就職氷河期世代の「72の法則」で複利の力を味方につける——少額投資でも30年後に差がつく理由

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就職氷河期世代の「72の法則」で複利の力を味方につける——少額投資でも30年後に差がつく理由

はじめに——「複利」は人類最大の発明か

アインシュタインが「複利は人類最大の発明」と言ったかどうかは定かではない。この言葉の出典は怪しい。だが複利の力が強大であることは、疑いようがない。

複利とは何か。利息に利息がつくことだ。100万円を年利3%で運用すると、1年後に103万円。2年目は103万円に3%がつくので106万900円。3年目は106万900円に3%がつくので109万2727円。年を重ねるごとに、増加額が大きくなる。「雪だるま式」に増えていく。これが複利の力だ。

「100万円もないのに複利なんて関係ない」と思うかもしれない。だが複利は金額の大小に関係なく作用する。月5000円の積立でも、30年間複利で運用すれば、元本180万円が約290万円になる(年利3%の場合)。110万円が「時間」によって生み出される。この110万円は、労働で稼いだものではない。「お金がお金を生んだ」のだ。

このガイドでは、「72の法則」という簡単な計算法を使って、複利の力を直感的に理解し、少額投資でも長期間続ければ大きな差がつくことを具体的に示す。

「72の法則」とは何か

72の法則は、「お金が2倍になるまでにかかる年数」を簡単に計算する方法だ。計算式は非常にシンプル。

72÷年利(%)=お金が2倍になる年数

例えば、年利3%の場合。72÷3=24年。24年で元本が2倍になる。年利5%なら72÷5=14.4年。年利7%なら72÷7=約10.3年。年利1%なら72÷1=72年。年利0.001%(大手銀行の普通預金)なら72÷0.001=72000年。

72000年。大手銀行の普通預金にお金を預けて2倍になるまでに72000年かかる。人類が現生人類として登場したのが約30万年前なので、人類の歴史の4分の1の期間が必要だ。銀行預金では、お金は実質的に増えない。

一方、インデックスファンド(全世界株式や米国株式のインデックス)の過去の平均リターンは年5〜7%程度。年利5%なら14.4年で2倍。45歳で投資を始めて年利5%で運用すれば、59歳で2倍。60歳で2倍以上。少額でも、時間をかければ確実に増える。

「少額投資」の複利効果を具体的に計算する

「月5000円の投資なんて意味がない」と思う人は多い。だが複利の力を考慮すれば、月5000円でも長期間続ければ大きな差になる。具体的に計算してみよう。

ケース1。月5000円を年利3%で20年間積立投資した場合。元本は5000円×12ヶ月×20年=120万円。運用益は約44万円。合計約164万円。元本の約1.37倍。

ケース2。月5000円を年利5%で20年間積立投資した場合。元本120万円。運用益は約86万円。合計約206万円。元本の約1.72倍。

ケース3。月1万円を年利5%で20年間積立投資した場合。元本240万円。運用益は約171万円。合計約411万円。元本の約1.71倍。

ケース4。月1万円を年利5%で30年間積立投資した場合。元本360万円。運用益は約472万円。合計約832万円。元本の約2.31倍。

30年間の運用で、元本360万円が832万円に。472万円が「時間と複利」によって生まれた。472万円あれば、年金の繰下げ期間の生活費に充てられる。老後の生活が大きく楽になる。

月1万円を30年間。45歳から始めれば75歳。65歳から引き出し始めるなら20年間。20年間×年利5%なら元本240万円が約411万円に。この411万円が「65歳以降のバッファ」として機能する。

複利の「敵」——インフレ

複利はお金を増やすが、インフレはお金の価値を減らす。インフレ率が年2%なら、72÷2=36年でお金の価値が半分になる。つまり今の100万円は、36年後には「実質50万円の価値」しかない。

銀行預金(年利0.001%)でお金を「守っている」つもりでも、インフレ率(年2%程度)を考慮すると、実質的にはお金の価値が毎年2%ずつ目減りしている。10年で約18%目減り。100万円が実質82万円に。20年で約33%目減り。100万円が実質67万円に。銀行預金は「安全」だが「安心」ではない。

インフレに対抗するには、インフレ率以上のリターンで運用する必要がある。年利3〜5%の投資なら、インフレ率2%を差し引いても実質1〜3%のプラス。「お金を銀行に置いておくだけ」は、実はリスクのある行為だ。「何もしないリスク」が存在する。このリスクについては、別の記事(「投資は怖い」への回答)で詳しく解説する。

「時間」が最大の武器——45歳でも遅くない理由

複利の効果は「時間」に比例する。時間が長いほど、複利の恩恵は大きくなる。20歳で始めるのと45歳で始めるのでは、同じ元本でも結果が大きく異なる。

だが「45歳では遅すぎる」かというと、そうではない。45歳から65歳まで20年間ある。20年間の複利運用は、十分に効果的だ。月1万円×20年×年利5%=約411万円。元本240万円が411万円になる。171万円が複利で生まれた。

さらに65歳以降も運用を続ければ(引き出しながら運用する)、複利効果は続く。65歳で411万円の資産があれば、毎年3%の運用益で年間約12万円。月1万円の「配当収入」のようなものだ(実際にはインデックスファンドの取り崩しだが)。

「45歳から始めても遅くない」。だが「45歳から始めなければ、さらに遅くなる」。これが正しい認識だ。今日始めれば、複利が働く時間が最大化される。明日始めれば、今日始めるより1日分短くなる。複利にとっての「最善の日」は「今日」だ。

NISAで複利を非課税で享受する

通常の投資では、運用益に約20%の税金がかかる。100万円の運用益が出ても、税引き後は80万円。20万円が税金で消える。

NISAを使えば、運用益が非課税になる。100万円の運用益がそのまま100万円手に入る。20万円の差。これは大きい。

複利の効果は「税引き後のリターン」で計算すべきだ。年利5%の投資でも、課税口座なら税引き後の実質リターンは約4%。NISAなら5%のまま。72の法則で計算すると、課税口座では72÷4=18年で2倍。NISAでは72÷5=14.4年で2倍。3.6年の差。この差は、長期になるほど拡大する。

NISAは「複利の効果を最大化するための制度」だ。複利を味方につけるなら、NISAを使わない理由がない。

「72の法則」を日常生活で使う

72の法則は投資だけでなく、日常生活でも使える。

使い方1は「借金の危険度を計算する」。消費者金融の金利が年15%なら、72÷15=4.8年。4.8年で借金が2倍になる。50万円借りたら、4.8年で100万円の返済義務。リボ払いの金利が年15%でも同じ計算。リボ払いの残高が10万円なら、4.8年で20万円に膨らむ。この計算を知っていれば、「借金は怖い」が実感としてわかる。

使い方2は「物価上昇の影響を計算する」。インフレ率が年3%なら、72÷3=24年で物価が2倍。今100円のもやしが、24年後には200円。今の年金月7万円の生活水準は、24年後には月14万円必要になる。この計算は、「年金だけでは足りなくなる」ことを示している。だから投資でインフレに備える必要がある。

使い方3は「貯蓄の目標年数を計算する」。銀行預金(年利0.002%)で2倍にするには72÷0.002=36000年。投資信託(年利5%)で2倍にするには14.4年。この差を見れば、「銀行に預けておくだけ」がいかに非効率かがわかる。

複利を「敵」にしないために——借金の複利効果

複利は味方にもなるが、敵にもなる。投資の複利は「お金がお金を生む」。借金の複利は「お金がお金を食う」。

クレジットカードのリボ払い。金利は年15%前後。72÷15=4.8年で借金が2倍。10万円のリボ残高は、放置すれば4.8年で20万円に。「毎月の支払いが少なくて楽」と思っていると、残高が雪だるま式に膨らむ。複利が敵に回った状態だ。

消費者金融のカードローン。金利は年15〜18%。72÷18=4年で2倍。100万円の借金が4年で200万円に。返済額が利息に追いつかず、「返しても返しても減らない」状態に陥る。

複利を味方にするには「投資に複利を効かせる」。敵にしないためには「借金を絶対にしない」。この二つを守ることが、マネーリテラシーの基本中の基本だ。

72の法則の「限界」

72の法則は概算であり、正確な計算ではない。金利が極端に高い場合(年30%以上)や極端に低い場合(年0.1%以下)は、誤差が大きくなる。だが一般的な投資のリターン(年1〜10%)の範囲では、十分に実用的な精度だ。

また72の法則は「一括投資」の場合の計算だ。「積立投資」の場合は、複利の計算がもう少し複雑になる。だが「お金が増える仕組み」を直感的に理解するための道具としては、72の法則で十分だ。詳細な計算が必要なら、金融庁のウェブサイトにある「資産運用シミュレーション」が便利。積立金額、期間、利率を入力すると、将来の資産額を自動計算してくれる。

まとめ——「時間×複利」が最強の投資戦略

複利は、お金持ちだけの特権ではない。月5000円の少額投資でも、20年、30年と続ければ、複利の力で元本の1.5倍〜2.3倍に増える。増えた分は「時間」が稼いでくれたものだ。

72の法則を覚えておくだけで、投資の判断が楽になる。「年利3%なら24年で2倍」「年利5%なら14年で2倍」「銀行預金では一生2倍にならない」。この三つの数字が頭に入っていれば、「銀行に預けておくだけ」がいかに非効率かがわかる。

氷河期世代に残された時間は20〜30年。十分に複利が効く期間だ。今日始めれば、複利が味方する日々が最大化される。明日でもいいが、明日は今日より1日分損をする。複利にとっての1日は、将来の数百円〜数千円に相当する。

72の法則。この小さな計算式が、「少額投資でも意味がある」という確信を与えてくれる。確信があれば、行動できる。行動すれば、複利が働き始める。働き始めた複利は、止まらない。止まらない複利が、20年後の自分を救うかもしれない。

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