はじめに——「結婚=婚姻届を出すこと」は唯一の選択肢ではない
「結婚したい」と思ったとき、多くの人が「婚姻届を出す」ことを前提にする。だが「婚姻届を出さずにパートナーと暮らす」選択肢——「事実婚」がある。事実婚は「法律上の婚姻関係にはないが、事実上の夫婦として共同生活をする」形態。フランスでは「パクス(PACS)」と呼ばれる制度が普及しており、カップルの約40%がパクスまたは事実婚を選択している。日本でも事実婚の選択者は増加傾向にある。手取り16万円の氷河期世代にとって「事実婚」は——「法律婚」より合理的な選択肢かもしれない。
第1章 「事実婚」のメリット5つ——法律婚にはない自由
メリット1は「名字を変えなくていい」。法律婚では「夫婦同姓」が義務(民法750条)。実際には約96%の夫婦で「妻が夫の姓に変更する」。だが事実婚なら「お互いの姓を維持」できる。「名字を変える」のは「銀行口座」「クレジットカード」「保険証」「運転免許証」「パスポート」等の「すべての書類を変更する」大量の事務作業を伴う。手取り16万円の自由裁量費が少ない人間にとって「事務作業のコスト(時間+交通費+手数料)」は無視できない。事実婚なら「このコストがゼロ」。
メリット2は「離婚のコストが低い」。法律婚の離婚は「離婚届の提出」「財産分与」「慰謝料」「戸籍の変更」等の法的手続きが必要。弁護士費用が数十万円かかる場合もある。事実婚の「別れ」は——「別れます」で終わる。法的手続き不要。弁護士不要。「別れるコストが低い」ことは「別れやすい」ことでもあるが「別れのリスクが低い」ことでもある。「離婚の恐怖」が「結婚を躊躇させる要因」なら、事実婚は「その恐怖を軽減する」。
メリット3は「自由度が高い」。法律婚は「夫婦の義務」(同居義務、協力義務、扶助義務。民法752条)が法的に課される。事実婚は「法的な義務がない」(道義的な義務はあるが法的拘束力はない)。「自由度9/10」(独身の幸福度比較参照)を「できるだけ維持したい」氷河期世代にとって「法的義務のない共同生活」は「自由と安定の両立」に近い。
メリット4は「生活保護の受給資格に影響しない場合がある」。法律婚の場合「世帯収入」で生活保護の受給資格が判定される。事実婚の場合も「同居していれば世帯とみなされる」ケースが多いが、自治体によって判断が異なる場合がある。将来の「最悪のシナリオ」(二人とも失業した場合等)を考えたとき「法的に世帯が別」であることが「セーフティネットの選択肢を広げる」可能性がある(ただしケースバイケースであり、事前に自治体に確認が必要)。
メリット5は「婚姻届を出すのにお金がかからないのと同様に、出さないのもお金がかからない」。婚姻届自体は無料(0円)だが「結婚に伴う手続きの総コスト」は数万〜数十万円かかる場合がある(姓の変更手続き、保険の変更等)。事実婚なら「手続きのコストがゼロ」。「0円で始まる事実婚」。もやし炒めのコスト(60円)より安い。
第2章 「事実婚」のデメリット5つ——法律の保護がない部分
デメリット1は「配偶者控除が使えない」。法律婚なら「配偶者控除(38万円の所得控除)」が使える。事実婚では使えない。所得税率5%の場合、年間約1万9000円の差。「年間1万9000円の損失」はもやし炒め633食分。小さくない。
デメリット2は「相続権がない」。法律婚の配偶者は「法定相続人」。事実婚のパートナーは「法定相続人ではない」。パートナーが亡くなった場合「遺産を相続できない」。対策は「遺言書」。遺言書があれば法定相続人以外にも遺産を遺贈できる。ただし「遺留分」の問題がある(法定相続人が遺留分を主張する可能性)。NISAの90万円を「事実婚のパートナー」に確実に渡すには「遺言書の作成」が必須。
デメリット3は「社会保険の扶養に入れない場合がある」。法律婚の配偶者は「社会保険の被扶養者」になれる(年収130万円未満の場合)。事実婚でも「被扶養者」になれる場合があるが、健康保険組合によって対応が異なる。「確実に扶養に入れる」のは法律婚。
デメリット4は「社会的な認知度が低い」。「事実婚です」と言ったとき「え、籍は入れてないの?」「なんで?」の質問が来る。「説明のコスト」が発生する。親世代は「事実婚」を理解しない場合が多い。「ちゃんと籍を入れなさい」と言われるリスク。
デメリット5は「子どもが生まれた場合の法的問題」。事実婚の間に生まれた子は「非嫡出子(婚外子)」となる。父親の認知が必要。親権は原則として母親のみ(共同親権は法律婚の夫婦のみ。ただし法改正の動きあり)。「子どもを持つ予定がない」45歳の場合、このデメリットは「関係が薄い」。
第3章 「事実婚」の経済的メリットを計算する
事実婚の経済的メリットとデメリットを「数字」で比較する。メリット(法律婚と比較した場合の節約)。姓変更の手続きコスト不要:推定1万〜3万円の節約(1回限り)。離婚時のコスト不要(離婚した場合):推定5万〜50万円の節約。デメリット(法律婚と比較した場合の損失)。配偶者控除の不適用:年間約1万9000円の損失。相続税の不利:(NISAの90万円程度であれば基礎控除内なので影響なし)。
「年間1万9000円の損失」vs「姓変更のコスト節約+離婚リスクの軽減」。「年間1万9000円の損失」は10年で19万円。20年で38万円。「38万円の損失」は「大きい」が「離婚のコスト(最大50万円以上)を回避できる可能性」と天秤にかける。「離婚確率35%」を加味すると「離婚のコスト50万円×35%=17万5000円の期待損失」。「38万円の配偶者控除の損失」>「17万5000円の離婚の期待損失回避」。数字だけで見れば「法律婚のほうが経済的に有利」。ただし「離婚の精神的ダメージのコスト」を加算すれば——結論は変わりうる。精神的ダメージは「金額に換算できない」が「パニック障害の再発リスク」として考えると「治療費年間3万円×数年」。
第4章 「事実婚」に向いている氷河期世代のタイプ
タイプ1は「自由度を最も重視する人」。法律婚の「義務」が重荷に感じる人。「一緒にいたいから一緒にいる。義務だから一緒にいるのではない」の価値観。タイプ2は「離婚経験がある人」。「一度失敗した経験」から「法律婚のリスクを避けたい」人。マリッシュ等の「再婚向けアプリ」で出会った場合、相手も「事実婚に理解がある」可能性が高い。タイプ3は「子どもを持つ予定がない人」。45歳。子どもを持つ予定が「ない」または「低い」場合、事実婚のデメリット(子どもの法的問題)が「該当しない」。タイプ4は「もやし炒めの自由を守りたい人」。——半分冗談だが半分本気。「もやし炒めを食べたいときに食べる自由」を「法的な義務」で制限されたくない。事実婚なら「もやし炒めの自由」を「法的に保障」——されるわけではないが「法的に制限されない」。
第5章 「事実婚」の始め方——実務的な手順
手順1は「パートナーと合意する」。「婚姻届は出さず、事実婚として一緒に暮らそう」の合意。お互いの意思確認。「なぜ法律婚ではなく事実婚か」の理由をお互いに共有する。手順2は「住民票の手続き」。事実婚でも「住民票に『未届の妻(夫)』と記載できる」(世帯主の続柄欄)。この記載があると「事実婚であることの公的な証明」になる。手続きは市区町村の窓口で。無料。手順3は「生活のルールを決める」。家賃の分担。食費の分担。家事の分担。「結婚契約書」のようなものを自作しても良い(法的拘束力はないが「合意の記録」として有効)。
手順4は「遺言書を作成する」。「万が一のとき、NISAの資産をパートナーに渡す」ための遺言書。自筆証書遺言。法務局の遺言書保管制度(3900円)。「3900円でパートナーへの資産移転を確保する」。手順5は「緊急連絡先をお互いに設定する」。スマートフォンの緊急連絡先。エンディングノートにパートナーの情報を記載。「事実婚のパートナーは法的には『赤の他人』」であるため「緊急時に連絡が取れる体制」を自分たちで構築する必要がある。
結論——「事実婚」は「もやし炒め的な結婚」
法律婚は「フルコースの食事」。事実婚は「もやし炒め」。法律婚は「正式」「伝統的」「社会的に認知されている」「保障が手厚い」。事実婚は「シンプル」「自由」「低コスト」「手続きが少ない」。「フルコース」と「もやし炒め」のどちらが「良い食事」かは——「食べる人」が決める。「フルコースでなければ食事ではない」と考える人もいる。「もやし炒めでも栄養があればいい」と考える人もいる。
自分は——「もやし炒め的な結婚」を選ぶかもしれない。「法的な保障は少ないが、一緒に暮らす安心感がある」。「名刺のように正式なものはないが、中身がある」。「社会的な認知は低いが、二人の間では確か」。もやし炒めが「世間的には地味だが自分にとっては最高の食事」であるように、事実婚は「世間的には非主流だが自分たちにとっては最適な関係」になりうる。「最適を自分で選ぶ」。これが——23年間のサバイバルで学んだ「人生の哲学」だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。法的な内容については専門家にご確認ください。

