はじめに——「半額シール」は貧乏人の印ではなく「賢者の勲章」
スーパーの閉店1〜2時間前。惣菜コーナー、鮮魚コーナー、精肉コーナーに「半額」「30%OFF」のシールが貼られ始める。このシールを見て「恥ずかしい」と思う人がいる。「半額品を漁るのは、みっともない」。だがこの感覚は間違っている。半額シール品を買う人は「恥ずかしい人」ではなく「賢い人」だ。同じ品質の商品を半額で買えるのに、定価で買う理由がない。「定価で買う人」と「半額で買う人」の差額が、毎月5000円の節約になる。年間60000円。NISAに月5000円追加で20年運用すれば約206万円。「半額シール」が20年後に206万円に化ける。
このガイドでは、スーパーの「閉店前30分」を最大限に活用し、食費を月5000円削るための「攻略術」を解説する。攻略の対象は「半額シール品」「見切り品」「タイムセール」の3つだ。
攻略術1:「値引きシールが貼られる時間帯」を把握する
スーパーの値引きシールは、一般的に以下のタイミングで貼られる。
第1弾(20%引き)は閉店の2〜3時間前。夜9時閉店の店なら18時〜19時頃。仕事帰りのタイミング。惣菜、弁当、寿司、パン。「今日中に食べてほしい」商品から先に値引きが始まる。
第2弾(30〜40%引き)は閉店の1〜2時間前。19時〜20時頃。第1弾で売れ残った商品にさらに値引きシールが重ね貼りされる。肉、魚にも値引きシールが貼られ始める。
第3弾(半額)は閉店の30分〜1時間前。20時〜20時30分頃。「もう閉店だから、売れ残るよりは」と半額シールが一気に貼られる。このタイミングが「最大のチャンス」。ただし品数は少なくなっている。「欲しいものがあれば買う」スタンスで、なければ無理に買わない。
自分がよく行くスーパーの「値引きタイムテーブル」を把握する。1〜2週間、閉店前の時間帯に何度か行って「何時頃に何が値引きされるか」を観察する。観察結果をスマートフォンにメモする。「○○スーパー:惣菜は19時から20%引き、20時から半額。肉は19時半から30%引き」。このメモが「攻略マップ」になる。
攻略術2:「半額品で買うべきもの」と「買わないほうがいいもの」
半額品は「すべて買い」ではない。「買うべきもの」と「買わないほうがいいもの」を区別する。
買うべきもの1は「肉の半額品」。豚こま、鶏むね、牛切り落とし。半額で買って、帰宅後すぐに小分け冷凍する。冷凍すれば1ヶ月持つ。豚こま100g200円→半額100円。鶏むね100g120円→半額60円。半額の肉をまとめ買い冷凍すれば、1ヶ月分の肉のコストが半分に。月の肉代3000円→1500円。月1500円の節約。
買うべきもの2は「魚の半額品」。切り身の鮭、サバ、アジ。半額で買って冷凍。当日中に調理するなら刺身もOK(ただし消費期限を厳守)。
買うべきもの3は「惣菜・弁当の半額品(当日食べる分のみ)」。今夜の夕食として食べるなら、半額の惣菜や弁当は最高のコスパ。唐揚げ弁当500円→半額250円。250円で夕食が完成。自炊する気力がない日の「救世主」。
買うべきもの4は「パンの半額品」。食パン、ロールパン。半額で買って冷凍。朝食用に。食パン6枚切り150円→半額75円。冷凍すれば2週間持つ。
買わないほうがいいもの1は「食べきれない量」。「安いから」と大量に買って、結局食べきれずに捨てる。これは「節約」ではなく「食品ロス」。買う量は「今日〜明日で食べきれる分」または「冷凍して1ヶ月以内に使い切れる分」に限定する。
買わないほうがいいもの2は「消費期限が当日の生鮮食品で、翌日以降に食べる予定のもの」。消費期限が当日の刺身を買って「明日食べよう」は食中毒のリスクがある。半額でも命に関わる。消費期限は厳守。
買わないほうがいいもの3は「普段買わないもの」。「半額だから珍しいもの買ってみよう」は衝動買い。使い方がわからず冷蔵庫の奥で腐る可能性が高い。半額品は「普段買っているもの」を安く買うのが原則。
攻略術3:「半額品の冷凍ストック」で1週間分の食費を下げる
半額品の真の威力は「冷凍ストック」にある。閉店前30分に半額の肉を3パック買う。帰宅後、1食分ずつラップで包んで冷凍。これで3食分の肉が半額で確保される。
1週間の「半額冷凍ストック作戦」。月曜日の夜、閉店前にスーパーに行く。半額の豚こま2パック(200g×2=400g。定価600円→半額300円)。半額の鶏むね1パック(300g。定価240円→半額120円)。半額の食パン1袋(定価150円→半額75円)。合計495円。これで肉700g+パン6枚。肉は4〜5食分。パンは朝食3〜4日分。
通常価格で同じ量を買えば990円。差額495円。月に4回(毎週月曜日)この作戦を実行すれば、月1980円の節約。年間23760円。「毎週月曜日の閉店前にスーパーに行く」だけ。
攻略術4:「複数のスーパーの閉店時間」を把握する
自宅の近くに複数のスーパーがあれば、それぞれの閉店時間と値引きタイミングを把握しておく。スーパーA(21時閉店)。スーパーB(22時閉店)。スーパーC(23時閉店)。
仕事の帰りにスーパーA(21時閉店)に19時30分に寄る。半額品を物色。良いものがあれば買う。なければスーパーB(22時閉店)に20時に寄る。スーパーBにも良いものがなければ、スーパーC(23時閉店)に21時に寄る。
「3つのスーパーの半額品を順番にチェックする」のは、「3回くじを引く」ようなものだ。1回目でハズレでも、2回目3回目で当たる可能性がある。「当たり」(欲しい商品が半額になっている)の確率が上がれば、月の半額品による節約額も上がる。
攻略術5:「曜日ごとの値引きパターン」を分析する
スーパーの値引きには「曜日パターン」がある場合がある。例えば、日曜日の閉店前は「惣菜の値引きが多い」(週末に惣菜を多く作るため余りが出やすい)。水曜日は「魚の値引きが多い」(水曜日に新しい魚が入荷し、前日の魚が値引きされる)。
1ヶ月間、曜日ごとの値引きパターンを観察してメモする。「日曜:惣菜が多い。水曜:魚が安い。金曜:肉が値引きされやすい」。パターンがわかれば「今日は魚が安いはずだ」と予測して行動できる。予測通りなら、狙いの商品を確実にゲットできる。
攻略術6:「半額品を使った1週間の献立」
月曜日(買い出し日)。閉店前に半額品を購入。当日の夕食は半額の惣菜(250円)。残りの肉は冷凍。
火曜日。冷凍した半額豚こまでもやし炒め(もやし30円+半額豚こま75円=105円)。水曜日。冷凍した半額鶏むねの照り焼き(半額鶏むね40円+調味料10円=50円)。木曜日。冷凍した半額豚こまで肉うどん(うどん30円+半額豚こま75円+ネギ20円=125円)。金曜日。再び閉店前に行き、半額品を購入。当日食べるものと週末用を確保。
火〜木の夕食コスト合計280円。1食平均93円。通常の自炊(1食200〜300円)と比較して、半額品の威力が際立つ。
「半額品ハンター」のマナー
半額品を狙う人は自分だけではない。「半額品の争奪戦」になることもある。マナーを守って、気持ちよく半額品を買う。
マナー1は「店員が値引きシールを貼っている最中に横取りしない」。店員がシールを貼り終わるまで待つ。貼り終わってから棚に手を伸ばす。
マナー2は「買い占めない」。半額の鶏むねが5パックあっても、自分が使える分(2〜3パック)だけ買う。残りは他の人に譲る。「全部持っていく」のはマナー違反。
マナー3は「一度カゴに入れた商品を、別の棚に放置しない」。「やっぱりこれはいらない」と思ったら、元の棚に戻す。別の棚に放置すると、商品が傷む。
マナー4は「半額品だからといって雑に扱わない」。半額品も「商品」だ。レジで丁寧に扱う。レジの店員に「ありがとうございます」と言う。半額品を買うことに後ろめたさを感じる必要はないが、「感謝」は忘れない。
「半額品」と「見切り品」の違い
「半額品」は当日〜翌日に消費期限が来る商品への値引き。「見切り品」は品質に問題はないが、パッケージの傷み、形の不揃い、季節外れなどの理由で値引きされた商品。見切り品は消費期限に余裕がある場合が多く、冷凍保存する必要がないことも。
見切り品コーナーは、多くのスーパーで常設されている。野菜の見切り品(形が悪いにんじん、少し傷んだバナナ、外葉がしおれたキャベツ)は通常の30〜50%引き。形が悪くても、切ってしまえば同じ。味も変わらない。見切り品コーナーを「必ずチェックする」習慣をつければ、月500〜1000円の追加節約。
月5000円の節約シミュレーション
半額品の肉・魚の購入で月1980円の節約。半額の惣菜・弁当(月4回×250円の節約)で月1000円の節約。半額のパン(月4回×75円の節約)で月300円の節約。見切り品の野菜で月700円の節約。合計月3980円。目標の5000円にはやや届かないが、半額品の品揃えが良い日(「当たりの日」)があれば、月5000円は十分に達成可能。
保守的に月4000円の節約としても、年間48000円。NISAに月4000円追加で20年運用すれば約164万円。「閉店前30分にスーパーに行く」だけで20年後に164万円。
「閉店前30分のスーパー」は「宝探し」だ
閉店前30分のスーパーには独特の「空気」がある。蛍光灯が少し暗くなり、BGMが静かになり、客がまばらになる。棚には半額シールが貼られた商品が並ぶ。「今日は何があるかな」。ワクワクする。半額の和牛切り落としが見つかったときの興奮。半額のうな重が残っていたときの歓喜。「宝探し」の感覚。
この「宝探し」の楽しさが、閉店前スーパー通いを「義務」ではなく「趣味」に変えてくれる。趣味なら続けられる。続ければ、月4000〜5000円が浮き続ける。趣味と節約が両立する。こんな素晴らしい趣味は他にない。
まとめ——「半額シール」は「賢者の勲章」
半額シール品を買うことは恥ずかしいことではない。「同じ品質のものを半額で買える判断力」を持っている証だ。定価で買う人が「何も考えていない人」であり、半額で買う人が「考えている人」だ。考えている人のほうが、20年後に164万円多く持っている。
今夜、閉店1時間前にスーパーに行ってみてほしい。惣菜コーナーを見る。半額シールが貼られた唐揚げを手に取る。レジで250円を払う。帰宅して食べる。「美味い。そして安い」。この感動が、「閉店前30分攻略」の第一歩だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

