日本の個人投資家界に、独特のポジションを築いた人物がいる。ハンドルネーム「御発注(ゴハッチュウ)」氏である。サラリーマン投資家として社会人1年目から株式投資を開始し、給料の8割を投資に注ぎ込む徹底した節約生活「コジ活」を実践。11年で億り人になり、現在は資産8.5億円、年間配当収入2,000万円という驚異的な数字を叩き出している。
私が御発注氏に強く惹かれるのは、彼の物語が「最も再現性が高い」サラリーマン投資家のロールモデルだからだ。BNFは天才、cisは順張りの達人、テスタはスキャルピングの神、五味氏は中学からのプレイヤー、かぶ1000は専業30年──彼らはどこか凡人を超えている。しかし御発注氏は、普通のサラリーマンが極限まで節約と投資を徹底したら、ここまで到達できるという生々しい実例である。今回はこの「コジ活レジェンド」の哲学を、私なりに独自視点で深く掘り下げてみたい。
2002年、社会人1年目の100万円スタート
御発注氏のキャリアは、2002年の社会人1年目から始まる。投資で1億円超えを達成した人を、いつからか「億り人」と呼ぶようになった。ハンドルネーム「御発注」さんもその一人。今の資産はちょうど2億円ほどですが、社会人1年目の2002年、コツコツ貯めた100万円を有効に使う方法は何かないか探していたのが、株式投資を始めるきっかけでした。
2002年という時期に注目したい。これはITバブル崩壊の余波が残り、日経平均が8,000円台まで下がった「失われた10年」の真っ只中だ。社会人1年目で投資を始めるには、ある意味で最悪のタイミングである。多くの人が「株なんかやめておけ」と言う時代だった。
しかし、私の独自視点では、これこそが御発注氏の最大の幸運だった可能性がある。低迷期に始めたから、上がり相場の幻想に騙されず、地道なバリュー投資を身につけられた。バブル期に始めた人は、上がるのが当たり前という錯覚に陥る。御発注氏は最初から「下がる相場で生き残る」訓練を受けたのだ。
リンガーハットでの目覚め──株主優待との出会い
御発注氏の投資デビューエピソードは、ユニークだ。ある日、リンガーハットでランチを食べていたら、株主優待のチラシを見たんです。当時はまだ株式投資への関心もなかったのですが、「株に投資すればご飯がタダで食べられるんだ!」と知ってビックリしました。そこで優待銘柄を調べて、吉野家とワタミを買いました。これが初めての株式投資です。
「株に投資すればご飯がタダで食べられる」──この実利的な視点こそ、御発注氏の投資哲学の原点である。
私はこのエピソードに、御発注氏の本質を見る。彼は最初から「お金を増やすこと」を目的にしていない。「生活コストを下げること」を目的にしている。これは桐谷さんの優待生活と同じ思想だ。違いは、御発注氏は20代前半でこれを始めたという点である。20代前半から優待生活の発想を持っているのは、極めて早熟だ。
「御発注」という名前の由来──200万円の損失体験
そしてここから、彼の人生を決定づけるエピソードが訪れる。2011年に三光マーケティングフーズの銘柄を手数料節約のため信用取引で5株注文しようとしていたところ、間違えて500株買ってしまい、4,235万円分の全力信用二階建て状態になりました。それを反省してハンドルネームを御発注と改名し、今に至ります。
500株の誤発注、4,235万円の信用二階建て。これは血の気が引くエピソードだ。サラリーマンの預金規模ではとても抱えきれない損失リスクが発生した。
冷静になって考えた末、まずは半分売却し、残り半分は優待狙いで上昇するころに売ることにしましたが、この”誤発注事件”で200万円の損失を被ってしまいました。それから、もう二度と同じ過ちを起こさないようにと、「御発注」というハンドルネームを付けたんです。
200万円の損失。これが「御発注」というハンドルネームの由来だ。失敗を忘れないために、自分のミスを永遠に名前として刻み込む。これは武士の自戒のような発想だ。
私はこのエピソードに、御発注氏の人間性を見る。普通の人なら、失敗を忘れたい、隠したい。しかし彼は、失敗を自分のアイデンティティに組み込んだ。「私は誤発注した人間だ」と毎日自分に言い聞かせることで、二度と同じ過ちを犯さない覚悟を作った。
「コジ活」──給料の8割を投資に回す究極節約
御発注氏の名前を全国区にしたのは、彼の「コジ活」と呼ばれるエクストリーム節約術である。サラリーマン投資家。社会人1年目から株式投資を開始し、給料の8割を株投資の原資に注ぎ込む徹底した節約暮らし「コジ活」を実践することで、11年で”億り人”に。さらに10年近くを経て、現在は資産8.5億円、年間配当収入2,000万円にまでなる。PERに注目したバリュー投資を軸にして2倍株、3倍株を狙う傍ら、株主優待や高配当銘柄を押さえ、その恩恵で生活を賄うライフスタイル。
「コジ活(物乞い活動)」とは何か。資産1億円超の「億り人」投資家の著者は「自分の支払いを極力抑え、無料サービスをフル活用する生活スタイル」でお金を貯める「コジ活(物乞い活動)」投資家としても有名です。
具体的には──株主優待をフル活用、無料サービスをすべて利用、ポイント還元を駆使、外食はすべて優待券、買い物は割引券のみ。とにかく自分の財布から現金を出さない生活術だ。
私の独自視点で言えば、コジ活は単なる節約術ではない。それは「市場の歪みを発見する訓練」である。なぜ「タダで食べられる優待がある」のか? なぜ「無料で使える映画券がある」のか? それは企業が株主に還元するために設けた仕組みである。コジ活を実践する人は、その仕組みを発見し、活用する目利きを持っている。これは投資判断にも直結する能力だ。
給料手取り400万円から年300万円を投資──常識を超えた入金力
御発注氏の節約レベルは、想像を絶する。2013年には資産1億円を達成。投資を始めて11年目で到達。年収は手取り400万円くらいでしたが、とにかく節約を続けて年間約300万円以上を投資につぎ込んだ結果です。
手取り400万円のサラリーマンが、年300万円を投資に回す。生活費はわずか100万円。月8万円程度で暮らしている計算になる。これは東京や大阪の都会では絶対に不可能な水準だ。
しかし御発注氏はこれを実現した。家賃、食費、被服費、娯楽費──すべてを優待や無料サービスで賄ったからこそ可能になった。この入金力こそ、サラリーマン投資家として億り人になる最短ルートである。
私の独自分析では、御発注氏の真の凄さは「節約と投資の循環」を作り上げた点にある。節約で投資原資を作り、投資で得た優待で節約する。これが回り続けることで、雪だるま式に資産が増えていく。これは複利の概念を、現金フローのレベルで実装した発想だ。
「2億円」「8.5億円」──資産推移の加速
御発注氏の資産推移は、加速し続けている。2013年に1億円達成、2020年頃に2億円、2025年に8.5億円。億り人になってから10年で8.5倍に増えている。
2億円を超えてからは少し心境が変わり、守りの投資も心がけました。「預貯金」「債券」「高配当」で資産を構成し、暴落がきても資産が大きく目減りすることを防ぎたい、と思い、ポートフォリオの約3分の1をインカムゲイン目当ての投資にシフトしていきました。また、コロナ禍で大きく株価が下落した際も、第二の転機になりました。政府が経済政策で補助金などを市場に投じていたのを見て、「これからはインフレの時代が来る」と感じ、徐々にキャッシュポジションを減らして株式投資に回し、今はフルポジとなっています。
ここで注目したいのは、御発注氏の「資産規模に応じた戦略変更」である。1億円までは攻めの集中投資、2億円超では守りのインカム投資、コロナ後はインフレ予測でフルポジション化。資産規模と相場環境に応じて、戦略を適切に進化させている。
これはBNF・cis・テスタ・片山晃と同じく、トップ投資家共通の特徴だ。一つのスタイルを頑固に守るのではなく、状況に応じて進化する柔軟性。これがあるからこそ、長期で勝ち続けられる。
投資手法の核心──PERバリュー投資+優待+高配当
御発注氏の投資手法は、明確に整理できる。投資手法はPERベースのバリュー投資と株主優待と高配当銘柄から選んだ利回りベースの投資になります。こちらも大枠は一貫して変わってはいません。安定してインデックス+10%を目指す運用になるので、大勝ちはしませんが負けにくい手法なので、入金投資法と相性が良かったです。
PER中心のバリュー投資+優待+高配当──このシンプルな組み合わせで8.5億円を築いた。
どうにかして、安い元手で値上がりも期待できそうな銘柄を買えないか…と調べていたところ、株価収益率(PER)という指標を知りました。僕の解釈だと、PERは、今の株価がお買い得か、そうでないか、を見る指標です。僕は投資の才能があるわけでもない、極めて普通の人です。実際、ライブドアショックとリーマンショックで元本割れも経験しました。正直、最初は、なぜ株価が上がったり下がったりするのかも分からないレベルでしたが、手痛い失敗やミスをしながらも、手探りで売買していくうちに、だんだん知識もついて、投資も上達してきたなと感じています。
「投資の才能があるわけでもない、極めて普通の人」という自己評価が印象的だ。BNFやcisが天賦の才を発揮するのとは対照的に、御発注氏は「凡人の最適戦略」を確立した人である。
「年間配当2,000万円」という到達点
御発注氏の現在の経済状況を象徴するのが、年間配当収入2,000万円という数字である。資産残高8.5億円、年間配当収入2,000万円を突破したコジ活投資家のレジェンド”御発注”。その軌跡をまんがで辿りながら、彼ならではの成功の秘訣を徹底解説。投資に回す元手をできるだけ確保するための生活術=「コジ活」と、優待と配当で20年後に元を取るという「実質利回り」に注目したシンプルな考え方をわかりやすく説明します。
年間配当2,000万円。これは月170万円の不労所得を意味する。コジ活で生活コストが極度に低い御発注氏にとって、これは「永遠の経済的自由」が完成したことを意味する。
私の独自分析では、御発注氏が証明したのは「サラリーマンでもFIRE(早期経済的独立)が可能」という事実である。多くのFIRE論は、「インデックス投資で4%ルール」を語る。しかし御発注氏は、それより早く・確実に・現金フロー豊富なFIREを実現した。コジ活×個別株+優待+配当という、独自の方程式で。
「会社員を辞めない理由」──FIRE可能でも辞めない哲学
ここで興味深いのが、御発注氏が現在もサラリーマンを続けているという点だ。優待と高配当投資で資産8億円、それでも僕が会社員を辞めないワケ──このタイトルが示す通り、彼は十分にFIRE可能な状態でも、会社員を続けている。
私の独自視点では、これは現代の働き方論として極めて重要だ。資産8.5億円、年間配当2,000万円。会社の給料がなくても困らない。それでも辞めない理由は何か。
第一に、社会との接続を保つため。専業投資家になると孤独になりやすい。会社という社会システムに身を置くことで、生活のリズムと人間関係が維持される。第二に、給料は引き続き入金力の源泉。配当2,000万円+給料で、入金力はさらに加速する。第三に、サラリーマンとしての自己アイデンティティ。中学2年から専業のかぶ1000さんとは違い、御発注氏は社会人1年目からサラリーマン投資家として生きてきた。サラリーマンであることが彼の本質なのだ。
これは私たち現代人にとって、深い示唆を与える。「お金が貯まったら会社を辞めて自由に生きる」というのは一つの選択肢だが、必ずしも幸せではない。御発注氏は、お金と仕事を両方持ちながら、好きな投資を続けるという第三の道を選んだ。これも合理的なライフデザインである。
「コバンザメ投資」──時短のための独自手法
御発注氏は、サラリーマン投資家ならではの工夫を多数開発している。代表的なのが「コバンザメ投資」だ。本書で最も有益であった学びは、「コバンザメ投資」という考え方である。これは著者が提唱する「時短投資術」であり、以下の3つの銘柄探しが該当する。1. 大株主作戦 2. 中小型株ファンド作戦 3.──というアプローチ。
「コバンザメ投資」とは、大物投資家(五味大輔・吉田知広・かぶ1000など)の保有銘柄リストや、中小型株ファンドの組入銘柄リストを見て、自分の投資先を選ぶ手法だ。彼らがすでに分析を済ませた銘柄に乗っかることで、自分の調査時間を大幅に削減できる。
私の独自視点では、これは現代のサラリーマン投資家にとって、極めて合理的な戦略だ。本業がある以上、銘柄分析にかける時間は限られる。だったら、すでに優秀な投資家が選別した銘柄を入口にする。そこからさらに自分の判断を加えれば、効率的に質の高い投資判断ができる。
ただし注意点もある。コバンザメ投資は「他人の判断に依存する」という危険性を持つ。元の投資家がいつ売却するか分からないし、彼らのポジションサイズと自分のサイズは違う。だから「銘柄選定の入口として使う」のはOKだが、「丸ごと真似する」のはNGである。
「肉を切らせて骨を断つ」──ゲームから学んだ投資哲学
御発注氏の哲学を象徴する言葉がある。僕の好きな言葉に、「肉を切らせて金を取る」というものがあります。これは『おいでよ どうぶつの森』というゲームに登場する「つねきち」という商売人キャラクターの言葉です。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉もありますが、「捨て身の覚悟で取り組めば、危機を脱し、活路を見出すことができる」ということ。ゲーム中の言葉ですが、本質をついているなと思うんです。これくらいの気持ちと覚悟がないと経済的自由への活路は開けないのも事実ですが、種銭をつくって正しい投資を続ければ、”億り人”になることは誰でもできると思います。
「どうぶつの森のつねきち」から人生哲学を学ぶ──これは御発注氏の人柄を物語っている。彼は権威ある古典や偉人の言葉ではなく、ゲームのキャラクターから学ぶ。これは現代の若い世代に親しみやすい姿勢だ。
そして「肉を切らせて骨を断つ」の本質は、コジ活の精神そのものだ。生活水準を切り捨てる(肉)ことで、入金力という勝利(骨)を手に入れる。短期的な犠牲と長期的な勝利のトレードオフを、明確に意識した戦略である。
我々が御発注氏から学べること
長くなったが、最後に御発注氏から我々サラリーマン投資家が学べる教訓を、5点に整理しておきたい。
第一に、「入金力こそ最大の武器」。年率20%のリターンを目指すより、年300万円を入金し続けるほうが、長期では資産が増える。複利の力を最大化するには、まず種銭の蓄積が必要だ。
第二に、「節約と投資の循環」。優待で生活コストを下げ、下がった分を投資に回す。この循環を作れば、雪だるま式に資産は増える。
第三に、「失敗を名前に刻む覚悟」。御発注氏が誤発注を名前にしたように、自分の最大の失敗を忘れない仕組みを持つ。失敗を反省として記憶することで、二度と同じ過ちを犯さない。
第四に、「PERという基本指標の徹底活用」。難しい指標は不要。PERだけで十分。シンプルな指標を、徹底的に使い倒す。これが凡人の最強戦略だ。
第五に、「FIRE可能でも辞めない選択」。お金が貯まったら必ず会社を辞めるべきというのは幻想。会社員でいることのメリット(社会接続、入金力、自己アイデンティティ)を活かして、第三の道を選ぶことも可能だ。
結びに──「市井の億り人」の真実
御発注氏は、日本の個人投資家の中で「最も再現性のある」ロールモデルである。BNFのような天才性も、cisのような順張りの胆力も、テスタのような100種類の手法も必要ない。必要なのは、コジ活という節約と、PERバリューという銘柄選定基準と、20年続ける忍耐だけである。
そして彼が証明したのは、現代日本のサラリーマンでも、給料の8割を投資に回せば億り人になれるという事実だ。手取り400万円のサラリーマンが20年で8.5億円。これは社会の階段を駆け上がる革命的な事例である。
私が御発注氏から最も学ぶべきだと思うのは、「お金以上に時間を投資する」という姿勢だ。コジ活を実践するには、毎日の細かい工夫が必要だ。スーパーのチラシをチェックする、優待の権利確定日を覚える、無料サービスの開始日を逃さない。これらの作業は地味で、面倒で、時間がかかる。
しかし、20年続ければ、その時間投入は8.5億円という結果に変わる。これがコジ活の真髄だ。お金を時間で買うのではなく、時間でお金を生み出す。サラリーマンが持つ唯一の資源は時間であり、それを最大化する手段がコジ活である。
次に給料明細を見るとき、自分の手取りの何%を投資に回しているか、計算してみてほしい。10%? 20%? もし御発注氏のように80%を回したら、20年後の自分はどこにいるだろうか? その問いに、本気で向き合った人だけが、本当の経済的自由への扉を開けるのである。

