戦前の日本軍と戦後の日本的雇用制度の関係をやさしく考える

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戦前の日本軍と日本的雇用制度の類似性

日本の会社の働き方について、「なんだか軍隊みたいだ」と感じたことがある人もいるかもしれません。上司の指示は強く、長く勤めることが美徳とされ、会社への忠誠心が重視される。こうした特徴から、「戦前の日本軍の考え方が、戦後の企業にも影響を与えたのではないか」と言われることがあります。

では本当に、戦前の日本軍と戦後の日本的雇用制度、特に終身雇用や年功序列には関係があるのでしょうか。この問題を考えるときに大切なのは、「直接の原因と結果」と「文化的・社会的な共通点」を分けて考えることです。

戦前の日本軍の特徴

まずは、戦前の日本軍について見てみましょう。戦前の日本は、軍事を非常に重視する国家でした。軍隊の中では、はっきりとした階級制度があり、上官の命令は絶対でした。兵士一人ひとりの考えよりも、部隊全体としてどう動くかが重要とされ、個人よりも集団が優先されていました。

また、兵士には国や天皇、そして組織に対する強い忠誠心が求められていました。その代わり、軍隊は兵士に対して食事や住居、医療など、生活に必要なものをまとめて提供していました。軍に所属することで、最低限の生活は保障されていたのです。

日本的雇用制度の特徴

次に、戦後の日本的雇用制度を見てみます。戦後、日本の多くの企業では終身雇用制度が広まりました。これは、一度会社に入ったら定年まで働くことを前提とした仕組みです。会社は社員を簡単に解雇せず、安定した給料やボーナス、福利厚生を提供します。その代わり、社員は会社に長く勤め、組織に貢献することが期待されます。

さらに、日本企業では年功序列も一般的でした。若いうちは給料が低くても、年齢や勤続年数を重ねることで、少しずつ昇進し、給料も上がっていく仕組みです。このような制度は、社員に「長く働けば報われる」という安心感を与えてきました。

旧日本軍と日本的雇用慣行の共通点・相違点

ここで、戦前の日本軍と戦後の企業を比べると、いくつか似ている点があることに気づきます。たとえば、階級や序列がはっきりしていること、組織への忠誠心が重視されること、そして組織が成員の生活をある程度支えていることです。個人よりも集団を優先する考え方も共通しています。

ただし、これらの共通点があるからといって、「日本的雇用制度は日本軍がそのまま形を変えたものだ」と言うのは正確ではありません。軍隊は国家による強制的な組織であり、兵士は簡単にやめることができませんでした。一方、企業で働くことは本来、個人の自由な選択に基づくものです。転職の自由もあり、性質は大きく異なります。

日本的雇用慣行の合理性・非合理性

では、なぜこのような似た特徴が生まれたのでしょうか。そのヒントの一つが、戦後の「復員兵」にあります。第二次世界大戦が終わると、多くの兵士が一斉に社会に戻ってきました。彼らは軍隊で、集団生活や厳しい上下関係、規律ある行動に慣れていました。

こうした人々にとって、組織の中で長く働くことを前提とした企業の働き方は、比較的なじみやすいものでした。企業側から見ても、規律を守り、組織行動ができる人材は魅力的でした。このように、人の移動を通じて、軍隊的な働き方の感覚が企業社会に持ち込まれた面は否定できません。

さらに重要なのが、高度経済成長という時代背景です。戦後の日本は、1950年代後半から1970年代にかけて急速に経済成長しました。経済がどんどん拡大していく中で、企業は人を長期的に育てる余裕を持つことができました。社員を一生雇い続けても、会社が成長すれば成り立ったのです。

この時代において、終身雇用や年功序列はとても合理的な制度でした。社員は安心して働き、企業は熟練した人材を確保できました。日本的雇用制度は、軍隊的だから広まったというよりも、当時の経済状況にうまく合っていたから定着したと言えるでしょう。

では、この日本的雇用制度は、今の時代にはもう合わないのでしょうか。確かに、経済成長が鈍化し、働き方が多様化した現代では、終身雇用や年功序列がうまく機能しにくい場面も増えています。成果や能力が評価されにくい、人の入れ替えが難しいといった問題も指摘されています。

一方で、雇用の安定や安心感というメリットは、今でも多くの人にとって大切です。問題は制度そのものというより、それを「変えてはいけないもの」と考えてしまうことかもしれません。時代に合わせて柔軟に見直していく姿勢が求められています。

まとめ

まとめると、戦前の日本軍と戦後の日本的雇用制度の間に、単純な因果関係はありません。しかし、日本社会に長く根づいてきた価値観や、戦後の人材の流れ、高度経済成長といった条件が重なった結果、似た特徴を持つ仕組みが生まれたと考えることはできます。こうした視点を持つことで、日本の働き方の特徴や、これからの働き方について、より深く考えることができるでしょう。

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