- はじめに——「1978年生まれ・日本」というくじ
- 第1章 「もし1968年生まれだったら」——バブル世代の人生シミュレーション
- 第2章 「もし1988年生まれだったら」——ゆとり世代の人生シミュレーション
- 第3章 「もしアメリカに生まれていたら」——1978年生まれ・アメリカ版
- 第4章 「もしドイツに生まれていたら」——手厚い社会保障の国
- 第5章 「もし韓国に生まれていたら」——東アジアの「もう一つの氷河期」
- 第6章 「もしもの総合比較」——どのくじが「一番マシ」だったか
- 第7章 「くじの結果を変えられるか」——45歳からの人生の再設計
- 第7章 「もし1958年生まれだったら」——高度経済成長の申し子
- 第8章 「もし1998年生まれだったら」——Z世代の人生シミュレーション
- 第9章 「もし中国に生まれていたら」——1978年生まれ・中国版
- 第10章 「もし北欧(スウェーデン)に生まれていたら」——福祉国家のシミュレーション
- 第11章 「もしもの総合比較」の拡大版——8つのシナリオを数値で比較する
- 第12章 「なぜ日本と韓国が最下位なのか」——東アジア型社会の構造的欠陥
- 第13章 「くじの結果を変える」ための具体的行動——45歳からのリカバリー
- 第14章 「くじの不公平」を社会に問う——政策への提言
- 第15章 「もしも」を超えて——「1978年生まれ・日本」だからこそ得たもの
- 第16章 「もしも」を金額で可視化する——各シナリオの「45歳時点の純資産」比較
- 第17章 「もしも」を超えた「これから」——残り20年のシミュレーション
- 第18章 「くじを引き直す」ことはできないが「くじの解釈」は変えられる
- 結論——「どのくじを引いても、もやし炒めは作れる」
はじめに——「1978年生まれ・日本」というくじ
人生はくじ引きだ。生まれた年。生まれた国。生まれた家庭。これらは「自分では選べない」。選べないのに「人生の8割を決定する」。1978年に日本に生まれた自分は——「どんなくじを引いたのか」。良いくじか。悪いくじか。それを知るには「別のくじを引いた場合の人生」と比較するしかない。
このエッセイでは「もしも」のシミュレーションを行う。「もし10年早く(1968年に)生まれていたら」(バブル世代)。「もし10年遅く(1988年に)生まれていたら」(ゆとり世代)。「もしアメリカに生まれていたら」。「もしドイツに生まれていたら」。「もし韓国に生まれていたら」。それぞれの「もしも」の人生を具体的な数字で再現し、「1978年生まれ・日本」というくじの価値を客観的に評価する。
第1章 「もし1968年生まれだったら」——バブル世代の人生シミュレーション
1968年生まれ。大学を1991年3月に卒業。求人倍率は2.86倍。100人の学生に286の椅子。椅子が余っている。「選ぶ側」だ。「どの会社にしようか」と悩める贅沢。自分の1978年生まれ(2001年卒・求人倍率0.99倍)とは「世界が違う」。
1968年生まれの22歳(1991年)。大手メーカーに入社。初任給20万円。手取り約16万5000円。ボーナス年間4ヶ月分=80万円。年間手取り約278万円。自分の22歳の年間手取り170万円との差:108万円。初年度で108万円の差。
1968年生まれの30歳(1998年)。年収約500万円。係長に昇進。結婚。子ども1人。住宅ローンを組んで3LDKのマンションを購入(3500万円。金利3%。35年ローン)。「30歳で家を買い、家庭を持つ」。自分の30歳(2009年)。リーマンショック。派遣切り。消費者金融で3万円借りた。
1968年生まれの45歳(2013年)。年収約700万円。課長。住宅ローン残高2000万円。貯金500万円。NISA開始。子ども2人(中学生と小学生)。自分の45歳(2024年)。手取り16万8000円。貯金130万円。NISA90万円。独身。子どもなし。
1968年生まれの生涯収入(22〜65歳・43年間)推定:手取り総額約1億5000万円。退職金約2000万円。合計約1億7000万円。自分の生涯収入推定(22〜65歳・43年間。派遣のまま):手取り総額約8400万円。退職金ゼロ。合計約8400万円。差額:約8600万円。「10年早く生まれていたら、8600万円多く稼げた」。8600万円はもやし炒め28万6667食分。毎日3食もやし炒めを食べても262年分。
ただし1968年生まれにも「損」はある。バブル崩壊(1991年)を入社直後に経験。「入社した会社の業績が急悪化」。リストラの波。「早期退職」の対象になった同期がいる。住宅ローンの金利が高い(1990年代は金利5〜8%の時代もあった)。「バブルの恩恵を受けた」イメージがあるが「バブル崩壊の直撃も受けた」世代。8600万円の差額がすべて「得」ではない。
第2章 「もし1988年生まれだったら」——ゆとり世代の人生シミュレーション
1988年生まれ。大学を2011年3月に卒業。東日本大震災の年。求人倍率は1.28倍。100人に128の椅子。「椅子は足りているが、選り好みはできない」。2001年の0.99倍よりは「マシ」だが「楽」ではない。
1988年生まれの22歳(2011年)。中堅メーカーに入社。初任給21万円。手取り約17万円。ボーナス年間3.5ヶ月分=73万5000円。年間手取り約277万5000円。自分の22歳の手取り170万円との差:107万円。ほぼバブル世代と同じ差。「10年遅く生まれても差は縮まらない」のは「自分が非正規だから」だ。正社員vs非正規の差は「生まれた年の差」以上に大きい。
1988年生まれの30歳(2018年)。年収約450万円。主任。人手不足で転職市場が活況。「転職して年収50万円アップ」が可能。結婚。共働き。世帯年収約700万円。自分の30歳(2009年)。リーマンショック。派遣切り。一人暮らし。世帯年収184万円。
1988年生まれの37歳(2025年。現在)。年収約550万円。子ども1人。住宅ローンあり。NISA300万円。「普通の人生」を送っている。自分の37歳(2016年)。手取り17万円。貯金50万円。NISA未開始。「普通の人生」からは程遠い。
1988年生まれの「得」。求人倍率が1倍以上。転職市場の活況。SNS時代に育ったためデジタルスキルがある。「ゆとり教育」で「詰め込み」のプレッシャーが少なかった(賛否あるが)。「働き方改革」の恩恵。リモートワークの普及。
1988年生まれの「損」。「ゆとり世代」のレッテル。「ゆとりだから」と揶揄される。リーマンショック直後の就職。コロナ禍で子育てが困難に。インフレ。社会保険料の増加。「恵まれている」ように見えるが「別の種類の困難」を抱えている。
第3章 「もしアメリカに生まれていたら」——1978年生まれ・アメリカ版
1978年生まれ。アメリカ。大学を2000年に卒業(アメリカの大学は4年制で22歳卒業)。2000年のアメリカはITバブルの絶頂期。「ドットコムバブル」。IT企業が大量採用していた。だが2001年にITバブルが崩壊。「アメリカ版の就職氷河期」が起きた。さらに2001年9月11日に同時多発テロ。経済が大打撃を受けた。
つまり「1978年生まれのアメリカ人」も「就職のタイミングが悪かった」世代だ。ITバブル崩壊→同時多発テロ→リーマンショック(2008年)。22歳〜30歳の「キャリア形成期」に2回の大不況を経験している。
だがアメリカには「日本と異なる構造」がある。構造の差1は「通年採用・ジョブ型雇用」。アメリカには「新卒一括採用」がない。「22歳で就職できなくても、25歳でも30歳でも再チャレンジできる」。「スキルがあれば年齢は問わない」。日本の「22歳の1回のチャンスにすべてが賭けられる」システムとは根本的に異なる。
構造の差2は「転職の一般性」。アメリカでは「2〜3年ごとに転職する」のが普通。転職のたびに「年収が10〜20%上がる」ケースが多い。日本の「転職回数が多い=問題がある」の認識とは正反対。「13社を転々とした」日本の氷河期世代は「問題児」だが、アメリカなら「経験豊富な人材」と評価される可能性がある。
構造の差3は「学生ローンの重さ」。アメリカの大学は学費が高い。年間3万〜7万ドル(約450万〜1050万円)。4年間で1800万〜4200万円。多くの学生が「学生ローン」を抱えて卒業する。アメリカの学生ローンの総額は約1.7兆ドル(約255兆円)。「日本の奨学金200〜500万円」とは桁が違う。「就職できなかったら、1000万円以上の借金だけが残る」。アメリカの「就職氷河期」は「日本以上に借金の地獄」だった可能性がある。
構造の差4は「セーフティネットの薄さ」。アメリカは「国民皆保険制度」がない(オバマケア以前は特に)。医療費が「破産の最大の原因」。失業保険の期間が短い(通常26週間)。生活保護に相当する制度は限定的。「アメリカで非正規・低賃金に陥ったら、日本以上に厳しい」。
結論。「1978年生まれ・アメリカ」は「就職のタイミングの悪さ」では日本と同程度だが、「やり直しの効きやすさ」では日本より有利。ただし「学生ローン」と「セーフティネットの薄さ」は日本よりハード。「アメリカに生まれていたらもっと良かった」とは一概に言えない。「別の種類の困難」がある。
第4章 「もしドイツに生まれていたら」——手厚い社会保障の国
ドイツは「社会市場経済」の国であり、日本やアメリカとは異なる雇用・社会保障の構造を持つ。1978年生まれのドイツ人が2000年に大学を卒業した場合——そもそもドイツの大学は「学費が無料」(州立大学。一部の例外を除く)。「奨学金の返済」の問題がない。ここで既に日本の氷河期世代より「有利」。
ドイツの雇用構造。「デュアルシステム」と呼ばれる職業訓練制度がある。大学に行かなくても「職業訓練→マイスター資格→安定した技術職」のキャリアパスが確立されている。「大学を出なくても安定した仕事に就ける」社会。日本の「大卒でないとまともな仕事がない」構造とは対照的。
ドイツの失業保険は手厚い。失業保険(Arbeitslosengeld I)は最長12ヶ月(50歳以上は最長24ヶ月)。前職の給与の60%(子どもがいる場合67%)が支給される。その後も「Arbeitslosengeld II(通称Hartz IV、現在はBürgergeld)」として最低限の生活費が支給される。「失業しても生活が破綻しない」セーフティネット。日本の失業保険(自己都合退職の場合2ヶ月の給付制限+最長150日)とは「手厚さ」がまるで違う。
だがドイツにも問題がある。2000年代前半のドイツは「欧州の病人」と呼ばれるほど経済が低迷していた。失業率は10%を超えていた。「1978年生まれのドイツ人」も「就職に苦労した世代」だった可能性が高い。ただし「手厚いセーフティネット」のおかげで「生活が破綻する」リスクは日本より低かった。
結論。「ドイツに生まれていたら」——就職の苦労は同程度だったかもしれないが、「学費無料」「手厚い失業保険」「職業訓練制度」のおかげで「ダメージの深さ」が日本より浅い。「落ちても底がある社会」と「底がない社会」の差。ドイツのもやし炒めは——ドイツにもやしがあるかどうかは知らないが、少なくとも「社会が支えてくれる底」がある分だけ「もやし炒めに頼らなくて済む」。
第5章 「もし韓国に生まれていたら」——東アジアの「もう一つの氷河期」
韓国は日本と「最も似た構造」を持つ国だ。学歴社会。新卒一括採用に近い文化。非正規雇用の拡大。住宅価格の高騰。少子化。1978年生まれの韓国人は——1997年のIMF経済危機(アジア通貨危機)の直撃世代だ。19歳のときに国が経済破綻した。
IMF危機後の韓国では「大量の失業」「企業の倒産」「非正規雇用の急増」が起きた。「韓国版の就職氷河期」は日本と「ほぼ同時期」に発生した。1978年生まれの韓国人が大学を卒業する2000〜2001年頃は、まだIMF危機の影響が残っていた。
韓国には「ヘル朝鮮(地獄の朝鮮)」「N放世代」という言葉がある。N放世代は「恋愛、結婚、出産、就職、マイホーム、人間関係、夢、健康……をN個諦めた世代」を意味する。日本の氷河期世代と「驚くほど似ている」。韓国に生まれていたら——「同じ苦しみを、別の言語で経験していた」可能性が高い。
韓国の「得」。ITインフラが世界最先端(ブロードバンド普及率が高い)。Kカルチャーの世界的な広がり。「韓国人であること」が文化的なアイデンティティとして誇れる時代になった。韓国の「損」。住宅価格の高騰(ソウルの住宅価格は年収の20倍以上)。過剰な学歴競争(「スカイ」と呼ばれるトップ3大学に入れなければ人生が厳しい)。長時間労働。少子化は日本以上に深刻(合計特殊出生率0.72。世界最低レベル)。
結論。「韓国に生まれていたら」——日本と「ほぼ同じ苦しみ」を経験していた。「東アジアに生まれた1978年世代」は、日本でも韓国でも中国でも「苦しい」。「東アジアのくじは、どれを引いてもハズレ」——は言い過ぎかもしれないが「当たりが少ない」のは確かだ。
第6章 「もしもの総合比較」——どのくじが「一番マシ」だったか
5つの「もしも」を比較する。「1978年生まれ・日本(実際の人生)」を基準として、各シナリオの「有利さ」を10点満点で評価する。
1968年生まれ・日本(バブル世代)。雇用の有利さ:9/10。生涯賃金:9/10。社会保障:7/10。「やり直しの効きやすさ」:5/10(日本は年齢で制限される)。総合:7.5/10。
1988年生まれ・日本(ゆとり世代)。雇用の有利さ:6/10。生涯賃金:7/10。社会保障:7/10。やり直しの効きやすさ:6/10(転職が一般化しつつある)。総合:6.5/10。
1978年生まれ・アメリカ。雇用の有利さ:5/10(ITバブル崩壊)。生涯賃金:7/10(回復後は高い)。社会保障:3/10(セーフティネットが薄い)。やり直しの効きやすさ:9/10(ジョブ型・通年採用)。総合:6.0/10。
1978年生まれ・ドイツ。雇用の有利さ:5/10(2000年代初頭の不況)。生涯賃金:6/10。社会保障:9/10(手厚いセーフティネット)。やり直しの効きやすさ:7/10(職業訓練制度)。総合:6.8/10。
1978年生まれ・韓国。雇用の有利さ:4/10(IMF危機)。生涯賃金:5/10。社会保障:5/10。やり直しの効きやすさ:4/10(日本と似た構造)。総合:4.5/10。
1978年生まれ・日本(実際)。雇用の有利さ:3/10。生涯賃金:4/10。社会保障:6/10。やり直しの効きやすさ:3/10。総合:4.0/10。
「1978年生まれ・日本」の総合スコアは4.0/10。6つのシナリオの中で「最低」。唯一近いのが「1978年生まれ・韓国」(4.5/10)。「東アジアの同年代」は「世界的に見て最もハズレのくじ」だった。「1968年生まれ・日本」(7.5/10)との差は3.5ポイント。「10年早く生まれるだけ」で人生のスコアが3.5ポイント(88%)上がった。「生まれた年」がいかに人生を左右するかがわかる。
第7章 「くじの結果を変えられるか」——45歳からの人生の再設計
くじの結果は変えられない。1978年に日本に生まれた事実は「確定」だ。だが「くじの結果を受けて、どう生きるか」は「自分で選べる」。最悪のくじを引いたなら「最悪のくじの中で最善の手を打つ」。もやし炒め。NISA。公務員試験。散歩。読書。これらはすべて「最悪のくじの中で最善の手を打つ」行為だ。
「10年早く生まれていれば8600万円多く稼げた」。この事実は変えられない。だが「45歳からの20年間で、可能な限り回収する」ことはできる。公務員になれば4460万円の回収。NISAで822万円。合計5282万円。8600万円の61%。「完全な回収」は不可能だが「6割の回収」は可能。6割回収すれば「最悪」が「やや悪い」に変わる。「やや悪い」なら——生きていける。もやし炒めと発泡酒で。
第7章 「もし1958年生まれだったら」——高度経済成長の申し子
1958年生まれ。大学を1981年に卒業。高度経済成長の余韻が残り、バブルに向かう上り坂の時代だ。求人倍率は2.0倍前後。「就職に困る」という概念がほとんど存在しない時代。企業は「人手が足りない」状態であり、大学を出れば「引く手あまた」。内定を3社もらって「どこにしようか」と悩む。贅沢な悩み。
1958年生まれの22歳(1981年)。大手商社に入社。初任給15万円(当時の水準)。だが「年功序列+終身雇用」の黄金時代。「入社すれば定年まで安泰」が当たり前。30歳で係長。35歳で課長。40歳で部長。50歳で役員候補。年収は35歳で600万円、45歳で900万円、55歳で1200万円。退職金は3000万円以上。
1958年生まれの45歳(2003年)。年収900万円。子ども2人は大学生。住宅ローンはあと10年。貯金2000万円。「45歳の自分」との差。年収900万円vs手取り200万円(年収240万円)。差額660万円/年。45歳時点の貯金2000万円vs220万円。差額1780万円。「20年早く生まれるだけで、45歳時点で1780万円の貯金差」。
ただし1958年生まれにも「影」がある。2003年は「失われた10年」の只中。バブル崩壊後の不良債権処理。「リストラ」の嵐。50歳前後(2008〜2010年頃)でリーマンショック。「早期退職」を勧められた同僚がいる。「終身雇用の約束」が「反故にされる」リスクを55歳頃に味わった世代でもある。「入社時に約束された安定」が「50歳で崩れる」経験。これは「20代で安定を得られなかった」氷河期世代とは「痛みの種類」が違う。「持っていたものを失う痛み」(1958年生まれ)と「最初から持てなかった痛み」(1978年生まれ)。心理学では「損失回避」の原理により「持っていたものを失う痛み」のほうが「2倍強い」とされるが、「持てなかった期間の長さ」で考えれば氷河期世代のほうが「累積の痛み」が大きい。
第8章 「もし1998年生まれだったら」——Z世代の人生シミュレーション
1998年生まれ。大学を2021年に卒業。コロナ禍の真っ只中だ。だが求人倍率は1.53倍(2021年3月卒)。コロナ禍でも「1倍を大きく上回っている」。2001年の0.99倍とは「天と地の差」。少子化の影響で「若者の数が減っている」ため、企業は「若い人材を確保したい」。「売り手市場」。
1998年生まれの22歳(2021年)。IT企業に入社。初任給23万円。手取り約19万円。テレワーク(リモートワーク)が普及しており「毎日出社する必要がない」。通勤電車の苦痛が「週3日」に減った。副業が解禁されている企業も多い。「本業+副業」で月収30万円以上も可能。「YouTube」「ブログ」「プログラミング」で副収入を得る若者が増えている。
1998年生まれの27歳(2025年。現在)。年収約400万円。転職経験1回(年収50万円アップ)。NISA開始済み(22歳から。月2万円×5年=約132万円に成長)。「22歳からNISAを始めている」——自分が38歳でようやく始めたNISAを、Z世代は22歳で始めている。16年の差。この16年が65歳時点で「数百万円の差」になる。月2万円×43年(22〜65歳)×年利5%=約3586万円。自分のNISA(38歳〜65歳の27年間。月1万円)=約679万円。差額約2907万円。「16年早くNISAを始めるだけで2907万円の差」。
1998年生まれの「得」。デジタルネイティブ(IT スキルが自然に身につく)。転職が一般的(「石の上にも三年」の呪縛がない)。副業が可能。テレワーク。「働き方の多様性」が認められている時代。NISA・iDeCoの知識が若いうちから普及。「お金の教育」を受ける機会が多い。
1998年生まれの「損」。コロナ禍で「大学生活が失われた」(オンライン授業。サークル活動なし。友達が作れない)。インフレで「物価が上がっている」(もやしも30円→40円に値上がりする可能性)。社会保険料の増加(手取りが見かけの給料より少ない)。「年金は本当にもらえるのか」の不安が氷河期世代以上に強い(「もらえる頃には制度が破綻しているのでは」)。住宅価格の高騰(都市部のマンションは年収の10倍以上)。「SNSネイティブ」であるがゆえの「比較の苦痛」が激しい。
結論。「1998年生まれ」は「就職」に関しては1978年生まれより遥かに有利だが、「住宅」「年金」「インフレ」「SNS疲れ」という「別の困難」を抱えている。「困難の種類」が違うだけで「困難がない世代」は存在しない。
第9章 「もし中国に生まれていたら」——1978年生まれ・中国版
1978年生まれの中国人。この年は「改革開放」が始まった年(鄧小平による経済改革。1978年12月)であり、「中国の運命が変わった年」に生まれたことになる。改革開放の第1世代。
1978年生まれの中国人が大学を卒業する2000年頃。中国は「高度経済成長の真っ只中」。GDP成長率8〜10%。日本の「失われた10年」とは対照的に、中国は「飛躍の10年」を迎えていた。大卒者の就職は——当時はまだ大学進学率が低く(約10%前後)、「大学を出れば就職に困らない」時代。大卒は「エリート」だった。
だが2000年代以降、中国政府は「高等教育の拡大政策」を進め、大学進学率が急上昇(2023年には約60%)。大卒者の「希少価値」が急低下。2023年の大学卒業者は約1160万人。「大卒の洪水」が就職市場を飽和させ、若年失業率は2023年6月に21.3%に達した。
つまり「1978年生まれの中国人」は「大学を出た2000年頃は就職に困らなかったが、2020年代には自分の子ども世代が就職に困る」状況。「自分は恵まれていたが、次の世代は恵まれていない」。日本の「バブル世代と氷河期世代の関係」と似た構図が、中国では「2000年卒世代と2020年卒世代」の間で起きている。
1978年生まれの中国人の45歳(2023年)の状況。改革開放の恩恵を受けて「中産階級」に入った人もいれば、「取り残された」人もいる。中国の格差(ジニ係数)は0.47前後と推定され、日本(0.33前後)より大きい。「恵まれた1978年生まれの中国人」は年収100万元(約2000万円)の管理職。「取り残された1978年生まれの中国人」は月収3000元(約6万円)の工場労働者。同じ「1978年生まれ・中国」でも「格差が巨大」。
「1978年生まれ・中国」の得。高度経済成長の恩恵(GDPが40年で約40倍)。「努力すれば報われる」時代を生きた。不動産を早期に購入した人は「資産が数倍〜数十倍に」。中国の「損」。政治的自由の制限。社会保障の脆弱さ(特に農村戸籍の人)。環境汚染。不動産バブルの崩壊リスク。2020年代の経済減速。「自分は恵まれたが、次の世代(子ども)が寝そべり族になっている」皮肉。
第10章 「もし北欧(スウェーデン)に生まれていたら」——福祉国家のシミュレーション
スウェーデン。「高福祉・高負担」の代表的な国。1978年生まれのスウェーデン人が2000年に大学を卒業した場合のシミュレーション。
大学の学費。無料。スウェーデンの大学は学費が無料(EU/EEA市民の場合)。さらに「学生支援金」(返済不要の給付金+低金利のローン)が支給される。「大学を出ても借金がない」。日本の奨学金200〜500万円とは大違い。奨学金の返済に12年間苦しんだ自分から見れば「天国」。
就職。スウェーデンの2000年頃の失業率は約5.6%。日本の同時期(4.7%)と大差ない。だがスウェーデンの失業保険は「手厚い」。失業すると最初の200日間は前職の給与の80%が支給される。「失業しても給料の8割がもらえる」。日本の失業保険(前職の50〜80%。ただし給付期間が短い)とは「安心感」がまるで違う。
税金。スウェーデンの所得税率は高い。年収の30〜50%が税金。「手取りが少ない」。だが「税金の見返り」が大きい。医療費は年間の自己負担上限が約1万3000円(1150SEK)。超えた分は無料。「いくら病気になっても年間1万3000円以上は払わない」。日本の高額療養費制度より「さらに手厚い」。育児休業は480日(約16ヶ月)。うち390日間は給与の約80%が支給される。「1年以上の育休を取っても給料の8割がもらえる」。介護サービスは自治体が提供し、自己負担は少額。「介護のために離職する」必要がほぼない。
1978年生まれのスウェーデン人の45歳(2023年)。年収約400万SEK(約5600万円相当……ではない。為替レートの問題。実質購買力で考えると年収約600〜700万円相当)。税金を引いた手取りは約350〜450万円相当。「手取りは日本の正社員と同程度」。だが「学費無料」「医療費上限1万3000円」「失業保険80%」「育休16ヶ月」のセーフティネットが「人生のリスクを大幅に軽減」している。
スウェーデンの「損」。税率が高い(手取りが少ない)。物価が高い(外食は日本の2倍以上)。冬が長く暗い(日照時間が極端に短い。うつ病のリスクが高い)。移民の増加に伴う社会的緊張。「高福祉」の代償として「高負担」がある。「もやし炒め60円」のような「超低コストの食事」は難しい(もやしがスーパーであまり売っていない。代替としてジャガイモが主食になる)。
結論。「スウェーデンに生まれていたら」——手取りは日本の正社員と同程度だが「セーフティネットが桁違いに手厚い」。「失業しても、病気になっても、子どもが生まれても、生活が破綻しない」安心感は「1978年生まれ・日本」には存在しなかった。「安心感の有無」が「人生の質」を決定的に左右する。スウェーデンの1978年生まれは「安心の上で生きている」。日本の1978年生まれは「不安の上で生きている」。同じ1978年に生まれたのに。
第11章 「もしもの総合比較」の拡大版——8つのシナリオを数値で比較する
8つのシナリオを「7つの指標」で比較する。各指標を10点満点で評価する。
指標1:雇用の有利さ(就職のしやすさ、正社員率)。指標2:生涯賃金(手取りベースの推定)。指標3:社会保障(失業保険、医療保険、年金のセーフティネット)。指標4:やり直しの効きやすさ(転職、再就職の容易さ)。指標5:住宅の取得しやすさ。指標6:精神的安定(将来への不安の少なさ)。指標7:教育のコスト(大学の学費・奨学金の負担)。
1958年生まれ・日本。雇用9。賃金9。社会保障7。やり直し5。住宅7。精神7。教育6。合計50/70。平均7.14。
1968年生まれ・日本(バブル世代)。雇用9。賃金9。社会保障7。やり直し5。住宅6。精神6。教育6。合計48/70。平均6.86。
1978年生まれ・日本(実際の自分)。雇用3。賃金4。社会保障6。やり直し3。住宅3。精神3。教育5。合計27/70。平均3.86。
1988年生まれ・日本(ゆとり世代)。雇用6。賃金7。社会保障7。やり直し6。住宅4。精神5。教育5。合計40/70。平均5.71。
1998年生まれ・日本(Z世代)。雇用7。賃金6。社会保障6。やり直し7。住宅3。精神4。教育5。合計38/70。平均5.43。
1978年生まれ・アメリカ。雇用5。賃金7。社会保障3。やり直し9。住宅5。精神5。教育2。合計36/70。平均5.14。
1978年生まれ・ドイツ。雇用5。賃金6。社会保障9。やり直し7。住宅6。精神7。教育9。合計49/70。平均7.00。
1978年生まれ・スウェーデン。雇用6。賃金6。社会保障10。やり直し7。住宅5。精神8。教育10。合計52/70。平均7.43。
1978年生まれ・韓国。雇用4。賃金5。社会保障5。やり直し4。住宅2。精神3。教育4。合計27/70。平均3.86。
ランキング。1位:1978年生まれ・スウェーデン(7.43)。2位:1958年生まれ・日本(7.14)。3位:1978年生まれ・ドイツ(7.00)。4位:1968年生まれ・日本(6.86)。5位:1988年生まれ・日本(5.71)。6位:1998年生まれ・日本(5.43)。7位:1978年生まれ・アメリカ(5.14)。8位:1978年生まれ・日本(3.86)。同率8位:1978年生まれ・韓国(3.86)。
「1978年生まれ・日本」は9つのシナリオの中で「最下位タイ」。韓国と並んで最低スコア。1位のスウェーデン(7.43)とのスコア差は3.57ポイント。「1978年に生まれるなら、日本ではなくスウェーデンに生まれたかった」。だがスウェーデンに生まれるためには「スウェーデン人の親のもとに生まれる」必要があり、これは「自分では選べない」。選べないことを嘆いても仕方がない。嘆くのではなく「最下位のくじを引いた中で最善を尽くす」。
第12章 「なぜ日本と韓国が最下位なのか」——東アジア型社会の構造的欠陥
日本と韓国が同率最下位(3.86/10)という結果は「偶然」ではない。日韓には「共通の構造的欠陥」がある。
欠陥1は「新卒一括採用に近い文化」。日韓ともに「大学卒業時の就職活動」が「人生を決定する一発勝負」であり、「やり直しが効きにくい」。欧米では「通年採用」「ジョブ型」が主流であり、「何歳でも再チャレンジできる」。日韓の「やり直しスコア」が低い(日本3、韓国4)のはこの文化が原因。
欠陥2は「住宅価格の高騰」。日韓ともに都市部の住宅価格が「年収の10〜20倍以上」に達している。ソウルの住宅は年収の20倍以上。東京のマンションは年収の10〜15倍。「住宅が買えない→結婚できない→少子化」の連鎖が日韓に共通。住宅スコアが日本3、韓国2と極めて低い。
欠陥3は「社会保障のセーフティネットが『正規雇用者向け』に設計されている」。日韓ともに「正規雇用の労働者」を前提に社会保障が設計されており、「非正規」「フリーランス」「無職」のセーフティネットが脆弱。北欧のように「すべての国民」をカバーする設計ではない。
欠陥4は「過剰な学歴競争」。日韓ともに「良い大学に入ること」が「良い人生の前提条件」とされ、受験競争が過熱している。韓国の「修能(大学入学試験)」は日本のセンター試験以上にプレッシャーが大きい。「学歴で人生が決まる」構造が「教育費の高騰」と「若者のストレス」を生み、最終的に「少子化」に帰結する。
欠陥5は「精神的安定の欠如」。日韓ともに「将来への不安」が強い。「年金はもらえるのか」「老後の生活はどうなるのか」「仕事はいつまで続くのか」。この「不安」がスコアの低さ(日本3、韓国3)に表れている。北欧では「失業しても、病気になっても、国が支えてくれる」安心感がある。日韓では「失業したら、病気になったら、自分で何とかするしかない」不安がある。
第13章 「くじの結果を変える」ための具体的行動——45歳からのリカバリー
くじの結果は最下位(3.86/10)。この結果を「45歳からの行動」でどこまで改善できるか。各指標を「行動で改善する」計画を立てる。
雇用(現在3→目標6)。公務員試験に合格する。氷河期世代向けの公務員採用枠を利用。合格すれば「雇用スコア」が3→8に跳ね上がる。試験の倍率は高いが「受けなければ0%。受ければ数%」。「受ける」一択。
生涯賃金(現在4→目標6)。公務員になれば45歳〜65歳の20年間の手取り総収入が約7600万円(派遣のままなら約3840万円)。差額3760万円。生涯賃金スコアが大幅に改善。
社会保障(現在6→目標7)。社会保障制度は個人の行動で変えにくいが、「制度を知り、使い倒す」ことで実質的な保障レベルを上げられる。高額療養費制度。自立支援医療制度。生活保護。年金の繰下げ受給。「知っていて使える」と「知らなくて使えない」ではスコアが変わる。
やり直し(現在3→目標5)。「やり直しの効きやすさ」は社会の構造によるが、個人でも改善可能。資格取得(MOS、簿記2級、ITパスポート)。スキルの証明。オンラインプロフィールの整備。「やり直しの武器」を持つことで、実質的なやり直しスコアが上がる。
住宅(現在3→目標4)。住宅を購入するのは現実的に困難。だが「UR賃貸」「公営住宅」「地方移住」で住居コストを下げることは可能。「住居の質×コスト」の最適化で住宅スコアを改善。
精神的安定(現在3→目標6)。NISAで老後資金を準備する(月1万円×20年=約411万円)。生活防衛資金を確保する(50万円)。散歩・読書・もやし炒め・発泡酒の「幸福の4本柱」を維持する。「将来への不安」を「具体的な計画」に変換する。計画があれば不安が減る。
教育のコスト(現在5→変化なし)。過去の教育コスト(奨学金)は完済済み。このスコアは「変えられない過去」。
改善後の総合スコア(理想的なケース)。雇用6+賃金6+社会保障7+やり直し5+住宅4+精神6+教育5=39/70。平均5.57。元の3.86から5.57に。1.71ポイントの改善。「最下位」から「アメリカ(5.14)と同程度」に。「45歳からの行動で、1978年生まれ・日本のスコアを1978年生まれ・アメリカと同程度にまで引き上げることが可能」。完全な挽回ではないが「大幅な改善」。
第14章 「くじの不公平」を社会に問う——政策への提言
「生まれた年と国で人生のスコアが3.86〜7.43の幅で変わる」。この「くじの不公平」は「個人の努力で完全には解消できない」。社会の構造を変える「政策」が必要だ。
提言1は「通年採用・ジョブ型雇用の推進」。「22歳の一発勝負」から「何歳でも再チャレンジできる」社会へ。「やり直しスコア」を3→7に引き上げる政策。
提言2は「住宅政策の抜本的改革」。公営住宅の拡充。家賃補助制度の創設。住宅取得支援。「住宅スコア」を3→6に引き上げる政策。
提言3は「セーフティネットの拡充」。失業保険の期間延長と給付率の引き上げ。国民皆保険の維持・強化。最低保障年金の導入。「社会保障スコア」を6→8に引き上げる政策。
提言4は「教育の無償化」。大学の学費無償化(または大幅な減額)。給付型奨学金の拡充。「教育コストスコア」を5→8に引き上げる政策。
提言5は「同一労働同一賃金の徹底」。正規と非正規の賃金格差をゼロに。「雇用スコア」と「賃金スコア」を同時に引き上げる政策。
これらの政策が実現すれば、将来の「1978年生まれ的な人間」のスコアが「3.86→6〜7」に改善される。「第二の氷河期を生まない」ためには「くじの不公平さ」を制度で是正する必要がある。「くじを公平にする」のは政治の仕事。「くじの結果を受けて生き延びる」のは個人の仕事。両方が必要だ。
第15章 「もしも」を超えて——「1978年生まれ・日本」だからこそ得たもの
ここまで「1978年生まれ・日本は最下位だった」と分析してきた。だが「最下位だからこそ得たもの」はないか。「氷河期世代は損ばかりしているのか」(別稿参照)で分析した「損の中から生まれた得」を「もしも」の文脈で再確認する。
もし1968年生まれ・日本(バブル世代)だったら。「年収900万円で安定した生活」を送っていた。だが「もやし炒めの哲学」は生まれなかった。「少ないもので満足する能力」は「恵まれた環境では育たない」。バブル世代は「持っている」からこそ「失う恐怖」を抱えている。氷河期世代は「持っていない」からこそ「失うものが少ない自由」を持っている。「自由」の形が違う。
もし1978年生まれ・スウェーデンだったら。「手厚いセーフティネット」の中で「安心して生きていた」。だが「セーフティネットに支えられた生活」は「自分の力で生き延びた実感」が薄い。「もやし炒めで23年間サバイバルした」という「自力の実績」は、スウェーデンの1978年生まれには存在しない。「自分の力で生き延びた」という「自己効力感」は、「セーフティネットが弱い国」でしか得られない(皮肉だが)。
もし1978年生まれ・アメリカだったら。「やり直しが効きやすい社会」で「何度でもチャレンジできた」。だが「セーフティネットがない」ため「チャレンジに失敗したら底なし」。「底がある社会で底に近い場所にいる」日本の自分と、「底がない社会でジャンプし続ける」アメリカの自分。どちらが「精神的に安定しているか」は一概に言えない。
「1978年生まれ・日本」だからこそ得たもの。もやし炒め2808回の技術。発泡酒4140本の記憶。100均の達人。半額シールのハンター。月1万7000円の自由裁量費でNISAを積み立てる「ミクロ資産形成術」。レジリエンス。感謝の能力。「少ないもので幸せを見つける力」。これらは「最下位のくじを引いた人間だけが手に入れる資産」であり、「スウェーデンで生まれたら持っていなかった資産」だ。
「最下位だったからこそ」の資産。これを「負け惜しみ」と呼ぶか「哲学」と呼ぶかは人による。自分は「哲学」と呼ぶ。「もやし炒めの哲学」。最下位のくじから生まれた、世界に一つだけの哲学。スウェーデンにはスウェーデンの哲学がある。ドイツにはドイツの哲学がある。「1978年生まれ・日本」には「もやし炒めの哲学」がある。スコアは最下位。だが哲学は——最下位ではない。
第16章 「もしも」を金額で可視化する——各シナリオの「45歳時点の純資産」比較
各シナリオの「45歳時点の推定純資産」を比較する。純資産とは「保有資産−負債」だ。
1958年生まれ・日本の45歳時点(2003年)。貯金2000万円。住宅(時価3000万円−ローン残高1500万円=1500万円)。退職金見込み3000万円(まだ受け取っていないが資産として計上)。保険200万円。合計純資産:約6700万円。
1968年生まれ・日本(バブル世代)の45歳時点(2013年)。貯金1500万円。住宅(時価2500万円−ローン残高2000万円=500万円)。退職金見込み2000万円。NISA100万円。合計純資産:約4100万円。バブル崩壊とリーマンショックの影響で1958年生まれより少ない。
1978年生まれ・日本(実際の自分)の45歳時点(2023年)。貯金130万円。NISA90万円。住宅なし(賃貸)。退職金見込みゼロ。合計純資産:約220万円。
1988年生まれ・日本(ゆとり世代)の37歳時点(2025年。まだ45歳ではないため現在値)。貯金400万円(推定)。NISA300万円(推定)。住宅ローン残高3000万円(住宅時価3500万円。純資産500万円)。合計純資産:約1200万円(推定)。45歳時点では約2000万円に達する可能性。
1978年生まれ・アメリカの45歳時点(2023年)。401k(企業年金)500万円相当。貯金200万円相当。学生ローン残高(返済中)−100万円相当。住宅(ローン込みで純資産ゼロ〜500万円相当)。合計純資産:約600〜1100万円相当。
1978年生まれ・ドイツの45歳時点(2023年)。貯金300万円相当。企業年金200万円相当。住宅なし(ドイツは持ち家率が低い。約50%)。学生ローンなし(学費無料のため)。合計純資産:約500万円相当。「貯金は多くないが借金もない」。
1978年生まれ・スウェーデンの45歳時点(2023年)。貯金250万円相当(税率が高く手取りが少ないため貯金は多くない)。企業年金300万円相当。学生ローン残高−50万円相当(低金利だが残っている場合がある)。合計純資産:約500万円相当。「貯金は日本と大差ないが、老後のセーフティネットが桁違いに手厚い」。
1978年生まれ・韓国の45歳時点(2023年)。貯金200万円相当。住宅なし(ソウルの住宅は高すぎて買えない)。年金の見込みは不透明。合計純資産:約200万円相当。日本の自分とほぼ同じ。「東アジアの同世代は、どこに生まれても資産が少ない」。
純資産ランキング。1位:1958年生まれ・日本(6700万円)。2位:1968年生まれ・日本(4100万円)。3位:1988年生まれ・日本(推定2000万円。45歳時点予測)。4位:1978年生まれ・アメリカ(600〜1100万円)。5位:1978年生まれ・ドイツ(500万円)。同率5位:1978年生まれ・スウェーデン(500万円)。7位:1978年生まれ・日本(220万円)。8位:1978年生まれ・韓国(200万円)。
「1978年生まれ・日本」の純資産220万円は、1958年生まれ・日本(6700万円)の3.3%。「同じ日本に生まれて、20年早く生まれただけで純資産が30倍」。この数字は「くじの不公平さ」を最も端的に表している。30倍。「同じ大学の同じ教室で学んだ同級生」との格差は4倍〜5倍だが、「世代間の格差」は30倍。「同世代の格差」より「異世代の格差」のほうが大きい。「個人の能力の差」より「生まれた年の差」のほうが人生に与える影響が大きい。これが「くじの不公平」の本質だ。
第17章 「もしも」を超えた「これから」——残り20年のシミュレーション
「もしも」は過去の話だ。「これから」は未来の話だ。45歳〜65歳の20年間を「最善のシナリオ」でシミュレーションする。
最善シナリオ。46歳で公務員試験に合格。47歳で公務員として働き始める。手取り月28万円。ボーナス年間100万円。年間手取り436万円。47歳〜65歳の18年間の手取り総収入:7848万円。退職金:700万円。合計8548万円。NISAは月2万円×18年×年利5%=約700万円。現在の資産220万円+NISAの成長分=約920万円。65歳時点の純資産:920万円+退職金700万円=約1620万円。
この1620万円を先ほどの「45歳時点の純資産ランキング」に当てはめると。1958年生まれ・日本の45歳(6700万円)には及ばないが、1988年生まれ・日本の45歳予測(2000万円)に近い。「20年遅れのスタートだが、65歳時点では1988年生まれの45歳時点に追いつく」。追いつくまでに「20年余計にかかった」が、「追いついた」のは事実。
派遣のままのシナリオ。手取り月17万円×12ヶ月×20年=4080万円。NISAは月1万円×20年×年利5%=約411万円。65歳時点の純資産:220万円+411万円=約631万円。退職金ゼロ。「631万円」。これは1978年生まれ・ドイツの45歳時点(500万円)を少し上回る程度。「20年間働き続けても、ドイツ人の45歳時点程度にしかならない」。この数字は「厳しい」が「ゼロではない」。631万円あれば「年金と合わせて生活できる」レベル。もやし炒めで。
第18章 「くじを引き直す」ことはできないが「くじの解釈」は変えられる
「1978年生まれ・日本」というくじは引き直せない。だが「くじの解釈」は変えられる。
解釈1は「最悪のくじを引いたが、まだ生きている」。9つのシナリオで最下位。だが「最下位でも生きている」。23年間、もやし炒めで。発泡酒で。NISAで。「最下位で生き延びた」のは「偉業」だ。1位のスウェーデンで生きるのは「簡単」だ。セーフティネットが支えてくれるから。最下位の日本で生きるのは「難しい」。セーフティネットが薄いから。「難しいことを23年間やり遂げた」。これは胸を張っていい。
解釈2は「最悪のくじが最強の哲学を生んだ」。もやし炒めの哲学。「少ないもので満足する能力」「自分で作る喜び」「感謝の能力」「レジリエンス」。これらは「恵まれた環境では育たない力」だ。スウェーデンの1978年生まれは「セーフティネットのおかげで安心して暮らしている」が「もやし炒めで23年間サバイバルした実績」は持っていない。「実績」は「環境の厳しさ」に比例して価値が上がる。「温室で育った花」より「荒野で咲いた花」のほうが「強い」。自分は——荒野の花だ。
解釈3は「くじの結果は確定していない」。45歳の「今」が「最終結果」ではない。「65歳の結果」はまだ出ていない。65歳時点で公務員シナリオなら純資産1620万円。これは「バブル世代の45歳時点(4100万円)」には及ばないが、「自分の45歳時点(220万円)」の7.4倍。「20年で7.4倍に増えた」。これは「挽回」と呼んでいい。「最悪のくじを引いたが、後半で巻き返した」物語。巻き返しは「可能」だ。「巻き返すために行動する」。行動は「もやし炒めを食べる」「NISAに月1万円入れる」「公務員試験の勉強をする」「散歩をする」「本を読む」。日常の積み重ね。「日常の積み重ねが、くじの結果を書き換える」。
結論——「どのくじを引いても、もやし炒めは作れる」
1968年生まれでも。1988年生まれでも。アメリカでも。ドイツでも。韓国でも。「もやし炒めは作れる」。もやしは世界中にある(アメリカのスーパーでも「bean sprouts」として売っている)。フライパンも醤油も世界中にある。「もやし炒めを作る能力」は「くじの結果に左右されない」。どんなくじを引いても「自分で料理を作り、自分で生き延びる力」は自分のものだ。
「1978年生まれ・日本」は最悪のくじだった。だが最悪のくじを引いたからこそ「もやし炒めの哲学」が生まれた。もやし炒めの哲学は「バブル世代のステーキの哲学」にはない「しぶとさ」と「感謝」を含んでいる。最悪のくじが最強の哲学を生んだ。くじの結果は最悪だったが、くじの後に作ったもやし炒めは——美味い。9つの「もしも」を旅してきた。1958年の日本から、2025年のスウェーデンまで。旅の結論は「どこに生まれても、困難はある」。だが「困難の形」と「支えの厚さ」がまるで違う。自分が引いたくじは「困難が大きく、支えが薄い」最悪の組み合わせだった。それでも——もやし炒めがある。発泡酒がある。NISAがある。もやし炒めは国境を越える。発泡酒は世代を越える。NISAは時間を越える。最悪のくじの中に、3つの「越える力」を見つけた。それだけで——十分だ。十分ではないかもしれないが、「十分だと思うことにする」。これが「もしもシミュレーション」の最終回答だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。各国の数値は推定を含みます。

