45歳の「公務員1年生」が職場で信頼を勝ち取る10の行動原則——年齢のハンデを武器に変える

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はじめに——「信頼」は公務員の最も重要な通貨

公務員の世界で最も大切なものは何か。スキルか。知識か。コネか。どれも大切だが、最も大切なのは「信頼」だ。上司からの信頼がなければ、重要な仕事は任されない。同僚からの信頼がなければ、チームの一員として受け入れられない。住民からの信頼がなければ、窓口の仕事は成り立たない。

45歳の中途採用者は「信頼ゼロ」からのスタートだ。プロパー職員には20年以上の信頼の蓄積がある。自分にはゼロ。このゼロを、できるだけ早く「プラス」に変えなければならない。変えるための「行動原則」を10個示す。10個すべてを実践すれば、入庁1年後には「この人は信頼できる」と思われる存在になれるはずだ。

原則1:「約束を守る」——最も基本的で最も効果的

信頼の基盤は「約束を守ること」だ。「明日までにこの書類を仕上げます」→明日までに仕上げる。「確認して折り返します」→確認して折り返す。「15時に会議室に行きます」→15時に行く。

当たり前のことだ。だが当たり前のことを「毎回、確実に」やり続ける人は意外と少ない。約束を守る回数が増えるほど、「この人は約束を守る人だ」という信頼が積み上がる。1回の約束を守っても信頼は生まれない。30回、50回、100回と守り続けることで、「この人に任せれば大丈夫」という確信に変わる。

守れない約束はしない。「明日までに」が無理なら、「明後日までにできますが、よろしいですか」と正直に言う。無理な約束をして守れないより、現実的な約束をして守るほうが信頼は高まる。

原則2:「報告・連絡・相談」を徹底する

「ホウレンソウ」。社会人なら誰でも知っている。知っているが、徹底できている人は少ない。特に45歳の中途採用者は「自分で判断して動きたい」プライドが邪魔をして、報告や相談を怠りがちだ。

公務員の組織では「報告・連絡・相談」が命綱だ。自分の判断で動いて問題が起きたとき、「なぜ報告しなかったのか」「なぜ相談しなかったのか」と責任を問われる。自分だけでなく上司にも迷惑がかかる。

報告の頻度は「多すぎるくらい」がちょうどいい。「こんなことまで報告するのか」と思われるかもしれないが、「報告がなくて困った」ことはあっても「報告が多すぎて困った」ことはほとんどない。上司は「部下の動きを把握していたい」ものだ。把握させてあげることが、上司への信頼の提供だ。

原則3:「ミスをしたら即座に報告する」

ミスは誰でもする。新人ならなおさら。問題は「ミスをしたこと」ではなく「ミスを隠したこと」だ。ミスを隠して後で発覚すると、「この人はミスを隠す人だ」というレッテルが貼られる。このレッテルを剥がすのは、ミス自体を修正するよりも遥かに難しい。

ミスをしたら、即座に上司に報告する。「すみません。○○の処理で間違いがありました。原因は△△です。現在□□の対応をしています」。ミスの内容、原因、対応状況をセットで報告する。報告すれば、上司が「次はこうすればいい」と指導してくれる。隠せば、問題が拡大してから「なぜ報告しなかったのか」と叱責される。

ミスを即座に報告する人は「誠実な人」と評価される。誠実さは信頼の原材料だ。

原則4:「謙虚でいる。ただし卑屈にならない」

45歳の新人が取るべき姿勢は「謙虚」だ。「教えてください」「ありがとうございます」「勉強になります」。これらの言葉を自然に使える人は、年下の先輩からも受け入れられやすい。

だが「謙虚」と「卑屈」は違う。「自分なんて何もできません」「こんな歳で申し訳ありません」「ご迷惑をおかけしています」。過度な自己卑下は「卑屈」であり、周囲を困らせる。卑屈な人には仕事を任せにくい。「この人に任せて大丈夫か」と不安にさせる。

謙虚でいつつ、自信を持つ。「まだ覚えることがたくさんありますが、精一杯やらせていただきます」。この言い回しが「謙虚+自信」の最適バランスだ。「覚えることがたくさんある」が謙虚。「精一杯やらせていただきます」が自信。

原則5:「雑用を喜んでやる」

コピーを取る。お茶を出す。ゴミを捨てる。備品を補充する。これらの「雑用」は、新人の仕事だ。45歳の新人であっても同じ。「45歳にもなって雑用かよ」と思う気持ちはわかる。だが雑用を「喜んでやる」人は、周囲から好かれる。好かれれば、仕事がしやすくなる。仕事がしやすくなれば、信頼が積み上がる。

雑用は「信頼の種まき」だ。種をまかなければ、花は咲かない。種をまけば、半年後に花が咲く。花=「あの人は何でも快くやってくれる。重要な仕事も任せてみよう」という信頼。

原則6:「メモを取る姿勢」を見せる

教えてもらうとき、メモを取る。メモを取る姿勢は「あなたの話を真剣に聞いています」というメッセージだ。メモを取らずに聞いている人は「本当にわかっているのか」と不安にさせる。

メモの量は「多すぎるくらい」がちょうどいい。「こんなことまでメモするのか」と思われてもいい。メモを取ることで「真剣さ」が伝わり、「同じことを二度聞かない」ための保険にもなる。メモは「信頼の証拠品」だ。

原則7:「他者の仕事に関心を持つ」

自分の業務だけに集中するのではなく、同僚の業務にも関心を持つ。「○○さんは今、何の業務をしているんですか」「大変そうですね。何か手伝えることはありますか」。他者の仕事に関心を持つことで、「チームの一員」として認識される。自分のことだけやっている人は「個人プレイヤー」であり、「チームメンバー」とは見なされない。

派遣社員時代は「自分の業務だけやればいい」が基本だった。公務員は「組織で動く」。組織で動くには、他者の仕事を理解し、全体の中で自分の位置を把握する必要がある。他者への関心は「組織人としての基本姿勢」であり、信頼の構成要素だ。

原則8:「愚痴を言わない」

愚痴は「信頼を削る最速の方法」だ。「この仕事、意味がないと思うんですけど」「上司の指示がわかりにくい」「前の職場ではもっと効率的だった」。こうした愚痴が周囲に聞こえると、「この人はネガティブな人だ」「文句ばかり言う人だ」と判断される。判断されたら、信頼は一気に下がる。

愚痴を言いたくなるのは自然だ。仕事に不満があるのは正常。だが愚痴は「職場の外」で吐き出す。帰宅後にノートに書く。発泡酒を飲みながら、一人で壁に向かってつぶやく。信頼できる友人(いれば)に電話で話す。職場では「ポジティブな自分」を見せる。ポジティブな人の周りには人が集まり、信頼が生まれる。

原則9:「小さな改善提案」を1つだけする

入庁直後に「この組織はここがダメだ」と批判するのはNGだ(原則として)。だが入庁1年が経ち、業務を一通り理解した段階で、「小さな改善提案」を1つだけするのは歓迎される場合が多い。

「小さな」がポイント。「組織の制度を変えましょう」は大きすぎる。「この書類のフォーマットを少し修正すれば、記入ミスが減ると思うのですが」程度の「小さな改善」。小さな改善が実現すれば、「あの人の提案のおかげで楽になった」と評価される。評価は信頼につながる。

改善提案のコツ。「○○が問題だ」だけでなく「△△にすれば解決できると思います」と「解決策」をセットで提案する。問題を指摘するだけの人は「批判家」。解決策をセットで出す人は「提案者」。信頼されるのは後者だ。

原則10:「1年後の自分」を意識して行動する

入庁直後は「今日を乗り切る」ことに精一杯だ。だが「1年後の自分がどうなっていたいか」を意識しておくと、日々の行動に一貫性が生まれる。

1年後の目標の例。「一人で定型業務をこなせるようになっている」「上司から『任せられる』と言ってもらえている」「同僚と気軽に雑談できる関係ができている」「住民から『ありがとう』と言われた経験がある」。

目標を紙に書いて、手帳に挟んでおく。毎朝、手帳を開くたびに目標が目に入る。目に入れば、「今日の行動はこの目標に近づいているか」を意識できる。意識できれば、行動がブレない。ブレない行動が、一貫した「信頼できる人」の印象を作る。

「10の原則」を実践した1年後——何が変わるか

10の原則を1年間実践すれば、確実に変わるものがある。変わるもの1は「上司の信頼」。報告・連絡・相談を徹底し、約束を守り、ミスを即座に報告し続けた人には、「この人に任せよう」という信頼が生まれる。信頼されれば、より責任のある仕事が任される。責任のある仕事を任されれば、成長が加速する。

変わるもの2は「同僚との関係」。謙虚で、雑用を厭わず、他者に関心を持ち、愚痴を言わない人は「一緒に仕事がしやすい人」と評価される。評価されれば、自然と「チームの一員」として受け入れられる。透明人間ではなくなる。

変わるもの3は「自分自身の自信」。10の原則を1年間続けた自分は、入庁直後の不安だらけの自分とは別人だ。「この組織で、自分はやっていける」という自信が、1年間の行動の中で育つ。自信は次の1年への燃料になる。

まとめ——「信頼」は「行動」でしか積み上がらない

信頼は「言葉」では生まれない。「行動」で積み上がる。約束を守る行動。報告する行動。ミスを認める行動。雑用を引き受ける行動。メモを取る行動。これらの「小さな行動」の積み重ねが、1年後の「信頼」を作る。

1つひとつの行動は「地味」だ。ドラマチックではない。華やかではない。だが地味な行動こそが、最も確実な信頼構築法だ。派遣社員として20年間、地味な仕事を地味にこなしてきた氷河期世代なら、「地味な行動を続ける」ことは得意なはずだ。得意を活かす。地味を武器にする。

明日の朝、出勤したら「おはようございます」と笑顔で挨拶する。それが10の原則の「0番目」であり、すべての基盤だ。笑顔の挨拶から始めれば、10の原則は自然についてくる。

このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

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