公務員の給料・ボーナス・退職金・年金を全部計算する——派遣社員との「生涯賃金差」を数字で見せる

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はじめに——「公務員になったら、いくらもらえるのか」

公務員試験の勉強を始める前に、最も知りたいことがあるだろう。「結局、いくらもらえるのか」。給料はいくらか。ボーナスは出るのか。退職金はどうか。年金はいくらもらえるのか。そしてこれらを全部足したとき、「派遣社員を続けた場合」と比べていくら違うのか。

この記事では、45歳で地方公務員(一般行政職・事務職)に採用された場合の「生涯の収入」を具体的に計算する。そして派遣社員を続けた場合の「生涯の収入」と比較する。数字が示す「差」を見れば、公務員試験の勉強に対するモチベーションが一気に上がる——はずだ。

地方公務員の「月給」——45歳で採用された場合

地方公務員の給料は「給料表」で決まる。学歴、経験年数、職位によって「級」と「号給」が決まり、それに対応する月額が支給される。自治体によって給料表が異なるが、総務省の「地方公務員給与実態調査」のデータをもとに概算する。

45歳で採用された場合、職歴の換算方法は自治体によって異なる。非正規雇用の経験が「何割」として換算されるかがポイントだ。多くの自治体では、民間企業での正社員経験は「100%」、非正規雇用の経験は「50〜80%」で換算される。仮に非正規20年の経験が60%で換算されると、「12年分」の経験として認められ、その分だけ初任給が上がる。

45歳採用の概算月給。高卒相当の1級で採用された場合の初任給は、経験年数加算を含めて月額20〜24万円程度(自治体による。地域手当が加算される大都市部ではさらに上がる)。大卒相当なら22〜26万円程度。手取りは月16〜20万円程度(社会保険料・税金を控除後)。

「手取り16〜20万円?派遣とあまり変わらないじゃないか」と思うかもしれない。だが月給は「入口」にすぎない。差を生むのは「ボーナス」「退職金」「年金」だ。そしてこれらは、派遣社員には「存在しない」。

地方公務員の「ボーナス」——年間4.5ヶ月分

地方公務員にはボーナス(期末手当+勤勉手当)が支給される。支給月数は年度によって変動するが、近年はおおむね年間4.3〜4.5ヶ月分。仮に月給22万円×4.5ヶ月=年間ボーナス99万円。手取りで約75〜80万円。

派遣社員のボーナスはゼロ。ゼロと80万円の差。この差が毎年積み重なる。45歳から65歳まで20年間で80万円×20年=1600万円。ボーナスだけで1600万円の差がつく。

地方公務員の「昇給」——毎年少しずつ上がる

地方公務員の給料は、原則として毎年1月に昇給する(定期昇給)。昇給額は勤務成績によって異なるが、標準的な成績であれば1号給〜4号給(月額2000〜8000円程度)上がる。仮に毎年月額4000円ずつ昇給するとすると、10年後には月給が4万円上がっている。年収ベースでは約65万円の増収(月額4万円×12ヶ月+ボーナス増分)。

派遣社員の昇給は基本的にゼロ(交渉で時給50円上がることはあるが、自動的な昇給はない)。10年間で、公務員は年収が65万円上がるが、派遣社員は変わらない。この差が毎年開いていく。

地方公務員の「退職金」——20年勤務でいくらか

地方公務員の退職金は「退職手当」として支給される。計算式は「退職時の月給×支給率」。支給率は勤続年数によって決まる。

45歳で採用→65歳で定年退職の場合、勤続20年。勤続20年の退職手当支給率は、総務省の基準で約19.6695(定年退職の場合)。退職時の月給が28万円(20年間の昇給を含む概算)とすると、退職手当は28万円×19.6695=約551万円。

派遣社員の退職金はゼロ。ゼロと551万円の差。551万円は、老後の年金不足を約11年間補填できる金額だ(月4万円の不足として)。

地方公務員の「年金」——老後の安心がまるで違う

地方公務員は厚生年金に加入する(2015年に共済年金と厚生年金が一元化された)。45歳から65歳まで20年間、厚生年金に加入した場合の年金額を概算する。

厚生年金の受給額は「平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数」で計算される。仮に平均標準報酬額が28万円、加入月数が240ヶ月(20年)とすると、厚生年金の上乗せ分は約37万円/年(月約3.1万円)。これに基礎年金(満額で年約80万円、加入期間による按分)を加えると、年金総額は年間約100〜117万円(月8.3〜9.8万円)。

一方、派遣社員を続けた場合。厚生年金に加入していれば(週20時間以上勤務等の条件を満たす場合)、同様の計算になる。ただし平均標準報酬額が公務員より低い場合(月給18万円等)、年金額も低くなる。また、派遣の契約が途切れて厚生年金の加入期間が中断すると、年金額がさらに減る。

公務員の場合、20年間の雇用が安定しているため、厚生年金の「中断」がない。この「中断なしの20年間」が、年金額を最大化する。派遣社員で「契約の谷間」が数ヶ月あるたびに、年金額が少しずつ削られる。この差が老後に響く。

「生涯賃金差」を計算する——公務員vs派遣社員

45歳から65歳まで20年間の「生涯賃金」を比較する。

公務員の場合(45歳採用〜65歳定年)。月給の合計(昇給込み)。初任給22万円、毎年4000円昇給、20年目の月給30万円。平均月給26万円×12ヶ月×20年=6240万円。ボーナスの合計。平均年間100万円×20年=2000万円。退職金。551万円。合計。6240+2000+551=8791万円(税引前)。

派遣社員の場合(45歳〜65歳)。月給の合計。手取り16万円(額面20万円)として、額面20万円×12ヶ月×20年=4800万円。ボーナス。ゼロ。退職金。ゼロ。合計。4800万円(税引前)。

生涯賃金差。8791万円−4800万円=3991万円。約4000万円の差。この数字を、もう一度見てほしい。4000万円。公務員になるかならないかで、残りの人生の収入が4000万円変わる。

4000万円。もやし炒め133万食分。発泡酒29万本分。NISAに全額入れれば——計算するまでもない。「公務員試験の勉強をする理由」を問われれば、「4000万円」と答えればいい。

「各種手当」も計算に入れると差はさらに開く

上記の計算には「各種手当」が含まれていない。公務員には以下の手当が支給される。地域手当(勤務地によって月給の3〜20%加算)。通勤手当(全額支給)。住居手当(月最大28000円)。扶養手当(配偶者6500円等。独身には該当しないが)。時間外勤務手当(残業代。全額支給が原則)。

住居手当だけで月28000円×12ヶ月×20年=672万円。地域手当を含めれば、生涯賃金差は4000万円をさらに上回る。

「福利厚生」の差——数字に表れない価値

金額に換算しにくいが、公務員の福利厚生は派遣社員と比べて圧倒的に充実している。

有給休暇。年間20日(フル付与)。取得率も民間より高い。有給を「全部使える」環境がある。健康診断。充実した内容の健康診断が毎年無料で受けられる。人間ドック補助がある場合も。共済組合の福利厚生。宿泊施設の割引、各種保険の団体割引、貸付制度(低利)。育児・介護休業。取得しやすい環境(制度だけでなく、取得実績がある)。研修制度。スキルアップのための研修が充実。費用は公費負担。

これらの福利厚生を金額に換算すれば、年間数十万円に相当する。20年間で数百万円。生涯賃金差の4000万円に、さらに数百万円が上乗せされる。

「お金だけ」で決めていいのか——公務員のデメリット

公務員のメリットを強調してきたが、フェアに「デメリット」も示す。

デメリット1は「給料の上限がある」。公務員の給料は給料表で決まる。どんなに頑張っても、「年収1000万円」には達しにくい。民間企業の管理職なら達する可能性があるが、公務員の一般行政職では難しい。「大金持ちになりたい」人には向かない(もっとも、手取り16万円の派遣社員が「大金持ちになりたい」と言っても説得力がないが)。

デメリット2は「転職が難しい」。公務員から民間への転職は、年齢が上がるほど難しくなる。「合わなかったら辞める」が効きにくい。ある程度の覚悟を持って入るべき。

デメリット3は「住民からのクレーム」。公務員は「住民のサービス提供者」であり、クレームの矢面に立つことがある。窓口で怒鳴られることもある。精神的にタフでないと辛い場合がある。

デメリット4は「組織の硬直性」。大きな組織ゆえに、意思決定が遅い。「もっとこうしたい」と思っても、すぐには変えられない。スピード感のある仕事がしたい人にはストレスになりうる。

これらのデメリットを理解した上で、「それでも公務員になりたいか」を自問する。答えが「YES」なら、全力で試験勉強に取り組む。答えが「NO」なら、別の道を探す。次の記事(公務員07)で「公務員を目指すべき理由と目指すべきではない理由」をさらに詳しく検討する。

まとめ——「4000万円」の重み

公務員になるかならないかで、残りの人生の収入に4000万円の差がつく。この4000万円は「可能性」ではなく「構造的な差」だ。公務員の給料体系は法律で定められており、採用されれば確実にこの差が発生する。NISAの年利5%は「可能性」だが、公務員の給料は「確定」だ。

4000万円を手に入れるのに必要な投資。テキスト代3000円。勉強時間200時間。受験料0円。合計3000円。3000円の投資で4000万円のリターンが「確定的に」得られる可能性がある。この投資効率は、NISAの100万倍以上だ(比較にならないが)。

「4000万円」。この数字を胸に、明日もテキストを開こう。もう1ページ。もう1問。その1問が、4000万円に一歩近づく。

このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

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