就職氷河期世代の「お金の不安」を数字に変換する技術——漠然とした恐怖を具体的な対策に変える方法

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就職氷河期世代の「お金の不安」を数字に変換する技術——漠然とした恐怖を具体的な対策に変える方法

はじめに——不安の正体は「わからない」こと

「お金が足りるだろうか」「老後はどうなるのか」「仕事を失ったらどうしよう」。これらの不安は、氷河期世代の日常に常に漂っている。寝る前に考える。通勤中に考える。休日にぼんやりしているとき、不意に襲ってくる。

不安の正体は何か。「わからない」ことだ。「いくら必要かわからない」「いくら足りないかわからない」「どうすればいいかわからない」。この「わからない」が、漠然とした恐怖を生む。漠然としているから、対策が立てられない。対策が立てられないから、不安が消えない。消えないから、ずっと怯え続ける。

この悪循環を断ち切る方法がある。「数字に変換する」ことだ。漠然とした不安を、具体的な数字に変換する。数字になれば、「いくら足りないか」がわかる。わかれば、「月にいくら貯めればいいか」がわかる。わかれば、「それなら頑張れるかもしれない」と思える。不安が、対策に変わる瞬間だ。

変換1:「老後が不安」を数字にする

「老後が不安」。この漠然とした不安を数字に変換する。

ステップ1。自分の年金見込額を確認する。ねんきんネットにアクセス。月の年金見込額が7万円だとわかった。

ステップ2。老後の月間支出を見積もる。家賃4万円、食費2.5万円、光熱費0.8万円、通信費0.2万円、医療費1万円、日用品0.5万円、交通費0.3万円、国保・介護保険1万円、予備0.5万円。合計10.8万円。

ステップ3。月の赤字を計算する。年金7万円−支出10.8万円=−3.8万円。月に3万8000円の赤字。

ステップ4。老後の必要資金を計算する。3.8万円×12ヶ月×30年(65歳〜95歳)=1368万円。約1370万円。

ステップ5。年金の繰下げ受給を考慮する。70歳まで繰り下げると年金が42%増。7万円×1.42=9.94万円。月の赤字は10.8万−9.94万=0.86万円。30年(70歳〜100歳)で0.86万×12×30=309.6万円。約310万円。

「老後が不安」が「310万〜1370万円を準備する」に変換された。数字になった。数字なら対策が立てられる。月2万円をNISAで20年間年利5%で運用すれば約820万円。310万円は余裕でクリア。1370万円には足りないが、年金の繰下げ受給を組み合わせれば310万円で済む。「なんとかなるかもしれない」。

変換2:「仕事を失うのが怖い」を数字にする

「仕事を失ったらどうしよう」。この不安を数字に変換する。

ステップ1。失業した場合の月間支出を見積もる。家賃5万円、食費2.5万円、光熱費1万円、通信費0.1万円、国保0.5万円(軽減後)、日用品0.3万円、交通費(就活)0.3万円。合計9.7万円。

ステップ2。失業した場合の月間収入を確認する。失業保険(会社都合の場合):約14万円。

ステップ3。差額を計算する。収入14万円−支出9.7万円=+4.3万円。黒字。失業保険が出ている間は、生活費は賄える。むしろ4.3万円の余裕がある。

ステップ4。失業保険が出ない期間を計算する。自己都合退職の場合、給付制限2ヶ月+待期7日。約2ヶ月間は収入ゼロ。2ヶ月間の支出は9.7万円×2=19.4万円。貯金50万円から19.4万円を使っても、残りは30.6万円。

「仕事を失うのが怖い」が「貯金50万円あれば2ヶ月は耐えられる。失業保険が出ればさらに数ヶ月は大丈夫」に変換された。50万円の生活防衛資金がある限り、すぐには「なんともならない」状態にはならない。

変換3:「病気になるのが怖い」を数字にする

「病気になって入院したらどうしよう」。この不安を数字に変換する。

ステップ1。入院費用を見積もる。1週間の入院で自己負担約7万円(高額療養費制度適用後)。別の記事で計算した通り。

ステップ2。入院中の収入を確認する。傷病手当金(協会けんぽ加入の場合):月約13.4万円(標準報酬日額の3分の2)。1週間の入院なら約3.1万円。

ステップ3。差額を計算する。入院費用7万円−傷病手当金3.1万円=3.9万円の持ち出し。貯金50万円から3.9万円を使っても、残りは46.1万円。

「病気が怖い」が「1週間の入院なら持ち出し約4万円。貯金から払える」に変換された。1ヶ月の入院でも、持ち出しは10〜15万円程度。貯金50万円で対応可能。

変換4:「お金が全然足りない」を数字にする

「お金が全然足りない」。この感覚を数字に変換する。

ステップ1。月の収支を正確に把握する。手取り16万円。支出の合計を家計簿から確認。仮に支出が15万5000円なら、毎月5000円の黒字。

ステップ2。「足りない」の正体を特定する。「足りない」と感じるのは、「欲しいものが買えない」からか、「貯蓄ができない」からか、「急な出費に対応できない」からか。

「欲しいものが買えない」なら、本当に必要なものかを再検討する。「貯蓄ができない」なら、月5000円の黒字をそのまま貯蓄に回す。5000円×12ヶ月=年間6万円。10年で60万円。「急な出費に対応できない」なら、生活防衛資金を10万円まで貯めることを最優先にする。

「全然足りない」が「月5000円の黒字はある。これを貯蓄に回せば10年で60万円」に変換された。「全然足りない」のではなく「ギリギリだがゼロではない」。ゼロではないなら、積み重ねれば増える。

変換5:「将来が見えない」を数字にする

「将来が見えない」。最も漠然とした不安だ。これを数字にするには「10年後の自分」をシミュレーションする。

45歳の今から、月2万円をNISAに積み立てた場合。55歳時点で元本240万円+運用益(年利5%で約70万円)=約310万円。月1万円を銀行に貯蓄した場合。55歳時点で120万円。合計で約430万円。

55歳時点で430万円の資産がある。現在の貯金50万円を加えると480万円。10年後の55歳の自分は、今の自分より430万円豊かだ。「将来が見えない」が「10年後に480万円の資産がある」に変換された。見えるようになった。

さらに10年(55歳〜65歳)積み立てを続ければ、65歳時点で NISAの積立総額約820万円+銀行貯蓄240万円+現在の貯金50万円=約1110万円。年金の繰下げ受給と組み合わせれば、老後の必要資金310万円は十分にカバーできる。「将来が見えない」が「65歳時点で約1100万円の資産+年金月10万円」に変換された。見えた。見えると安心する。

「数字に変換する」ための道具

不安を数字に変換するための道具を紹介する。

道具1は「ねんきんネット」。自分の年金見込額を確認できる。老後の不安を数字にする最初のステップ。

道具2は「家計簿アプリ」(マネーフォワード等)。月の収支を正確に把握する。「足りない」の正体を特定する。

道具3は「金融庁の資産運用シミュレーション」。積立金額、期間、利率を入力すると、将来の資産額が計算できる。「10年後にいくらになるか」を可視化する。

道具4は「ノートとペン」。紙に書き出す。不安を頭の中に閉じ込めておくと、膨張する。紙に書き出すと、不安が「文字」と「数字」に変わる。文字と数字は、膨張しない。客観的に眺められる。眺められれば、対策を考える余裕が生まれる。

「最悪のケース」を計算しておく

不安が最大になるのは「最悪のケース」を想像するときだ。「仕事を失って、病気になって、貯金が底をつく」。この最悪のケースを、あえて計算しておく。

最悪のケース。失業(収入ゼロ)+入院(医療費発生)+貯金ゼロ。この状態になったら、どうなるか。失業保険が出る(会社都合なら)。高額療養費制度で医療費の上限がある。国民年金は免除。国保は軽減。住居確保給付金で家賃がカバーされる。緊急小口資金で当面の生活費を借りられる(無利子)。すべてがダメなら、生活保護。

つまり最悪のケースでも、日本では「路上で餓死する」ことはほぼない。セーフティネットがある。セーフティネットの存在を知っていれば、「最悪でもこうなる」が計算できる。計算できれば、「最悪でもなんとかなる」と思える。思えれば、不安が和らぐ。

不安をゼロにすることはできない。だが数字に変換すれば、不安は「管理可能なサイズ」に収まる。管理可能なサイズの不安なら、共存できる。共存できれば、不安に支配されずに日常を送れる。日常を送れれば、貯蓄も投資も仕事も、前に進められる。

まとめ——「わからない」を「わかる」に変えるだけで人生が変わる

お金の不安の正体は「わからない」こと。わからないから怖い。怖いから動けない。動けないから状況が改善しない。改善しないから不安が増す。このループを断ち切るのが「数字への変換」だ。

変換に必要な時間は、1時間もあれば十分。ねんきんネットで年金を確認し、家計簿で支出を把握し、金融庁のシミュレーターで将来の資産を計算する。1時間で「漠然とした不安」が「具体的な数字」に変わる。数字に変われば対策が見える。対策が見えれば行動できる。行動すれば状況が改善する。改善すれば不安が減る。

今夜、寝る前に不安が襲ってきたら——スマートフォンを開いて、計算してみてほしい。不安を数字に変換する。変換した瞬間、不安は少しだけ小さくなる。少しだけ小さくなれば、眠れる。眠れれば、明日また頑張れる。

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