個人投資家・www9945氏──「年収300万円の清掃員」が10億円を築いた物語

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日本の個人投資家の中で、最も「親しみやすい億り人」と呼べる人物の一人がwww9945氏である。1990年代から株式投資を始め、納豆会社や清掃会社で働きながらコツコツと資産を増やし、2012年に1億円突破、2014年に専業投資家化、そして2025年には資産10億円を超えた。年収300万円台の清掃員から始まり、現在は年間配当収入1,000万円超のFIRE生活を送る、まさに現代日本の「庶民投資家の星」である。

私がwww9945氏に強く惹かれるのは、彼の物語が「最も再現性のある成功譚」だからだ。BNFやcisのような天才性はない。五味大輔氏のような中学時代からの早熟もない。清原達郎氏のようなエリートキャリアもない。あるのは、徹底した節約と、地道な投資、そして街を歩いて気づきを得る実践的な観察力。これは普通の日本人が真面目に応用できる、最も身近なロールモデルである。今回はこの「庶民投資家の星」を、私なりの独自視点でじっくり掘り下げていきたい。

1990年代──邱永漢のコラムから始まった投資人生

www9945氏の物語は、1990年頃から始まる。当時20代の彼は、「金儲けの神様」と呼ばれた邱永漢氏のコラムを読んで株式投資に興味を持った。もともと競馬や麻雀などのギャンブルが好きで、その流れから株式投資にも関心を持ったのが入口だった。

私はこの「ギャンブルから投資へ」という流れに、www9945氏の本質を見る。彼は最初から真面目な金融エリートではなかった。むしろギャンブラー気質を持つ普通の若者だった。それが邱永漢のコラムで「お金を増やす知的な方法」としての株式投資を知り、ハマっていった。

ここに重要な独自視点がある。日本の個人投資家の中で大成功した人々の多くは、ギャンブル経験者である。cis氏はパチンコと競馬、テスタ氏は1日13時間のパチンコ生活、www9945氏も麻雀・競馬。ギャンブル経験者は、確率論的思考、リスク管理、感情コントロールという、投資に必要な能力を実地で訓練している。これはエリートサラリーマンの座学では身につかないスキルだ。

そしてもう一つ重要なのは、邱永漢氏という入口である。邱永漢は「お金儲けは庶民の哲学である」というメッセージを発信し続けた人物だ。彼のコラムを読んでいたwww9945氏は、最初から「投資は特別な人のものではなく、自分でもできる」という確信を持って始めた。これは精神的な土台として、極めて重要な意味を持つ。

1996年、本格スタート──最初の10年は「失敗の連続」

1996年から本格的に投資を始めたwww9945氏だが、最初の道のりは決して順調ではなかった。最初の10年間で年100万円ずつ合計1,000万円を投資したが、本人の振り返りによれば「失敗続きで全然増えなくて、貯金していたほうがマシだった」という。株価が下がるとナンピン買いをしたり、チャートを見て底値だと思い込んで買い、さらに下がる「底抜け」も経験した。

ここに私はwww9945氏の真摯さを感じる。多くの個人投資家は、自分の初期失敗を語らない。「最初から勝てた」と話を盛りがちだ。しかしwww9945氏は、10年間の停滞期を率直に認めている。

私の独自視点では、この「最初の10年」こそ、後の成功の真の土台である。彼はこの期間に「やってはいけないこと」を学び尽くした。ナンピン買いの危険性、底抜けの恐怖、感情で動くことの愚かさ──これらは机上の本では学べない、実体験でしか得られない知識だ。

そして重要なのは、彼が10年間負け続けても撤退しなかったという事実である。普通の人なら、10年も結果が出なければ諦める。しかしwww9945氏は続けた。これは「途中で諦めない胆力」という、投資家として最も重要な資質の証明である。

ハンドルネームの由来──ほっともっとの株主コード「9945」

www9945氏のハンドルネームには、彼の投資哲学が凝縮されている。「9945」は、持ち帰り弁当チェーン「ほっともっと」を運営する株式会社プレナス(現在は上場廃止)の証券コードに由来する。彼が若い頃に投資して印象深かった銘柄である。

私はこのハンドルネームの選び方に、www9945氏の人生観を見る。多くの投資家は、自分のハンドルネームに「億」「億り人」「FIRE」「Wealth」など、お金や成功を直接示す言葉を使う。しかしwww9945氏は、自分が投資した一銘柄の証券コードを名乗っている。これは「特定の企業との出会いを大切にする」という姿勢の表れだ。

ほっともっとは、安価で美味しい弁当を販売する庶民的な店だ。高級レストランではない。生活密着型の地味なビジネス。しかし、それゆえに安定した売上を生み、株主にリターンをもたらした。これはwww9945氏が一貫して追求してきた「生活密着型の銘柄選び」というテーマの原点である。

10年の停滞からの転換──順張りへの戦略変更

10年間の停滞期を経て、www9945氏は手法を大きく転換する。ハイリスクなナンピン買いをやめ、購入後に株価が上がった銘柄を買い増していく順張りに切り替えた。これにより運用成績が改善し始める。

ここで私は、彼の柔軟性に注目したい。10年間「逆張り型」で負け続けた後、自分のスタイルを「順張り型」に変えた。これは前回紹介したcis氏の「長期から短期への転換」と同じ構造だ。自分のスタイルに固執せず、結果が出なければ手法を変える柔軟性こそ、長期生存の条件である。

普通の投資家は、自分のスタイルにアイデンティティを結びつけてしまう。「私はバリュー投資家だ」「私はグロース投資家だ」と。だから結果が出なくても、スタイルを変えられない。www9945氏は違った。彼にとってスタイルは「目的を達成する手段」であって、自分自身ではなかった。だからすぐに変えられた。

2012年、1億円突破──そして2014年、清掃会社退職

転換後のwww9945氏の資産は、急速に増えていった。2012年11月に資産が1億円を突破。そして2014年9月、清掃会社を退職して専業投資家になり、配当金生活に入った。

このタイミングが重要だ。2013年末にアベノミクスによる株高の恩恵もあり、彼の資産は2億円を突破した。資産2億円で配当利回り3%なら、税金を考慮しても月40万円の配当収入が確保できる。「もういつでも会社を辞められる」と思えたのが大きかったという。

私はこの判断に、www9945氏の慎重さと合理性を感じる。1億円達成時点では辞めなかった。1億円×3%=年300万円では、家賃や生活費の余裕を考えると不安定だ。2億円×3%=年600万円なら、確実にFIRE生活が成立する。彼は数字で冷静に判断したのである。

そして退職前のwww9945氏の手取り給料は月21〜22万円、ボーナス年26万円、退職金53万円だった。普通のサラリーマンとして、経済的には決して恵まれていなかった。それでも年300万円以上を投資につぎ込み続けたのは、徹底した節約の賜物である。

「街角ウォッチ」という独自手法──池袋を歩く投資家

www9945氏のもう一つの代名詞が、「街角ウォッチ」という銘柄選定手法だ。彼は東京・池袋を中心に街を歩き、店舗の入れ替わりや行列、新しい流行を観察することで、投資ヒントを得ている。

なぜ池袋なのか。彼自身の説明では、「渋谷はアンテナショップが多く、売れなければすぐに撤退してしまう。池袋は渋谷で成功したら企業が本腰を入れて出店する場所で、サンプル数が多く流行をつかみやすい」という。

これは私が独自視点で深掘りしたい部分だ。投資家にとって「どこを観察するか」は、判断の精度を決定する重要な要素である。多くの投資家は、ニュースサイトや決算資料という「二次情報」だけで判断する。しかしwww9945氏は、自分の足で街を歩き、肌で消費者動向を感じ取る「一次情報」を重視している。

これはピーター・リンチの「身近な観察」の発想と完全に一致する。リンチも、自分の妻が買う商品、子供が好きなゲーム、近所のスーパーで売れている飲料を観察して、投資判断に活かした。www9945氏の街角ウォッチは、現代日本版のリンチ投資である。

そしてコロナ前後で、流行が大きく変わったのを彼は肌で感じた。池袋では東急ハンズなどの大型商業施設がなくなる一方で、漢方薬店やペットショップ、トレーディングカード専門店などマニアックな店が増えた。アニメやキャラクターなどIP関連の広告が爆発的に増えた点に注目した。これがサイバーエージェント株への投資判断につながった。

「富士山型ポートフォリオ」という独自概念

www9945氏のポートフォリオ管理にも、独自の名前がついている。「富士山型ポートフォリオ」だ。

彼の投資手法は、高配当株や増収増益株など手堅い銘柄に分散して土台を作り、その上で株価に勢いがある主力株に集中投資するというもの。土台は長期保有で60〜100銘柄に広く分散。一方の主力株は、信用取引も使いながら、順張りで短期トレードする。

以前は、主力株は1銘柄で全体の3割を占める超集中投資だった。しかし、資産が6億円を超えた頃から、リスクの大きさや流動性の問題で1銘柄集中に限界を感じるようになった。そこで主力株を6銘柄に均等に分散し、1銘柄の比率を8.3%にした。「1銘柄集中の『スカイツリー投資法』から、主力株も複数に投資する『富士山投資法』になった」と本人は説明している。

この「スカイツリー→富士山」の比喩は、極めて秀逸だ。スカイツリーは細く高い一本の塔。富士山は広い裾野の上に頂点がある。前者は集中投資、後者は分散の上に集中があるハイブリッド戦略を象徴している。

私の独自分析では、富士山型ポートフォリオは現代の個人投資家にとって、理想的なモデルの一つだ。完全な集中はリスクが高すぎる。完全な分散はリターンが薄まる。「広い分散の土台+少数の主力銘柄」というハイブリッドは、ほぼすべての著名個人投資家が辿り着く成熟形である。光通信のコア+サテライト戦略、五味大輔氏の集中+分散、片山晃氏の25銘柄精選──これらすべてが、富士山型の変種と言える。

浪費しない生活──「年間生活費は300万円」

www9945氏のもう一つの特徴は、資産10億円を持ちながらも質実剛健な生活を続けていることだ。自宅は築40年の公団のまま。「年間の生活費は300万円もあれば十分」と笑う。

これは私が独自視点で強調したい部分だ。資産10億円持っているなら、タワーマンションに住んで高級車に乗り、世界中を旅行することもできる。しかしwww9945氏は、そんなライフスタイルを選ばない。

なぜか。理由はおそらく三つある。第一に、清掃員として年収300万円で生活していた時期の習慣が体に染み付いている。第二に、生活費が低いほど、資産から得られる収入の意味が大きくなる(年配当1,000万円で生活費300万円なら、毎年700万円が再投資原資になる)。第三に、これが最も本質的だが、「お金を使うこと」ではなく「お金が増えること」自体に喜びを感じる性格である。

これは桐谷広人さんの優待生活、御発注氏のコジ活と同じ系譜だ。彼らは「お金持ち=派手に使う」というステレオタイプを完全に否定する。本当のお金持ちは、お金を使うことに執着しない。お金を使わなくても十分に幸せな人だけが、お金を増やし続けられる。

損切りの徹底──年単位プラスを15年中13年達成

www9945氏のリスク管理にも特筆すべき点がある。損切りの徹底により、2003年から2017年までの15年のうち、年間の運用成績がマイナスになったのはライブドアショックが起きた06年と、リーマンショックのあった08年の2回しかない。

15年中13年プラス。これはテスタ氏の20年連続プラスには及ばないが、極めて優秀な成績である。注目すべきは、彼が信用取引も使う攻めの投資家でありながら、これだけの安定性を実現している点だ。

その秘訣は、損切りの徹底である。多くの個人投資家は「いつか戻る」という希望にすがって含み損を放置し、結果として大きな損失に発展させる。www9945氏は逆だ。下がり始めたら早めに損切りし、損失を拡大させない。これは順張り型投資家の必須スキルである。

米国株とベトナム株への分散──グローバル化への対応

www9945氏は近年、投資対象を国際的に広げている。日本株以外にも米国株やベトナムなどの海外の割安株にも手を広げている。

これは私が独自視点で評価したい進化だ。日本一国に集中することのリスクは、人口減少・経済停滞という構造問題から来ている。これを認識して、米国(成長)とベトナム(新興)に分散することは、合理的な対応である。

ただし、彼の海外投資にも独自の哲学がある。米国株では、保有株全体の約3分の2を占めていたたばこ株の持ち高を減らし、フィリップ・モリス・インターナショナルを4割、アルトリア・グループとブリティッシュ・アメリカン・タバコを全株売却した。その資金でカード大手のビザと格付け大手のS&Pグローバルを購入した。「2社とも参入障壁が高く、不況時も株価への影響は緩やかで、安定成長が見込めそうだ」と本人は語る。

これはバフェット流の「経済的堀(エコノミック・モート)」の発想だ。参入障壁が高い企業は、競合に侵食されにくく、長期で安定的な利益を生む。この発想が、www9945氏が日本株から米国株への展開で活かしている。

著書とブログ──情報発信家としての側面

www9945氏は積極的に発信もしている。著書に『年収300万円、掃除夫だった僕が7億円貯めた方法』『月10万円確実に稼ぐ! 一生使える株の強化書』などがある。楽天ブログ「www9945の公開プロフィール」は2004年4月から続き、累計300万アクセスを誇る。

彼の発信の特徴は、自分の失敗談を隠さないことだ。10年間の停滞期、ライブドアショック、リーマンショック──こうした苦い経験を率直に語る。これが読者の共感を呼ぶ。

私の独自視点では、www9945氏は「教育者」としての側面が強い。BNFやcisのような天才の話は、読者にとって参考になりにくい。しかしwww9945氏のような「普通の人が成功した話」は、読者が自分に重ね合わせやすい。だから彼の本は売れ続ける。

我々がwww9945氏から学べること

長くなったが、www9945氏から我々が学べる教訓を5点に整理しておきたい。

第一に、「最初の10年は授業料」と覚悟する。彼は1996年から2005年頃までの約10年、ほとんど結果を出せなかった。しかし諦めずに続けた。投資の真の成果は、10年単位でしか測れない。

第二に、「街角ウォッチ」の発想。決算書やニュースだけでなく、自分の足で街を歩き、肌で消費動向を感じる。これは個人投資家ならではの優位性であり、機関投資家には真似できない。

第三に、「節約こそ最大の入金力」。年収300万円でも年300万円以上を投資に回せた事実は、サラリーマン投資家にとって最大の励ましである。生活コストを下げることが、複利の威力を最大化する。

第四に、「順張りへの転換勇気」。逆張りで10年負け続けた後、順張りに切り替えた。自分のスタイルに固執せず、結果に基づいて変える柔軟性が重要だ。

第五に、「富士山型ポートフォリオ」。広い分散の土台と少数の主力銘柄。これは現代の個人投資家にとって、理想的な構造の一つである。

結びに──「現代日本のピーター・リンチ」

www9945氏は、日本の個人投資家の中で最も「庶民の希望の星」と呼べる存在である。BNFやcisが「天才の物語」だとすれば、www9945氏は「普通の人の物語」だ。年収300万円の清掃員が、徹底した節約と地道な投資、そして街角ウォッチで10億円を築いた。

そして彼が証明したのは、「特別な才能なしでも、規律と継続があれば資産は築ける」という事実だ。これは新NISA時代の日本人にとって、最も重要なメッセージである。

私が最も学ぶべきだと感じるのは、www9945氏の「お金との健全な関係」である。彼は10億円持っているが、暮らしぶりは年収300万円時代と大して変わらない。築40年の公団に住み、池袋を歩き、配当を再投資する。お金は彼にとって「目的」ではなく「ゲームのスコア」であり、生活のツールに過ぎない。

次に池袋を歩くとき、店舗の入れ替わりや若者の動向に目を向けてみてほしい。同じ街を、ある一人の投資家は10億円のヒントを発見する場として歩いている。我々も同じ目を持てば、同じヒントが見えてくるかもしれない。これが現代日本のピーター・リンチ──www9945氏が、私たちに教えてくれている最大の真実である。

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