ボーナスは支払われないか寸志程度である為、大企業勤務の正社員と比べると年収差は極めて大きくなります。

就職氷河期世代の人でも、大手企業の正社員という恵まれた待遇を得られる立場を得た人はいますが、全体としては待遇の劣る中小企業の正社員や、非正規雇用の立場にいる人たちは少なくありません。もちろん経済が好調でも皆が待遇の良い大手企業の正社員になれるわけではありません。

多くの就職氷河期世代のひとたちは、採用数が極度に絞られ、椅子のない椅子取りゲームのような新卒採用を強いられた為、スタートダッシュでつまづきました。その後努力して巻き返しができればよかったのですが、政府や企業は採用において新卒至上主義を取り続けました。新卒時に就職に失敗するといくら努力してもその後の転職にも大きく響くシステムを改善しようとしませんでした。特に日系の大手企業に顕著ですが、新卒でしか採用を行わない企業はいまだに多数存在します。

就職氷河期世代と節約

就職氷河期世代は、厳しい経済状況と就職難に直面した経験から、財政的に保守的な傾向があります。以下、この世代が節約に対してどのような意識を持っているか、具体的に見ていきましょう。

経済的な保守性: この世代の多くは、初めての就職先が非正規雇用や低賃金の仕事だった経験を持つため、経済的な不安定さに対する敏感さがあります。このため、無駄遣いを避け、必要最低限の生活費に絞って生活することを選びます。これにより、節約や貯蓄に向かう傾向が見られます。

安定志向: 雇用の不安定さを経験したことから、この世代は金銭的な安定を重視します。そのため、無理な消費を避け、定期的な収入と比較して生活費を抑えることで、経済的な安定を求める傾向があります。

投資への慎重さ: 長期的な経済的な不安定さを経験したこの世代は、リスキーな投資に慎重である可能性があります。そのため、節約を通じて資金を貯め、リスクの低い投資に回すことを選ぶことが多いです。

以上のように、就職氷河期世代は経済的な保守性、安定志向、投資への慎重さという特徴から、節約に対する高い意識を持っています。しかし、この傾向が個々の経済的な安定をもたらす一方で、消費の抑制という形で経済全体に影響を与える可能性もあります。それぞれの世代が経済的な安定と消費のバランスをとることが、持続可能な社会経済を築くためには重要となります。

節約志向と日本の没落

日本経済が低迷して長い年月が経ちますが、いまだに回復への道筋は見えません。「失われた10年」が20年になり、30年になりました。就職氷河期世代への対応の失敗は、日本経済が低迷を始めた一因であり、日本の没落への引き金を引いたのではないでしょうか。一部の世代の不遇というだけであり、本人たちの自己責任だと問題を矮小化していたつもりが、結局は日本の構造的な問題を表していた氷山の一角だったのです。

年収が多くなければ、当然支出を抑えるしかないので、住宅や結婚など多額の費用が掛かることへの支出は避けられてしまいがちです。将来が不安であれば支出を抑えてその分を貯蓄に回す心理が強くなります。本来なら消費に回ったようなお金も貯蓄に回る為、消費活動が低迷してしまいます。回りまわって日本経済の低迷にも繋がっています。日本経済は輸出産業で成り立っていると思われがちですが、最大の消費主体は内需です。内需が低迷すれば、日本経済が沈むことは当然です。極端な話ですが、消費できる人がいなくなればいくら生産しても全く経済は回りません。

「今日より明日がよくなる」という言葉を聞かなくなって久しいですが、将来の見通しが暗ければ誰もが守りに入ります。個人レベルではクルマや家などを買わなくなり、そういった商品に関連した企業の業績は低迷します。そうなると、企業も設備投資や人材採用を抑える為、ますますおカネは循環しなくなります。「今日より明日がよくなる」ともう一度みんなが思わなければ、日本の経済回復はないでしょう。

今は、多くの日本人は衣食住には困っていません。とりあえずの生活はできています。しかし、それが逆に問題ではないでしょうか。じわじわと国力が弱っていることに気づかず、気づいた時には手遅れとならないことを願うのみです。

日本人が皆節約するようになると起きること

全ての日本人が一斉に節約を始めた場合、その影響は経済全体に及びます。主な影響は以下のようなものが考えられます。

消費の減少: 皆が節約を始めると、消費が減少します。特に、余裕があるときにしか購入しないような高価な商品やサービスの需要が大きく落ち込む可能性があります。消費が減少すると、それに依存する企業の売上や利益も同時に減少します。

経済成長の鈍化: 消費は経済成長の重要なドライバーであり、消費の減少は経済成長を鈍化させる可能性があります。特に日本のような先進国では、内需が大きな割合を占めるため、その影響は深刻になりえます。

デフレーション: 供給が一定で需要(消費)が減少すると、物価は下落する傾向があります。これはデフレーションと呼ばれ、経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります。デフレーションが続くと、企業の利益が減少し、賃金を下げるか人員を削減する可能性があり、結果的にさらなる消費の減少を招きます。

貯蓄の増加: 一方で、皆が節約すると、個人の貯蓄は増えます。貯蓄が増えること自体は、個人の資産を増やし、将来のリスクに対する保護を提供します。しかし、貯蓄が過剰になると、経済全体のマネーサプライが減少し、経済活動が活発に行われにくくなる可能性があります。

消費減少による産業の影響: 消費者の支出が減ると、それに依存している小売業、製造業、サービス業などの売上が減少します。これは企業の経営を困難にするだけでなく、雇用の創出にも影響を及ぼす可能性があります。

投資の減少: 節約により消費が減少すると、企業の売上や利益が減少する可能性があります。それにより、新たな事業展開や設備投資、研究開発への投資を控える可能性があり、それが経済成長の遅れにつながる可能性があります。

金融市場への影響: 人々が節約に走ると、銀行に預金が増える可能性があります。これは一見良いことのように思えますが、企業が投資を控える傾向があると、銀行が資金を貸し出す先が減り、金利が低下する可能性があります。さらに、金利の低下はさらなる節約を促進し、デフレスパイラルを引き起こす可能性があります。

社会保障への影響: 消費が減少すると、消費税収入も減少します。日本では、消費税は社会保障費の財源となっていますので、その減少は社会保障の安定に影響を及ぼす可能性があります。

以上のような影響があるため、節約は個人レベルでは賢明な行動であるとしても、全員が同時に節約すると経済全体にとっては必ずしも良い結果をもたらさない可能性があります。経済全体の健全な成長を維持するためには、消費と貯蓄のバランスが重要となります。「贅沢は素敵だ!」な側面もあるということですね。

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