はじめに——「30日間、1円も外食に使わない」と決めた
食費月25000円。そのうち外食・コンビニ弁当が約12000円。自炊が約13000円。食費の半分近くが「外食」に消えている。「外食をゼロにしたら、いくら浮くか」。この疑問に答えるため、「完全自炊30日チャレンジ」を実行した。30日間、外食ゼロ。コンビニ弁当ゼロ。惣菜ゼロ。朝昼夕、すべて自分で作って食べる。
結論を先に書く。30日間の食費合計は14200円。通常月の25000円から10800円の削減。月10800円の節約。年間に換算すれば129600円。約13万円。NISAに月10800円追加で積立すれば、20年×年利5%で約444万円。「完全自炊」の威力は、想像以上だった。
だが30日間の完全自炊は「楽」ではなかった。辛い日もあった。「コンビニ弁当が食べたい」と泣きそうになった日もあった。このエッセイでは、30日間の全記録を公開し、「どうやって乗り越えたか」「何が辛かったか」「結果として何が変わったか」を正直に書く。
チャレンジの「ルール」
ルール1。朝食・昼食・夕食のすべてを自炊する。ルール2。外食、コンビニ弁当、スーパーの惣菜は一切買わない。ルール3。飲み物も自宅で作る(水筒持参)。自販機・コンビニの飲料はNG。ルール4。食材の買い物は週1回、スーパーで行う。ルール5。30日間の食費をすべて記録する。
第1週(1〜7日目)——「意外といける」期
初日。朝食:食パン+目玉焼き+バナナ+コーヒー(80円)。昼食:おにぎり2個+ゆで卵+カット野菜サラダ(120円)。夕食:もやし炒め+ご飯+味噌汁(150円)。1日合計350円。「これなら余裕じゃないか」。
3日目。もやし炒めに飽きてきた。卵チャーハンに変更。卵チャーハンは「もやし炒めの次に安い」メニュー。1食100円以下。味は悪くない。ネギと卵と醤油だけ。
5日目。昼の弁当作りが面倒になってきた。朝6時半に起きて弁当を作る。卵焼きを焼き、前日の夕食の残り(もやし炒め)を詰め、ご飯を入れる。20分の作業。「20分の作業で、昼食代500円を節約している」と自分に言い聞かせる。20分=500円=時給1500円の仕事。やる価値はある。
第1週の食費合計:3150円。1日平均450円。通常の1日830円(月25000円÷30日)と比較して、380円の節約。「意外といける」。
第2週(8〜14日目)——「飽き」との戦い
8日目。もやし炒めと卵チャーハンのローテーションに完全に飽きた。「何か違うものが食べたい」。だがレパートリーが少ない。パスタを作ってみる。ペペロンチーノ。パスタ40円+にんにく10円+唐辛子5円+オリーブオイル20円=75円。美味い。新メニューの追加で、気分がリフレッシュされた。
10日目。豚こま肉の生姜焼きに挑戦。豚こま100g100円+生姜10円+醤油・みりん10円=120円。ご飯と味噌汁を合わせて200円。「もやし炒めの倍のコスト」だが、満足度は3倍。たまにはこういうメニューも必要。
12日目。「コンビニ弁当が食べたい」衝動が来た。帰宅途中にコンビニの前を通る。自動ドアが開く。弁当の匂い。「入ったらダメだ」。通り過ぎる。帰宅して冷凍していたカレーを解凍する。カレーで衝動を鎮める。カレーは偉大だ。
第2週の食費合計:3400円。1日平均486円。第1週より少し上がった。「飽き」への対策として、メニューのバリエーションを増やしたことで、食材費が微増。だが通常月(1日830円)との差はまだ大きい。
第3週(15〜21日目)——「慣れ」の段階
15日目。折り返し地点。「半分終わった」達成感がある。自炊のルーティンが身についてきた。帰宅→着替え→調理10分→食事15分→洗い物5分。合計30分。コンビニに行って弁当を買って温めて食べる時間が20分。差は10分。10分の追加で500円の節約。文句はない。
18日目。週末に「作り置き」を試す。日曜日に2時間使って、月〜金の5日分の夕食おかずを作り置き。カレー4食分(600円)、味付け卵5個(100円)、もやしのナムル(40円)、きんぴらごぼう(100円)。合計840円で5日分の夕食おかず。1日168円。帰宅後は電子レンジで温めるだけ。「コンビニ弁当と同じ手軽さ」を自炊で実現した。
20日目。弁当作りも慣れた。前日の夕食の作り置きを詰めるだけ。朝の作業時間は10分に短縮。慣れれば何でも楽になる。
第3週の食費合計:3200円。1日平均457円。作り置きの効果で食費が下がった。
第4週+α(22〜30日目)——「もう少し」の最終コーナー
22日目。「あと8日」。ゴールが見えてきた。だが疲労が溜まっている。仕事が忙しかった日は、帰宅してから調理する気力がない。こんなとき、冷凍ストックが命綱になる。冷凍しておいたカレー、冷凍ご飯。電子レンジのボタンを押すだけ。コンビニ弁当と同じ「ボタン1つ」。だがコストは5分の1。
25日目。「ご褒美メニュー」を作る。鶏むね肉のチキンカツ。鶏むね200円+パン粉30円+卵20円+油50円=300円。サクサクのチキンカツ。「自分で作った揚げ物」の達成感。300円で外食のトンカツ定食(800円)と同等の満足度。
28日目。残り2日。「もう慣れた」。自炊が「面倒なこと」から「日常のルーティン」に変わった。もやし炒めを作る手が「自動的に」動く。考えなくても体が動く。習慣化の完成だ。
30日目。チャレンジ完了。最終日の夕食は「30日分の感謝を込めたもやし炒めスペシャル」。もやし+豚こま+卵+ネギ+にんにく+醤油+ごま油。通常のもやし炒めの「全部のせバージョン」。1食250円の贅沢。発泡酒で乾杯する。
第4週+αの食費合計:4450円。1日平均494円。「ご褒美メニュー」を入れたので少し上がったが、許容範囲。
30日間の総決算
食費合計:14200円。1日平均473円。通常月の食費25000円との差額:10800円。節約率43%。
朝食の平均コスト:80円(食パン+卵+バナナ)。昼食の平均コスト:130円(弁当持参)。夕食の平均コスト:263円(もやし炒め〜チキンカツまで)。
メニュー別の出現回数。もやし炒め:10回。卵チャーハン:5回。パスタ:4回。カレー:4回。生姜焼き:3回。納豆ご飯:2回。チキンカツ:1回。その他:1回。
「もやし炒め10回」は多い。だが飽きたときにパスタやカレーに逃げることで、精神的に持ちこたえた。「逃げ道」があることが、30日間の完走を可能にした。
30日間で「変わったこと」
変わったこと1は「料理のスキルが上がった」。30日前は「もやし炒め」と「卵焼き」しか作れなかった。30日後は「パスタ」「カレー」「生姜焼き」「チキンカツ」「きんぴらごぼう」「ナムル」が作れるようになった。レパートリーが3倍に増えた。レパートリーが増えれば、今後の自炊が楽になる。
変わったこと2は「食材の値段に敏感になった」。もやし30円、卵10個200円、豚こま100g100円、パスタ500g150円。これらの数字が頭に入った。スーパーで「今日はもやしが安い」「卵が値上がりした」と瞬時に判断できるようになった。「食材の相場感」は一生使える知識だ。
変わったこと3は「コンビニ弁当への依存が減った」。30日間コンビニ弁当を食べなかった結果、「コンビニ弁当がなくても生きていける」ことを体感した。「コンビニ弁当がないと困る」は思い込みだった。自炊で十分に生きていける。この「体感」が、31日目以降の自炊継続を支えてくれる。
変わったこと4は「体重が1.5kg減った」。外食やコンビニ弁当は「カロリーが高い」。自炊は「カロリーをコントロールできる」。30日間の自炊で、自然と摂取カロリーが減り、体重が1.5kg落ちた。ダイエット目的ではなかったが、嬉しい副産物。
「完全自炊」を「半自炊」に調整して継続する
30日間の完全自炊は達成した。だが「毎月30日間の完全自炊」を永続的に続けるのは精神的に辛い。「飽き」と「面倒くささ」が蓄積し、いつか挫折する。挫折すれば元の木阿弥。
持続可能な形は「半自炊」。平日5日のうち4日を自炊、1日を外食(またはコンビニ弁当)。月に20〜22日の自炊と8〜10日の外食。この比率なら「飽き」と「面倒くささ」を外食で解消しつつ、食費を大幅に抑えられる。
半自炊の食費シミュレーション。自炊22日×473円=10406円。外食8日×600円=4800円。合計15206円。通常月25000円との差額9794円。年間117528円。約12万円の節約。完全自炊の年間13万円にはやや及ばないが、「持続可能」という点で遥かに優れている。
まとめ——「30日間の実験」が人生を変える
完全自炊30日チャレンジ。食費14200円。節約額10800円。体重マイナス1.5kg。レパートリー3倍。コンビニ依存からの脱却。30日間の実験で、これだけのリターンが得られた。
「やってみなければわからない」。もやし炒めしか作れない45歳独身男性が、30日間の自炊で「料理ができる人間」に変身した。変身に必要だったのは「30日間の決意」と「もやし1袋30円」だけ。
来月、「完全自炊30日チャレンジ」をやってみてほしい。無理なら「完全自炊7日チャレンジ」でもいい。7日間でも、「自分はやれる」という実感が得られる。実感が得られれば、8日目以降も続けたくなる。続けたくなれば、食費は半分になる。食費が半分になれば、年間12万円が浮く。浮いたお金はNISAへ。20年後に約444万円。もやし炒めが444万円に化ける。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

