吉田知広とは?保有銘柄から逆算する「謎の若き多株主」の投資スタイル【2026年版】

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吉田知広氏は「広く薄く、ときどき深く」買う30代の大株主

小型株の有報を読んでいると、内藤征吾氏と並んでよく見かけるもう1人の個人名があります。それが吉田知広(よしだ ともひろ)氏です。

先にポイントをまとめます。

  • 1986年生まれの30代:大株主欄の常連としては、かなり若い世代
  • 100銘柄超を保有:バフェット・コードでは131銘柄、2024年6月時点の集計では137銘柄
  • 建設・インフラと低PBR株が中心:サンゲツ、東亜建設工業、伯東などの大株主に名前がある
  • ふだんは1〜3%、ここぞでは5%超:大量保有報告書をこれまでに3社で提出している
  • 発信はゼロ:本もSNSもなく、手がかりは開示書類だけ

この記事では、有価証券報告書と大量保有報告書という一次情報を中心に、吉田氏の投資スタイルを保有銘柄から逆算していきます。

吉田知広氏は何者?分かっていること・分かっていないこと

吉田氏も内藤氏と同じく、表に出てこない投資家です。それでも、開示書類を丁寧に拾うと、ある程度の輪郭は見えてきます。

項目 分かっていること 根拠
年齢 1986年生まれ(2026年時点で30代) IRBANKの個人株主情報
区分 法人ではなく個人名義 有価証券報告書の大株主欄
保有銘柄数 131〜137銘柄(時点により異なる) バフェット・コード、2024年6月時点の集計
大量保有報告書 3社で提出(暁飯島工業、ソレキア、ありがとうサービス) 金融庁EDINETの開示
保有目的 純投資 暁飯島工業の大量保有報告書

一方で、職業、投資を始めた時期、資金の出どころ、総資産はどれも公表されていません。

30代でこれだけの規模の株主になっている理由は、相続なのか、事業で得た資金なのか、投資で増やしたのか。どれも推測の域を出ません。ただ、2014年に1社だった掲載社数を10年かけて50社台まで増やしてきた経緯を見ると、少なくとも「長い時間をかけて積み上げてきた投資家」であることは確かだと思います。

保有社数の推移:コロナ暴落後に一気に増えた

吉田氏の名前が上位10位の大株主欄に載った企業数は、2014年の1社から2024年には53社まで増えています。同じ「多株主」として知られる内藤征吾氏と並べると、増え方の違いがよく分かります。

吉田知広氏と内藤征吾氏の大株主として掲載された株式銘柄数の比較

 

内藤氏が少しずつ増やしてきたのに対し、吉田氏は2019年の9社から2021年の40社へ、2年で約4倍になっています。ちょうどコロナショックで小型株が投げ売られた時期で、暴落局面でまとめて拾った可能性が高いと思います。

なお、IRBANKでは2025年が「2社(前回からマイナス51社)」と表示されていた時期があります。これはその年の有報が出そろう前の集計による見かけ上の減少と考えられ、大量に売却したという意味ではなさそうです。

また、この数はあくまで「上位10位に入った会社」だけです。実際の保有銘柄は130銘柄前後と、その2倍以上あります。

主な保有銘柄から逆算する投資スタイル

保有額が大きかった銘柄トップ10

2024年6月に公開された個人投資家の集計(note)では、2014年9月〜2024年6月の期間中に吉田氏の保有額が大きかった銘柄が、次のように整理されています。

順位 銘柄(コード) 期間中の最大保有額 保有割合
1 サンゲツ(8130) 約49.7億円 2.80%
2 東亜建設工業(1885) 約27.6億円 3.12%
3 伯東(7433) 約24.4億円 2.38%
4 プレミアグループ(7199) 約23.3億円 3.02%
5 大建工業(7905) 約22.8億円 2.90%
6 宮地エンジニアリンググループ(3431) 約19.7億円 3.05%
7 東洋建設(1890) 約19.0億円 1.46%
8 岩井コスモHD(8707) 約16.5億円 3.19%
9 イワキ(6237) 約16.1億円 2.79%
10 夢真ホールディングス(2362) 約14.4億円 1.82%

ここで注意したいのは、この金額が「今いくら持っているか」ではなく「期間中でいちばん多かったときの金額」だという点です。10位の夢真ホールディングスは2021年の経営統合で上場廃止になっています。時期の違う数字なので、10銘柄を足して「総資産は約234億円」とは言えません。

とはいえ、サンゲツ1銘柄だけで50億円近く持っていた時期があるのは事実です。総資産が数十億円規模ということはまずなく、もう一段大きいと見るのが自然だと思います。

特徴1:建設・インフラ関連が多い

東亜建設工業、東洋建設、宮地エンジニアリンググループ、大建工業のほか、中小の設備工事会社にも多数名前があります。資産が目に見えやすく、国土強靭化や港湾の更新、洋上風力など、長く続く需要があるセクターです。

特徴2:低PBR・高配当の「見直し待ち」株

保有先には、PBR1倍割れで長く放置されてきた会社が目立ちます。2023年3月に東証がPBR1倍割れ企業に改善を求めて以降、このタイプの株は見直しが進みました。結果的に、吉田氏の保有株の多くが追い風を受けた形です。

特徴3:ふだんは1〜3%、100銘柄超に分散

保有割合は1〜3%台がほとんどで、130銘柄前後に広く分けています。1社あたりは小さく、全体で大きくという、内藤征吾氏とよく似た形です。

特徴4:ここぞという銘柄では5%を超えて買う

ここが、この記事で一番伝えたい点です。吉田氏は「5%ルールを避けて目立たないようにしている」と言われがちですが、実際には大量保有報告書を3社で出しています(次の章で詳しく見ます)。広く薄く持ちながら、確信のある銘柄では一歩踏み込む。この二段構えこそ、吉田氏のスタイルの特徴だと考えます。

業種別に見た保有銘柄(107社)

吉田氏が大株主として名前を連ねたことが確認できた107社を、業種ごとに数えてみました。いちばん多いのは建設・土木の25社で、全体の約4分の1を占めます。

吉田知広氏の保有銘柄の業種別社数(建設・土木が25社で最多)

建設に偏っているように見えて、実際には15もの業種に散らばっています。景気が悪くなっても、どこかの業種が支えてくれる形です。

それぞれの業種にどんな銘柄があるかは、次のとおりです。保有状況は時期によって変わるため、今も持っているかは最新の有報で確かめてください。

業種 銘柄(コード)
建設・土木 東亜建設工業(1885)、東洋建設(1890)、大末建設(1814)、富士古河E&C(1775)、工藤建設(1764)、藤田エンジニアリング(1770)、常磐開発(1782)、田辺工業(1828)、暁飯島工業(1997)、四電工(1939)、弘電社(1948)、都築電気(8157)、宮地エンジニアリンググループ(3431)、川岸工業(5921)、大建工業(7905)、サンゲツ(8130)、中本パックス(7811)、前澤工業(6489)、ナガオカ(6239)、三井金属エンジニアリング(1737)、FCホールディングス(6542)、夢真ホールディングス(2362、上場廃止)、夢テクノロジー(2458)、スペースバリューHD(1448)、KHC(1451)
製造(ニッチ・ポンプ) イワキ(6237)、ジーテクト(5970)、ティラド(7236)、幸和製作所(7807)、テクノクオーツ(5217)、メタルアート(5644)、エノモト(6928)、ズーム(6694)、名古屋電機工業(6797)、遠藤照明(6932)、協栄産業(6973)、トーヨーカネツ(6369)、田岡化学工業(4113)
IT・SI テクマトリックス(3762)、NCD(4783)、JFEシステムズ(4832)、NCS&A(9709)、菱友システムズ(4685)、セゾンテクノロジー(9640)、両毛システムズ(9691)、キーウェアソリューションズ(3799)、ヴィンクス(3784)、TCS(3316)、情報企画(3712)
不動産・住宅 フージャースHD(3284)、グッドコムアセット(3475)、アーバネットコーポレーション(3242)、グランディハウス(8999)、ハウスフリーダム(8996)、ハウスコム(3275)、長栄(2993)、プロップテクノロジーズ(5527)
レジャー・メディア スターツ出版(7849)、KeyHolder(4712)、ルネサンス(2378)、グローバルダイニング(7625)、スバル興業(9632)、日本BS放送(9414)、ビーグリー(3981)、富士山マガジンサービス(3138)
証券 岩井コスモHD(8707)、いちよし証券(8624)、今村証券(7175)、HSホールディングス(8699)、豊トラスティ証券(8747)、あかつき本社(8737)
電子・半導体商社 伯東(7433)、東京エレクトロンデバイス(2760)、ミタチ産業(3321)、日本電計(9908)、バイテックHD(9957)
食品 日東富士製粉(2003)、シノブフーズ(2903)、ジャパンフーズ(2599)、ニチモウ(8091)
商社・流通 高島(8007)、カノークス(8076)、初穂商事(7425)、ハークスレイ(7561)
教育 リソー教育(4714)、学究社(9769)、ウィザス(9696)
小売・サービス ありがとうサービス(3177)、井筒屋(8260)、ジェイエスエス(6074)
人材・コンサル ウイルテック(7087)、MS&Consulting(6555)、ブリッジインターナショナル(7039)
アパレル 三陽商会(8011)、ハニーズHD(2792)
銀行・金融サービス プレミアグループ(7199)、住信SBIネット銀行(7163)
その他 NEW ART HOLDINGS(7638)、AFC-HDアムスライフサイエンス(2927)、Eストアー(4304)、TAKARA&COMPANY(7921)、マミヤ・オーピー(7991)、ピープル(7865)、古林紙工(3944)、クロス・マーケティンググループ(3675)、PCIホールディングス(3918)、ギガプライズ(3830)

このリストを眺めていて気づくのは、「業界の裏方」が多いことです。半導体そのものではなく部品を届ける商社、大手ゼネコンではなく設備工事や橋梁の専門会社、大手SIerではなく地方のシステム会社。派手さはないけれど、なくなると業界が困る会社ばかりです。

実際に一次データを見て分かったこと(独自分析)

紹介記事やまとめサイトの数字だけでは物足りないので、金融庁のEDINETに出ている大量保有報告書を自分でも確認してみました。そこから見えたのは、「静かな分散投資家」というイメージとは少し違う顔です。

大量保有報告書を3社で提出していた

提出日 銘柄(コード) 内容
2024年2月 ありがとうサービス(3177) 新規提出、その後に変更報告書
2017年4〜5月 ソレキア(9867) 新規提出と同時に保有減少、翌月もさらに減少
2015年4月〜2018年2月 暁飯島工業(1997) 新規提出のあと買い増しを2回、2017年以降は減少

暁飯島工業では、2015年4月の時点で保有割合5.24%、保有目的は「純投資」と記載されています。経営に口を出すアクティビストではなく、あくまで投資として持っていることが分かります。

発見1:5%を「避けている」わけではない

よく言われる「5%ルールを嫌って1〜3%にとどめている」という見方は、半分しか当たっていません。正確には、ふだんは1〜3%で広く持ち、強く確信した銘柄だけ5%を超えて買っている、という二段構えです。

暁飯島工業では5%を超えた後も2回買い増していて、短期の売買ではなく腰を据えて買い集めていたことが読み取れます。

発見2:ソレキアは「出口」がはっきりしていた

ソレキアは2017年の春、複数の買い手によるTOB(株式公開買い付け)合戦で大きく注目された銘柄です。吉田氏は新規の大量保有報告書と同じ日に保有減少の報告書も出しており、その後さらに売っています。

割安なまま放置されていた株が、TOBで一気に評価された局面で売却した、と見るのが自然です。低PBR株を持ち続ける投資家にとって、TOBや株主還元の強化は大きな「出口」になります。

発見3:2024年にも新しく5%超えをしている

ありがとうサービスでは2024年2月に新規の大量保有報告書が出ています。30代になった今も、銘柄を絞って厚く買う動きは続いているということです。

自分で調べる方法

  1. 金融庁のEDINETで「吉田知広」と検索し、大量保有報告書を探す。保有割合や保有目的まで分かる、いちばん確実な一次情報です。
  2. IRBANKの個人株主ページで、年ごとの掲載社数や保有比率をまとめて見る。
  3. 気になった銘柄は、株探などの大株主推移で、いつから名前が載っているかを確認する。

吉田氏の銘柄をマネするときの注意点

大株主の常連が持っている銘柄は、どうしても気になります。私も小型株を探すとき、こうした名前をきっかけに調べ始めることはよくあります。ただ、そのまま同じ銘柄を買うのはおすすめしません。理由は4つです。

  1. 見えるのは数か月前の姿:有報の大株主欄は決算日時点のデータです。公開されるころには、買い増しも売却も終わっているかもしれません。
  2. 買値がまったく違う:吉田氏は暴落時や放置されていた時期に安く仕込んでいます。同じ銘柄でも、今の株価で買えば割安さは別物です。
  3. 分散が前提の戦略:130銘柄に分けているから、外れが混ざっても全体で勝てます。そこから数銘柄だけ抜き出しても、同じ結果にはなりません。
  4. 売るタイミングは教えてくれない:ソレキアのように、売却が分かるのは5%超えの銘柄だけです。1〜3%の銘柄をいつ手放したかは、次の有報まで分かりません。

吉田氏の保有リストは、答えではなく「調べる候補のリスト」として使うのがちょうどいいと思います。

内藤征吾氏・五味大輔氏との比較

同じ「兜町の有名個人投資家」でも、やり方はかなり違います。

項目 吉田知広氏 内藤征吾氏 五味大輔氏
世代 1986年生まれの30代 非公開 中学時代から投資
保有銘柄数 130銘柄前後 100銘柄超 少数に集中
1銘柄の比重 ふだん1〜3%、ときに5%超 2〜4%前後 筆頭株主になるほど厚く
得意分野 建設・インフラ、低PBR株 地方の小型バリュー株 新興市場の成長株
情報発信 なし なし メディア取材で一部語る

吉田氏と内藤氏は「広く薄く、長く」という点でよく似ています。違いは、吉田氏のほうがサンゲツや東洋建設のような時価総額の大きい銘柄も持っていること、そして5%を超えて踏み込む場面があることです。

吉田知広氏から個人投資家が学べること

  • 暴落は仕込みどき:コロナ暴落後に保有社数を一気に増やした動きは、「みんなが売るときに買う」を地でいくもの
  • 分散と集中は両立できる:ふだんは広く薄く、確信があるときだけ厚く。守りと攻めを分けて考える
  • 出口を用意しておく:低PBR株は、TOBや株主還元の強化で一気に評価されることがある
  • 政策の追い風を見る:東証のPBR改善要請や国土強靭化のように、長く続く流れに乗る
  • 自分に合った規模で:130銘柄の管理は普通の個人には無理です。20〜30銘柄でも考え方は十分マネできます

よくある質問(FAQ)

Q. 吉田知広氏は何歳ですか?

IRBANKの個人株主情報によると1986年生まれで、2026年時点で30代です。大株主欄の常連としてはかなり若い世代です。

Q. 吉田知広氏の資産額はいくらですか?

公表されていません。ただ、サンゲツ1銘柄で約50億円を保有していた時期があり、130銘柄前後を持っていることから、数十億円をはるかに超える規模と推測されます。

Q. 吉田知広氏の保有銘柄はどこで調べられますか?

金融庁のEDINETで有価証券報告書や大量保有報告書を検索するのが一番確実です。まとめて見るならIRBANKの個人株主ページが便利です。

Q. 吉田知広氏はアクティビストですか?

大量保有報告書の保有目的は「純投資」で、株主提案などをした形跡は見当たりません。経営に口を出すタイプではなく、純粋な投資家と考えられます。

Q. SNSやブログはありますか?

確認できません。名前を使った投資勧誘を見かけたら、本人とは無関係の可能性が高いので注意してください。

Q. 「3%前後」の保有に何か意味はありますか?

会社法では、議決権の3%以上を持つ株主に、会計帳簿の閲覧を請求する権利が認められています。ちなみに株主提案権は、議決権の1%以上か300個以上が条件なので、3%とは関係ありません。

吉田氏がこの権利を意識して3%前後で止めているのかは分かりません。実際に権利を使った形跡もありません。ただ、「いざとなれば会社にものを言える位置」にいることは事実で、小型株の大株主ならではの立場だといえます。

まとめ

吉田知広氏は、1986年生まれの若さで130銘柄前後の大株主に名を連ねる、日本でも珍しい個人投資家です。建設・インフラや低PBR株を中心に広く薄く持ちながら、暁飯島工業やありがとうサービスのように、確信した銘柄では5%を超えて買い進めてきました。

開示書類しか手がかりのない人物ですが、だからこそ数字は正直です。「広く薄く、ときどき深く」というやり方は、規模は違っても私たち個人投資家が参考にできる考え方だと思います。

※本記事は2026年10月時点で確認できた公開情報をもとにしています。保有状況は変わるため、投資判断は最新の開示書類とご自身の責任で行ってください。

参考資料

  • 金融庁 EDINET(吉田知広氏の大量保有報告書・変更報告書:暁飯島工業、ソレキア、ありがとうサービス)
  • IRBANK 個人株主ページ(基本情報、保有社数の推移)
  • バフェット・コード(保有銘柄数)
  • note「吉田知広氏の保有銘柄」(2024年6月時点の集計)
  • 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(2023年3月)
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