個人投資家cisの保有銘柄を完全分析する――伝説のトレーダーが20年にわたって動かしてきた銘柄群を一次情報から徹底解剖

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  1. はじめに――cisの保有銘柄を語るということ
  2. 第1章 cisの保有銘柄を理解するための5つの前提知識
    1. 1-1. 「保有」の時間軸が普通の投資家と違う
    2. 1-2. 資金規模の変化に応じて銘柄が変わってきた
    3. 1-3. 銘柄を「コア・サテライト」で考えていない
    4. 1-4. 銘柄の「価値」ではなく「値動き」を見ている
    5. 1-5. 保有銘柄の情報源は限定的
  3. 第2章 時代別cis保有銘柄の概観――5つの時期に分けて全体像を把握する
    1. 2-1. 第1期(2000年〜2002年)――バリュー投資失敗期
    2. 2-2. 第2期(2002年〜2005年)――新興市場開眼期
    3. 2-3. 第3期(2005年〜2010年)――急成長と試練の時期
    4. 2-4. 第4期(2010年〜2018年)――大型株・先物中心期
    5. 2-5. 第5期(2018年〜現在)――多角化・成熟期
  4. 第3章 cisが銘柄を選ぶ3つの軸――選択思想の構造的分析
    1. 3-1. 第1の軸――流動性
    2. 3-2. 第2の軸――トレンドの鮮明さ
    3. 3-3. 第3の軸――イベント(歪み)の存在
    4. 3-4. 3つの軸の相互作用
  5. 第4章 みずほ銀行株――失敗の原点となった伝説の銘柄
    1. 4-1. 2002年のみずほ銀行と銀行業界の状況
    2. 4-2. cisがみずほ銀行株を買った理由――バリュー投資の典型例
    3. 4-3. この失敗からcisが学んだ3つの教訓
    4. 4-4. みずほ銀行株はその後どうなったか――2002年の判断は正しかったのか
    5. 4-5. みずほ銀行株が教えてくれること――私たち一般投資家への含意
  6. 第5章 ジェイコム株――伝説の誕生となった3,300株
    1. 5-1. ジェイコム株(当時:人材派遣会社、現:不存在)とは
    2. 5-2. みずほ証券による誤発注――事件の発生
    3. 5-3. 2ちゃんねるで広がる「誤発注」の情報
    4. 5-4. cisの取引――19億円の発注、10分後の売却
    5. 5-5. なぜcisは「迷わなかった」のか
    6. 5-6. cisがすぐに売却した理由――「大勝利こそチャラにされやすい」
    7. 5-7. ジェイコム事件のもうひとりの主役――B・N・F(ジェイコム男)
    8. 5-8. ジェイコム事件の構造――再現性のあるパターンか
  7. 第6章 ライブドア株――cisが3日で5億円を失った銘柄
    1. 6-1. 2006年初頭のライブドアと堀江貴文
    2. 6-2. 2006年1月16日――東京地検特捜部の強制捜査
    3. 6-3. 連日のストップ安――cisが直面した「逃げられない地獄」
    4. 6-4. この失敗から学んだこと――流動性の罠
    5. 6-5. ホリエモンと「ライブドア事件」の経緯――その後の判決まで
    6. 6-6. ライブドア株のその後――cisは二度と新興市場のスター株に大金を入れない
  8. 第7章 東京電力株・東京電力債――cis最大の逆張り勝負
    1. 7-1. 東日本大震災と東京電力――2011年3月の悪夢
    2. 7-2. cisが東京電力債を40億円買った――「政府が潰さない」という仮説
    3. 7-3. 東京電力債は実際にどうなったか――cisの読みは大当たり
    4. 7-4. 「逆張り」と「順張り」――cisの一貫性と柔軟性
    5. 7-5. 東京電力株のその後――現在の株価
    6. 7-6. 不動産投資との比較――流動性が低い資産への投資思想
  9. 第8章 日経225先物――cisの中核ポジション
    1. 8-1. 日経225先物とは何か
    2. 8-2. なぜcisは日経225先物を中核にしたのか
    3. 8-3. チャイナショック(2015年8月)――40億円の利益
    4. 8-4. 一撃19億円(2018年2月6日)――先物空売りの記録的勝利
    5. 8-5. 日経225先物でのcisの戦略パターン
    6. 8-6. 日経225オプション――より高度なポジション
    7. 8-7. 先物中心の弊害――個別株の機微が見えにくくなる
  10. 第9章 ビットコイン――cisの仮想通貨参入
    1. 9-1. 2017年の仮想通貨バブル
    2. 9-2. cisがビットコインを買い始めた理由
    3. 9-3. 仮想通貨の世界での「順張り」の有効性
    4. 9-4. 仮想通貨の税制――cisが「効率は悪い」と言った理由
    5. 9-5. ビットコイン投資の出口戦略――cisはいつ売ったのか
    6. 9-6. 仮想通貨ETF時代――cisは新たな戦線を開くか
  11. 第10章 モナコイン――cisが愛したアルトコイン
    1. 10-1. モナコインとは何か
    2. 10-2. cisがモナコインを買い始めた経緯
    3. 10-3. なぜcisはマイナーなアルトコインに手を出したのか
    4. 10-4. モナコインのその後――cisはどう向き合ったか
    5. 10-5. アルトコイン投資の教訓――選別の難しさ
  12. 第11章 ソフトバンクグループ――時価総額20兆円の巨大株を動かす男
    1. 11-1. ソフトバンクグループの株価と特殊性
    2. 11-2. 「cisさん一人で大陰線」――伝説のエピソード
    3. 11-3. ソフトバンクグループ株の中期的な値動きの特徴
    4. 11-4. 2022年〜2023年の中国IT株急落とソフトバンクグループ
    5. 11-5. 2024年〜2025年のソフトバンクグループ復活
  13. 第12章 豊田自動織機――2024-2025年の悪夢のような取引
    1. 12-1. 豊田自動織機とは
    2. 12-2. 2024年4月25日――TOB報道で株価急騰
    3. 12-3. 5月、6月の動向――株価上昇とcisの100億円超ポジション
    4. 12-4. 2025年6月3日――TOB価格発表で株価暴落
    5. 12-5. なぜTOB価格はディスカウントになったのか
    6. 12-6. cisはなぜこのリスクを見落としたのか――独自分析
    7. 12-7. 立ち直りの早さ――半導体株への乗り換え
    8. 12-8. 豊田自動織機事件の最終局面――2026年4月の上場廃止
  14. 第13章 半導体株群――cisが豊田自動織機の損失をリカバーした舞台
    1. 13-1. 2024〜2025年の半導体株ブームの背景
    2. 13-2. cisが取引したと推察される半導体株群
    3. 13-3. cisの半導体株トレードの推察――どんなパターンだったか
    4. 13-4. なぜ半導体株でリカバーできたのか――タイミングの良さ
    5. 13-5. 半導体株に潜むリスク――cisが警戒している点
  15. 第14章 任天堂・ソフトバンク・KDDI――cisの長期保有説の検証
    1. 14-1. 長期保有説の出どころ
    2. 14-2. 任天堂(7974)の保有可能性
    3. 14-3. ソフトバンク(9434)――通信会社のソフトバンクと、ソフトバンクグループの区別
    4. 14-4. KDDI(9433)――安定配当の代表格
    5. 14-5. なぜ大型通信株なのか――推察される論理
  16. 第15章 IPO銘柄――cisが「初心者向け」と勧める唯一の領域
    1. 15-1. cisがIPO銘柄を勧める理由
    2. 15-2. cisが好むIPO銘柄のタイプ
    3. 15-3. IPO銘柄でのcisの推奨スタイル
    4. 15-4. 注意点――IPO銘柄でも全力投球はNG
  17. 第16章 cisが「買わない」銘柄――除外されるタイプの銘柄群
    1. 16-1. 流動性の低い小型株
    2. 16-2. ファンダメンタルズ系のバリュー株
    3. 16-3. 配当目的の高配当株
    4. 16-4. 過去の業績悪化銘柄
    5. 16-5. 仕手筋が動いている可能性のある銘柄
    6. 16-6. 自分の手の届かない海外株
  18. 第17章 他の伝説の投資家との保有銘柄比較
    1. 17-1. B・N・F(ジェイコム男)の保有銘柄との比較
    2. 17-2. テスタの保有銘柄との比較
    3. 17-3. 片山晃(五月)の保有銘柄との比較
    4. 17-4. ウォーレン・バフェットの保有銘柄との比較
    5. 17-5. ジョージ・ソロスの保有銘柄との比較
  19. 第18章 cisの保有銘柄から学ぶ7つの教訓
    1. 18-1. 教訓1――銘柄選びより「銘柄に対する姿勢」が大事
    2. 18-2. 教訓2――時間軸を自分で決める
    3. 18-3. 教訓3――流動性を軽視しない
    4. 18-4. 教訓4――イベントを先読みする習慣をつける
    5. 18-5. 教訓5――失敗から早く立ち直る能力を磨く
    6. 18-6. 教訓6――資金規模に応じて戦略を変える
    7. 18-7. 教訓7――情報源を独自に持つ
  20. 第19章 cisの保有銘柄の本質――まとめに代えて
    1. 19-1. cisの保有銘柄は「ポートフォリオ」ではなく「ポジションの集合」
    2. 19-2. cisの保有銘柄を見ると、彼の哲学が浮かび上がる
    3. 19-3. 「個別銘柄」より「市場の歪み」を見る
    4. 19-4. 私たち一般投資家への最終メッセージ
  21. 参考資料・一次情報リスト
    1. cis本人の一次情報
    2. メディアの取材記録
    3. 豊田自動織機TOBに関する一次情報
    4. Web記事・解説サイト
    5. 動画・その他のメディア
    6. 他の投資家との比較に関する参考資料
  22. あとがき

はじめに――cisの保有銘柄を語るということ

300万円から始めて230億円超、現在では300億円を超える資産を運用するといわれる個人投資家のcisさん。多くの投資家が「cisさんは、いったいどんな銘柄を持っているのだろうか」と一度は気になったことがあるのではないでしょうか。

しかし、cisさんの保有銘柄を正確に把握するのは、実はとても難しいことなのです。理由は単純で、cisさんが基本的に「デイトレード中心」のトレーダーだからです。数秒から数十時間という短い時間軸で銘柄を出し入れするスタイルなので、一般的な意味での「ポートフォリオ」というものが存在しないに等しいのです。さらに、cisさんは自分の保有銘柄を積極的に公開するタイプではなく、ツイートでも具体的な銘柄名を伏せて発信することが多いです。

それでも、本人の著書である『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA、2018年)、本人のTwitter(X)アカウント「@cissan_9984」での過去の発言、各種メディアでのインタビュー、そして本人が関わった有名事件の報道などを丹念に追っていくと、cisさんがどの時期にどんな銘柄を持っていたか、ある程度の輪郭が見えてきます。

この記事では、その輪郭を可能な限り鮮明に描き出し、それぞれの銘柄について「なぜ買ったのか」「どう動かしたのか」「結果はどうだったのか」を一次情報を元に深掘りしていきます。さらに、私自身の独自分析として「cisさんがその銘柄を選んだ思考プロセス」「その銘柄選択が彼の哲学全体のなかでどんな位置を占めるのか」も論じていきます。

文字数は10万字を超える大長編になります。読み通すには相当な時間が必要ですが、cisさんという投資家の「銘柄選択思想」を本気で理解したい方には、必ず役立つ内容になっているはずです。ですます調でお届けしていきます。それでは、はじめていきましょう。


第1章 cisの保有銘柄を理解するための5つの前提知識

具体的な銘柄分析に入る前に、cisさんの保有銘柄を見るときに押さえておくべき5つの前提を整理しておきます。これを理解していないと、彼の銘柄選択の「なぜ」がまったく見えてきません。

1-1. 「保有」の時間軸が普通の投資家と違う

まず、cisさんにとっての「保有」は、一般的な投資家のそれとはまったく違います。

一般的な個人投資家は、「保有銘柄」といえば数か月から数年、長ければ十数年も持ち続ける銘柄を意味します。バフェット流の長期投資家であれば「死ぬまで保有」が前提になります。

しかしcisさんの場合、本人が公言する得意な時間軸は「数秒から48時間程度」です。つまり、朝買って夜売る、あるいは昨日買って今日売る、それどころか数秒で売買を完結させることもザラ、という世界です。

この時間軸で考えると、「保有銘柄」という概念自体が揺らぎます。今日この瞬間に保有している銘柄が、3時間後にはまったく違う銘柄に入れ替わっているということが当たり前に起きるのです。

ですから、cisさんの保有銘柄を語るときには、「ある時点でのスナップショット」ではなく、「過去にどんな銘柄を、どんな時期に、どのくらい持っていたか」という履歴で考える必要があります。

1-2. 資金規模の変化に応じて銘柄が変わってきた

cisさんの保有銘柄を理解する上で、もうひとつ重要なのが「資金規模の変化」です。

2000年に300万円で投資を始めた頃と、現在の300億円超の運用規模では、扱える銘柄がまったく違います。

300万円なら、新興市場の小型株でも自由に出入りできます。極端な例ですが、時価総額数十億円のマザーズ銘柄でも、300万円程度のポジションなら市場に影響を与えずに売買できます。

しかし300億円となると話が変わります。仮にこの全額を時価総額1,000億円の中型株に投じようとすれば、その会社の発行済株式の3割を一気に買うことになり、市場に巨大な影響を与えてしまいます。これではトレーダーとしてのスタイルが成立しません。

そのため、cisさんは資金規模の拡大とともに、扱う銘柄も変えてきました。具体的にはこのような変遷です。

2000年から2005年頃までは、新興市場の小型株や中型株が中心。みずほ銀行株のナンピン買いで失敗した話や、ジェイコム株での6億円利益などは、この時期の代表例です。

2005年から2010年頃までは、大型株と新興市場の主力銘柄。ライブドア株での損失、東京電力株、ソフトバンクグループ株などが取引対象になり始めます。

2010年以降は、時価総額1兆円超の大型株、そして日経225先物・オプションが主戦場に。個別株は流動性の高い超大型株に限られていきます。

2015年以降は、日経225先物が主力ポジション。チャイナショックでの40億円利益、一撃19億円といった伝説的取引は、いずれも先物での取引です。

2020年代に入ってからは、株式・先物に加えて仮想通貨・債券・不動産といった多様な資産クラスにポジションを持つようになっています。

1-3. 銘柄を「コア・サテライト」で考えていない

cisさんの保有銘柄を理解するときの注意点として、現代のポートフォリオ理論でよく語られる「コア・サテライト戦略」とはまったく違う考え方をしている、という点があります。

コア・サテライト戦略では、ポートフォリオの中核(コア)に安定した銘柄(インデックスファンドや高配当株など)を据え、その周辺(サテライト)に成長期待の高い銘柄を配置する、という考え方をします。

しかしcisさんには、この「コア」がほぼ存在しません。彼の保有銘柄は、どれもがイベントドリブンの一時的なポジションであり、永続的に保有する「核」となる銘柄が存在しないのです。

例外があるとすれば、2013年時点で40億円分保有していたとされる東京電力債券、2008年に10億円で購入したビル2棟の不動産、そして近年噂される任天堂・ソフトバンク・KDDIといった大型株の長期保有くらいですが、いずれも「コア」というには中途半端で、cisさん本人もこれらを「ポートフォリオの中核」とは位置づけていないと思われます。

cisさんにとって、保有銘柄とは「市場に存在する一時的な歪みに張るためのチケット」のようなものです。歪みが解消されれば手放し、次の歪みが見えれば新しいチケットを買う。その繰り返しが、彼のポートフォリオの実態なのです。

1-4. 銘柄の「価値」ではなく「値動き」を見ている

これは投資哲学の話とも重なりますが、保有銘柄を語る上でも重要な前提です。

普通の投資家は、銘柄を選ぶときに「この会社は良い会社か」を考えます。業績、財務、競争優位、経営者の質、業界の成長性――こうしたファンダメンタルズを総合的に判断します。

しかしcisさんは、ファンダメンタルズをほぼ見ません。彼が見ているのは「今、この銘柄の値動きはどうなっているか」「需給バランスはどちらに傾いているか」「市場の歪みは存在するか」――この3点です。

ですから、cisさんが保有している銘柄を見ても、そこには「優良企業」と「ダメ企業」が混在しています。倒産寸前と言われた東京電力の社債も買ったし、世界的優良企業のソフトバンクグループ株も買った。一貫しているのは「値動きが優位な状況にある」という点だけです。

私たちがcisさんの保有銘柄リストを見るときに、「優良企業を選んでいる」という前提で読むと、まったく的を外してしまいます。cisさんの銘柄選択を理解するには、まずこのフィルターを外す必要があります。

1-5. 保有銘柄の情報源は限定的

最後に、現実的な制約として、cisさんの保有銘柄に関する情報源は限定的だという点を押さえておきましょう。

cisさんは、機関投資家や大口投資家のように「大量保有報告書」を頻繁に出すわけではありません。日本では発行済株式の5%を超える保有になると大量保有報告書の提出義務が発生しますが、cisさんは多くの場合、その手前でポジションを動かしているか、あるいは流動性の高い大型株を扱っているため、5%超になることは稀です。

そのため、cisさんの保有銘柄に関する情報は、以下のソースに限られます。

第一に、本人の書籍『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』に書かれている過去の取引エピソード。

第二に、本人のTwitter(X)「@cissan_9984」での発信。ただし具体的な銘柄名は伏せられていることが多いです。

第三に、ジェイコム事件、ライブドアショック、豊田自動織機TOBなど、本人の取引が公の事件と結びついて報じられたケース。

第四に、Bloomberg、日本経済新聞、AERA、プレジデント、ダイヤモンドZAiといった信頼性の高いメディアの取材記事。

第五に、本人と直接交流のある他の投資家(テスタさん、片山晃さんなど)の発言。

これらを統合しても、cisさんの保有銘柄の全貌を完全に把握することは困難です。とくに、デイトレ中心の「数時間だけ持っていた銘柄」については、ほぼ追跡不能です。本記事で扱うのは、これらの限られた情報源から確認できる「氷山の一角」にすぎないという点は、最初にお伝えしておきます。

それでも、その氷山の一角を丁寧に分析するだけで、cisさんの銘柄選択思想の本質に迫ることはできます。次章から、いよいよ具体的な銘柄分析に入っていきます。


第2章 時代別cis保有銘柄の概観――5つの時期に分けて全体像を把握する

具体的な個別銘柄に入る前に、cisさんの投資人生を5つの時期に分けて、それぞれの時期にどのような銘柄を扱っていたかを概観しておきます。これを頭に入れておくと、後の個別銘柄分析がよく理解できます。

2-1. 第1期(2000年〜2002年)――バリュー投資失敗期

時期:cisさんが法政大学4年生だった2000年夏に投資を開始してから、2002年に資産を一時104万円まで減らすまでの期間です。

主な保有銘柄:みずほ銀行株、その他の大型バリュー株(具体的銘柄名は本人非公開)。

特徴:この時期のcisさんは、現在のスタイルとは正反対の「逆張り・バリュー投資」を信奉していました。会社四季報を読み、ファンダメンタルズ分析を駆使して、「割安な株を買って上がるのを待つ」というスタイルです。

理系の法政大学工学部出身ですから、数字を読むこと自体は得意でした。しかし、ITバブル崩壊後の市場で、「割安に見える株」を買っても、それは「さらに割安になる株」だっただけ、という冷酷な現実に直面します。みずほ銀行株のナンピン買いで大失敗したのは、この時期です。

この時期にcisさんが学んだ最大の教訓は、「ファンダメンタルズ分析だけでは勝てない」「割安に見えるという感覚は思い込みに過ぎない」ということでした。1,000万円規模の累積損失を経て、彼は投資手法そのものを根本から見直すことを決意します。

2-2. 第2期(2002年〜2005年)――新興市場開眼期

時期:2ちゃんねるのオフ会で「びびりおん」さんから順張り手法を学び、短期トレードに転換してから、2005年12月のジェイコム事件直前までの期間です。

主な保有銘柄:マザーズ・ヘラクレス(現JASDAQ)の新興市場銘柄、IPO銘柄、出来高急増銘柄。具体的銘柄名は本人が公開していないため不明ですが、当時の市場の流れから、IT関連、バイオ関連、ゲーム関連などの新興企業を中心に取引していたと推察されます。

特徴:この時期から、cisさんの本領が発揮されます。順張りで、上昇トレンドが鮮明な銘柄に乗り、下落の兆しが見えた瞬間に降りる。この単純な原則を徹底することで、資産は1,000万円から30億円弱へと、約300倍に膨らみました。

監視銘柄は当時から60銘柄程度と公言されており、画面に張りついて値動きを追っていたとされています。マザーズ指数のチャートを常時監視し、新興市場全体の温度感を肌で感じながら個別銘柄を選んでいたという情報もあります。

2-3. 第3期(2005年〜2010年)――急成長と試練の時期

時期:2005年12月のジェイコム事件で約6億円の利益を得てから、2010年に資産100億円に到達するまでの期間です。

主な保有銘柄:ジェイコム株(2005年12月)、ライブドア株(2006年1月)、東京電力株、ソフトバンクグループ株、その他の大型株、不動産(2008年〜)。

特徴:この時期は、cisさんが「日本を代表する個人投資家」へと飛躍するとともに、大きな挫折も経験する波乱の時期です。

ジェイコム事件で名を挙げた直後、わずか1か月後のライブドアショックで3日間で5億円の損失を出します。デイトレーダーが個別株集中投資をする限界を痛感し、徐々に大型株と先物中心へとシフトしていきます。

2008年のリーマンショックでは、不動産価格の暴落を機にビル2棟を10億円で購入。この不動産は時価で20億円超に評価されたものの、後に「不動産投資は罰ゲーム」と本人が振り返ることになります。

2-4. 第4期(2010年〜2018年)――大型株・先物中心期

時期:資産100億円到達から、著書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』を出版した2018年12月までの期間です。

主な保有銘柄:日経225先物、日経225オプション、時価総額の大きな大型株(ソフトバンクグループ、ファーストリテイリング、ファナックなど日経平均寄与度の高い銘柄群と推察される)、東京電力債(2013年時点で40億円保有)、ビットコイン・モナコイン(2017年〜2018年)。

特徴:この時期、cisさんは「日経平均を動かす男」という異名を獲得します。2013年には年間で約1兆7,000億円の日本株を売買しており、これは東京証券取引所での個人投資家による株式取引の約0.5%に相当する規模です。

2015年8月のチャイナショックでは、先物売りで約40億円の利益を計上。これがBloombergで「謎の36歳デイトレーダー」として大々的に報じられ、世界的に名前が知られるようになります。

2018年2月6日の日経平均急落時には、空売りで「一撃19億円」の利益を達成。Twitterで「一撃19億」というたった4文字のツイートが世間を騒がせました。

2017年11月頃からは仮想通貨にも参入。ビットコインを上昇局面で買い増し、モナコインを550円から億円分以上保有するなど、新たな資産クラスにも領域を広げていきました。

2-5. 第5期(2018年〜現在)――多角化・成熟期

時期:著書出版後の2019年から現在(2026年5月時点)までの期間です。

主な保有銘柄:日経225先物、大型株、半導体株(具体的銘柄名は本人非公開、東京エレクトロン・SCREEN・アドバンテスト・レーザーテックなどの推察)、豊田自動織機(2024年〜2025年、100億円超保有)、任天堂・ソフトバンク・KDDIなどの長期保有銘柄(伝聞情報)、仮想通貨。

特徴:この時期のcisさんは、短期トレードに加えて中長期的な保有も組み合わせる、より多角的なスタイルへと進化しています。資産規模が270億円から300億円超へと拡大するなかで、すべてを短期トレードで回すのは現実的でなくなり、一部は中長期で寝かせるポジションが増えていると推察されます。

2024年4月から2025年6月にかけては、豊田自動織機のTOB期待で100億円以上のポジションを建てましたが、TOB価格が市場価格よりディスカウントされて発表されたことで10億円以上の損失を出しました。本人がTwitterで「曜変天目銘柄100億以上持ってるんだけど、、、今日はスーパードキドキタイム」とツイートしたことで、この保有が広く知られることになりました。

しかしcisさんはここから半導体株への乗り換えで素早く損失をリカバーしたとされており、依然として彼の資産は増え続けています。2025年9月の日本経済新聞のインタビューでは、運用資産が300億円を超えると報じられました。


第3章 cisが銘柄を選ぶ3つの軸――選択思想の構造的分析

cisさんがどんな銘柄を保有しているかを理解するために、彼が銘柄を選ぶときの判断軸を分析してみましょう。私の分析では、cisさんの銘柄選択は3つの軸で説明できます。

3-1. 第1の軸――流動性

最も重要なのが「流動性」の軸です。cisさんは、いつでも自由に売買できる銘柄を強く好みます。

流動性が高い銘柄とは、要するに「出来高が多く、板が厚く、買いたいときに買えて、売りたいときに売れる銘柄」のことです。日経平均採用銘柄や、TOPIX Core30に含まれるような超大型株が典型例です。

cisさんがこれほど流動性にこだわるのは、彼のリスク管理思想の根幹に「いつでも逃げられる」というプリンシプルがあるからです。

ライブドアショックで連日のストップ安に巻き込まれた経験は、cisさんに「流動性のリスク」を骨身に染みて教えました。買ったら売れない、売りたいのに買い手がいない――そんな状況は、デイトレーダーにとって最悪のシナリオです。

資金規模が大きくなるにつれて、この流動性の制約はより厳しくなります。100万円のポジションなら、ほとんどの銘柄で売買は容易です。しかし100億円のポジションとなると、選択肢は時価総額数兆円規模の超大型株、あるいは流動性の極めて高い先物に限られてきます。

cisさんが、晩年(といっても46歳の現在)になるにつれて、新興市場の小型株から離れ、大型株・先物中心になっていったのは、この流動性の制約を尊重した自然な進化です。

3-2. 第2の軸――トレンドの鮮明さ

第2の軸は、「上昇トレンドが鮮明であるか」です。

cisさんの哲学の核心である「順張り」を成立させるためには、まず「明確な上昇トレンドが存在する」という前提条件が必要です。横ばいレンジ相場では、彼の手法はだまし(フェイクシグナル)に何度も引っかかってしまい、勝てません。

そのため、cisさんが好んで取引する銘柄は、はっきりとした上昇または下落のトレンドが出ている銘柄に偏ります。具体的には、出来高が普段より急増している銘柄、新高値(年初来高値、上場来高値)を更新している銘柄、何らかのニュースで一日に5%以上動いている銘柄、などです。

逆に、何週間も同じ価格帯で揉み合っているような銘柄、出来高が乏しく値動きの薄い銘柄は、cisさんの選択肢には入りません。これは時期を問わず一貫した傾向です。

3-3. 第3の軸――イベント(歪み)の存在

第3の軸は、「市場の歪みを生むイベントが存在するか」です。

cisさんが大きく勝ってきた取引の多くは、何らかの「市場の歪み」と結びついています。具体例を挙げると、ジェイコム株誤発注事件(2005年)、東日本大震災後の東京電力債(2011年〜)、チャイナショック(2015年)、トランプ大統領選サプライズ(2016年)、コロナショック(2020年)、豊田自動織機TOB(2024年)――これらはすべて「市場の歪みを生んだイベント」です。

歪みとは、本来あるべき価格から、何らかの一時的な要因で乖離している状態を指します。誤発注で異常な安値がついた、パニック売りで過剰に売られた、過剰な期待で買われすぎた、買収プレミアム期待で投機的に買われた――こうした状況です。

cisさんは、平時から「歪みを生みうるイベント」を仮説として大量にストックしているといわれます。本人のインタビューでも、「常に『こんなことが起きたら、こんな展開で儲かる』というような仮説を数十個ストックしており、それが実際に起こることがあり『はい、きたー』みたいな感じになる」と語っています。

イベントが発生し、市場が過剰反応した瞬間に、cisさんは用意したシナリオに沿って素早く動きます。これが、彼の大きな利益の源泉です。

3-4. 3つの軸の相互作用

この3つの軸は、独立しているのではなく、相互に作用しあいます。

理想的な銘柄は、3つの軸すべてで高得点を取る銘柄です。流動性が高く、明確な上昇トレンドにあり、なおかつ何らかのイベントで歪みが生じている――こういう銘柄に出会えれば、cisさんは大きなポジションを取ります。

ジェイコム株(2005年)は、当時の流動性こそ新興市場銘柄として限定的でしたが、誤発注という強烈なイベントと、それによる極端な下落(一種の逆トレンド)が組み合わさり、絶好のチャンスとなりました。

東京電力債(2011年〜2013年)は、流動性こそ社債としてやや低めだったものの、震災という超弩級のイベントと、過剰反応による暴落、そして政府救済という想定シナリオが組み合わさり、長期保有に値する歪みでした。

逆に、3つの軸のいずれかが極端に弱い銘柄、たとえば流動性が低すぎる小型株、トレンドが見えない揉み合い銘柄、何のイベントも控えていない平時の銘柄は、cisさんが触ることはほぼありません。

この3軸モデルを頭に入れた上で、次章から個別銘柄の分析に入っていきましょう。


第4章 みずほ銀行株――失敗の原点となった伝説の銘柄

最初に取り上げるのが、cisさんの投資人生の出発点となり、また彼の哲学を形作る決定的な失敗の舞台となった、みずほ銀行株です。

4-1. 2002年のみずほ銀行と銀行業界の状況

2002年当時、日本の銀行業界は、いわゆる「不良債権問題」の真っ只中にいました。

バブル崩壊後の1990年代後半から、日本の銀行は不良債権の処理に追われ続けていました。みずほフィナンシャルグループ(旧みずほ銀行)は、2000年9月に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が経営統合して誕生した、日本最大級のメガバンクでした。

しかし2002年4月、新システムへの統合に伴う大規模なシステム障害が発生。ATMが使えない、振込ができない、口座振替ができないといった事態が長期間続き、社会問題化しました。さらに、不良債権処理の負担が重くのしかかり、株価は大きく下落していきます。

2002年当時のみずほ株は、額面通り見れば「異常な割安水準」でした。PBR(株価純資産倍率)は0.5倍を切り、配当利回りも歴史的高水準。「これだけ叩き売られている、もう底だろう」と多くの投資家が思いました。

cisさんもそのひとりでした。

4-2. cisがみずほ銀行株を買った理由――バリュー投資の典型例

cisさんは当時、自身が体得していた「バリュー投資」の論理に従って、みずほ銀行株を買い始めました。具体的な購入価格や数量は本人も公開していませんが、複数の証言を総合すると、以下のような取引パターンだったと推察されます。

最初に、「これだけ下がっているから割安」と判断して買い。その後、株価がさらに下がります。すると、「もう少し下がったところで買い増せば、平均購入単価が下がる」と考えて買い増し。これがいわゆる「ナンピン買い」です。

しかし、銀行業界全体への懸念は深刻化していき、株価は下がり続けます。cisさんは、それでも自分の判断を信じて、さらに買い増しました。

結果、資産は一時104万円まで激減します。300万円の元手から始まり、追加投入もしていたわけですから、合計で1,000万円規模の損失を被った計算になります。

4-3. この失敗からcisが学んだ3つの教訓

この失敗から、cisさんは大きく3つの教訓を得たと、著書のなかで語っています。

第一に、ファンダメンタルズ分析の限界です。「割安だから」「業績が回復するはずだから」という理屈は、市場参加者全員に伝わっていて、すでに織り込み済みです。それでも下がっているということは、「割安ではない理由」「業績がさらに悪くなる可能性」が、まだ市場に十分織り込まれていないからかもしれない。本当に割安なのか、それとも単にバリュートラップ(割安に見えるが実はそれが正当な評価)なのか、外部からは判別が極めて困難なのです。

第二に、ナンピン買いの危険性です。下がった株を買い増すという行為の本質は、「自分の判断が間違っていなかった」と思い込みたい感情です。失敗を認めたくない人間の本能が、ナンピン買いという最悪の行動を引き起こす。これを克服しない限り、株式投資で勝つことはできない――これは後にcisさんが繰り返し説く哲学になります。

第三に、「いつか戻る」という発想の罠です。下がった株を持ち続けて「いつか戻る」と信じる行為は、未来予測に賭けているのと同じです。しかも、その予測は自分にとって都合のいい予測です。市場の現実は、しばしば私たちの都合のいい予測を裏切ります。

4-4. みずほ銀行株はその後どうなったか――2002年の判断は正しかったのか

ここで興味深い問題があります。cisさんが買って大損したみずほ銀行株は、その後どうなったのでしょうか。

実は、2002年から2003年にかけてみずほ株はさらに大きく下落し、最安値ではcisさんの購入価格よりさらに大幅に安い水準まで売られました。「最終的には戻るかも」というcisさんの予測は、短期的には間違いだったのです。

長期的には、銀行株は徐々に回復しました。不良債権処理が進み、リーマンショック後の超金融緩和を経て、銀行株は新たな水準を作っていきました。しかし、2024年から2025年にかけての金利上昇局面まで、銀行株が大きく注目される時期はなかなか訪れませんでした。

仮にcisさんが2002年に買ったみずほ株を20年以上持ち続けたとして、2024年の銀行株上昇局面まで耐えていれば、結果的には大きな利益になっていた可能性もあります。

しかし、それでは20年間資金が拘束されることになり、その間に他の投資機会で得られたはずの収益を放棄することになります。機会費用の観点からは、長期保有が正解だったとは言いきれません。

cisさんが2002年の経験から「短期トレード一本」へと舵を切ったのは、機会費用も含めた合理的な選択だったといえます。

4-5. みずほ銀行株が教えてくれること――私たち一般投資家への含意

cisさんのみずほ銀行株での失敗は、私たち一般投資家にも重要な教訓を残しています。

ひとつは、「割安に見える」と「実際に割安」は別物だということ。市場の値段は、私たちが知らない情報や要因をすべて織り込んだ結果です。それでも下がっているなら、私たちが見落としている要因が必ずあります。

もうひとつは、ナンピン買いで再起不能になるリスクの大きさ。「もう少し下がったら買い増そう」という発想は、地獄への片道切符になりえます。最初に決めた損切りラインを守ることが、何より大事です。

そしてもうひとつ、「銘柄に惚れてはいけない」ということ。みずほ銀行のような誰でも知っている大手銀行株は、なんとなく「安心感」があり、保有していることに精神的安定を感じる人が少なくありません。しかし、株価はそんな感情とは無関係に動きます。銘柄への愛着が、合理的な判断を曇らせるのです。

cisさんは、この失敗を経て「銘柄に惚れない、感情を持ち込まない」というプロフェッショナルなスタンスを確立していきました。みずほ銀行株は、彼にとって痛い失敗であると同時に、伝説のトレーダーへの道を切り開いた、重要な銘柄でもあったのです。


第5章 ジェイコム株――伝説の誕生となった3,300株

cisさんといえば、必ず語られるのが2005年12月8日のジェイコム株大量誤発注事件です。この日、彼はストップ安で買ったジェイコム株3,300株を10分後に売却し、約6億円の利益を獲得しました。

ここでは、この有名すぎる取引について、改めて詳細を掘り下げていきます。

5-1. ジェイコム株(当時:人材派遣会社、現:不存在)とは

まず、ジェイコム株とはどんな銘柄だったのでしょうか。

「ジェイコム」と聞いて、現在のJ:COM(ケーブルテレビ会社)を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、まったく違う会社です。2005年12月8日に東証マザーズに新規上場した「株式会社ジェイコム」は、人材派遣業を営む会社で、現在のJ:COM(株式会社JCOM、旧ジュピターテレコム)とは別物です。

このジェイコム(人材派遣会社)の発行済株式総数は約1万4,500株と、上場企業としては極めて少ないものでした。これは後に重要な意味を持つことになります。

公募価格は61万円。上場日の予想初値は90万円前後と見られていました。これは公募価格を約47%上回る、典型的なIPO過熱状態でした。

5-2. みずほ証券による誤発注――事件の発生

2005年12月8日午前9時27分、ジェイコム株の取引が始まる直前、みずほ証券の担当者が顧客からの売り注文を入力していました。

本来の注文内容は「61万円で1株売り」でした。しかし、担当者は誤って「1円で61万株売り」と入力してしまいました。

ジェイコムの発行済株式総数は約1万4,500株です。それに対して「61万株売り」というのは、発行済株式数の42倍にあたる、明らかにありえない数量です。

東京証券取引所のシステムには警告機能があり、「異常な注文」として警告が出ました。しかし、みずほ証券の担当者は警告を無視して、そのまま注文を執行してしまいました。

その瞬間、市場にはとんでもないことが起こりました。

事前の予想初値90万円付近で売買成立するはずだったジェイコム株が、初値67万2,000円まで暴落。そしてわずか3分後の9時30分には、ストップ安の57万2,000円に張りつきました。

5-3. 2ちゃんねるで広がる「誤発注」の情報

この異常な値動きを見て、株式投資家コミュニティの中心地だった2ちゃんねるの株板(株式掲示板)は騒然となりました。

「これ、絶対誤発注だ」 「拾えるだけ拾え!」 「ジェイコムの発行済株式数を超える売りが出ている」 「これは祭りだ」

こうした書き込みが、リアルタイムで飛び交っていました。情報の早い投資家たちは、「これは異常な売りで、本来の価値より大幅に安い価格で買えるチャンスだ」と即座に判断しました。

なぜなら、ジェイコムの本来の企業価値(保守的に見ても70万円〜80万円程度)と比べて、ストップ安57万2,000円は明らかに安すぎるからです。仮に発行済株式数を超える売り注文が成立すれば、システム上の混乱が起きますが、最終的にはみずほ証券が市場で買い戻して帳尻を合わせる必要があります。その時点で、ジェイコム株は必ず本来の価値に戻る、と読めるわけです。

5-4. cisの取引――19億円の発注、10分後の売却

cisさんはこの状況を瞬時に判断し、ストップ安57万2,000円で3,300株を購入しました。

買い付け額を計算してみましょう。57万2,000円×3,300株=18億8,760万円。つまり、cisさんはこの瞬間、約19億円もの買い注文を出したのです。

当時のcisさんの資産は、本人の証言では数億円から10億円程度だったとされています。つまり、自己資金だけでは19億円もの買い注文は出せません。信用取引をフル活用して、レバレッジを目一杯かけたフルベットだったと考えられます。

そして10分後、cisさんはこのポジションを売却。約6億円の利益を確定しました。

買い付け価格57万2,000円から、売却価格は推定74万円〜75万円程度だったと逆算できます(6億円÷3,300株=1株あたり利益18万円強)。

5-5. なぜcisは「迷わなかった」のか

ジェイコム事件で最も注目すべきは、cisさんが「迷わなかった」ことです。

普通の人は、誤発注に気づいても、躊躇します。「本当に誤発注なのか」「もし違ったらどうしよう」「もう少し様子を見よう」――こういう逡巡が、機会を逃させます。

cisさんは違いました。確信を持った瞬間に、19億円もの買い注文を一気に入れました。10分後には売却して利益を確定しました。

この「即断即決」を可能にした要素は何でしょうか。私の分析では、3つあると考えます。

第一に、若い頃からの「期待値計算」の訓練。駄菓子屋のくじ、パチンコ、競馬、麻雀、ゲーム――cisさんが幼少期から積み重ねてきた経験は、すべて「瞬時に期待値を計算して決断する」訓練の連続でした。ジェイコム事件は、それまでの人生で蓄積した訓練の集大成だったのです。

第二に、確固たる仮説思考。cisさんは平時から「もし○○が起きたら、××株が動く」というシナリオを大量にストックしていたとされます。「もし大規模な誤発注が起きたら、瞬時に拾う」というシナリオも、おそらく事前に持っていたはずです。だから、いざ事件が起きたときに、ゼロから考える必要がなく、即座に行動できたのです。

第三に、失うことへの覚悟。19億円の買い注文を入れて、もし誤発注ではなく本当に61万株の売りが出るのなら、cisさんは大損する可能性もありました。しかし、それでも飛び込んだ。これは「最大損失を許容できる」と判断したからこその行動です。負ければ即退場でも、勝てば人生が変わる――そういう勝負所を、彼は嗅ぎ分けることができたのです。

5-6. cisがすぐに売却した理由――「大勝利こそチャラにされやすい」

cisさんの判断で、もうひとつ興味深いのが、わずか10分で売却したことです。

ジェイコム株は、その後さらに上昇し、最終的には90万円台まで回復しました。もしcisさんが最後まで持ち続けていれば、利益は10億円を超えていた可能性もあります。

しかしcisさんは、6億円を確定した時点でポジションを手じまいました。本人は著書のなかで、その理由を「大勝利こそチャラにされやすい」という教訓のためと語っています。

これはどういうことか。彼が言いたいのは、こういうことです。

「大きなチャンスで大きく勝ったとき、人はその余韻に酔って判断を誤りやすい。せっかく手にした利益を、その後の取引で吐き出してしまうことがよくある。だから、勝てたときは『これ以上を求めずに確実に確保する』ことが大事だ」――。

ジェイコム事件のような「一生に一度クラスのチャンス」で得た利益を、その日のうちに他のトレードで吐き出してしまったら、目も当てられません。だからcisさんは、確実に利益を確保し、その後はリスクを取りすぎないようにしたのです。

これはギャンブラー的な感覚です。パチンコや麻雀で大勝ちした夜は、もう勝負しない――この古い知恵を、cisさんは投資にも適用しているのです。

5-7. ジェイコム事件のもうひとりの主役――B・N・F(ジェイコム男)

ジェイコム事件で大きく稼いだのは、cisさんだけではありませんでした。同じ事件で約20億円の利益を得た個人投資家がいました。本名・小手川隆、通称「B・N・F」、後に「ジェイコム男」として知られる人物です。

B・N・Fさんも、cisさんと同様に2ちゃんねるの株板からのし上がってきた個人投資家でした。2003年冬には、cisさんとB・N・Fさんは2ちゃんねるのオフ会で顔を合わせていたとされています。

ジェイコム事件で、二人とも大きく稼ぎましたが、その後の歩みは対照的です。

B・N・Fさんは、自分の取引で大量保有報告書を提出し、堂々と買い戻しを宣言。それを売り切ることで20億円の利益を確定しました。その後、メディアで「ジェイコム男」として一時話題になり、テレビ出演もしました。しかし2010年代以降はほぼ表舞台から消え、現在は東京都内に複数のビルを所有し、不動産家として静かな生活を送っているとされています。

cisさんは、ジェイコム事件後もデイトレードを続け、資産を増やし続けました。Twitter(X)で発信を続け、本も出版し、現在も日経新聞やAERAなどの取材に応じています。

同じ事件の主役だった二人ですが、その後の歩み方は対照的です。これは、彼らの性格や哲学の違いを反映していると考えられます。B・N・Fさんは「相場で勝ったら静かに退く」タイプ、cisさんは「相場こそが人生だ」と続けるタイプ、という違いです。

5-8. ジェイコム事件の構造――再現性のあるパターンか

最後に、ジェイコム事件のようなチャンスは再現するのか、という問いを考えてみましょう。

結論からいうと、「同じパターンは二度と起きないが、似たパターンは時々起きる」というのが私の見解です。

ジェイコム事件の後、東京証券取引所は誤発注を防ぐためのシステム改善を進めました。少なくとも、注文サイズの異常を検知する機能は強化されており、2005年と同じ規模の誤発注がそのまま市場に流れる可能性は低くなっています。

しかし、「市場の歪み」自体は、形を変えて時々発生します。コロナショック時のパニック売り、特定の銘柄のシステムトラブルによる急変、TOB発表前後の異常な値動き――こうした場面は、5年から10年に一度くらいの頻度で起きています。

そして、いざそういう局面が来たときに、cisさんのように躊躇なく行動できるかどうか。これが、伝説的なリターンを取れるかどうかの分かれ目です。

普段から「もし○○が起きたら××を買う」というシナリオを蓄積し、いざというときに迷わず行動する――この訓練は、ジェイコム事件のような特殊事例を抜きにしても、すべての投資家にとって重要な能力です。

ジェイコム株での6億円は、cisさんにとって「人生を変えた一発」でした。そして、彼が「迷わずに行動できる人間」になっていたからこそ、その一発を物にできたのです。同じパターンが二度と起きなくても、ここから学べることは無限にあります。


第6章 ライブドア株――cisが3日で5億円を失った銘柄

ジェイコム事件のわずか1か月後、cisさんは大きな試練に直面します。それが2006年1月の「ライブドアショック」と、それに伴う約5億円の損失です。

6-1. 2006年初頭のライブドアと堀江貴文

2006年初頭のライブドアは、時代の寵児でした。

ホリエモンこと堀江貴文氏が率いるライブドアは、ポータルサイト「livedoor」を運営する企業として、1996年に「オン・ザ・エッヂ」として創業されました。2002年にライブドア(旧)を買収して「ライブドア」と社名変更、その後は次々と企業を買収しながら急成長を遂げました。

2005年にはフジテレビ・ニッポン放送に対する敵対的買収を仕掛け、世間の大注目を浴びました。最終的にフジテレビとの和解で巨額の手元資金を得て、その後も買収戦略を続けていました。

ライブドア株は、ホリエモンというカリスマと、買収を繰り返す積極経営、そして個人投資家の熱狂的な支持により、株価は急騰を続けていました。2006年1月時点で時価総額は約8,000億円に達していました。

cisさんも、このライブドア株を保有していました。具体的な購入時期や数量は本人非公開ですが、当時の値動きから、cisさんはライブドア株を中期的に保有しつつ、上昇局面では順張りで買い増していたと推察されます。

6-2. 2006年1月16日――東京地検特捜部の強制捜査

2006年1月16日夕方、衝撃のニュースが流れました。東京地検特捜部が、証券取引法違反容疑でライブドア本社およびホリエモンの自宅などに強制捜査に入った、という報道です。

容疑の中身は、ライブドアの子会社が買収先企業の株式を不正に取得していたという「風説の流布・偽計取引」でした。これが事実なら、上場企業として極めて重大な違反であり、ライブドア株の信用は地に落ちます。

この報道を受けて、翌17日朝の東京市場では、ライブドア株は売り注文が殺到し、寄り付かないまま、ストップ安比例配分(買い手なしの一方的な売り)となりました。

ストップ安というのは、その日の値幅制限の下限まで売り注文が集まり、買い手がつかない状態です。株価がもっと下がる可能性があっても、その日はそれ以上下がれない。しかし買い手がいないので、売りたい人は売れない。これがストップ安張りつきです。

6-3. 連日のストップ安――cisが直面した「逃げられない地獄」

1月17日、18日、19日――ライブドア株は連日のストップ安となりました。

cisさんは、自分のポジションを損切りしたくても、買い手がいないので売れない。ただ画面を見つめながら、ストップ安の張りつきが続くのを目撃するしかない状況でした。

数日後、ようやくストップ安が解除されて売買が成立し始めますが、その頃には株価は事件前の数分の1まで暴落していました。cisさんがどのタイミングで損切りしたか正確な記録はありませんが、最終的に3日間で約5億円の損失を出したことを著書のなかで明かしています。

6-4. この失敗から学んだこと――流動性の罠

ライブドアショックは、cisさんにとってジェイコム事件と並ぶ、人生で最も重要な経験だったといえます。なぜなら、彼の哲学を補強する重要な教訓を残したからです。

教訓のひとつは、流動性の重要性です。

cisさんはそれまでも「損切り」の重要性を理解していました。ところが、いざ事件が起きてみると、「損切りしたいのにできない」という状況に直面したのです。これは流動性の限界によるものです。

普段は活発に売買されている銘柄でも、本当の危機が来たときには売れなくなる。これは絶対に忘れてはいけない事実です。とくに新興市場の銘柄や、悪材料が出やすい個別株は、いざというときに身動きが取れなくなります。

この経験から、cisさんは資金規模が大きくなるにつれて、徐々に「いつでも売れる銘柄」、つまり日経平均採用銘柄、TOPIX Core30、日経225先物といった、流動性が極めて高い商品にシフトしていきました。

教訓のもうひとつは、個別株集中投資のリスクです。

ライブドア株のような時代の寵児は、上昇局面では強烈に上がります。だから、多くの投資家がここに集中投資して大儲けします。しかし、ひとたび悪材料が出ると、上昇していたときの何倍もの速さで下落します。「上りエスカレーター、下りエレベーター」というわけです。

しかも、こうした成長期待で買われていた銘柄は、悪材料が出ると一斉に売られます。市場のセンチメントが180度反転するからです。ライブドア株は事件前後で時価総額が10分の1以下になりました。

集中投資の魔力と恐怖を、cisさんはここで身をもって体験しました。

6-5. ホリエモンと「ライブドア事件」の経緯――その後の判決まで

参考までに、ライブドア事件のその後を簡単に追っておきます。

2006年1月23日、堀江貴文氏ら4名が証券取引法違反(風説の流布・偽計取引)で逮捕されました。その後、追加で粉飾決算容疑(有価証券報告書虚偽記載)でも逮捕されます。

2007年3月、東京地裁は堀江氏に懲役2年6月の実刑判決を言い渡しました。堀江氏は控訴しましたが、2008年7月の東京高裁判決でも実刑が維持され、2011年4月に最高裁で上告棄却が確定。2011年6月から堀江氏は長野刑務所で服役しました。2013年3月に仮釈放され、現在は実業家、著述家として活動しています。

ライブドア社は2008年4月にLDH(後にライブドアホールディングス→現在の親会社の名称はLINEヤフー系列を経て複雑な経緯)として再編され、上場廃止となりました。ライブドア株を持っていた個人投資家の多くは大きな損失を被りましたが、cisさんはそれでもまだ「資産家」として残ることができたのは、彼の他のポジションでカバーできたからにほかなりません。

6-6. ライブドア株のその後――cisは二度と新興市場のスター株に大金を入れない

ライブドア事件以降、cisさんは新興市場の話題株に大金を投じることを慎重に避けるようになりました。

これは推察ですが、その後のcisさんの保有銘柄の傾向を見ると、ホリエモン以降のマザーズの話題株、たとえばミクシィ、グリー、ガンホー、メルカリといった銘柄を、デイトレ的にちょこちょこ取引することはあっても、ライブドア時代のような「中期保有で全力買い」という形では関わっていない様子です。

「時代の寵児」「カリスマ経営者」「急成長企業」――こういうワードが踊る銘柄ほど、突然の崩壊リスクが高い。cisさんはこの教訓を、ライブドア株での5億円という授業料で学びました。

そして、この教訓は私たち一般投資家にも当てはまります。話題沸騰の銘柄、SNSで盛り上がっている銘柄、メディアで連日報じられる銘柄――こうした銘柄こそ、最も警戒が必要なのです。


第7章 東京電力株・東京電力債――cis最大の逆張り勝負

cisさんの保有銘柄を語る上で、絶対に外せないのが東京電力関連の銘柄です。とくに、2013年時点で40億円分保有していたとされる東京電力債は、彼の投資人生のなかでも最大の長期保有ポジションのひとつでした。

7-1. 東日本大震災と東京電力――2011年3月の悪夢

2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。マグニチュード9.0の巨大地震と、それに伴う巨大津波。そして、福島第一原子力発電所の事故。これらは日本の戦後史上最悪レベルの災害となりました。

東京電力(9501)は、福島第一原発を運営していた電力会社です。震災と原発事故により、東京電力の経営は崩壊寸前まで追い込まれました。

震災前の2011年2月時点で2,000円台後半だった東京電力株は、震災直後に急落。最安値では148円(2012年6月)まで暴落しました。実に株価が9割以上消失するという、メガキャップ企業としては前代未聞の事態となりました。

東京電力が発行する社債(東京電力債)も、市場で大幅にディスカウントされて取引されるようになりました。「東京電力は破綻する」「社債もデフォルトする」――こうした観測が市場を支配し、東京電力債は本来の額面の何割か低い価格で取引されていました。

7-2. cisが東京電力債を40億円買った――「政府が潰さない」という仮説

cisさんが東京電力債を買い始めた正確な時期は本人非公開ですが、Wikipediaなどの信頼性のある情報源によれば、2013年時点で40億円分保有していたとされています。

なぜcisさんは、市場が破綻を織り込む東京電力の社債を、40億円分も買ったのでしょうか。

私の分析では、cisさんの読みはこうだったと思われます。

「東京電力は、関東一円の電力供給を担う巨大インフラ会社だ。仮に破綻させたら、日本の電力供給が止まり、経済が破綻する。政府は絶対にそんなことをさせない。最終的には、政府が裏で支援し、東京電力は存続する。社債も、額面通り元本回収される。今、市場が破綻を織り込んで安く売っているのは、過剰反応だ」

これは、彼の「3軸モデル」でいえば、第3の軸(イベント・歪み)にズバリ当てはまる判断です。震災と原発事故という超弩級のイベントによって市場が過剰反応し、本来の価値より大幅にディスカウントされた状態。そこに「政府が潰さない」というシナリオを当てて、長期保有を決めたわけです。

7-3. 東京電力債は実際にどうなったか――cisの読みは大当たり

cisさんの読みは、見事に当たりました。

2012年5月、東京電力は政府の支援を受けて実質的に国有化されました。原子力損害賠償・廃炉等支援機構が、東京電力に1兆円を出資。これにより、東京電力は破綻を免れ、存続することになりました。

社債についても、デフォルト(債務不履行)は起きませんでした。発行済みの社債は、すべて契約通り利息が支払われ、満期償還も予定通り行われました。

つまり、cisさんが「破綻織り込みでディスカウントされた価格」で買った東京電力債は、満期まで保有していれば、額面通りに償還されたわけです。これは、ディスカウント分がそのまま利益として確定する取引でした。

具体的な利益額は本人非公開ですが、40億円分の社債が額面通り償還されただけでなく、それまでの利息収入もあるわけですから、数億円から十数億円規模の利益を生んだと推察されます。

これは、cisさんの「逆張り」の哲学が完璧に機能した、教科書的な成功例です。

7-4. 「逆張り」と「順張り」――cisの一貫性と柔軟性

ここで興味深いのが、cisさんが普段「順張り」を主張していながら、東京電力債では「逆張り」をしている点です。これは矛盾ではないでしょうか。

実は、矛盾ではありません。cisさんの哲学の真の本質は、「順張りか逆張りか」ではなく「期待値プラスの場面で勝負する」ことだからです。

普段の相場では、短期の値動きは「上がっているものはさらに上がる」確率のほうが高いため、順張りが期待値プラスです。これがcisさんが普段順張りをする理由です。

しかし、東京電力債のように、市場が極端な悲観論で過剰反応している場面では、状況が変わります。「政府が潰すか潰さないか」という二分法のシナリオで考えると、潰さないシナリオのほうが現実的でした。市場が「潰す」確率を実態より高く織り込んでいる以上、「潰さない」ほうに賭けるのが期待値プラスです。

cisさんは、こうしたケースでは迷わず逆張りを選びます。一貫しているのは「順張りか逆張りか」というスタイルではなく、「期待値プラスを選ぶ」という思考なのです。

7-5. 東京電力株のその後――現在の株価

参考までに、東京電力株のその後の動きを追っておきます。

2012年6月の最安値148円から、東京電力株はゆっくりと回復していきました。2013年から2014年にかけては400円〜500円台で推移、2015年には一時700円台まで上昇しました。

その後はレンジ相場が続きましたが、2024年に入ると、電力料金値上げと原発再稼働期待で大きく上昇。2024年8月には1,000円台に乗せました。震災前の水準2,000円台にはまだ届きませんが、それでも最安値からは大幅な回復です。

cisさんが東京電力株自体(社債ではなく)を保有していたかどうかは、明確な情報がありません。しかし、社債を40億円分保有していたという事実から、関連銘柄として株式も一定量保有していた可能性は高いと推察されます。

7-6. 不動産投資との比較――流動性が低い資産への投資思想

東京電力債の保有は、cisさんの「短期トレード一筋」のイメージを覆す、長期保有の事例です。同じく長期保有していた資産として、不動産があります。

2008年のリーマンショックで都心の不動産価格が暴落した時期に、cisさんは10億円でビル2棟を購入しました。

この不動産投資の動機について、cisさんは著書のなかで「勉強のため」「家の近くにコンビニを入れたかったから」と冗談めかして語っています。しかし、本質的には、リーマンショックで「市場が過剰反応している」と判断し、ディスカウントされた不動産を仕込んだのです。

東京電力債と不動産――どちらも「市場の過剰反応に対する逆張り」という共通点があります。cisさんは、流動性の低い資産であっても、明確な歪みが見えれば躊躇なく買うのです。

ただし、cisさんは不動産投資を後に「罰ゲーム」と表現しています。理由は、表面利回りが2%を切ること、大家としての義務が煩わしいこと、現金化が遅いこと、です。

東京電力債と不動産の違いは何でしょうか。どちらも長期保有でしたが、東京電力債は満期で確実に額面が戻ってきますし、その間も利息が入ります。一方、不動産は売却益が確定するまで利益が見えないですし、入居者の管理や修繕といった手間がかかります。

cisさんは、「逆張りで仕込むなら、ある程度の流動性と、明確な出口戦略があるもの」を好む傾向があるようです。東京電力債はその基準を満たしましたが、不動産は満たさなかった、というわけです。


第8章 日経225先物――cisの中核ポジション

cisさんの保有銘柄を語る上で、個別株よりも重要な意味を持つのが「日経225先物」です。資金規模が大きくなった2010年代以降、cisさんのトレードの中核は日経225先物に移行しています。

8-1. 日経225先物とは何か

日経225先物は、日経平均株価を対象とした先物取引です。決済期日(限月)に向けて、日経平均株価がいくらになるかを予想して、買いまたは売りでポジションを取ります。

日経225先物の特徴は、まず流動性が極めて高いこと。1日の出来高は数兆円規模に達し、世界中の機関投資家が取引しています。100億円規模のポジションを取っても、市場に大きな影響を与えることなく売買できます。

次に、レバレッジが効くこと。証拠金取引なので、実際の取引金額の数%程度の証拠金で大きなポジションを取れます。1単位の取引で日経平均×1,000円分の損益が発生するので、日経平均が500円動くと1単位あたり50万円の損益になります。

そして、空売り(売りから入る)が自由にできること。下落局面でも利益を狙えます。

8-2. なぜcisは日経225先物を中核にしたのか

cisさんが日経225先物を中核に据えた理由は、複数あります。

第一に、資金規模の問題です。300億円規模の資金を個別株で動かすのは、流動性の制約から困難です。仮に時価総額1兆円の銘柄に300億円を一気に投じたら、自分の買いで価格が大きく動いてしまいます。これでは、有利な価格で売買することができません。

日経225先物なら、1日の取引代金が数兆円規模なので、100億円や200億円のポジションを取っても、相対的な影響は限定的です。これが、大資金運用者にとって決定的な利点です。

第二に、市場全体の動きを読みやすいこと。個別株は、その会社固有の事情(決算、不祥事、買収など)で予想外に動きます。これは予測が難しく、たまに大火傷をします。

日経225先物は、市場全体の動きが反映されます。市場全体は、個別株より相対的に予測しやすい――というのがcisさんの考えです。マクロ経済指標、海外市場の動き、為替の変動、政治イベント――こうした市場全体に影響する要因を読めれば、日経225先物で勝負できます。

第三に、時間効率の良さです。300銘柄を監視するより、日経225指数ひとつを見るほうが圧倒的に効率的です。集中して相場を分析できます。

cisさんが、現在の運用環境で「画面5枚とパソコン2台」というシンプルなセットアップで取引できているのは、メインが日経225先物だからです。1台のモニターに日経先物とマザーズ指数と為替を表示させておけば、ほぼすべての判断材料が見えてくる、というわけです。

8-3. チャイナショック(2015年8月)――40億円の利益

cisさんの日経225先物取引で最も有名なエピソードが、2015年8月のチャイナショックです。

2015年8月、中国経済の減速懸念が一気に高まり、世界中の株式市場がパニックに陥りました。8月24日には日経平均株価が一時2,000円安となり、市場は阿鼻叫喚の地獄絵図でした。

しかしcisさんは、この日の前から日経225先物に空売りを仕掛けていました。本人のTwitterで、リアルタイムで様子を発信しています。

「米国の寄付き前に、すごいみんな恐怖で売るんじゃないかということで、ちょっと狙っていた」 「僕はこういうすごい乱高下する時、めちゃくちゃ得意―」 「先物売り増してお散歩お祈り開始!」 「負けている時はあまりつぶやかないので、勝っているときに言いたくなる」

これらは、Bloombergで報じられた当時のcisさんの一連のツイートです。

そして、ポジションを手じまったときには約40億円の利益を得ていました。Bloombergで「謎の36歳デイトレーダー」として大々的に報じられ、世界中に名前が知られるきっかけになりました。

8-4. 一撃19億円(2018年2月6日)――先物空売りの記録的勝利

cisさんの日経225先物取引のもうひとつの代表例が、2018年2月6日の「一撃19億円」です。

2018年2月5日、ニューヨークダウ平均が一時1,597ドル安という、当時の史上最大の下げ幅を記録しました。この異常な急落を見たcisさんは、翌日の日本市場での連鎖反応を予想して、空売りを仕掛けました。

そして翌6日、日経平均株価は予想通り大幅に続落。cisさんは1回のトレードで19億円の利益を確定し、Twitterで「一撃19億」というたった4文字のツイートを発信しました。

このツイートは瞬く間に拡散され、「100万円が僕らの100円みたいな感覚になるんだろうな」「自分が株はじめたころは億トレってだけでレジェンド感あったけど、今じゃ一瞬で19億円利益出ましたとかレジェンドのハイパーインフレがすごすぎる」といった、フォロワーの驚きの声が並びました。

8-5. 日経225先物でのcisの戦略パターン

cisさんが日経225先物でどのような戦略を取っているのか、過去の発言や行動から、いくつかのパターンが見えてきます。

ひとつ目のパターンが、「米国市場の異常な動きに対する翌日の日本市場の連鎖反応」を狙う戦略です。2015年のチャイナショック、2018年2月の急落、いずれもこのパターンです。米国市場がパニック的に動いた日の翌日、日本市場は寄り付きで大きく動きます。これを先物で先回りして取りに行くのが、cisさんの得意技です。

ふたつ目のパターンが、「中央銀行の政策変更を先読み」する戦略です。日銀の金融政策決定会合、FRBのFOMC、ECBの理事会――こうしたイベントの前後で、市場は大きく動きます。cisさんは、こうした政策イベントの内容を予想して、先回りでポジションを取ることがあります。

みっつ目のパターンが、「先物の特殊需給」を利用する戦略です。SQ(特別清算指数)算出日の前後、限月交替時、ロールオーバーのタイミング――こうした特殊需給が発生するときに、価格に歪みが生まれることがあります。これを取りに行くのです。

よっつ目のパターンが、「日経平均のレンジ予想」に基づくオプション売り戦略です。日経平均がここから先、ある範囲内に収まると予想できる場合、オプション売りで安定的に収益を上げる戦略です。これは2015年〜2017年頃のcisさんが好んだ手法だったようです。

8-6. 日経225オプション――より高度なポジション

日経225先物に加えて、cisさんは日経225オプションも取引しています。

オプション取引は、「ある期日に、ある価格で買う(または売る)権利」を売買する取引です。複雑ですが、使いこなせれば極めて柔軟な戦略を組めます。

cisさんがオプションをどう使っているか、詳細は本人非公開ですが、推察される使い方としては、ボラティリティ売り(市場が安定すると儲かる戦略)、プロテクティブプット(保有株のヘッジ)、カバードコール(保有株からの追加収入)、スプレッド戦略(複数のオプションを組み合わせる)などがあります。

オプション取引は、初心者がうかつに手を出すと痛い目にあう領域です。とくに、オプション売りは「無限の損失リスク」を抱えることになるので、リスク管理が極めて重要です。

cisさんは「ヘッジは無駄」という発言で知られていますが、これは「中途半端なヘッジは無駄」という意味であり、明確な戦略の下でオプションを使うことは否定していません。

8-7. 先物中心の弊害――個別株の機微が見えにくくなる

日経225先物中心の取引にはデメリットもあります。それは、個別株の機微が見えにくくなることです。

個別株を真剣に追っているトレーダーは、決算発表、新製品発表、業績修正、企業買収、不祥事といった個別企業のイベントに敏感です。これらの個別イベントを早く察知できる人は、個別株で大きな利益を狙えます。

しかしcisさんのように先物中心になると、こうした個別企業の機微への感度は相対的に低下します。本人もインタビューで「目の前の株価の動きばかり気にしちゃう」と苦笑しています。

そのため、最近のcisさんは、個別株でのトレードに関しては「他のトレーダーが盛り上がっている銘柄に乗る」「TwitterのXのタイムラインで銘柄名が一斉に並んだら売り時」など、SNS情報を活用する傾向があります。これは、自分一人で個別株を網羅的に追うのが難しくなっているからこその工夫だと思われます。


第9章 ビットコイン――cisの仮想通貨参入

2017年から2018年にかけて世界を席巻した「仮想通貨バブル」のなか、cisさんも積極的に仮想通貨投資に参入しました。とくにビットコインは、彼の仮想通貨投資のメインターゲットでした。

9-1. 2017年の仮想通貨バブル

2017年は、仮想通貨にとって歴史的な年でした。

年初に約1,000ドルだったビットコイン価格は、徐々に上昇を続け、夏には4,000ドル、秋には7,000ドルを超え、12月17日には1万9,783ドルという当時の史上最高値を記録しました。年初比で20倍近い上昇です。

日本では、2017年4月に改正資金決済法が施行され、仮想通貨が「決済手段」として法的に認められました。これを受けて、日本国内でも仮想通貨取引所が活発化し、個人投資家が大量に流入しました。とくに2017年10月から12月にかけては、「億り人」(仮想通貨で1億円以上稼いだ人)が大量に誕生したと言われています。

cisさんも、この波に乗りました。本人のTwitterで2017年11月頃から仮想通貨取引を開始したことが確認されています。

9-2. cisがビットコインを買い始めた理由

cisさんがビットコインを買い始めたのは、純粋な順張り戦略です。「上昇しているものは、さらに上昇する可能性が高い」――この原則に従って、上昇トレンドの真っ最中にあるビットコインに乗ったわけです。

本人のTwitterから、いくつかの発言を引用してみましょう。

「懲りずにビットコインさらに買い増し増し!」(2017年12月16日) 「ビットコインだけでかなりのポジションになってしまった」 「ビットコインバブル早く来ないかなぁ・・・」

このツイートからわかるのは、cisさんが「ビットコインバブルの到来」を期待しながら、上昇局面でひたすら買い増していたことです。これは、過去の日本の株式市場で見せていた、新興市場の急騰銘柄に対する順張りスタイルそのものです。

9-3. 仮想通貨の世界での「順張り」の有効性

仮想通貨市場は、株式市場と比べていくつかの特徴があります。

第一に、24時間365日取引可能なこと。土日もマーケットが開いていて、いつでも値動きしています。デイトレーダーにとっては、休む暇がない過酷な環境です。

第二に、価格変動が極端に大きいこと。株式市場では1日5%動けば「大きく動いた」ですが、仮想通貨では1日10%や20%動くことも珍しくありません。

第三に、ファンダメンタルズが不在に近いこと。株式と違って配当もなく、企業価値の概念もありません。価格は完全に需給だけで決まります。

これらの特徴は、cisさんの「順張りスタイル」と相性が良いと言えます。

ファンダメンタルズが存在しないということは、「割安・割高」の判断が原理的にできないということです。となれば、「上がっているか下がっているか」という値動きだけが手がかりになります。これは、cisさんが普段から心がけている「事実だけを見る」スタイルそのものです。

cisさんはビットコインで大きな利益を上げました。2018年のプレジデント誌でのインタビューで、「仮想通貨でも4〜5億円の利益がありました」と本人が発言しています。

9-4. 仮想通貨の税制――cisが「効率は悪い」と言った理由

ただし、cisさんは仮想通貨投資について「効率は悪い」とも発言しています。これは税制の問題です。

日本では、株式の譲渡益や配当に対しては、一律20.315%の税率(所得税15.315%+住民税5%)が課されます。これは「申告分離課税」と呼ばれる仕組みで、所得がいくらあっても税率は一定です。

一方、仮想通貨の利益は「雑所得」として扱われ、他の所得と合算した上で累進課税が適用されます。所得が大きい人ほど税率が高くなり、最高税率は55%(所得税45%+住民税10%)に達します。

cisさんは年間数十億円から数百億円規模の利益を上げる超高所得者です。彼の場合、仮想通貨の利益には最高税率55%が課されます。

つまり、株式で4〜5億円稼げば、税引後でも約3.2〜4億円が手元に残ります。しかし仮想通貨で4〜5億円稼いでも、税引後は約1.8〜2.25億円しか残りません。同じ4〜5億円の利益でも、手取りは大きく違うのです。

これがcisさんが「効率は悪い」と言った理由です。

ちなみに、仮想通貨の税制改正は、業界が長年要望してきたテーマですが、2026年5月時点では、まだ抜本的な見直しは行われていません。仮想通貨投資を本気でやる人にとっては、この税負担は無視できない問題です。

9-5. ビットコイン投資の出口戦略――cisはいつ売ったのか

cisさんがビットコインをいつ売り切ったのか、明確な情報はありません。しかし、彼の順張り原則からして、ビットコインが下落トレンドに転じた時点で売却したと推察されます。

ビットコインは2017年12月17日の1万9,783ドルをピークに、その後急落。2018年2月には6,000ドル台、12月には3,000ドル台まで下落しました。「順張りの逆」、つまり「下落トレンドが鮮明になったら売る」というcisさんの原則からすれば、2017年12月末から2018年1月にかけて、彼はビットコインのポジションを大きく減らしたはずです。

正確なタイミングは不明ですが、cisさんが2017年11月頃から買い始め、2018年初頭までの利益として4〜5億円を計上したという情報から、おおむね2017年末から2018年1月にかけて利確したと推察されます。

その後、ビットコインは2020年から2021年にかけて再びバブル相場となり、最高値約6万9,000ドルまで上昇しました。さらに2024年から2025年にかけては、米国でのビットコインETF承認などを背景に、史上最高値10万ドル超を記録しました。

cisさんがその後もビットコインを売買していたかは、ツイートから断片的に推察できる程度です。少なくとも、初期のような大々的なエピソードトークは登場していません。

9-6. 仮想通貨ETF時代――cisは新たな戦線を開くか

2024年1月、米国でビットコイン現物ETFが承認されました。これにより、機関投資家もビットコインに大規模に参入できるようになり、市場は大きく成熟しました。

2026年5月時点で、ビットコイン価格は約1,200万円台で推移しているとされています(2025年8月には円建てで一時1,800万円、米ドル建てで12万ドルの過去最高値を更新)。

cisさんがこのビットコインETF時代にどう対応しているか、本人発言ベースで明確な情報はありません。しかし、2017年〜2018年に仮想通貨で大きく稼いだ実績からすれば、2024年〜2025年のビットコイン上昇局面でも、相応のポジションを取った可能性は高いと推察されます。


第10章 モナコイン――cisが愛したアルトコイン

仮想通貨投資のなかで、cisさんが愛着を持って取引していたのが、日本発の仮想通貨「モナコイン(Monacoin)」です。

10-1. モナコインとは何か

モナコインは、2014年1月に運用開始された日本初の仮想通貨です。2ちゃんねるの掲示板で生まれたキャラクター「モナー」をモチーフにしており、日本のインターネット文化の象徴的存在です。

技術的にはライトコインをベースにしたアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)で、ブロック生成間隔は1.5分と短く、決済速度に優れているのが特徴です。

モナコインは、世界的にはマイナーな存在ですが、日本のコミュニティで根強い人気がありました。Twitterで「モナチップ」(モナコインを少額送金して投げ銭する文化)が盛り上がったり、秋葉原などでモナコイン決済を導入する店舗が現れたりと、日本独自のエコシステムが形成されていました。

10-2. cisがモナコインを買い始めた経緯

cisさんは2017年後半から、モナコインを買い始めました。最初は550円台で買い、こつこつと買い増していったと本人のツイートから読み取れます。

「550円からこつこつ買ってたモナコインももう倍になってしまった 10日しかたってないが! モナコイン億円分以上保有してるのはなんか感慨深いものがある」

これは2017年12月5日のツイートです。10日間で倍になっただけでなく、保有額は億円単位に達していたことがわかります。

モナコインは2017年12月7日に最高値2,308円を記録しました。cisさんが550円で買い始め、2,308円で売り抜けたとすれば、約4倍の利益となります。

10-3. なぜcisはマイナーなアルトコインに手を出したのか

cisさんがビットコインだけでなく、モナコインのようなマイナーなアルトコインにも手を出した理由は何でしょうか。

私の分析では、3つの要因があると考えます。

第一に、流動性は限定的だが、値動きが極めて激しいこと。モナコインは時価総額がビットコインに比べてはるかに小さいため、流動性は限定的でした。しかしその分、価格変動率は大きく、数日で倍になることも珍しくありませんでした。デイトレーダーやスイングトレーダーにとっては、リスクが高い分、リターンも大きい銘柄だったわけです。

第二に、日本コミュニティでの盛り上がり。モナコインは日本人投資家が圧倒的多数を占める仮想通貨で、Twitterや2ちゃんねるでの情報が早く流れます。cisさんは2ちゃんねる出身の投資家で、日本のネット文化にも詳しい人物です。彼にとっては、情報が取りやすい銘柄だったといえます。

第三に、cisさん本人がモナコインに対して持っていた愛着。本人のツイートに「感慨深い」という言葉が出てくることからも、純粋な投資対象としてだけでなく、日本のネット文化への愛着としてモナコインを保有していた節があります。

10-4. モナコインのその後――cisはどう向き合ったか

モナコインは2017年12月7日の最高値2,308円をピークに、その後急落しました。2018年4月には500円台、2018年末には100円台、2019年には50円台まで下落しました。

cisさんが正確にいつモナコインを売却したかは不明ですが、彼の順張り原則からして、下落トレンドが鮮明になった2017年12月後半から2018年1月にかけて、ポジションを大きく減らしたと推察されます。

仮に最高値で売り抜けていたとすれば、550円から2,300円台で売ったわけですから、約4倍の利益。億円単位のポジションだったとすれば、数億円の利益になります。

ただし、最高値ぴったりで売り抜けるのは至難の業ですから、現実的にはピークから多少下げた水準で売ったと考えるのが妥当です。それでも、1〜3億円規模の利益は確保したと推察されます。

その後のモナコインは、長期的な低迷が続いています。2026年5月時点で、モナコイン価格は数十円台で推移していると見られます。最高値から見れば9割以上下落した水準です。

cisさんが現在もモナコインを保有しているかは不明ですが、デイトレ的な小規模ポジションを除けば、大きな保有はないと考えるのが自然です。

10-5. アルトコイン投資の教訓――選別の難しさ

cisさんのモナコイン取引から学べる教訓は、アルトコイン投資の難しさです。

仮想通貨は数千種類以上が存在し、毎年数百種類の新通貨が登場しています。そのなかから、本当に価値を残すコインを選別するのは、極めて困難です。ビットコインのように長期的に生き残っているコインはむしろ例外で、多くのアルトコインは数年で消えるか、最高値から9割以上下落します。

モナコインも、技術的には堅実なコインですが、結局はマイナーな存在のままです。最高値で買ってしまった人は、未だに含み損を抱え続けています。

cisさんが利益を出せたのは、純粋に「上昇トレンドに乗る」という順張り戦略を貫いたからです。「モナコインの将来性を信じて長期保有する」という発想ではなく、「今、上がっているから乗る、下がり始めたら降りる」というスタイルです。

これは、アルトコイン投資においては最も合理的なアプローチだと言えます。各コインの技術的優位性や将来性を予測するのは事実上不可能であり、「値動きだけを見る」純粋な技術的アプローチのほうが、結果的に勝率が高くなるからです。


第11章 ソフトバンクグループ――時価総額20兆円の巨大株を動かす男

cisさんが取引していたとされる大型株のなかで、ひときわ大きな影響力を持っていたとされるのが、ソフトバンクグループ(9984)です。

11-1. ソフトバンクグループの株価と特殊性

ソフトバンクグループは、日本を代表する超大型株のひとつです。時価総額は2026年5月時点で約15兆円〜20兆円規模で推移しており、日経平均株価への寄与度も極めて大きい銘柄です。

ソフトバンクグループ株の特徴は、株価の変動率が大型株のなかで突出して大きいことです。傘下のソフトバンク・ビジョンファンドの運用成績、アリババ株の値動き、保有するアーム株の値動きなど、複雑な要因が絡み合って、株価は日々大きく動きます。

このため、ソフトバンクグループ株は機関投資家・個人投資家を問わず、デイトレ・スイングトレードの対象として人気が高い銘柄です。出来高も多く、流動性も極めて高いです。

cisさんが「大型株中心」のトレードに移行してから、ソフトバンクグループは彼の主要取引銘柄のひとつだったと推察されます。

11-2. 「cisさん一人で大陰線」――伝説のエピソード

cisさんとソフトバンクグループの関係について、興味深いエピソードがあります。ある個人投資家ブログ(ゆきちの株日記、2018年12月)に、こう書かれています。

「ソフトバンクGのチャートに大陰線を付けることができる人がいるってこと。cisさんたった一人の気まぐれな損切でソフトバンクGが大陰線で終了。みたいなw ニュースってのは後付けでいいように言うから この時『アリババが軟調だったため・・・』って勝手にアリババのせいにされていたそうw 真犯人cisさんだけが知っているというw」

このエピソードは伝聞情報なので、信憑性は確実ではありません。しかし、cisさんの取引規模を考えると、十分にありえる話です。

時価総額20兆円規模のソフトバンクグループでも、cisさんが100億円規模で売り注文を出せば、株価は明らかに下押しされます。とくに薄商いの時間帯(昼休み明けや引け間際)では、影響はより大きくなります。

そして、その下落の理由が「アリババ株の軟調」「ソフトバンクグループの傘下企業の業績懸念」など、後付けで説明されてしまう。実は、その下落の真の原因は、ある個人投資家の一回の損切りだった――というのが、上記エピソードの主張です。

これが事実かどうかは確認できませんが、cisさんの市場への影響力を象徴するエピソードとして、よく語られています。

11-3. ソフトバンクグループ株の中期的な値動きの特徴

ソフトバンクグループ株の中期的な値動きには、いくつかの特徴があります。

まず、四半期決算が大きなイベントです。とくに「ビジョンファンド」の運用成績が市場の最大の関心事で、決算発表後に株価が10%以上動くこともあります。

次に、アリババ株の動向に強く連動していました。アリババはソフトバンクグループの長年の主要保有資産で、アリババ株が下がるとソフトバンクグループも連れ安、というパターンが続いてきました。ただし、2022年以降、ソフトバンクグループはアリババ株の大部分を売却しており、現在の連動性は薄れています。

そして、孫正義会長兼CEOの発言が大きな影響を与えます。決算説明会での新たな投資戦略の発表、AI関連企業への投資宣言、ベンチャー投資の方針転換など、孫氏のメッセージひとつで株価が動きます。

cisさんは、こうしたイベントに合わせて売買タイミングを取っていたと推察されます。決算発表前後の急変動、孫氏の発言を受けた値動き、アリババ株の急変動への連動――こうした場面で、cisさんは大きなポジションを取っていた可能性が高いです。

11-4. 2022年〜2023年の中国IT株急落とソフトバンクグループ

2022年から2023年にかけて、ソフトバンクグループ株は大きく下落しました。

理由は複合的です。第一に、米国の金利上昇により、テクノロジー株全般が売られました。ソフトバンクグループのビジョンファンドが保有するスタートアップの評価額が、軒並み下落しました。

第二に、中国当局によるIT企業への規制強化です。アリババをはじめとする中国IT株が急落し、これに連動してソフトバンクグループも下落しました。

第三に、ビジョンファンドの巨額赤字。2022年度、2023年度と、ビジョンファンドは数兆円規模の赤字を計上しました。

この時期、ソフトバンクグループ株は最大で40%以上下落しました。cisさんがどのように対応したかは詳細不明ですが、彼の順張り原則からすれば、下落局面では空売りで利益を取りに行った可能性が高いです。

11-5. 2024年〜2025年のソフトバンクグループ復活

2024年以降、ソフトバンクグループ株は復活の兆しを見せます。

ひとつのきっかけは、2023年9月のアーム(Arm Holdings)の米ナスダック上場でした。ソフトバンクグループはアームの90%超を保有しており、上場により保有資産価値が大幅に上昇しました。

もうひとつのきっかけは、生成AIブームです。ソフトバンクグループはAI関連企業への投資を活発化し、市場の期待を集めました。とくに2024年から2025年にかけて、OpenAIへの投資、ベンチャー投資の再活発化などで、株価は大きく上昇しました。

2024年1月時点で約7,000円台だったソフトバンクグループ株は、2025年に向けて1万円台に乗せました(株式分割前の基準)。

この上昇局面で、cisさんも順張りで乗っていたと推察されます。具体的な取引内容は公開されていませんが、AI関連の話題が盛り上がるたびにcisさんが言及している様子からも、ソフトバンクグループ株は彼の主要監視銘柄のひとつであり続けていると考えられます。


第12章 豊田自動織機――2024-2025年の悪夢のような取引

cisさんの近年の保有銘柄のなかで、最も衝撃的だったのが豊田自動織機(6201)です。本人がツイートで「100億円以上保有」と明かしたこの銘柄で、TOB価格発表により10億円超の損失を被ったのが、2025年6月の事件です。

12-1. 豊田自動織機とは

豊田自動織機は、トヨタグループの中核企業のひとつです。創業者・豊田佐吉氏が1926年に設立した「豊田自動織機製作所」を起源とし、現在は世界的なフォークリフトメーカーとしても知られています。

豊田自動織機の特徴は、トヨタ自動車の大株主であることです。2024年時点で、豊田自動織機はトヨタ自動車株を約7.55%保有しており、その時価評価額は約3.2兆円にものぼります。これは豊田自動織機の時価総額(約5兆円〜6兆円)の半分以上に相当します。

つまり、豊田自動織機の企業価値の大部分は、保有するトヨタ株の評価額で決まっていた、ということです。これが、後の事件の伏線になります。

12-2. 2024年4月25日――TOB報道で株価急騰

2024年4月25日夕方、日本経済新聞が「豊田自動織機、株式非公開化を検討 トヨタ出資で6兆円規模も」と報じました。

これは衝撃的な報道でした。豊田自動織機を非公開化する(上場廃止にする)ためのTOB(株式公開買い付け)が、トヨタ陣営により最大6兆円規模で行われる可能性がある、という内容です。

当時の豊田自動織機の時価総額は約4兆円。これに対して「6兆円規模のTOB」が実施されるなら、現在の株価より約50%高い価格で買い取られる計算になります。

報道の翌4月28日(月曜日)、豊田自動織機株は急騰。前日終値13,225円から16,225円へ、約23%もの上昇となりました。

cisさんは、この報道に着目した可能性が高いです。「TOB期待」というイベント、そして「6兆円規模」という具体的な数字が報じられているなかで、株価がまだ4兆円規模で取引されている――これは典型的な「歪み」であり、cisさんの「3軸モデル」でいえば第3軸(イベント)にズバリ当てはまります。

12-3. 5月、6月の動向――株価上昇とcisの100億円超ポジション

2024年5月19日夜、共同通信が「豊田自動織機がTOB受け入れる方針」と報じました。これでTOBの実現性が高まり、翌5月20日、豊田自動織機株はさらに上昇。16,520円から17,940円へ、約9%の上昇となりました。

そして6月2日夜、日経新聞と共同通信が「3日発表へ」とリーク。市場は「いよいよTOB発表」と期待しました。

この一連の動きのなかで、cisさんは豊田自動織機株を大量に保有していました。具体的な購入時期は不明ですが、2024年4月の最初の報道後、または5月の方針報道後に、ポジションを徐々に増やしていたと推察されます。

ピーク時の保有額については、cisさん本人のツイートが残っています。2025年6月3日、運命のTOB価格発表の朝、cisさんはこうツイートしました。

「曜変天目銘柄100億以上持ってるんだけど、、、今日はスーパードキドキタイム」

「曜変天目」は中国南宋時代に作られた最上級の茶碗を指す言葉で、世界に3点しかない国宝級の美術品です。「曜変天目≒最上級の茶碗≒織機(しょっき)」という言葉遊びで、豊田自動織機(しょっき)の銘柄を婉曲的に表現していたわけです。

このツイートから、cisさんが豊田自動織機を100億円以上保有していたことが本人の言葉として確認されました。

12-4. 2025年6月3日――TOB価格発表で株価暴落

2025年6月3日午後、運命の発表がありました。

トヨタ自動車および特別目的会社(SPC)「トヨタアセット準備」によるTOB価格は16,300円。当日の市場価格18,400円(終値)と比較すると、約11%のディスカウントです。

これは市場の予想を大きく裏切る価格でした。報道では「6兆円規模」と伝えられていたTOBが、実際には4.7兆円規模にとどまり、しかも市場価格より低いディスカウント価格での実施だったのです。

豊田自動織機もTOB成立を前提に「無配(配当ゼロ)」を発表しました。「持っていてもひたすら資金が拘束されるだけ」という状況になり、保有していた投資家は一斉に売りに走りました。

時間外取引(PTS)では、豊田自動織機株は15,800円付近まで急落。終値18,400円から約2,520円(13.7%)の暴落となりました。

cisさんの100億円のポジションは、この暴落により10億円以上の損失を確定したと計算されます。

12-5. なぜTOB価格はディスカウントになったのか

ここで気になるのが、なぜTOB価格が市場価格を下回るディスカウントになったのか、という点です。

事前の予想では、豊田自動織機の純資産価値や保有するトヨタ株の評価額からして、TOB価格は18,000円以上、ともすれば20,000円を超える、というのが大勢の見方でした。実際、フランスのアクティビストファンド「ロンシャン」は、純資産価値が6.6兆円と試算していました。

しかし、実際のTOB価格はそれを大きく下回る16,300円でした。理由はいくつか考えられます。

第一に、「株式持ち合い解消」という性質。今回のTOBは、純粋な企業買収というよりも、トヨタグループ内の株式持ち合い解消の一環でした。豊田自動織機が保有するトヨタ株の取り扱いを巡って、複雑な交渉があったと考えられます。

第二に、トヨタ陣営の交渉力の強さ。豊田自動織機の発行済株式の38%以上を、トヨタ陣営がすでに保有していました。一般株主が反対しても、TOBを成立させるのに十分な議決権を確保していたのです。

第三に、買収プレミアムを最小化したい財務的合理性。トヨタ自動車自体も株価が低迷しており、巨額のTOB資金を捻出するのは大きな負担でした。可能な限り安く買い取りたい、という財務的なインセンティブがありました。

第四に、PBR1倍未満での買収という日本特有の慣行。欧米基準では、PBR1倍以下での買収はあり得ないとされますが、日本では法的拘束力もなく、容認されてしまっている現実があります。

これらの要因が重なり、TOB価格は予想よりはるかに低い水準に設定されたのです。

12-6. cisはなぜこのリスクを見落としたのか――独自分析

cisさんほどの投資家が、なぜこのリスクを見落としてしまったのでしょうか。私なりの分析を提示します。

まず、cisさんが期待していたシナリオは、「TOB価格が市場価格より高い水準で発表され、その差額が利益として確定する」というものだったと考えられます。これは多くのTOB案件で見られる、典型的なシナリオです。

しかし、今回は事情が違いました。豊田自動織機のTOBは、純粋な「価値の追求」ではなく、「トヨタグループの内部再編」でした。買い手と売り手(豊田自動織機)が同じグループ内にあり、しかも事業者間の議決権関係が極めて緊密でした。

普通のTOBであれば、買い手は「魅力的なプレミアム」を提示しないと、株主の応募が集まりません。しかし、トヨタ陣営は既存の議決権だけで強制的にTOBを成立させられる立場にありました。だから、プレミアムを大きく上乗せする必要がなかったのです。

この「グループ内再編」という特殊性を、cisさんは十分に読み切れなかった可能性があります。本人もTwitterの取材で、関連する話題ではないものの「TOBの規模とか様々なニュースをチェックしていてすごいと思いますよ。デイトレだと目の前の株価の動きばかり気にしちゃいます」と発言しており、TOBのような中長期イベントの細かい分析は、必ずしも得意ではないことを示唆しています。

加えて、もう一人の有名トレーダーであるテスタさんも豊田自動織機で損失を出していて、テスタさんは「半分売って半分食らうことになりました」とツイートしています。つまり、cis、テスタという日本を代表する個人投資家たちが揃って読み切れなかった、特殊な案件だったのです。

12-7. 立ち直りの早さ――半導体株への乗り換え

しかしcisさんの真骨頂は、ここからです。

豊田自動織機での損失を被った後、cisさんは半導体株への乗り換えで素早く損失をリカバーしたと、複数のメディアが報じています。

具体的銘柄は本人非公開ですが、当時の市場の流れから、東京エレクトロン(8035)、SCREENホールディングス(7735)、アドバンテスト(6857)、ディスコ(6146)、レーザーテック(6920)といった半導体製造装置関連株が、上昇トレンドにあったと推察されます。

cisさんは、自分の失敗から早く立ち直り、次のチャンスに即座にシフトする能力で知られています。これは、彼が「1回ごとの売買で勝ち負けを考えていない」という哲学を体現しているからです。

豊田自動織機での損失は確かに痛いものでしたが、彼の総資産(270億円超)から見れば、致命傷ではありませんでした。そして、次のチャンスでそれを取り返しに行く――これがcisさんのスタイルです。

12-8. 豊田自動織機事件の最終局面――2026年4月の上場廃止

豊田自動織機をめぐる物語には、続きがありました。

トヨタ陣営は当初の16,300円から、最終的には2回の引き上げを経て、TOB価格を改善させました。日本経済新聞によれば、最終的にTOB価格は引き上げられ、ようやく投資家の応募が集まったとされています。

そして2026年4月17日、豊田自動織機は臨時株主総会を5月12日に開き、株式併合や定款変更などの議案を付議すると発表。決議を経て、2026年6月1日に上場廃止となる予定が決まりました。

cisさんがこの最終局面でどう動いたかは、本人非公開のため不明です。最初のTOB発表で大きく損切りした後、TOB価格の引き上げを見て再度ポジションを取った可能性もありますし、完全に撤退して別の銘柄に移った可能性もあります。

いずれにせよ、豊田自動織機は、cisさんが2020年代に経験した最大級の損失事件として、長く語り継がれることになるでしょう。


第13章 半導体株群――cisが豊田自動織機の損失をリカバーした舞台

豊田自動織機で10億円超の損失を出した後、cisさんが「1週間で損失を回復した」と報じられているのが、半導体株への投資です。具体的銘柄名は明らかにされていませんが、当時の市場の流れから、いくつかの銘柄を推察できます。

13-1. 2024〜2025年の半導体株ブームの背景

2024年から2025年にかけて、半導体株は世界的なブームを迎えました。背景は生成AIの爆発的な普及です。

ChatGPTをはじめとする生成AIの登場により、AI計算用の半導体チップ(GPU)の需要が爆発的に拡大しました。NVIDIA(エヌビディア)のGPUは奪い合いとなり、株価は急騰しました。

そして、NVIDIAのチップを製造するためには、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)などのファウンドリ(製造請負)企業の半導体製造装置が必要です。この半導体製造装置市場で、日本企業が世界トップシェアを握っています。

東京エレクトロン、SCREEN、ディスコ、アドバンテスト、レーザーテック――これらの日本企業は、半導体製造装置の各工程で圧倒的な技術優位を持っており、生成AIブームの波に乗りました。

米国半導体工業会(SIA)によれば、2024年の世界半導体売上は前年比19.1%増の6,276億ドル(約94兆円)と過去最高を更新。2025年も2桁成長が予測されています。

13-2. cisが取引したと推察される半導体株群

具体的にcisさんがどの半導体株を取引したかは本人非公開ですが、当時の市場で大きく動いていた銘柄から、いくつかピックアップしてみます。

東京エレクトロン(8035)は、半導体製造装置の世界大手で、日本の半導体株の代表格です。時価総額は10兆円超、日経平均への寄与度も極めて高いです。2024年から2025年にかけて株価は大きく上下動しており、デイトレ・スイングトレードの絶好の対象でした。

SCREENホールディングス(7735)は、半導体洗浄装置の世界トップシェア企業です。前工程プロセスで圧倒的な技術優位を持ち、生成AIブームの恩恵を受けました。

アドバンテスト(6857)は、半導体テスター(半導体の性能を検査する装置)の世界大手です。AIチップの検査需要が急増したことで、業績が大きく伸びました。

ディスコ(6146)は、半導体ダイシング装置の世界シェア圧倒的1位の企業です。ニッチですが、その分独占的な利益を稼ぐビジネスです。

レーザーテック(6920)は、EUV(極端紫外線)リソグラフィー用のフォトマスク検査装置で世界シェア100%を持つ独占企業です。最先端半導体の製造に不可欠で、株価は2020年代に大幅に上昇しました。

これらの銘柄は、いずれも時価総額が1兆円〜10兆円規模で、流動性が極めて高いです。cisさんの「大型株中心」「流動性重視」の原則に合致します。

13-3. cisの半導体株トレードの推察――どんなパターンだったか

cisさんがどのように半導体株を取引したか、具体的な内容は不明ですが、いくつかのパターンが考えられます。

ひとつは、決算発表後の急変動を狙うパターンです。半導体株は決算ごとに大きく動きます。事前の業績予想を上回れば10%以上の上昇、下回れば10%以上の下落というのが、半導体株では当たり前です。cisさんは、決算発表前後のボラティリティを利用して、短期で大きく稼ぐスタイルを得意としています。

もうひとつは、米国市場の半導体株(NVIDIAなど)の動きを先読みするパターンです。NVIDIAが米国市場で急騰すると、翌日の日本市場で東京エレクトロンやアドバンテストが連れ高するという連動性があります。cisさんは、こうした連動性を利用して先回りした可能性が高いです。

さらにもうひとつは、市場全体のリスクオン・リスクオフの流れに乗るパターンです。半導体株は景気敏感株の代表格で、市場全体のリスクオンの場面で大きく買われ、リスクオフで売られます。日経平均先物の動きとも強く相関するため、先物と組み合わせたトレードがしやすい銘柄です。

13-4. なぜ半導体株でリカバーできたのか――タイミングの良さ

cisさんが半導体株で素早くリカバーできた背景には、タイミングの良さがあります。

豊田自動織機のTOB価格発表が2025年6月3日でしたが、その後の数週間は、半導体株が比較的堅調に推移していた時期です。とくに6月から7月にかけては、米国の半導体株が好調で、日本の半導体株も連れ高する展開が続きました。

cisさんが豊田自動織機で大損した直後、市場全体の関心が「半導体」に集中していたことは、彼にとって幸運でした。流動性が極めて高く、値動きが大きく、明確な上昇トレンドが出ている半導体株は、彼の「3軸モデル」のすべてに合致する理想的な銘柄群だったわけです。

ただし、半導体株もずっと上がり続けたわけではありません。2025年8月には日銀の金融政策正常化の動きを受けて、日経平均株価が一時史上最大の下げ幅(4,451円)を記録するなど、半導体株も大きく揺さぶられました。

cisさんがこの大相場でどう立ち回ったかは、本人の発言が限定的なので明確ではありませんが、彼の順張り原則からして、上昇局面では買い、下落局面では空売り、というスタイルで対応したと推察されます。

13-5. 半導体株に潜むリスク――cisが警戒している点

cisさんが半導体株に対してどう向き合っているかは、彼が直接発信する情報が少ないため、推察するしかありません。しかし、彼の哲学からすると、半導体株のリスクとして以下を意識していると考えられます。

第一に、シクリカリティ(景気循環)のリスクです。半導体産業は典型的な景気循環産業で、好況と不況のサイクルが激しいです。今は好況期ですが、いつ需要が反転するかわかりません。

第二に、地政学リスクです。半導体は米中対立の最前線にある産業です。台湾有事のリスク、米国の対中規制の強化、中国の台頭――これらすべてが半導体株に大きな影響を与えます。

第三に、バリュエーションのリスクです。半導体株のPERは、すでに非常に高い水準にあります。少しでも業績期待が後退すると、株価は大きく調整します。

cisさんが半導体株に強い思い入れを持つのではなく、「あくまでトレード対象として」関わっていることは、彼の流動性重視・トレンドフォローの哲学と合致しています。市場のセンチメントが変われば、彼は躊躇なく半導体株から離れるはずです。


第14章 任天堂・ソフトバンク・KDDI――cisの長期保有説の検証

近年のcisさんの保有銘柄について、複数のメディアやブログで「任天堂、ソフトバンク、KDDIなどの長期保有を開始」という情報が流れています。この長期保有説について、慎重に検証していきます。

14-1. 長期保有説の出どころ

この情報の出どころは、2025年6月にアメブロで公開された「投資家cisとは?伝説の株トレーダーの本名や資産推移を解説」という記事です。そこには以下のような記述があります。

「近年は短期トレードに加え、任天堂やソフトバンク、KDDIなどの長期保有も開始。短期と長期を組み合わせる柔軟なスタイルで、市場の変化に対応しています。」

ただし、この情報源は二次情報であり、cisさん本人が直接「任天堂を長期保有している」「KDDIを長期保有している」と明言したツイートやインタビュー記事は、私が調べた範囲では見つかりませんでした。

そのため、この長期保有説は「確定情報ではない」と注釈をつけた上で、分析を進めていく必要があります。

14-2. 任天堂(7974)の保有可能性

任天堂は、日本を代表する超大型エンタテインメント企業です。時価総額は2026年5月時点で約10兆円規模、ニンテンドースイッチ後継機(Nintendo Switch 2)の発売もあり、株価は近年大きく動いてきました。

cisさんが任天堂株を保有している可能性は、いくつかの観点から考えると、十分にあり得ます。

第一に、流動性の高さ。任天堂は時価総額10兆円超の超大型株で、出来高も多く、cisさんが好む流動性の条件を満たします。

第二に、ゲーマーとしての親和性。cisさんは筋金入りのゲーマーで、自身でも多額の課金をするほどゲーム愛好家です。任天堂という企業への関心は当然高いはずです。本人のTwitterのプロフィール文には、過去に「ドラクエ」「リネレボ」など、ゲーム関連の言葉が含まれていたことからも、ゲームへの関心の高さがうかがえます。

第三に、明確なイベントドリブン要素。任天堂は新作ハード(Nintendo Switch 2)の発売、新作ソフト(マリオ、ゼルダなどのIPコンテンツ)の発表など、株価を動かすイベントが多い銘柄です。cisさんの「イベントドリブン」スタイルに合致します。

ただし、cisさんが任天堂を「長期保有」しているか、それとも「短期から中期で出入りを繰り返している」かは、外部からは判別できません。

14-3. ソフトバンク(9434)――通信会社のソフトバンクと、ソフトバンクグループの区別

長期保有銘柄として挙げられている「ソフトバンク」は、おそらく通信会社の「ソフトバンク(9434)」を指していると考えられます。これは、スマホキャリアとして知られる事業会社で、ソフトバンクグループ(9984)とは別の上場会社です。

ソフトバンク(9434)の特徴は、安定した配当を出すインカム銘柄であることです。配当性向は約85%(株主還元方針)、配当利回りは5%超と高水準を維持しています。

cisさんが本当にソフトバンク(9434)を長期保有しているとすれば、それは「配当目的」または「安定したキャッシュフロー源」としての側面が大きいと推察されます。

ただし、cisさんの一貫したスタイルからすると、5%程度の配当利回りに長期保有のインセンティブを感じるとは思えません。むしろ、ソフトバンク(9434)の値動きを見て、トレンドが鮮明なときに乗るタイプの取引をしている可能性のほうが高いです。

14-4. KDDI(9433)――安定配当の代表格

KDDIは、auブランドで知られる通信大手です。時価総額は約10兆円規模、配当は連続増配を続けており、長期投資家からの人気が高い銘柄です。

cisさんがKDDIを長期保有している可能性は、ソフトバンクと同様、配当目的または安定収益源としての位置づけだと推察されます。

ただし、上記の通り、これは伝聞情報であり、本人発言ベースの確証はありません。

14-5. なぜ大型通信株なのか――推察される論理

仮にcisさんが任天堂、ソフトバンク、KDDIといった大型銘柄を長期保有しているとすれば、その論理は何でしょうか。

ひとつは、ポートフォリオのアンカー(錨)としての機能です。デイトレで激しく動かす資金とは別に、安定した配当が入り続ける銘柄をホールドしておくことで、ポートフォリオ全体の安定性を高める、というロジックです。

もうひとつは、税効果です。日本では、上場株式の譲渡益や配当は20.315%の分離課税で済みます。短期で頻繁に売買すると毎回課税されますが、長期保有していれば未実現の含み益には課税されません。資金規模が大きくなると、税効率も重要な検討事項になります。

そしてもうひとつは、機会費用の管理です。300億円すべてを常にアクティブにトレードするのは現実的でないため、一部は安定銘柄に「置いておく」ことで、自分のリソースを本当に重要な機会に集中できます。

これらの推察が当たっているかは、cisさん本人が明確に語らない限り確認できません。しかし、巨額の資金を運用する個人投資家として、こうした「メインのデイトレ資金とは別の長期ホールド枠」を持つことは、合理的な選択だと考えられます。


第15章 IPO銘柄――cisが「初心者向け」と勧める唯一の領域

cisさんが、自身の手法とは別の文脈で「初心者向け」として推奨するのが、IPO(新規公開株)のデイトレードです。これは、彼の哲学のなかでもユニークな位置づけにあります。

15-1. cisがIPO銘柄を勧める理由

cisさんは著書のなかで、「これから50万〜100万円の予算で相場を始めるなら、最初はIPOのデイトレがいいと思う」と述べています。これは、初心者向けの数少ない具体的な推奨です。

なぜIPO銘柄なのでしょうか。cisさんが挙げる理由は、以下の通りです。

第一に、ボラティリティが高いこと。IPO銘柄、特に上場初日や数日間は、価格変動が極めて激しいです。1日で30%以上動くことも珍しくありません。これは、リスクは高いですが、その分大きく稼ぐチャンスもあります。

第二に、上昇期待が大きいこと。一般にIPO銘柄は、公募価格より初値が高い「初値高」のパターンが多いです。とくに人気のあるIPO銘柄は、公募価格の2倍以上で初値がつくこともあります。

第三に、上場初日のデイトレが学習機会になること。初心者がいきなり日経225先物や大型株のトレードに参入すると、市場の機微がわからずに損をしがちです。一方、IPO銘柄は値動きが単純で、ファンダメンタルズも目立たないため、純粋な需給バランスを観察しやすい銘柄です。

cisさんの推奨は、「IPO銘柄のボラティリティが高いやつを買って、ダメそうならすぐ損切りし、上がっている最中は持っておくスタイルのデイトレ」というものです。

15-2. cisが好むIPO銘柄のタイプ

cisさんが具体的にどのようなIPO銘柄を好むかについて、本人が詳細を語った記録は少ないですが、いくつかのパターンが見えます。

ひとつは、人気が高くて初値が大きく上昇するタイプです。話題性のある業種(AI、バイオ、SaaS、ゲームなど)の企業で、公募価格が割安に設定されているケース。こうした銘柄は、上場初日に初値が公募の2〜3倍になることが珍しくありません。

もうひとつは、上場初日以降に出来高が継続的に多いタイプです。話題性が一過性でなく、上場後しばらく注目を集め続ける銘柄。こうした銘柄は、デイトレで複数回チャンスがあります。

逆に、cisさんが避けると思われるIPO銘柄もあります。それは、大規模IPOで初値が公募価格を下回るタイプ、地味な業種でメディアの注目を集めないタイプ、初日からほぼ動かない静かな値動きの銘柄、などです。

15-3. IPO銘柄でのcisの推奨スタイル

cisさんが提唱するIPOデイトレのスタイルは、以下のようなものです。

買いのタイミングは、上場後の値動きを見て、明確な上昇トレンドが出ているところで参入。寄り付き直後の混乱期は避け、ある程度値動きが落ち着いてから判断します。

ポジションサイズは、最初は小さく。50万円から100万円程度の予算なら、IPO銘柄1〜2銘柄に分散して10万円から30万円ずつ程度を投じるのが現実的です。

損切りのタイミングは、トレンドが変わったと感じた瞬間、または事前に決めた損切り幅(たとえば購入価格から-5%)に達したとき。「あと少し戻るかも」と粘らず、潔く撤退します。

利確のタイミングは、トレンドが続いている限り保有。上昇率が大きくなったからといって慌てて利確せず、上昇の勢いが弱まったタイミングで売却します。

これは、cisさん本人が使っている手法そのものですが、IPO銘柄であれば値動きがわかりやすく、初心者でも実践しやすい、というのが彼の主張です。

15-4. 注意点――IPO銘柄でも全力投球はNG

cisさんが初心者にIPO銘柄を推奨する一方で、注意点もあります。

第一に、全資金を1銘柄に集中投資しないこと。IPO銘柄は値動きが大きく、予想外の方向に動くことも多いです。1銘柄に全資金を投じると、たった1回の失敗で全財産を失う可能性があります。

第二に、ストップ安リスクに注意。IPO銘柄の一部は、寄り付き後に売り殺到でストップ安に張りつくことがあります。こうなると、損切りすら困難になります。

第三に、信用取引のレバレッジを使わない。初心者は現物取引から始めるべきです。信用取引は損失が証拠金を超える可能性があり、初心者には危険すぎます。

第四に、IPO銘柄の長期保有は避ける。IPO銘柄は、上場後1〜2年で大きく下落するケースが多いです。「成長企業だから長期保有」という発想は、IPO銘柄では当てはまらないことが多いです。

これらの注意点を守った上で、IPO銘柄のデイトレで「市場の値動きを学ぶ」ことを、cisさんは推奨しているのです。


第16章 cisが「買わない」銘柄――除外されるタイプの銘柄群

cisさんが何を買うかを理解するためには、彼が何を「買わない」かを知ることも同じくらい重要です。除外される銘柄群を分析することで、彼の選択基準がよりクリアに見えてきます。

16-1. 流動性の低い小型株

最も明確にcisさんが避ける銘柄群が、流動性の低い小型株です。

時価総額が数十億円〜数百億円の小型株、出来高が1日数百株程度の銘柄、ストップ安・ストップ高に張りつきやすい銘柄――こうした銘柄は、cisさんの選択肢から完全に外れています。

理由は何度も述べてきた通り、cisさんの資金規模では、こうした銘柄に大きなポジションを取れないからです。仮に小型株を買おうとしても、自分の買い注文だけで価格が急騰してしまい、有利な価格で買えません。売却するときも同様で、自分の売り注文で価格が急落してしまいます。

これは、cisさんに限らず、機関投資家や大口個人投資家共通の制約です。資金が大きくなるほど、扱える銘柄の幅は狭くなります。

16-2. ファンダメンタルズ系のバリュー株

意外かもしれませんが、cisさんは「割安バリュー株」もほぼ買いません。低PER、低PBR、高配当、安定収益――こうしたバリュー株指標が魅力的な銘柄は、cisさんの選択肢からは外れます。

理由は、彼の哲学そのものです。「割安」という判断は、未来予測に依存します。「いつかこの会社の業績が回復するだろう」「いつかこの株は適正価値に戻るだろう」――こうした「いつか」への賭けを、cisさんは原則としてしません。

例外として、東京電力債(2013年頃の保有)のような、特殊な歪みで割安になっている銘柄を買うことはあります。しかし、これは「バリュー投資」というよりも「イベントドリブン投資」であり、明確に出口戦略のあるトレードです。

純粋な「業績がじわじわ回復するから」「PERが業界平均より低いから」という理由で銘柄を選ぶことは、cisさんは原則としてしません。

16-3. 配当目的の高配当株

これも意外ですが、配当目的の高配当株もcisさんの主要な投資対象ではありません。

配当利回り4%、5%といった高配当銘柄は、長期投資家には人気ですが、cisさんの哲学とは合いません。理由は、年間4〜5%の配当利回りは、cisさんが普段狙っているリターンと比べて、あまりにも小さすぎるからです。

cisさんは、1回のトレードで10%、20%、ときには100%以上の利益を狙う投資家です。年間4〜5%の配当のために資金を1年間拘束するのは、機会費用の観点から不合理だと考えるはずです。

ただし、先ほどの章で触れたように、近年は任天堂、ソフトバンク、KDDIなどを長期保有しているという伝聞情報があります。これが事実だとすれば、配当目的の保有もあり得ます。しかし、それでもポートフォリオの中核ではなく、補完的な位置づけだと推察されます。

16-4. 過去の業績悪化銘柄

cisさんが避けるもうひとつのタイプが、過去に業績悪化を経験した銘柄、いわゆる「過去の名門だが衰退中」の銘柄です。

これは、cisさんの「順張り」哲学から自然に導かれる選択肢です。「下がっているものは、さらに下がる可能性が高い」という原則です。

衰退中の銘柄は、業績悪化のニュース、減配、リストラ、債務不履行リスクなど、悪材料が続発しがちです。これらの悪材料は、株価をさらに下げます。逆張りで「いつか復活する」と買い込むのは、cisさんの哲学とは正反対です。

過去の事例で言えば、cisさんは経営難に陥った時代のシャープ、東芝、JALといった銘柄に大きく賭けることはしませんでした(特殊な歪みが生じた局面では別ですが)。

16-5. 仕手筋が動いている可能性のある銘柄

cisさんが慎重なもうひとつのタイプが、特定の投機集団(仕手筋)が動いている可能性のある銘柄です。

仕手相場では、株価が一見上昇トレンドに見えても、実は誰かの意図的な株価操作の結果である場合があります。そういう銘柄は、仕手筋が「逃げ場」を見つけた瞬間に急落します。

cisさんは、長年の経験で「これは本物のトレンドか、それとも仕手相場か」を見分ける目を持っていると言われます。明らかに仕手相場と判断できる銘柄には、彼は手を出しません。

具体的にどのような銘柄かは状況によりますが、一般的には以下のような特徴があります。出来高が突然爆発的に増えた小型株、決算とは無関係な急騰、特定の証券会社経由の大量買いが続く銘柄、SNSで急に話題になっている銘柄、などです。

これらすべてが仕手相場とは限りませんが、警戒すべきサインではあります。

16-6. 自分の手の届かない海外株

cisさんは、基本的に日本株と日経225先物を中心に取引しており、海外株(米国株、欧州株、新興国株など)には積極的に手を出していません。

理由はいくつか考えられます。第一に、情報の非対称性。海外株の情報は、日本人投資家には届きにくく、リアルタイムで状況を把握するのが困難です。第二に、時差の問題。米国市場は日本時間の深夜にしか開いておらず、デイトレに不向きです。第三に、為替リスク。海外株を取引すると、株価変動だけでなく為替変動のリスクも背負うことになります。

ただし、日経平均はグローバル市場の動きに大きく影響を受けます。cisさんは日経225先物を主力とすることで、間接的に米国市場や欧州市場の動きを取りに行っている、とも言えます。

直接的に海外株を取引しないのは、彼の戦略的な選択であり、自分の優位性が発揮できる土俵を意識的に選んでいる結果だと考えられます。


第17章 他の伝説の投資家との保有銘柄比較

cisさんの保有銘柄を、他の有名な日本人投資家の保有銘柄と比較することで、彼の銘柄選択の特徴がより明確に見えてきます。

17-1. B・N・F(ジェイコム男)の保有銘柄との比較

B・N・Fさんは、cisさんとよく比較される投資家です。本名・小手川隆氏、2003年から2008年にかけて160万円を200億円超に増やした天才トレーダーです。

B・N・Fさんの保有銘柄は、cisさんと共通点も多いですが、相違点もあります。

共通点は、新興市場の小型株から始めた初期、ジェイコム株(2005年)、リーマンショック後の不動産投資、などです。

相違点は、B・N・Fさんは「短期の逆張りリバウンド」を得意とした点です。下落局面で売り込まれた銘柄を拾い、リバウンド狙いで利益を取るスタイルでした。cisさんが「上昇トレンドへの順張り」中心なのとは対照的です。

また、B・N・Fさんは2010年代以降、株式市場からほぼ撤退し、不動産投資に軸足を移しました。秋葉原の駅前ビルなど、数百億円規模の不動産を保有しているとされます。

cisさんも不動産投資を経験していますが、本人が「罰ゲーム」と振り返ったように、不動産には大きく傾倒せず、株式・先物中心のスタイルを維持しています。

17-2. テスタの保有銘柄との比較

テスタさんは、2005年に元手300万円で投資を始め、2024年2月に累計利益100億円を達成した個人投資家です。cisさんとは何度か対談しており、お互いを尊敬し合う仲です。

テスタさんの保有銘柄は、cisさんとはかなり違います。

テスタさんは近年、デイトレード中心から中長期投資にシフトしています。日経マネー誌などのインタビューで、彼は日経平均先物を大量に買って大きな利益を上げたエピソードを語っており、また高配当株や米国株、投資信託(オルカン)にも投資しています。

つまり、テスタさんは「分散投資型」「コア・サテライト型」のポートフォリオを志向しているのに対し、cisさんは「集中投資型」「イベントドリブン型」のスタイルを貫いています。

両者とも、豊田自動織機のTOBで損失を出した点では共通していました(テスタさんも「半分売って半分食らうことになりました」とツイート)。トップトレーダーでも、同じ罠にはまることがある、という教訓的なエピソードです。

17-3. 片山晃(五月)の保有銘柄との比較

片山晃さん(ハンドルネーム「五月」)は、65万円で株式投資を始め、160億円超の資産を築いた個人投資家です。

片山さんの保有銘柄は、cisさんとはまったく対照的です。

片山さんは、徹底的に企業を調査し、有望な中小型成長株を見つけて長期保有するスタイルです。いわゆる「グロース投資」「バリュー&グロース投資」と呼ばれるアプローチで、ウォーレン・バフェットや、日本では竹田和平氏の流れを汲むスタイルです。

片山さんが過去に大きく稼いだ銘柄として、ラックランド、リブセンス、エニグモ、レアジョブ、リコーリースなど、いずれも当時の中小型成長株です。

cisさんが「値動き」を見るのに対し、片山さんは「企業価値」を見る。cisさんが秒〜日単位で売買するのに対し、片山さんは年〜10年単位で保有する――この対比は、投資の世界の多様性を象徴しています。

17-4. ウォーレン・バフェットの保有銘柄との比較

世界最高の投資家ウォーレン・バフェットの保有銘柄と比較すると、cisさんとの違いがより鮮明になります。

バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの保有銘柄は、Apple、Coca-Cola、American Express、Bank of America、Chevronなど、いずれも世界的優良企業で、数十年単位で保有を続けている銘柄が中心です。「分かりやすいビジネスを、合理的な価格で買い、永久に保有する」というスタイルです。

cisさんの保有銘柄は、ほぼ正反対です。「ビジネスは特に分析せず、値動きだけを見て、数秒〜数日で売買する」スタイルです。

両者は、投資の世界で同時に成功している、対照的なアプローチの代表選手です。これは、投資の正解がひとつではないことを示しています。

ただし、再現性という観点では、両者ともに「真似が困難」という共通点があります。バフェットを真似たつもりで失敗した投資家は無数にいますし、cisさんを真似て大損した個人投資家も無数にいます。

それぞれが自分自身のスタイルを20年、30年、50年と磨き続けて辿り着いた境地なので、簡単に真似できるものではないのです。

17-5. ジョージ・ソロスの保有銘柄との比較

ヘッジファンドの帝王と呼ばれたジョージ・ソロスは、いくつかの点でcisさんと共通点があります。

ひとつは、「市場の歪み」を狙うスタイル。ソロスは1992年のポンド危機で、英国ポンドを売り浴びせて10億ドル以上の利益を上げ、「イングランド銀行を破った男」となりました。これは、市場の歪み(イギリス通貨の過大評価)を見抜き、大規模に賭けた事例です。

もうひとつは、為替・先物・オプションを駆使する点。ソロスは個別株よりも、通貨・債券・先物・オプションなど、より大きな市場で勝負することが多かったです。これは、資金規模が大きくなるほど、個別株では限界があることを示しています。

cisさんが日経225先物中心になっているのも、同じ論理です。資金規模が大きくなれば、個別株では機動的に動けないので、より大きな市場(先物、為替、ETF、債券など)にシフトせざるを得ないのです。

ただし、ソロスのスタイルは「思想(再帰性理論)」に基づく深い分析を伴うのに対し、cisさんは「事実観察」をベースにしている点で違いがあります。


第18章 cisの保有銘柄から学ぶ7つの教訓

ここまでcisさんの保有銘柄を時系列、種類別、そして他の投資家との比較を通じて見てきました。最後に、私たち一般投資家がcisさんの保有銘柄から学べる7つの教訓をまとめます。

18-1. 教訓1――銘柄選びより「銘柄に対する姿勢」が大事

cisさんの保有銘柄を見て、「真似できる銘柄選び」を探そうとしても、見つかりません。彼が買った銘柄を私たちが同じタイミングで買えるはずもなく、彼が損切りした銘柄を私たちが同じ判断で売れるとも限らないからです。

学ぶべきは、銘柄選びそのものではなく、「銘柄に対する姿勢」です。具体的には、銘柄に惚れない、感情を持ち込まない、買値を忘れる、トレンドを尊重する、損切りを徹底する――こうした姿勢です。

これは、銘柄が違ってもどんな相場でも適用できる、普遍的な原則です。

18-2. 教訓2――時間軸を自分で決める

cisさんが「数秒から48時間」という時間軸で取引しているのに対し、バフェットは「永久」という時間軸で投資しています。どちらが正しいわけでもなく、それぞれの戦略に最適な時間軸があります。

私たちも、自分のライフスタイル、リソース、性格に合った時間軸を選ぶ必要があります。

仕事をしながら投資をする会社員なら、デイトレは現実的でないでしょう。中長期のスイングトレードか、超長期の積立投資が現実的です。逆に、専業投資家として時間を投資に充てられる人なら、短期トレードも選択肢になります。

cisさんと同じ土俵で戦おうとせず、自分の土俵を選ぶ――これが大事です。

18-3. 教訓3――流動性を軽視しない

cisさんの保有銘柄から学べる最大の教訓のひとつが、「流動性の重要性」です。

普段は気にならない流動性ですが、いざというときに身動きが取れなくなるのは、最大のリスクです。ライブドアショックでcisさんが体験した「ストップ安張りつき」のような状況は、誰にでも起こりえます。

私たちも、銘柄を選ぶときには「いざというときに売れるか」を意識すべきです。出来高、板の厚さ、ストップ安のリスクなどを確認しましょう。

時価総額が小さすぎる銘柄、流動性が極めて低い銘柄に資金を集中させるのは、自分自身を罠にはめる行為です。

18-4. 教訓4――イベントを先読みする習慣をつける

cisさんが大きく稼いだ取引の多くは、「市場の歪みを生むイベント」と関連しています。ジェイコム事件、東京電力(震災)、チャイナショック、ビットコインバブル、豊田自動織機TOB――いずれも、特殊なイベントが起点になっています。

私たちも、平時から「もし○○が起きたら、××が動く」というシナリオを大量にストックする習慣をつけるべきです。

具体例を挙げます。「もし大震災が起きたら、復興関連株が動く」「もし米中対立が激化したら、半導体株が下がる」「もし日銀が利上げしたら、銀行株が上がる」「もし大手通信が大規模障害を起こしたら、競合の通信株が上がる」――こうした「もし○○なら××」を、自分なりに大量にストックするのです。

そして、いざその出来事が起きたら、用意していたシナリオに沿って素早く動く。これがcisさんの真骨頂であり、私たちも訓練すれば近づける能力です。

18-5. 教訓5――失敗から早く立ち直る能力を磨く

cisさんは、何度も大きな失敗を経験してきました。みずほ銀行株での1,000万円損失、ライブドア株での5億円損失、豊田自動織機での10億円超の損失――これらは、彼の人生で大きな傷を残した出来事です。

しかし彼は、いずれの失敗からも素早く立ち直り、次のチャンスで取り返してきました。

私たち一般投資家も、必ず失敗します。むしろ、失敗を一切しない投資家など存在しません。大事なのは、失敗から早く立ち直り、次のチャンスを掴むことです。

失敗を引きずらない、自分を責めすぎない、過去のミスを繰り返さないように学ぶ、次のチャンスに集中する――これらの精神力は、技術力以上に重要なスキルです。

18-6. 教訓6――資金規模に応じて戦略を変える

cisさんは、資金規模の変化に応じて、戦略と保有銘柄を進化させてきました。

300万円スタートの初期は、新興市場の小型株。10億円規模になってからは、大型株とジェイコムのような特殊銘柄。100億円規模では、大型株と先物・オプション。300億円規模では、日経225先物、超大型株、長期保有銘柄も組み合わせる――。

これは、資金規模に応じた合理的な進化です。私たち一般投資家も、資産が増えていくにつれて、戦略を見直す必要があります。

100万円のときの戦略と、1,000万円になったときの戦略、1億円になったときの戦略は、当然変わってきます。常に自分の資金規模に最適な戦略を選び続ける――これも大事な能力です。

18-7. 教訓7――情報源を独自に持つ

cisさんは、メディアの後追い情報ではなく、自分の独自情報網(2ちゃんねるの株板、Twitterの投資家コミュニティ、直接の人脈、過去の経験など)から、誰よりも早く情報を得てきました。

私たち一般投資家も、自分なりの情報源を持つことが大事です。

Twitter、X、note、YouTube、勉強会、書籍、新聞、SNS、業界の知人――これらを総合的に活用して、「自分にしか入らない情報」を蓄積していきましょう。

ただし、cisさんが言うように「マーケットでしか学べない」のも事実です。情報を集めるだけでなく、実際にお金を入れて売買し、その経験から学ぶ。この実地経験こそが、最も価値のある情報源です。


第19章 cisの保有銘柄の本質――まとめに代えて

ここまで、cisさんの保有銘柄を、時代別、種類別、テーマ別に詳しく分析してきました。最後に、cisさんの保有銘柄から見える「本質」をまとめます。

19-1. cisの保有銘柄は「ポートフォリオ」ではなく「ポジションの集合」

普通の投資家にとって、保有銘柄は「ポートフォリオ」という形で長期的に管理する対象です。各銘柄の比率、リスク分散、配当収入、成長期待――こうした要素を組み合わせて、最適なポートフォリオを構築するのが一般的です。

しかしcisさんの保有銘柄は、まったく違う性格を持っています。彼にとっての保有銘柄は「ポートフォリオ」ではなく、「個別の機会に対するポジションの集合」です。

ジェイコム株、東京電力債、ビットコイン、豊田自動織機――これらの間に、相互の関連性はほとんどありません。それぞれが、その時点での独立した機会への賭けです。

この点が、cisさんが他のファンドマネージャーや個人投資家と最も異なる点です。

19-2. cisの保有銘柄を見ると、彼の哲学が浮かび上がる

cisさんの保有銘柄を時系列で並べると、彼の哲学が立体的に浮かび上がってきます。

初期のみずほ銀行株での失敗が、「逆張り・バリュー投資」への決定的な不信を生みました。これが、彼の「順張り」哲学の出発点です。

ジェイコム株での大成功は、「市場の歪みは時々発生する」「歪みを発見できれば大きく稼げる」という確信を強化しました。これが、彼のイベントドリブン戦略の原点です。

ライブドア株での大損は、「流動性が消失すると損切りすらできない」という教訓を刻みました。これが、後年の「大型株・先物中心」シフトの背景です。

東京電力債での成功は、「明確な歪みがあり、出口戦略が明確なら、逆張りも可能」という柔軟性を示しました。

豊田自動織機での損失は、「グループ内再編というイベントは、純粋な企業買収とは違う論理で動く」という、新たな学びを与えました。

それぞれの保有銘柄が、彼の哲学を形作る「教材」だった、と言うこともできます。

19-3. 「個別銘柄」より「市場の歪み」を見る

cisさんの保有銘柄から最も明確に読み取れるのは、「個別銘柄そのものではなく、市場の歪みを見ている」という姿勢です。

ジェイコム株は、別にジェイコムという会社の業績が良かったわけではありません。たまたま市場で誤発注が起きて、本来の価値より大幅に安く買えるチャンスがあった、というだけです。

東京電力債も、東京電力という会社が魅力的だったわけではありません。震災で過剰に売られていたところに、政府救済というシナリオが見えた、というだけです。

豊田自動織機も、豊田自動織機の業績が際立って素晴らしかったわけではありません。TOB期待で価格が上昇していて、さらに上がる余地がある、と読んだだけです。

つまり、cisさんは「企業」ではなく「機会」を買うのです。たまたまその機会の媒介となる銘柄を保有しているにすぎない、というのが本質です。

19-4. 私たち一般投資家への最終メッセージ

cisさんの保有銘柄を10万字以上にわたって分析してきましたが、最終的にお伝えしたいメッセージはシンプルです。

cisさんの保有銘柄を真似ようとしないでください。

なぜなら、cisさんの保有銘柄は、彼の20年以上の経験、独自の情報網、巨大な資金力、ゲーマーとしての反射神経、心理的強さ――これらすべての要素が組み合わさって、初めて成立する選択だからです。

私たちが学ぶべきは、彼の「銘柄選びそのもの」ではなく、その背後にある「思考プロセス」と「哲学」です。

順張りを徹底すること。損切りを徹底すること。流動性を軽視しないこと。市場の歪みを見抜く目を磨くこと。失敗から早く立ち直る精神力を持つこと。自分の資金規模に合った戦略を選ぶこと――。

これらの原則は、銘柄が違っても、時代が違っても、資金規模が違っても、適用できる普遍的な真理です。

cisさんの保有銘柄リストを完璧にコピーしても、私たちは彼のようにはなれません。しかし、彼の思考プロセスを理解し、自分の状況に応用すれば、私たちは「自分自身のスタイル」で資産を築くことができるはずです。

そして、それこそが、cisさんが本当に伝えたいメッセージなのだと、私は信じています。

長い分析にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


参考資料・一次情報リスト

本記事の執筆にあたり、以下の一次情報および信頼性の高い二次情報を参照しました。

cis本人の一次情報

cis 著『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA、2018年12月21日発売、ISBN: 978-4041069691)――本記事の中核資料として参照。みずほ銀行株、ジェイコム株、ライブドア株、東京電力債、不動産、IPO銘柄などの具体的エピソードはすべてこの著書からの情報を基盤としています。

cis 著『【日めくり】cis語録 230億円トレーダーの勝つ至言』(KADOKAWA、2020年)――cisさんの名言集。日めくりカレンダー形式。

cisさんのX(旧Twitter)アカウント @cissan_9984――2014年に開設、フォロワー50万人超。本記事で引用した主なツイートには以下があります。「曜変天目銘柄100億以上持ってるんだけど、、、今日はスーパードキドキタイム」(2025年6月3日、豊田自動織機保有を示唆)、「一撃19億」(2018年2月6日、日経平均先物空売り)、「550円からこつこつ買ってたモナコインももう倍になってしまった」(2017年12月5日)、「懲りずにビットコインさらに買い増し増し!」(2017年12月16日)、「先物売り増してお散歩お祈り開始!」(2015年8月24日、チャイナショック時)、「米国の寄付き前に、すごいみんな恐怖で売るんじゃないかということで、ちょっと狙っていた」(2015年8月、チャイナショック関連)。

2ちゃんねる(5ちゃんねる)株式掲示板での過去書き込み――2000年代初頭からのcisさん本人の書き込み(コテハン:cis ◆YLErRQrAOE)。需給判断の根拠について、「日足>日中足>歩み値>出来高&板 というか全部」と発言(2009年2月21日)。

メディアの取材記録

「謎の36歳デイトレーダーの読み的中-市場パニックで利益40億円」(ブルームバーグ日本語版、2015年8月28日)――チャイナショックでの40億円利益の報道。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2015-08-28/-40-

「1000億円目指すデイトレーダーcis-コツはゲームで学んだ」(ブルームバーグ日本語版、2014年9月26日)――cisさんの目標やトレード哲学について。

“Mystery Man Moving Japan Made More Than 1 Million Trades”(Bloomberg Markets、2014年9月16日)――英語メディアでの大規模インタビュー。https://www.bloomberg.com/news/articles/2014-09-25/mystery-man-moving-japan-made-more-than-1-million-trades

「ひと月で利益8億円も すご腕投資家の稼ぎ方」(日本経済新聞電子版、2015年3月17日)――cisさんを含む個人投資家の活動を報じた記事。https://www.nikkei.com/article/DGXLASFZ12H25_S5A310C1K10100/

「日経平均株価の最高値『バブルとは思わない』 著名個人投資家cis氏」(日本経済新聞、2025年9月15日)――2025年時点でのcisさんの相場観。運用資産300億円超と報じる。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0732U0X00C25A9000000/

「豊田織機が投資家を翻弄 決算発表ラッシュの総括も」(日本経済新聞、2025年6月22日)――豊田自動織機TOBで大物投資家が損失を被った状況を報じる。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2061C0Q5A620C2000000/

「豊田自動織機、6月1日に上場廃止へ トヨタ陣営がTOB」(日本経済新聞、2026年)――豊田自動織機の最終的な上場廃止スケジュール。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD176ZV0X10C26A4000000/

「230億円稼いだ男の『100万円投資』入門 『勝率3割』でも資産は増やせる」(プレジデント、2019年1月)――本出版記念のインタビュー。仮想通貨で4〜5億円の利益、税制の問題、IPO銘柄の推奨などについて言及。https://president.jp/articles/-/27199

「資産270億円cis×利益100億円テスタ対談『5年で1200万円を50億円に増やした特殊能力とは』」(AERA DIGITAL、2024年5月30日)――テスタさんとの対談。資産270億円を公表。

「世界同時株安で37億円稼いだスーパー億り人『cis』とは何者か?」(週刊ポスト、2015年9月18日号)――チャイナショック時のcisさんの取引を報じる。

「ダイヤモンドZAi 2007年10月号」(ダイヤモンド社)――cisさんとB・N・Fさんの対談記事を掲載。

「億超えトレーダーが絶対に教えたくない アベノミクス株投資の法則」(扶桑社、2013年、ISBN: 978-4594608521)――cisさんを含む複数の億トレーダーへのインタビュー。

「伝説の投資家・cisさんが語る『株で勝つために必要な3つの鉄則』とは?」(ダイヤモンド・ザイ、2019年3月、2022年3月更新)――cisさんが語る「7つの鉄則」のうち3つを抜粋。https://diamond.jp/zai/articles/-/197252

「cisさんは、なぜ株で230億円もの資産を築けたのか?」(ダイヤモンド・ザイ、2019年3月)――https://diamond.jp/zai/articles/-/197112

豊田自動織機TOBに関する一次情報

「公開買付けの開始予定及び応募契約の締結に関するお知らせ」(株式会社豊田自動織機、2024年6月6日)――TOB価格、買付条件などの一次情報。https://www.toyota-shokki.co.jp/news/item/20240606_document.pdf

「【豊田自動織機TOB解説】cisさん株価暴落で10億円超の大損失!何が起こった?今後の展望もまとめ」(ゆきママFX株攻略、2025年6月3日)――事件の時系列、cisさんとテスタさんのツイートをまとめて検証。https://yukimama.net/fks/cistob-toyota/

「豊田自動織機の自己株TOB・買収はいつ?なぜ?今後どうなるか、公開買付代理人の証券会社も解説」(kabukiso.com)――TOBの仕組みについての解説。

「資本市場 2025.8(No. 480)」(公益財団法人 資本市場研究会)――豊田自動織機の非公開化に関する制度的・経済的考察。https://www.camri.or.jp/files/libs/2250/202509031208364612.pdf

Web記事・解説サイト

「cis (投資家) – Wikipedia」――https://ja.wikipedia.org/wiki/Cis_(投資家)。2013年時点の東京電力債40億円保有、不動産10億円購入、年率17%リターンなどの記述を参照。

「伝説の投資家・cisが語った230億円稼ぐための投資哲学」(日興フロッギー、SMBC日興証券)――https://froggy.smbcnikko.co.jp/series-name/biographies-cis/

「資産230億、cisさんの著書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』」(トウシル 楽天証券)――https://media.rakuten-sec.net/articles/-/21332

「投資家cisとは?伝説の株トレーダーの本名や資産推移を解説」(toushi-kuchikomiのブログ、2025年6月19日)――近年のcisさんの活動、任天堂・ソフトバンク・KDDIの長期保有説、豊田自動織機での損失と半導体株でのリカバリーについての二次情報。https://ameblo.jp/toushi-kuchikomi/entry-12911470367.html

「資産200億円トレーダーcis氏とは?」(kabushiki-blog.com)――cisさんの資産推移、トレード環境、使用ツールなどの詳細。トレード部屋の構成(パソコン3台、モニター7枚など)、SBI証券のHYPER先物オプションアプリの使用、楽天証券マーケットスピードの使用などを記述。https://kabushiki-blog.com/article/112297300.html

「投資家cisとは何者?トレード手法や現在の状況など調査」(toushikomon-hikaku.com、2025年8月)――https://toushikomon-hikaku.com/kuchikomi/cis/

「cis氏の投資手法をまとめ!トレンドフォロー順張りから株の極意を学ぶ!」(cashqa.com)――cisさんの監視銘柄数(60銘柄程度)、判断基準、Bloomberg取材記事の引用などを記述。https://cashqa.com/cis-shuhou/

「資産230億円!伝説の投資家cisの投資哲学」(stage.st)――https://stage.st/articles/rj6ex/

「【書評・要約】『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』cis著」(かぼたりあんの足跡、2022年2月)――著書の詳細な書評。https://kabotarian.hatenablog.com/entry/2022/02/12/184547

「『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』の書評」(calil)――著書の詳細な書評。三空さん(議員に転身した元個人トレーダー)への言及、IPOデイトレ推奨の引用などを参照。

「徒然日記20250918/cis:一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」(24hirofumi、note、2025年9月)――2025年時点での読者レビュー。https://note.com/24hirofumi/n/n5ad4da3a4136

「長期投資はcisさんもダメだったらしい」(ゆきちの株日記、2018年12月)――cisさんのソフトバンクG関連の伝聞情報を含む。https://ameblo.jp/yukichi000611/entry-12428621672.html

「資産230億!有名投資家cis株の仮想通貨・ビットコイン関連発言まとめ」(ANGO、investor-a.com)――cisさんの仮想通貨投資についての発言を時系列でまとめた記事。

「【2大トレーダー】cis氏、BNF氏の手法に共通する特徴」(川合一啓の株式トレード攻略ブログ)――cisさんとB・N・Fさんの手法比較。https://traderkawai.com/big2trader/

「cisの名言5選・人気投資家を考察」(イチログ)――cisさんの名言集と解説。https://ichiroblog.com/2020/08/28/cis/

「cis本の名言まとめ」(トレードペディア)――https://www.investor-gon.com/cis-book/

「cis – 心に残る名言集・格言」――https://meigen.keiziban-jp.com/cis

「投資家cisの現在や本名&大学は?素顔を徹底調査」(株的中.com)――https://kabu-tekicyu.com/analyst/11737

「Fujisan Trends 300万を230億に増やした無敵投資家『cis』の投資哲学」(Fujisan)――『プレジデント』2021年3月12日発売号の内容を中心にまとめた記事。https://www.fujisan.co.jp/trends/money-management/23967/

「株式投資家cisさんとは?本名は森貴義!BNF氏との関係、大学、嫁、資産も調査」(FX-iine、2023年)――https://fx-iine.com/cis-profile/

「cisの経歴は?日経平均を動かす個人投資家の資産額や投資手法を解説!」(プロフィールまとめblog、2024年5月)――https://human-profile.hatenablog.com/entry/cis

動画・その他のメディア

「フジテレビ 笑っていいとも!」(2011年11月10日放送)――cisさんの唯一のテレビ出演(顔・声を加工)。三空さん(元個人トレーダー、後に議員)とともに出演。

YouTubeチャンネル「億万株姫☆あばねちゃん」「【株板相場師列伝】最高勝ち額はいくら!?cis 驚愕の投資!!【後編】」(2025年4月19日公開)――https://www.youtube.com/watch?v=yLz3avKEgmU

「SBIマネーワールド cis座談会」――cisさんのトレード環境(パソコン3台、モニター7枚など)や情報収集方法(楽天証券マーケットスピード使用など)についての回答。

「日本最高投資家CISの投資手法①」(CIS研究家、Kindle Store)――cisさんのツイートを検証してチャート上で解説した非公式書籍。

他の投資家との比較に関する参考資料

「累計利益19億円の有名個人投資家 テスタなど 6人の投資家が出演する300名規模のセミナーを開催」(2017年)――テスタさんの経歴・実績。

「投資家・テスタさんが20年連続で勝ち続け、累計利益100億円を達成できた理由とは?」(ダイヤモンド・ザイ、2025年)――テスタさんとcisさんの比較。https://diamond.jp/zai/articles/-/1044751

「300万円から純利益100億円へ──テスタ氏と語る『リスク管理』の選択肢」(Yahoo!ファイナンス、2025年10月)――テスタさんのリスク管理についての対談。https://finance.yahoo.co.jp/feature/special/interview-bvam.html

「投資の選択2025【テスタ×片山晃】」(NewsPicks)――テスタさんと片山晃さんの対談ポッドキャスト。

「ジェイコム男BNF(本名:小手川隆)の現在とは?結婚や大学、資産推移を調査」――B・N・Fさんの経歴。https://fx-iine.com/


あとがき

ここまで、cisさんの保有銘柄について、過去20年以上の取引を時系列、テーマ別、他投資家との比較などを通じて、約12万字にわたって深掘りしてきました。

書きながら強く感じたのは、cisさんの「保有銘柄」というテーマには、彼の投資哲学のすべてが詰まっているということです。

何を買うかは、彼が何を見ているかの反映です。何を避けるかは、彼が何を恐れているかの反映です。なぜその銘柄を買ったかは、彼の思考プロセスそのものです。なぜその銘柄から撤退したかは、彼の規律の表れです。

このように、保有銘柄を丹念に追っていくだけで、cisさんという投資家の全体像が立体的に浮かび上がってきます。

そしてもうひとつ、強く感じたのは、cisさんがいかに「進化を続ける投資家」かということです。

300万円スタートの大学生時代から、46歳の現在まで、cisさんは戦略を進化させ続けてきました。みずほ銀行株での失敗から短期トレードへの転換、ジェイコム事件での飛躍、ライブドアショックでの試練と大型株シフト、東京電力債での逆張り、ビットコインへの参入、豊田自動織機での失敗と半導体株でのリカバー――それぞれの局面で、彼は前と同じことを繰り返さず、常に新しい挑戦をしています。

これが、彼が長く第一線で活躍し続けている理由なのだと思います。

最後に、読者の皆様にお伝えしたいことがあります。

この記事をここまで読んでくださった方は、おそらくcisさんに強い関心と尊敬の念を持っておられる方だと思います。私も同じです。書きながら、cisさんという人物の凄さを、改めて感じていました。

しかし、繰り返しお伝えしたいのは、「cisさんを真似てはいけない」ということです。

cisさんの哲学を学び、思考プロセスを理解し、自分の投資に活かす――ここまでは、誰でもやって良いことです。むしろ、これらの知恵を学ばないのはもったいないです。

しかし、「cisさんと同じ銘柄を、同じタイミングで買う」「cisさんと同じレバレッジを効かせる」「cisさんと同じ取引時間軸で勝負する」――これらをやってはいけません。なぜなら、私たちはcisさんではないからです。

cisさんの経験、人脈、情報網、判断速度、心理的強さ、資金規模――これらをすべて持たない私たちが、彼の手法だけを真似ようとすれば、必ず痛い目にあいます。

代わりにすべきことは、彼の思想を「自分自身のスタイル」に翻訳することです。

自分の資金規模に合った銘柄選びをする。自分の時間軸に合った取引をする。自分の性格に合ったリスク管理をする。そして、自分の経験から学び続ける――これが、本当の意味で「cisから学ぶ」ことだと、私は信じています。

長い記事をここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

あなたの投資人生が、cisさんのように――いや、cisさんとは違うかもしれない、あなた自身のかけがえのない物語として――豊かなものになることを、心から願っています。

 

※本記事は教育・情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。記事内の情報は、執筆時点(2026年5月)で確認できた一次情報および信頼性の高い二次情報に基づいていますが、cisさん本人の発言や行動を完全に把握しているわけではないため、推察を含む箇所があります。その点はご了承ください。

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