はじめに——「移動」にお金を使っていないか
日常生活で「移動」にいくら使っているか。通勤の交通費は定期券で賄われる(または会社負担)として、それ以外の移動。スーパーに行くのにバスに乗る(往復440円)。ドラッグストアに行くのに自転車で15分(自転車の維持費を含めると年間数千円)。図書館に行くのに電車で2駅(往復340円)。病院に行くのにタクシー(往復2000円)。
これらの「日常の移動コスト」を、月単位で集計してみたことはあるだろうか。月に2000〜5000円、人によっては10000円以上が「移動」に消えている。この移動コストを「ゼロ」に近づける方法がある。「徒歩圏内生活」の設計だ。
「徒歩圏内生活」とは、日常生活に必要な施設(スーパー、ドラッグストア、コンビニ、図書館、病院、銀行、郵便局、公園)がすべて「徒歩15分以内」にある生活を指す。徒歩なら移動コストはゼロ。ゼロは最強の節約だ。
「徒歩圏内チェックリスト」——自宅から徒歩15分以内に何があるか
まず現在の住居から「徒歩15分以内」に何があるかをチェックする。Googleマップを開いて、自宅を中心に「半径1km」の円を描く(徒歩15分≒約1km)。円の中に以下の施設があるか。
チェック1。スーパー(食材の買い物)。チェック2。コンビニ(急な買い物、支払い)。チェック3。ドラッグストア(日用品、市販薬)。チェック4。100均(雑貨、日用品)。チェック5。郵便局またはATM。チェック6。図書館または図書館の分室。チェック7。内科クリニック(かかりつけ医候補)。チェック8。歯科医院。チェック9。公園(散歩、運動)。チェック10。駅(通勤用)。
10項目中8項目以上が「徒歩15分以内にある」なら、あなたの住居は「徒歩圏内生活」に適している。移動コストを大幅に削減できる。6〜7項目なら「ほぼ適している」。5項目以下なら「移動にコストがかかる立地」であり、引っ越しの際に「徒歩圏内の充実度」を優先条件に入れるべきだ。
「徒歩圏内生活」の経済効果
移動コストの削減。月のバス・電車代(通勤以外)が2000円→0円。タクシー代(月1回の通院)が2000円→0円。自転車の維持費(年間5000円÷12ヶ月≒月400円)→0円。合計月4400円の削減。年間52800円。
時間コストの削減。バスの待ち時間+乗車時間が月に合計3時間→徒歩なら実質の移動時間は同じかやや長いが、「待ち時間」がゼロ。バスの遅延・運休に振り回されない。自分のペースで移動できる。
健康効果。徒歩での移動が「運動」になる。スーパーまで徒歩15分×往復=30分のウォーキング。週に3回スーパーに行けば、週90分のウォーキング。ジム代(月5000〜10000円)が不要。「移動=運動」の二重効果。
「徒歩圏内の最適ルート」を設計する
日常の用事を「1回の外出でまとめて済ませる」ルートを設計する。例えば「スーパーに行く途中にドラッグストアがあり、帰りに郵便局に寄れる」動線。1回の外出で3つの用事を済ませれば、外出回数が3分の1に。外出回数が減れば、「ついで買い」の機会も減る。
ルート設計の例。自宅→(徒歩5分)→ドラッグストア(日用品購入)→(徒歩3分)→スーパー(食材購入)→(徒歩7分)→自宅。合計徒歩15分。1回の外出で2つの買い物が完了。「ドラッグストアだけのために外出する」「スーパーだけのために外出する」をやめれば、外出回数が半減。外出回数が半減すれば、「ついで買い」の誘惑も半減。
「引っ越し」で徒歩圏内生活を実現する
現在の住居が「徒歩圏内生活」に適していない場合、引っ越しの際に「立地」を最優先条件にする。家賃よりも「徒歩圏内の施設の充実度」を重視する。
家賃4万円で徒歩圏内にスーパーがない物件 vs 家賃4.5万円で徒歩5分にスーパーがある物件。後者のほうが月5000円高いが、移動コスト(バス代月2000円)が不要になり、ついで買いの削減で月1000円浮き、健康効果でジム代(月5000円)が不要に。差し引きで後者のほうが月3000〜3500円得。
「家賃が安い」だけで物件を選ぶのは危険。「家賃+移動コスト+ついで買いリスク」のトータルコストで比較する。トータルで安いほうが「本当に安い物件」だ。
「徒歩圏内」で手に入らないものへの対処
徒歩圏内にないもの。家電量販店(大型家電の購入)→年に1〜2回。ネット通販で代替可能。ホームセンター→年に数回。ネット通販で代替可能。大型書店→図書館+ネット通販で代替可能。専門医療機関(総合病院等)→かかりつけ医からの紹介で年に0〜数回。
「年に数回しか行かない場所」のために「毎日の移動コスト」を増やすのは非合理。年に数回の大きな買い物はネット通販で対応し、日常の買い物は「徒歩圏内」で完結させる。「95%の日常は徒歩で、5%の非日常はネットで」。この比率が最もコスパが良い。
まとめ——「歩ける距離に必要なものがある」幸福
「徒歩圏内生活」は「不便な生活」ではない。むしろ「最も便利な生活」だ。電車の時刻表に縛られない。バスの遅延に振り回されない。自分のペースで歩いて、必要なものを手に入れて、歩いて帰る。シンプルで自由な生活。
移動コスト年間52800円の節約。NISAに月4400円追加で20年運用すれば約181万円。「歩いて暮らす」だけで20年後に181万円。歩くことは0円の投資であり、0円の運動であり、0円の節約だ。0円でこれだけのリターンが得られる投資は他にない。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

