はじめに——「看病してくれる人がいない」という絶望
朝、目が覚めると体が重い。頭がぼんやりする。喉が痛い。体温計を引っ張り出す。38.2度。風邪だ。布団に倒れ込む。ここで「一人暮らし」の残酷さが始まる。水を汲みに行くのも自分。薬を飲むのも自分。食事を作るのも自分。「お粥を作ってくれる人」がいない。「額に冷たいタオルを乗せてくれる人」がいない。「大丈夫?」と声をかけてくれる人がいない。
風邪を引いて初めて「一人暮らしの脆弱さ」を思い知る。普段は「一人が気楽」と思っている。だが38度の熱でフラフラしながらキッチンに立ち、水を飲み、薬を飲み、布団に戻る。この動作だけで10分。10分の移動が体力を削る。「誰かにペットボトルの水を枕元に置いてほしい」。切実な願い。だが叶わない。
だからこそ「事前準備」が重要だ。風邪を引く前に「風邪キット」を準備しておけば、寝込んでも「枕元の手の届く範囲」だけで3日間生き延びられる。
「風邪キット」を事前に準備する——合計2000〜3000円
風邪キットの内容。アイテム1は「市販の総合感冒薬」(パブロンやルル等。600〜1000円)。症状(発熱、鼻水、喉の痛み、咳)に合わせた薬を1箱常備。期限切れに注意(年に1回チェック)。アイテム2は「体温計」(100均で550円。またはドラッグストアで1000〜2000円)。アイテム3は「スポーツドリンク」(粉末タイプ。100均で110円。水に溶かすだけ。ペットボトルより保管が効く)。アイテム4は「レトルトのお粥」(3食分。100均で1食110円×3=330円)。アイテム5は「ゼリー飲料」(ウイダーinゼリー等。3個で450〜600円。食欲がないときのカロリー補給)。アイテム6は「冷却シート」(100均で110円。6枚入り)。アイテム7は「ティッシュ」(鼻をかむ用。普段の在庫を1箱多めに)。
合計コスト。薬800円+体温計550円+スポーツドリンク粉末110円+お粥330円+ゼリー飲料500円+冷却シート110円=2400円。約2500円。この2500円を「健康保険」として投資しておけば、風邪を引いたとき「買い物に行かずに済む」。38度の熱で薬局に行く苦行が不要になる。
保管場所。枕元の引き出し、またはベッドの横の箱。「寝たまま手が届く場所」に置く。風邪で起き上がるのが辛いとき、「手を伸ばせば薬がある」安心感は絶大。
「風邪を引いた日」のサバイバルスケジュール
朝(起床時)。体温を測る。37.5度以上なら「休む」決断をする。派遣先に電話する(「体調不良のため本日お休みをいただきたいのですが」。声がガラガラだと説得力がある)。薬を飲む。スポーツドリンクを水で作る(粉末を水に溶かす。水筒またはペットボトルに)。枕元に配置する。
午前中。寝る。ひたすら寝る。スマートフォンは見ない(画面の光が頭痛を悪化させる)。目が覚めたらスポーツドリンクを飲む。トイレに立つ。布団に戻る。寝る。
昼。食欲がなければゼリー飲料を1個飲む。食欲があればレトルトのお粥を電子レンジで温めて食べる(起き上がってキッチンに行く必要がある。辛いがここは我慢)。薬を飲む(昼食後)。布団に戻る。寝る。
夕方。体温を測る。朝より下がっていれば回復傾向。下がっていなくても焦らない。風邪は「2〜3日で回復する」のが普通。お粥またはゼリー飲料で夕食。薬を飲む。
夜。水分をしっかり取る。冷却シートを額に貼る(38.5度以上の場合)。寝る。
「38.5度以上が3日続く」場合——病院に行く判断
風邪の多くは「自然に治る」。だが以下の場合は病院に行くべきだ。38.5度以上の高熱が3日以上続く。呼吸が苦しい。胸が痛い。意識がもうろうとする。激しい頭痛が続く。これらの症状がある場合は「風邪ではない可能性」がある(インフルエンザ、肺炎、新型コロナ等)。
「一人で病院に行けない」場合。タクシーを呼ぶ。救急車は「本当に動けない場合」のみ。「#7119」(救急安心センター。一部地域で利用可能)に電話すれば、「救急車を呼ぶべきか」「自分で病院に行けるか」を相談できる。
「病院に行くべきか迷ったとき」は「迷ったら行く」。迷っている状態は「普通ではない状態」であり、プロに判断してもらうべき。「行かなくてよかった」のほうが「行けばよかった」より遥かにマシ。
「風邪の予防」——引かないのが最強のサバイバル
風邪を引かないことが最も合理的。予防法1は「手洗い」。帰宅時、食事前、トイレ後。石鹸で20秒以上洗う。手洗いは「最も効果的な感染症予防法」として世界中で推奨されている。予防法2は「睡眠7時間」。睡眠不足は免疫力を低下させる。7時間未満の睡眠の人は、7時間以上の人に比べて風邪を引くリスクが約3倍という研究がある。予防法3は「うがい」。帰宅後に水でうがいする。15秒×3回。0円。予防法4は「インフルエンザの予防接種」。毎年秋に接種する。費用3000〜5000円。健康保険の補助が出る場合がある。共済組合に確認する。
「風邪を引いたら使える制度」
派遣社員でも「有給休暇」が使える(入社6ヶ月以上、所定労働日の8割以上出勤の場合)。風邪で1〜2日休む場合は有給を使う。「有給がない」場合は欠勤扱いになるが、健康保険の「傷病手当金」が利用できる可能性がある(連続4日以上休んだ場合。標準報酬日額の3分の2が支給される)。
まとめ——「2500円の風邪キット」が一人暮らしの命綱
風邪は「いつ引くかわからない」。明日引くかもしれない。来週引くかもしれない。引いたとき「準備がある」のと「準備がない」のでは、回復の速さと精神的な安心感がまるで違う。2500円の風邪キットを枕元に置いておく。「いつ風邪を引いても大丈夫」という安心感は、2500円以上の価値がある。
今日、ドラッグストアで総合感冒薬とゼリー飲料と冷却シートを買おう。100均でスポーツドリンクの粉末とレトルトお粥を買おう。帰宅して枕元の引き出しに入れよう。入れたら発泡酒を開けよう。「これで風邪を引いても大丈夫だ」。安心しながら飲む発泡酒は格別だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

