日本の株式市場には、機関投資家でもプロでもないのに、数十億〜数百億円もの資産を株式運用だけで築き上げた「個人投資家」たちがいる。彼らはたいてい高学歴ではなく、最初の元手も100万円〜数百万円程度。いわば「普通のスタートライン」から、自分の頭ひとつで巨額の資産を生み出した人たちだ。
私はこのテーマを語るとき、いつもひとつの問いから始めたいと思っている。「この人たちは天才なのか、それとも仕組みを発見した人なのか?」と。両方に違いない、というのが結論なのだが、その配合比率は人によって違う。今回は日本の代表的な個人投資家たちを、私なりの分類と視点で立体的に描いてみたい。長くなるので、お茶でも淹れてゆっくり読んでいただきたい。
大きく分けると4つの「流派」がある
まず最初に、私の独自分類を提示しておきたい。日本の著名個人投資家は、ざっくり次の4つの流派に分けられる。
第一流派は「短期集中型」。秒〜日単位の取引で資産を一気に膨らませるトレーダー系。BNF、cis、テスタの初期がここにあたる。
第二流派は「中小型集中投資型」。数銘柄に大きく張って、数年かけて10倍株・100倍株を狙うスタイル。片山晃、五味大輔がこの代表格。
第三流派は「バリュー・優待型」。地味で割安な銘柄をコツコツ拾い、配当・優待で生活コストを下げ、複利で資産を増やす。かぶ1000、桐谷広人、御発注、ようこりんなど。
第四流派は「超分散・大株主型」。100銘柄超に薄く広く張って、市場全体のミスプライシングを刈り取る。吉田知広、内藤征吾、そして法人だが光通信もここに近い。
この4分類で日本の個人投資家のほぼ全員がマッピングできる。そして面白いのは、長期で生き残っているスター投資家ほど、流派をまたいで進化していくということだ。これは後で具体例とともに見ていく。
BNF(小手川隆)──伝説の起点となった「ジェイコム男」
最初に語らなければならないのは、やはりBNF氏だ。本名・小手川隆。日本の個人投資家ブームの「起点」を作った人物である。
複数のメディアの記録によると、BNF氏は2000年、大学時代にアルバイトで貯めた160万円を元に株式投資を始め、知識も経験もなしにスタートしたため、1日中チャートを見続け株の動きや法則性から独自の理論を構築していった。彼の名を全国区にしたのは2005年のジェイコム株誤発注事件。みずほ証券の発注ミスで暴落したジェイコム株を瞬時に大量買いし、わずか10分程度で約20億円の利益を得たとされる。当時の彼はまだ20代後半だ。
私がBNF氏を語るときに強調したいのは、彼の本質は「天才の即興」ではなく「徹底した型の積み上げ」だったという点である。チャートを見続け、相場の癖を体に刻み込み、自分なりのルールを構築してから初めて勝負に出る。ジェイコムの一発も偶然の幸運ではなく、あの瞬間に動ける態勢を「事前に」整えていたから取れた利益なのだ。これは個人投資家の最大の教訓だと思う。チャンスは突然来るが、準備していなければ取れない。
ピーク時の資産は200億円超とされる。秋葉原のビルを買ったエピソードは伝説化している。一方で、資金が大きくなったあとはスキャルピングから卒業し、長期投資にシフトしているのも興味深い。これは後述するテスタ氏や片山氏にも共通する変化で、私はこれを「資金規模に応じた手法の進化」と呼んでいる。
cis(森貴義)──マーケット全体を動かす男
BNF氏と並んで語られるのがcis氏だ。本名・森貴義。彼もジェイコム事件で有名になった一人だが、性格も投資スタイルもBNF氏とは大きく異なる。SNSで取引を実況するなど、メディア露出を厭わない開放的なキャラクターだ。
cis氏のスタイルを一言で表すと「順張りの極致」である。下がっているものは買わない、上がっているものに乗る。「人の行く裏に道あり花の山」という相場の格言を真っ向から否定するような戦法を貫いている。日経平均先物を一人で動かすと言われるほどの建玉で、リーマンショック級の世界同時株安局面でも巨額の利益を上げたとされる。
私の独自視点で言えば、cis氏は「日本市場における順張り戦略の象徴的な実証」だ。アカデミックな世界では「モメンタム効果」と呼ばれる、上昇している銘柄が短中期的にさらに上昇しやすいという現象がある。cis氏はこれを誰よりも徹底的に体現している。日本のスター投資家には逆張り・バリュー派が多い中で、純粋なモメンタム戦略でトップに立ったという意味で、cis氏は唯一無二である。
著書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』というタイトルそのものが、彼のスタイルを的確に表現している。ピーク時の資産は230億円超と言われる。
五味大輔──「中学生から始めた」異色のマラソンランナー
ここから流派が変わる。五味大輔氏は中学生のころから株式投資を始め、現在まで一貫して中長期の集中投資を続けるカリスマだ。
複数の記事によれば、五味氏は中学時代から株式投資を始め、学生時代に100万円の投資金から6,000万円稼いだ実績を持つ。基本信用取引は行わず、現物で集中投資し、ミクシィやガンホー株で資産を大きく増やし、2015年には資産200億円を超え、2016年11月には創薬バイオベンチャーそーせいグループの筆頭株主になったことで一躍有名になった。
五味氏の凄みは、本業を持つ「兼業投資家」としてここまで資産を築いた点である。彼は一般の会社員をしながら投資を行っており、一日に投資で使う時間はたった10〜20分程度。日常生活を営むなかで投資する企業を見つけることが多く、実際に知っている会社や自分で調べた会社に投資するのが成功の秘訣だと語っている。
私が五味氏に学ぶべきだと感じるのは、二つの点である。
第一に、「集中投資の覚悟」。彼は「プロとは戦うな」を信条とし、巨大ファンドが手を出せない中小型銘柄に大金を一気に投じる。これは前回の記事でも触れたが、個人投資家が機関投資家に勝てる数少ない領域なのだ。
第二に、「時間軸の長さ」。日に10〜20分しか見ないということは、デイリーのノイズを完全に無視しているということだ。これは大半の個人投資家が真似できない胆力である。私たちは決算前の1週間でチャートを何百回も見てしまう。五味氏のスタイルは、その対極にある。
そーせいグループへの集中投資は、一時は数百億円規模の含み益を生んだ。後に株価が下落して話題になったが、それでもなお彼が日本の個人投資家トップクラスであることは変わらない。
片山晃(五月)──ネトゲ廃人から156億円への冒険
私が個人的に最も「物語性が強い」と感じる投資家が、片山晃氏(ハンドルネーム「五月」)だ。
片山晃氏は高校卒業後ゲーム関連の専門学校に入学するが1年で中退、その後はほぼ引きこもり状態となり4年ほどオンラインゲームに没頭した。やり始めたらとことん突き詰める性格でゲームの世界で「神」とまで呼ばれる存在になったが、22歳のとき周りの仲間たちが大学を卒業したのを機に「このままじゃダメだ」と考え、たまたま見た株式投資のテレビドラマ「ビッグマネー」をきっかけに2004年に株式投資を開始したという。
スタート時の元手は深夜のゲームセンターのアルバイトで稼いだ65万円。これが2010年代に156億円規模まで膨らんだ。資金の倍率にして約2,000倍。65万円を元手に始めた株式投資で、7年半で2,000倍近いパフォーマンスを記録したと記録されている。
片山氏のスタイルの核心は「中小型株への集中投資」だ。彼自身が語っているのは、「過去に大相場を作った銘柄にはどのような特徴があり、合理的に考えていつ売買すればいいかを常日頃から研究する」というアプローチ。医療機器輸入商社の日本ライフラインに資産の大半を投じた経緯では、過去にファンコミュニケーションズに投資した際、確実にあがる見込みがあったのに7%しか投資しなかった自分を責めた経験から、10倍になるチャンスを秘めた銘柄が来たときには資産を全額突っ込むと決めていたという逸話が残っている。
私の独自視点を述べると、片山氏は日本の個人投資家史において「機関投資家への完全プロ転向を果たした最初の人」として歴史に名を残すと思う。個人投資家としての運用に区切りをつけ、新たなチャレンジの場として日本でもトップクラスの成績を誇る「ひふみ投信」の運用チームに加入し、機関投資家としてマーケットと対峙する道を選んだ。これは衝撃的な事件だった。なぜなら、それまで日本では「個人投資家として成功した人がプロに行く」という流れが事実上存在しなかったからである。
片山氏のキャリアパスは、後続の個人投資家たちに「自分の腕を磨けば機関投資家にもなれる」という新しい目標を提示した。現在は株式会社レッドマジックの代表としてベンチャー投資も手掛けている。
テスタ──20年連続プラスの「ミスター・サステナビリティ」
そして、現在おそらく最も影響力のある個人投資家がテスタ氏だ。
テスタ氏は兵庫県生まれ、2005年に株式投資の世界に飛び込み専業トレーダーに。初期はスキャルピング(超短期取引)を中心としたデイトレードを行い、2016年からは中長期投資などを中心にしている。幾多の市場暴落で退場するトレーダーが続出する中、毎年利益を上げ続け、2021年8月に総利益50億円、2024年2月には同100億円を達成した。2014年からは全国の児童養護施設への寄附を継続的に行っている。
テスタ氏が傑出しているのは、絶対金額の大きさよりも「20年連続プラス」という記録のほうである。2024年は投資家として20年目という節目で、日経平均株価がバブル後の最高値を更新する歴史的な1年に、2024年2月に累計利益が100億円に到達。日本株の上昇を見越して、2023年末に日経平均先物を大量に買っていたのが大きく、単年利益のプラスも20年連続で継続している。
20年間一度も年単位でマイナスを出していない、というのは、リーマンショック・東日本大震災・コロナショック・利上げショックなど、すべての地獄を生き残ってきたということだ。これは天才性以上に「規律性」の証明だ。テスタ氏自身が、「投資初心者のなかには、1つの手法があれば勝ち続けられると思っている人がいるようだが、そうではない。私は100種類以上の投資手法を持っていると思う。その時その時の相場に適した手法を選んで取引することが大切」と語っている。
私はこの「100種類以上の手法」発言に、テスタ氏の本質が凝縮されていると思う。世の中の本やブログは「これさえやれば勝てる」という単一の手法を売ろうとする。しかし実際には、相場はサイクルが変わると、それまで勝てた手法が一瞬で負け始める。テスタ氏は、複数の手法を引き出しに持ち、相場局面に応じて出し入れすることで20年生き延びてきた。これが「サステナブル投資家」の本当の姿である。
もう一つテスタ氏で特筆すべきは、彼が2024年2月に累計利益が100億円に達したのを機に、日々の投資成績をSNSなどで公開するのをやめた点だ。理由は、毎年プラスというのが足かせになり、より大胆なチャレンジができなくなってきたから、というもの。「100億は1000億になりません。株式投資は複利で増やしていくのが大きな魅力。100億が110億、120億、130億と増えていくやり方は、今の僕にとってそれほど魅力を感じない」と語っている。これはものすごい発言だ。100億円を持つ人が、それを単利でなく複利で10倍にしようと本気で考えている。スター投資家が長期で何を考えているかが垣間見える、貴重な肉声である。
そしてテスタ氏のもう一つの顔が、寄付家としての存在だ。2014年から全国の児童養護施設への寄附を続けている。XのフォロワーはXのフォロワー数は66万人超に達し、影響力は専業投資家の枠を超えている。
かぶ1000──バリュー投資の伝道師
ここから少し「地味系」のスター投資家を紹介していきたい。バリュー投資の代表格として知られるのが、かぶ1000氏だ。
中学生時代に祖母から贈られた100万円を元手に株式投資を始め、現在は資産4億円超とされる。彼の投資スタイルは典型的なネットネット株投資──企業が保有する正味流動資産より時価総額が小さい、極端に割安な銘柄を発掘するアプローチ──である。これはベンジャミン・グレアムの古典的バリュー投資の系譜にあたる。
私がかぶ1000氏に注目するのは、彼が「Twitter以前」と「Twitter以後」をつなぐ重要な存在だからだ。バリュー投資という地味なスタイルは、日経新聞や雑誌では取り上げられにくい。しかしSNSの時代になって、彼のような知識をシェアするバリュー投資家が個人投資家に新しい教科書を提供した。複数の著作があり、四季報の読み方や財務諸表の分析手法を分かりやすく伝えている。
地味だがしぶといスタイル。テスタ氏や片山氏のような派手なリターンはないが、20年・30年単位で見ればおそらく相場全体を上回る成績を残し続けるタイプだろう。これは個人投資家の大多数にとって、最も再現性の高いスタイルだと私は思っている。
桐谷広人──株主優待の生ける伝説
そして、日本の個人投資家を語るうえで絶対に外せないのが桐谷広人氏である。元プロ棋士という異色の経歴を持ち、テレビ番組「月曜から夜ふかし」で全国的に知られるようになった。
桐谷氏の投資スタイルは「優待生活」。1000銘柄超を保有し、配当と株主優待だけで生活費をまかなっている。買い物はすべて優待券、現金はほとんど使わない、という極端なライフスタイルがメディアで紹介され、優待ブームの火付け役になった。
桐谷氏について私が独自視点で強調したいのは、彼が「投資の楽しさ」を世に広めた最大の功労者だということだ。BNFやcisが「株式投資=ハードな勝負の世界」というイメージを広めたとすれば、桐谷氏は「株式投資=楽しいライフスタイルツール」という対極のイメージを広めた。この両極があったからこそ、日本では多様な個人投資家が育ったのだと思う。
実は数字的に見ても桐谷氏のリターンは悪くない。優待を金額換算すれば、彼のポートフォリオの実質配当利回りはかなり高い。しかも自転車で全国を駆け回って優待を消費する生活は、健康増進にもつながっている。投資が人生の質まで上げる──これを体現した人物として、桐谷氏は唯一無二である。
影で動く「多株主」たち──内藤征吾、吉田知広ら
ここまではメディア露出のあるスター投資家を中心に紹介してきたが、日本の市場で実は最も大きな影響力を持つのは、表に出ない「多株主」たちだ。
マネーポストWEBの記事によれば、個人別に株の保有企業数をカウントした「多株主ランキング」では、保有企業数22社でトップになったのは個人投資家・内藤征吾氏。1人で10社以上の大株主となった人のほとんどは、巨額の資金を長期投資する個人投資家で、内藤氏は兜町では知る人ぞ知る投資家。彼が株を大量保有する企業は信頼できると評判になり「内藤銘柄」として投資基準のひとつになっているという。
前回詳しく取り上げた吉田知広氏(1986年生まれ、137銘柄保有)、そして法人としての光通信(315銘柄保有)も、この「ステルス多株主」流派に属する。
私はこの流派を「日本市場の縁の下の力持ち」と位置づけている。彼らは派手に語らないし書籍も出さない。しかし、PBR1倍割れで放置されていた中小型バリュー株に長期資金を供給し続け、東証のPBR改善要請が出る前から日本企業の資本効率改善を黙々と促してきた。アクティビズムを叫ばないアクティビストたちである。
流派をまたぐ「進化のパターン」
ここまで個別に見てきたが、改めて全体を俯瞰すると、日本のスター個人投資家には共通する「進化パターン」がある。
第一段階は「短期トレード期」。資金が小さい段階では、デイトレ・スキャルピングで回転率を上げないと資産が増えない。BNF、cis、テスタ、片山氏も初期はみなここにいた。
第二段階は「中期スイング・集中投資期」。資金が数億円規模になると、デイトレでは利益を取りにくくなり、数週間〜数ヶ月のスイングや個別銘柄への集中投資にシフトする。テスタ氏が2016年から、片山氏が2008年のリーマン後から、それぞれこの段階に移っている。
第三段階は「長期分散・配当期」。資金が数十億円規模に達すると、もはや短期で動かす意味がなくなり、配当・優待や米国株などへの分散投資に向かう。テスタ氏のFIRE口座、片山氏のベンチャー投資、五味氏の長期保有スタイルがこれだ。
そして第四段階として「機関化または社会貢献期」がある。片山氏のひふみ投信入りはまさに前者の代表例。テスタ氏の児童養護施設寄付は後者だ。一定の資産規模を超えると、お金を増やすこと自体への興味が薄れ、社会的な役割や次の世代への還元に関心が移っていく。
私はこの4段階モデルを、「個人投資家成熟曲線」と呼んでいる。これに気づくと、自分が今どの段階にいて、次に何を目指すべきかの見通しが立つ。
共通点に見る「成功する個人投資家の遺伝子」
最後に、これらの成功者に共通する特徴を、私なりに5点に整理しておきたい。
第一に、「異常な集中力」。BNFは1日中チャートを見続けた。片山晃氏はネトゲでも「神」と呼ばれた。五味氏は中学生から株一筋。テスタ氏は20年連続毎日相場を見ている。普通の人が3ヶ月で飽きることを、何十年も飽きずに続けられる遺伝子を彼らは持っている。
第二に、「失敗を学習に変える力」。片山氏のファンコミュニケーションズの後悔、テスタ氏の「100種類以上の手法」発言は、すべて過去の失敗からの学習の集積だ。失敗を「思い出したくない記憶」にする人と、「データ」として処理する人の差は決定的に大きい。
第三に、「自分のスタイルへの誠実さ」。cisは順張り、五味は長期、桐谷は優待。彼らは自分のスタイルから一切ぶれない。「他人がもっと儲かりそうなスタイルでやっているからって、真似しない」という自己同一性が、長期の生存率を決める。
第四に、「規模に応じた進化」。資金が増えても同じ手法を続けると、いずれ自分のリターンを自分で潰す(自分の買いで株価が上がってしまうなど)。スター投資家は資金規模に応じて手法を変えていく柔軟性を持っている。
第五に、これは最後で最も重要な点だが、「市場へのリスペクト」。彼らは誰一人として「市場は簡単に勝てる」とは言わない。常に謙虚で、いつでも負ける可能性を意識している。テスタ氏が利益のピークから7億円減らしても「特に気にしない、今年の前半は実力以上の出来だった」と語ったコメントは、この姿勢を象徴している。
結びに──彼らから個人投資家が学ぶべきこと
長くなったので、最後に私の独自視点でのメッセージを置いて締めくくりたい。
日本の著名個人投資家の物語は、表面的には「お金を増やした成功譚」だ。しかし丁寧に読めば、彼らが本当に手に入れたのはお金そのものではなく、「自分の頭で考え、自分の責任で決め、結果を引き受ける」という生き方だ。これは現代社会で最も希少な能力である。
彼らの全員に共通する、もうひとつの隠れた共通点を最後にお伝えしておきたい。それは「資産が増えても暮らしぶりが地味」だということ。テスタ氏は北海道で兼業のように静かに暮らしている。桐谷氏は優待の自転車生活。五味氏は会社員を続けている。吉田知広氏に至ってはメディア露出ゼロ。BNFは秋葉原のビルを買った以外、派手な消費をしない。
これは偶然ではない。お金を派手に使う人は、心理的にお金に振り回される。投資家が長期で勝ち続けるには、お金を「目的」ではなく「ツール」として扱える距離感が必要だ。彼らはみんな、その距離感を保っている。
我々個人投資家がスター投資家から学ぶべきは、彼らの銘柄でも手法でもない。彼らの「お金との距離感」なのだ。それを自分のものにできれば、絶対金額は彼らに及ばなくても、自分なりに豊かで持続可能な投資家人生を歩める。私はそう信じているし、彼らの背中を見続けながら、これからも日本の個人投資家たちを丁寧に観察していきたいと思う。
次に決算シーズンが来たら、ぜひ自分でも有価証券報告書の大株主欄を眺めてみてほしい。そこには、本記事に登場した名前がきっと並んでいる。彼らがいま何を見ているのか、その視線をトレースすることは、私たち自身の投資レンズを磨く何よりの教材になるはずだ。

