就職氷河期世代の「見栄を捨てる」と年間いくら浮くか——他人の目を気にしないだけで節約できる金額を全部計算した

この記事は約6分で読めます。

就職氷河期世代の「見栄を捨てる」と年間いくら浮くか——他人の目を気にしないだけで節約できる金額を全部計算した

はじめに——「見栄」は高くつく

節約術のガイドをいくつも書いてきたが、実は最も効果の大きい節約は「テクニック」ではなく「マインドセット」の問題かもしれない。具体的に言えば「見栄を捨てる」ことだ。

見栄とは何か。他人にどう見られるかを気にして、本来不要な出費をすることだ。ブランドの服を着る。新車に乗る。高い店で食事する。最新のスマートフォンを持つ。これらの消費の中には、「自分が本当に欲しいから」ではなく「他人にどう見られるかが気になるから」という動機で行われているものがある。この「他人の目のための出費」が、見栄のコストだ。

氷河期世代は、すでに多くの見栄を捨ててきた世代だ。正社員になれなかったことで、「正社員の見栄」は捨てざるを得なかった。結婚していないことで、「既婚者の見栄」も持てない。だがそれでもまだ、無意識のうちに「見栄」にお金を使っている部分があるかもしれない。

このガイドでは、日常生活の中に潜む「見栄のコスト」を項目ごとに洗い出し、すべて捨てた場合にいくら浮くかを計算する。

見栄コスト1:スマートフォン

最新のiPhoneは10万円以上する。2年ごとに買い替えれば、年間5万円のスマートフォン代。だがスマートフォンの機能の大部分は、3万円の中古品でも2万円の格安端末でもカバーできる。電話、LINE、メール、ウェブ検索、地図、カメラ。これらは2〜3万円の端末で十分にこなせる。

最新のiPhoneを持つ理由が「カメラの画質」「処理速度」ならば、それは機能的なニーズだ。だが「最新のiPhoneを持っていないと恥ずかしい」ならば、それは見栄だ。

見栄のコスト。最新iPhone(12万円/2年)vs 中古Android(2万円/3年)。差額は年間約53000円。この53000円が「見栄代」だ。

見栄コスト2:衣服

職場に着ていく服、私服、靴。「ユニクロやしまむらの服はダサい」と思って、少し高い服を買っていないか。「100均の靴下は恥ずかしい」と思って、ブランドの靴下を買っていないか。

ユニクロのTシャツ1枚1000円で十分に清潔感のある服装ができる。しまむらのパンツ1本1500円でも、サイズが合っていれば見た目は問題ない。「清潔感」は価格で決まらない。洗濯をこまめにして、シミや穴がなければ、安い服でも清潔感は出せる。

見栄のコスト。「それなりの服」(年間衣服代5万円)vs「最低限の服」(年間衣服代1万円)。差額は年間4万円。

見栄コスト3:飲み会・外食

「飲み会に行かないと付き合いが悪いと思われる」。この見栄のコストは大きい。1回の飲み会で3000〜5000円。月に2回行けば月6000〜10000円。年間72000〜120000円。

飲み会を全部断ったらどうなるか。最初は「付き合いが悪い」と言われるかもしれない。だが3ヶ月もすれば「あの人は飲み会に来ない人」として認識され、誘われなくなる。誘われなくなれば、断る必要もなくなる。断る罪悪感もなくなる。

飲み会を完全にゼロにするのが難しければ、月1回に減らす。月1回×4000円=年間48000円。月2回から月1回に減らすだけで、年間48000〜72000円の節約。

見栄コスト4:交通手段

「自転車通勤は恥ずかしい」「バスより電車のほうがスマート」「電車でも各駅停車ではなく急行に乗りたい」。これらは見栄のコストだ。

自転車通勤ができる距離(片道10km以内)なら、交通費がゼロになる。定期代が月1万円なら、年間12万円の節約。自転車は中古で1万円で手に入る。1年で元が取れて、2年目以降は純粋な節約だ。

「バスと電車と徒歩の組み合わせ」で通勤ルートを最適化するのも効果的だ。1駅分を歩くだけで、定期代が月に数百円〜数千円安くなることがある。

見栄コスト5:住居

「駅近のきれいなマンションに住みたい」。この希望の中に、見栄が含まれていないか。駅から徒歩5分の築10年のマンションと、駅から徒歩15分の築30年のアパート。家賃の差は月1〜3万円。年間12〜36万円。

駅から遠い古い物件でも、清潔に住んでいれば生活に支障はない。住所を人に教えるとき「古いアパートなんですが」と恥ずかしく思うかもしれない。だが住所で人を判断する人とは付き合わなくていい。住む場所は自分の生活のためのものであり、他人に見せるためのものではない。

見栄コスト6:贈り物・プレゼント

「安いものを贈ると恥ずかしい」。この見栄で、身の丈に合わない高いプレゼントを買っていないか。贈り物の価値は金額ではなく気持ちだ。手作りのカード、100均のラッピング、メッセージを添えた小さな贈り物。金額は低くても、心がこもっていれば受け取る側は嬉しい。

見栄コストの合計

ここまで計算した「見栄のコスト」を合計してみよう。

スマートフォン:年間53000円。衣服:年間40000円。飲み会:年間48000〜72000円。交通費:年間120000円(自転車通勤に切り替えた場合)。住居:年間120000〜360000円。贈り物:年間10000〜20000円。

合計:年間391000〜665000円。約40万〜67万円。

40万〜67万円。この金額が「見栄」のために使われている(可能性がある)。すべての見栄を捨てれば、年間40万〜67万円が浮く。NISAの年間投資枠の半分以上。10年で400万〜670万円。老後の資金として十分な金額だ。

もちろん、すべての項目を最低限にするのは現実的ではないかもしれない。住居を変えるのは簡単ではないし、自転車通勤ができない距離もある。だが「この出費の中に見栄が含まれていないか」と自問するだけで、無駄な出費を減らせる可能性がある。

「見栄を捨てる」のは難しい

見栄を捨てるのは、理屈ではわかっていても実行が難しい。なぜ難しいか。

理由1は「社会的プレッシャー」。周囲が新しいスマートフォンを持っていれば、自分も欲しくなる。周囲が飲み会に参加していれば、自分だけ不参加は気が引ける。社会は「消費すること」を推奨する。消費しない人間は「ケチ」「付き合いが悪い」とラベリングされる。このラベリングが怖い。

理由2は「自己肯定感との結びつき」。「良いものを持っている自分」=「価値のある自分」。この等式が無意識に刷り込まれている。良いものを手放すと、自分の価値が下がるように感じる。だがこの等式は幻想だ。人の価値は、持ち物で決まらない。

理由3は「習慣の力」。長年の消費パターンを変えるのは、新しい習慣を作るのと同じくらい難しい。毎月スマートフォンの分割払いをしていれば、それが「普通」になっている。普通を変えるには、意識的な努力が必要だ。

見栄を「選択的に」捨てる

すべての見栄を一度に捨てる必要はない。「選択的に」捨てる。自分にとって重要度の低い見栄から順に捨てていく。

例えば「衣服の見栄は捨てるが、住居の見栄は残す」。あるいは「スマートフォンの見栄は捨てるが、飲み会は月1回だけ参加する」。すべてを捨てなくても、一部を捨てるだけで年間数万円の節約になる。

どの見栄を捨て、どの見栄を残すかは、自分の価値観で決める。「自分にとって本当に大切なもの」にはお金を使い、「他人の目のために使っているもの」は削る。この仕分け作業が、「見栄を選択的に捨てる」ということだ。

まとめ——見栄を捨てた先にある「自由」

見栄を捨てると、お金が浮く。お金が浮くと、選択肢が増える。選択肢が増えると、自由度が上がる。自由度が上がると、人生が楽になる。

見栄を捨てることは「恥ずかしいこと」ではない。「賢いこと」だ。他人の目ではなく、自分の基準で消費を判断する。この判断力こそが、氷河期世代の最強の節約スキルだ。

年間40万〜67万円。この金額が「他人の目」のために消えている可能性がある。他人の目は、自分の老後を助けてくれない。自分の老後を助けるのは、自分の貯蓄だ。貯蓄を増やすために、見栄を捨てる。見栄を捨てた先に、本当の「自分らしい生活」がある。

タイトルとURLをコピーしました