片山晃氏の保有銘柄についての分析

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最新の公開情報をもとに、片山晃さんの保有銘柄を深く分析していきます。一次情報として、EDINETに提出された大量保有報告書、上場各社の有価証券報告書に記載される大株主リスト、そして直近2026年2月のAIメカテックへの大量保有報告などを丹念に追って、ご本人の思考プロセスを再構成してみました。

はじめに 公開情報から見える保有銘柄の輪郭

最初に重要な前提を共有させてください。私たちが片山さんの保有銘柄として知ることができるのは、ごく限られた範囲だけです。具体的には次の三つのルートからしか、保有実態は外部に漏れてきません。一つは金融商品取引法に基づく大量保有報告書(いわゆる5パーセントルール)で、保有割合が発行済株式数の5パーセントを超えたとき、または既報告者の保有割合が1パーセント以上増減したときに提出義務が発生します。二つ目は上場企業が四半期ごとに公表する有価証券報告書の大株主上位10社欄で、ここに名前が載って初めて、5パーセント未満でも個人投資家の保有が市場に知られます。三つ目は本人の発言、つまりインタビューやnote記事、X(旧Twitter)での自発的な開示です。

バフェット・コードのデータベースによると、片山さんは現在25銘柄を保有していますが、これも上場各社の有価証券報告書から拾えるものに限られます。個人投資家の保有銘柄のうち、各社で上位10位以内に入らないものは、私たちには見えないのです。さらに重要なのは、片山さんが運営する株式会社レッドマジック名義での保有や、ハクレイファーム名義での保有、共同保有者を介した保有なども別建てになり得るという点です。本人個人の名前で開示されていない保有が水面下にどれくらいあるか、私たちには知る術がありません。

この限界を踏まえた上で、見える範囲の情報を可能な限り深く読み解いていきます。

2025年9月時点の有価証券報告書から見える上位保有銘柄

IRBANKがEDINETから集計した最新の公開情報を整理すると、2025年9月期決算企業(3月期決算の上期)の有価証券報告書に大株主として登場している銘柄は次のとおりです。

4022 ラサ工業 39万株 5.08パーセント保有 4461 第一工業製薬 52万株 4.94パーセント保有 5989 エイチワン 70万株 2.49パーセント保有 6638 ミマキエンジニアリング 51万株 1.77パーセント保有

これに6月期決算企業として、4019 スタメン 12万株 1.47パーセント、151A ダイブ 11万株 1.41パーセントが加わります。また12月期決算企業として378A ヒット 8万300株 1.13パーセント、そして3月期決算企業として7163 住信SBIネット銀行 156万株 1.03パーセント保有という構成です。

さらに2026年2月2日に提出された大量保有報告書で、6227 AIメカテックに41万600株(6.53パーセント)を保有していることが判明しました。これは決算前の駆け込み購入で、後ほど詳しく見ます。

これら9銘柄が、2026年2月時点で公的に確認できる片山さんの主力保有銘柄ということになります。25銘柄保有しているはずなので、まだ16銘柄ほどは「水面下」にあるわけですが、見えている9銘柄だけでもセクターの幅広さに驚かされます。化学(ラサ工業、第一工業製薬)、自動車部品(エイチワン)、機械(ミマキエンジニアリング、AIメカテック)、SaaS(スタメン)、観光人材(ダイブ)、屋外広告(ヒット)、ネット銀行(住信SBIネット銀行)。これは「中小型成長株への集中投資家」というイメージから見える射程の広さです。

それでは個別銘柄を順に深掘りしていきます。

第一工業製薬(4461)― 「経営者を見て買う」の典型例

片山さんが現在最も期待している銘柄、として複数のメディアで紹介されているのが第一工業製薬です。創業1909年、京都に本社を置く老舗の工業薬剤メーカーで、凝集剤、合成糊料といった工業用薬剤で国内首位の地位を持ちます。

片山さんが買い始めたのは2023年頃とされ、その後一貫してポジションを積み上げてきました。2025年9月時点で52万株、保有割合4.94パーセント。5パーセントを超えなかったのは、大量保有報告書の提出を回避するためかどうかはわかりませんが、ぎりぎり5パーセントを切る水準で持ち続けている点が興味深いところです。5パーセントを超えると以後の売買がすべて開示される面倒があるので、意図的に4.9パーセント台で止めている可能性は十分あります。

第一工業製薬を分析した「はたらく投資家」のnoteには、片山さんがこの企業に投資した背景として、山路社長率いる経営陣への信頼と、同社が描く2030年ビジョンへの高い評価がある、と指摘されています。これは本人の発言ではなく外部分析ですが、片山さんが「社長を見ろ!」と豪語する投資家であることを踏まえると、説得力のある見立てです。

注目すべきは、2025年後半に第一工業製薬の株価が約半年で2倍以上に上昇したという事実です。化学素材メーカーは一般にPER10倍前後で取引されることが多い業界で、第一工業製薬は半導体材料やリチウム電池材料といった成長分野へのシフトを進めており、市場の評価が「総合化学」から「成長素材株」へとラベルを貼り替えつつあります。まさに第5章で見たPER拡大(マルチプル拡大)が現実に進行している事例です。

片山さんがこの銘柄で実現しつつあるのは、EPSの伸びとPERの拡大の同時進行。住信SBIネット銀行が「銀行ではなくテック企業」へとラベルを貼り替えたのと同じ構図が、化学業界で起きていると言えます。

ラサ工業(4022)― 5パーセント超えで開示された化学銘柄

ラサ工業は片山さん保有銘柄の中で唯一、2025年時点で5パーセントの大量保有報告書ラインを超えています。39万株、5.08パーセント保有。同じ化学セクターでの2銘柄保有という意味で、第一工業製薬と並べて見るべき銘柄です。

ラサ工業は工業薬品、機能性化学品、機械装置などを手がける老舗の総合化学メーカーで、リン酸化合物では国内有数のシェアを持ちます。半導体向けリン酸関連製品や、エッチング用の特殊薬品が成長分野になっており、ここでもAIブームによる半導体需要の追い風を受けています。

第一工業製薬とラサ工業を並べて保有しているということは、片山さんが「化学素材メーカーがAI・半導体ブームの恩恵を受ける」という大きなテーマを持っていることを強く示唆します。これは半導体製造装置(AIメカテック、後述)への投資とも整合的で、片山さんの「AI関連銘柄を縦に深く張る」スタイルが垣間見えます。

エイチワン(5989)― 自動車部品の構造改革ストーリー

5989エイチワンは、本田技研工業の主要サプライヤーで、自動車車体フレーム部品(プレス・溶接)を手がけます。片山さんは2025年9月時点で70万株、2.49パーセント保有。

自動車部品メーカーは、EVシフトによる業界構造変化、コスト圧縮要求、海外生産シフトといった逆風の中にあります。一見、片山さんの「成長株投資」スタイルとは違うように見えるのですが、ここを読み解くのが面白いところです。

おそらく片山さんが見ているのは、長らくPBR1倍を大きく割っていた自動車部品メーカーの再評価、構造改革、自己株買い、配当政策の見直しといった、東証要請を受けた資本効率改善ストーリーではないかと推察します。これは「成長による株価上昇」ではなく、「割安解消による株価上昇」のパターンで、片山さんのバリュー側面が出ている保有と言えます。

エイチワンの直近の数字を見ると、業績は控えめな伸びですが、株主還元の強化が進んでおり、市場が一段とラベルを貼り替えれば株価2倍、3倍も視野に入る、というのが片山さんの読みかもしれません。

ミマキエンジニアリング(6638)― 産業用インクジェットのニッチトップ

6638ミマキエンジニアリングは、産業用インクジェットプリンタの世界的メーカーで、テキスタイル印刷、サインディスプレイ、3Dプリント、デコラティブ印刷など、ニッチ市場で世界トップシェアを持ちます。片山さんは2025年9月時点で51万株、1.77パーセント保有。

注目すべきは「ニッチトップ」という性質です。片山さんの過去の名銘柄である日本ライフライン(医療機器)、パピレス(電子書籍)、HEROZ(将棋AI)、住信SBIネット銀行(ネット銀行)など、いずれも自分の領域でナンバーワンか、それに準ずるポジションを取った企業でした。ミマキも同じパターンです。

ミマキ自身は派手な成長企業ではありませんが、世界中の印刷業界デジタル化、サイネージ需要拡大、ファストファッション業界の小ロット印刷需要などを取り込んでおり、地味だが着実に売上が伸びる構造です。片山さんが見ているのは、産業用プリンタという見えにくい領域での世界シェア、そして為替メリットなど複合的なドライバーではないかと推察します。

スタメン(4019)― グロース銘柄への分散

スタメンは社内エンゲージメントSaaSを提供する企業で、片山さんは2025年6月時点で12万株、1.47パーセント保有。

これはSaaS銘柄の中では小型で、片山さんの2025年保有銘柄の中ではかなりグロース寄りの位置付けです。SaaS銘柄は2022年から2024年にかけて長く厳しい調整局面を経験しており、片山さんが指摘する「SaaSの死」と表現される状況が続きました。それでもスタメンを保有しているということは、SaaSセクター全体の中でも個別企業の事業の質を見極めて選別している、ということでしょう。

ダイブ(151A)― インバウンド・観光関連のIPO銘柄

ダイブはリゾートバイト特化の人材派遣業を主軸とし、グランピング施設運営の地方創生事業も展開する企業です。2024年3月上場のグロース銘柄で、片山さんは2025年6月時点で11万株、1.41パーセント保有。

ダイブの事業の核となっているのは、星野リゾートをはじめとする観光施設への人材派遣です。インバウンド需要の急回復、観光施設の人手不足、地方創生といったメガトレンドを、人材ビジネスという形で取り込んでいる構造です。

ここで重要なのは、片山さんが「観光関連にインバウンド需要が再来する」という単純な見立てだけでなく、「観光地に行ける人材は限られているので人材派遣が決定的なボトルネックになる」というワンクッション置いた読みをしている可能性です。実需が再来しても、人材がいなければサービスが提供できない。だから人材派遣会社こそが、観光ブームの真の受益者になる――という読み筋です。

ヒット(378A)― 屋外広告という地味な高利益率ビジネス

ヒットは2025年7月に上場したばかりのグロース銘柄で、屋外広告媒体の企画・運営を手がけます。デジタルサイネージとアナログ看板を保有・運営し、繁華街やロードサイドの好立地に61媒体139面を抱えています。連結営業利益率は約33.9パーセントという高水準で、参入障壁も決して低くありません。

片山さんは2025年12月時点で8万300株、1.13パーセント保有。上場直後のIPO銘柄に早期に乗っている例です。

注目すべきは、ヒットの事業が「ネット広告と逆相関する可能性がある」という点です。生成AIの普及によりGoogle検索の利用頻度が下がり、結果としてネット広告の効果が低下していくと予想する人もいます。そうなった時に、実空間の屋外広告――特に高解像度のデジタルサイネージや話題性のある肉眼3D広告――の相対的な価値が上がるかもしれない。これは「変化」を捉えるという片山スタイルの典型的な読み方です。

肉眼3D広告で話題になった新宿東口の巨大三毛猫看板も、ヒットの作品です。SNS時代の屋外広告は、単なる広告ではなく「コンテンツ」として拡散される構造があり、ここに新しいビジネス機会が生まれている。事業の将来性をこういう構造変化として捉える視点は、片山さんらしいものです。

住信SBIネット銀行(7163)― 既に大半を利確済みの伝説の銘柄

7163住信SBIネット銀行は、片山さんが2023年3月の上場時に初値水準(1,222円)で200万株程度を購入し、2025年5月のNTTドコモによるTOB(4,900円)でほぼ全量を売却、約70億円の利益を確定した銘柄として広く知られています。

ただし、ここで興味深いのは、2025年3月時点で発行された有価証券報告書に156万株、1.03パーセント保有として記載されている点です。これは2024年3月の103万株(0.68パーセント)からむしろ増えており、つまり初値で買ってから2025年に入るまで、片山さんは買い増しを続けていたことを示唆します。確信を持った銘柄は徐々に積み増していくスタイルが、ここからも見えてきます。

そして2025年5月のTOB成立で、大半を売却したものと考えられます。これは第7章で見た「ストーリーが完結したから売る」の典型例で、TOB価格4,900円はネット銀行というラベルを「金融プラットフォーム」へと貼り替えた評価そのものでした。

AIメカテック(6227)― 2026年最大の話題銘柄、片山スタイルの最新形

ここからが、本記事で最も詳しく見ていきたい銘柄です。

2026年2月2日に提出された大量保有報告書で、片山さんがAIメカテック株を6.53パーセント保有していることが判明しました。これは個人投資家界隈で大きな話題となった案件です。なぜなら、この買い方が極めて教科書的な「片山スタイル」の実践例だったからです。

まず、購入のタイミングと金額です。EDINETに提出された大量保有報告書によると、2026年1月7日に8万700株、1月8日に18万900株、1月9日に6,100株、1月15日に14万2,900株を市場内で取得しています。わずか4日間で合計41万600株、6.53パーセントまで一気に積み上げています。取得資金の内訳は自己資金14億1,800万円、借入10億6,200万円で、総額約24億8千万円規模。重要なのは、借入を使ったということです。片山さんほどの資産規模で借入をして買うというのは、極めて高い確信を持っていた証拠と読み取れます。

そして、この大量保有報告書が提出された2月2日の時点では、AIメカテックはまだ通期予想を据え置いていました。会社側は2026年6月期の通期売上25,010百万円、営業利益2,509百万円という保守的な数字を維持していたのです。

ところが、2月13日に発表された第2四半期決算で状況は一変します。会社側は通期予想を、売上34,312百万円(前回比約37パーセント増額)、営業利益4,854百万円(同約94パーセント増額)に大幅上方修正したのです。同時に、海外大手2社からウエハハンドリングシステムで約78億円の大口受注を獲得したことも発表されました。

つまり、片山さんは「決算前の上方修正の可能性が極めて高い」という確信を持って、決算開示の前に集中買いを実行していた、ということです。これは並大抵の人にはできない芸当です。なぜそれが可能だったのか、片山スタイルの観点から推察してみます。

第一に、AIメカテックの中期経営計画には、PLP(パネルレベルパッケージ)量産受注は2028年6月期想定、と保守的な時間軸が明記されていました。これは投資家から見ると「会社は手応えはあるが確定するまで数字に入れない」というシグナルで、前倒し余地(オプション価値)が大きい状況を示唆します。

第二に、決算短信のバランスシート上、前受金が急増していました。2025年9月末の593百万円から、12月末の5,110百万円へと約8.6倍に増えています。これは顧客の発注が相当程度進んでいる証拠で、装置業界では極めて強い先行指標です。

第三に、AI半導体の積層化が加速し、HBM4世代では16層、20層と積層数が増え、各層チップの薄化が必須になっています。この薄化工程で必要なのが、AIメカテックが手がける仮接合(テンポラリーボンド)、剥離(デボンド)装置です。さらにPLPという大型パネル基板上で半導体を一括製造する手法では、AIメカテックが30年以上手がけてきた液晶パネル製造技術が転用できます。つまり、AI半導体ブームの構造的受益者となるポジションが明確にあったのです。

これらをすべて組み合わせると、変化(前受金急増、海外大型受注の打診)と想像力(PLP量産は中計より早く立ち上がる可能性)と社長の確信を持った仕込み(中計の保守性は手応えの裏返し)が交差する点で、片山さんは集中投資に踏み切ったわけです。

AIメカテックの株価は、2月13日の決算発表後に急騰し、片山さんの取得平均単価(おそらく6,000円前後)から考えると、すでに大幅な含み益が出ています。借入レバレッジを効かせている分、リターン率はさらに増幅される構造です。

これは2014年の日本ライフライン投資以来、片山さんが繰り返してきた「確信を持った時に大きく張る」スタイルの最新の現れだと評価できます。

過去の保有銘柄から読み取れるパターン

ここまで現在の保有銘柄を見てきましたが、IRBANKの開示履歴から過去の保有銘柄を遡ると、片山さんの投資スタイルの一貫性がよく見えてきます。

2014年から2018年にかけては、6062チャーム・ケア・コーポレーション(介護)、7575日本ライフライン(医療機器)、3641パピレス(電子書籍、最高保有比率10.57パーセント)、3540歯愛メディカル(歯科向け通販)、3926オープンドア(旅行)、4382HEROZ(将棋AI)、3985テモナ(EC SaaS)といった銘柄が並びます。いずれも自分の業界でトップシェア、または独自のニッチを築いた中小型企業です。

2019年から2020年にかけては、4584キッズウェル・バイオ(バイオ)、4883モダリス(ゲノム編集治療)、6785鈴木(自動車部品)といった銘柄に拡張。バイオ系の保有が増えているのが特徴で、後の有名なモダリス事件もここから始まっています。

2021年に2138クルーズ(ゲーム)、2023年に9159 W TOKYO(ファッションイベント)、そして2024年から2025年にかけて化学・自動車部品・観光・屋外広告・SaaS・半導体・ネット銀行と、現在の構成へと進化してきました。

ここから読み取れるパターンを列挙してみます。

一つは、セクターローテーションが激しいことです。バイオ、ネット銀行、屋外広告、化学、観光、半導体と、年ごとに注目領域がかなり変わっています。これは「変化を捉える」スタイルの帰結で、今その業界に変化が起きているか、を最重要視している証拠です。

二つは、保有期間にバリエーションがあることです。日本ライフラインのように2015年から2017年にかけて長く持ち続けた銘柄もあれば、AIメカテックのように決算サイクルを狙った中期投資もあります。住信SBIネット銀行はTOBという外因で2年余りで利確しました。「いつまで持つか」を機械的に決めずに、ストーリーの進捗で判断しているわけです。

三つは、上場直後の銘柄に早く乗ることが多いことです。HEROZ、住信SBIネット銀行、ダイブ、ヒット、W TOKYO、モダリスなど、上場後数ヶ月から1年程度で大株主に登場している例が多数あります。IPO直後はアナリストカバレッジが薄く、市場のラベルが確定する前に動けるという、片山さんの優位性が活かせる領域です。

四つは、大量保有報告書の5パーセントラインを意図的に超えるかどうかを使い分けているように見えることです。AIメカテックでは6.53パーセントまで一気に積み上げて開示を「踏みに行った」一方、第一工業製薬は4.94パーセントで止めて開示を避けています。これは戦略的な選択で、「市場に手の内を見せたくない時はラインを超えない」「思い切り張る時は超える」という使い分けがあると推察されます。

「11位以下」に隠れた未開示銘柄群への想像

片山さんが現在25銘柄保有しているとされる以上、現在公的に確認できる9〜10銘柄以外に、15銘柄ほどが各社の大株主名簿で上位10位に入らない規模で保有されているはずです。これらは私たちの観察範囲外です。

ただし、大株主上位10位に入らないということは、それぞれの保有割合は1パーセント未満であることが多いはずです。仮に平均1パーセント未満の保有が15銘柄あるとして、各銘柄の時価総額や片山さんの保有比率から大まかに計算すると、これら「水面下」の保有でも合計で数十億円規模になり得ます。

つまり、見えている上位9銘柄が片山さんのポートフォリオのおそらく7割から8割、残り2割から3割が水面下に分散している、というのが筆者の推察です。本当の保有割合や金額の構成までは知る由もありませんが、見える部分と見えない部分の比率は、彼が大型化した近年の「集中と分散の使い分け」を反映している可能性があります。

借入を使うという選択について

AIメカテックの大量保有報告書で明示されたように、片山さんは取得資金の約4割を借入で賄っています。これは250億円超の資産を持つ個人投資家が借入を使うという、ある意味で象徴的な事実です。

普通の感覚で言えば、資産が十分にあるのだから借入する必要はないはずです。しかし片山さんは、ここでも合理的な判断をしているように見えます。それは、機会が来た時に最大限のサイズで張るためには、流動性のある現金だけでは足りない瞬間がある、という考え方です。

すでにポジションを持っている既存銘柄を一部売却してAIメカテックを買うこともできたはずですが、それは既存銘柄の上昇機会を逃すことになります。借入で買えば、既存ポジションをそのまま維持しながら新規ポジションを追加できる。リスクは増えますが、機会の最大化という観点では合理的な判断です。

これは普通の個人投資家には絶対に真似できない芸当です。借入金利の負担、市場下落時の追い証リスク、心理的圧迫など、扱いの難しさが段違いです。「片山さんが借入を使ったから自分も」という発想は、最も危険な真似事になりますので、これは絶対に避けるべきです。

セクター分散から見える日本市場観

片山さんの現在の保有銘柄を集約すると、日本株市場全体に対する見立てが浮かび上がってきます。

化学(第一工業製薬、ラサ工業)と半導体(AIメカテック)の保有は、AIブームの恩恵を日本の素材・装置メーカーが大きく受けるという、グローバルなマクロテーマと整合的です。これはダイヤモンド・オンラインのインタビューで片山さんが2026年の日本株を「数十年に一度の黄金期」と評した根拠そのものです。

自動車部品(エイチワン)は、東証要請による資本効率改善の流れに乗る再評価銘柄。観光人材(ダイブ)はインバウンド需要の構造的回復。屋外広告(ヒット)はSNS時代の新しい広告価値。SaaS(スタメン)は調整局面を超えた個別企業の選別。

つまり片山さんは、AI・半導体という「攻め」と、資本効率改善・インバウンド・地味な高収益ビジネスという「守りに見える攻め」を組み合わせています。集中投資のイメージが強い片山さんですが、現在のポートフォリオはむしろセクター分散が効いていて、特定テーマへの一点張りではないのが見て取れます。

これはおそらく、資産規模が250億円超に達したことで、自然にこういう構成に進化してきたのだと思います。資産100億円までは1銘柄全力投資ができても、250億円規模では物理的に流動性の制約があるため、複数のテーマに分散せざるを得ない。それでも各銘柄ではある程度の集中ポジションを取る、という形が、現在のスタイルなのでしょう。

独自の批判的視点 ― 銘柄追随の限界

ここまで片山さんの保有銘柄を称賛的に分析してきましたが、批判的視点もしっかり持っておくべきです。

第一に、私たちが今「片山さんが保有している」と確認できる時点で、すでに彼が買い始めてから少なくとも数ヶ月以上経過しています。大量保有報告書は5パーセント超えで初めて提出義務が生じ、提出から開示まで数日のタイムラグがあります。有価証券報告書は決算期から3ヶ月程度遅れて公開されます。つまり、私たちが情報を得る時点で、株価はすでに片山さんの取得コストから大きく動いている可能性が高いのです。

第二に、片山さんの売却タイミングは私たちには見えにくいことです。買いは大量保有報告書で5パーセント超えが目立ちますが、売りはむしろ5パーセント以下に減らす過程で開示されるため、本当の売り抜けは見逃しやすい構造です。住信SBIネット銀行のように外因(TOB)で全量売却すれば話題になりますが、地味に減らしている銘柄は気づきにくい。

第三に、片山さんが買ったというだけで株価が動いてしまう「お墨付き効果」の存在です。第一工業製薬の解説記事にも触れられていましたが、片山さんが大株主に入ったというニュースだけで他の投資家が買いに走り、本来のファンダメンタルズとはずれた株価形成が起こり得ます。彼がポジションを外す局面では、その反動も大きい可能性があります。

第四に、これが最も本質的な問題ですが、片山さんの「銘柄の選び方」と「リスクの取り方」は分けて考える必要があるということです。銘柄選択の「考え方」は学べますが、24億円を借入を使って4日間で集中買いするような「実行」の真似は絶対にできません。片山さんの保有銘柄リストを表面的に追いかけても、彼が持つ確信と覚悟がなければ、結果はまったく違ったものになります。

最後に ― 銘柄ではなく思考様式を学ぶ

片山さんの保有銘柄を一つひとつ追っていくと、表面的なリストを覚えることに何の意味もないことがわかります。意味があるのは、それぞれの銘柄をなぜ選んだか、どんな変化を捉えたか、どんなストーリーを描いたか、というプロセスを理解することです。

AIメカテックの場合、前受金急増という決算書の数字、中計の保守的な時間軸、AI半導体の積層化トレンド、PLP市場の立ち上がり、海外受注の打診の兆候、これらすべてが組み合わさって「決算前に確信して買う」という判断に至りました。同じ思考プロセスを別の銘柄に応用できるかどうか、それが私たち読者にとっての本当の学びになります。

第一工業製薬の場合、化学素材メーカーが「総合化学」から「成長素材株」へとラベルを貼り替える現象、社長への信頼、2030年ビジョンへの評価、これらが組み合わさって「半年で株価2倍」のリターンに結びついています。

片山さんの保有銘柄は「答え」ではありません。「答えに至るプロセスのサンプル」です。この区別を見失わないことが、片山スタイルから学ぶ際の最大のポイントだと、筆者は考えております。

なお、ここまでの分析はすべて2026年5月時点で入手可能な公開情報に基づいています。実際の保有状況は日々変動していますし、片山さんは公開情報では追えない動きも当然行っているはずです。ここに書いたことは現時点でのスナップショットであり、決して投資判断の根拠にできるものではありません。あくまで一人の投資家の思考様式を、その足跡から推察する材料としてご活用いただければ幸いです。

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