本記事は、個人投資家・井村俊哉氏(株式会社Zeppy代表/株式会社Kaihou共同代表)の 投資銘柄 に焦点を絞り、本人発言・公式資料・大量保有報告書・各種報道の一次/準一次情報をもとに体系的にまとめたものです。すべての引用・数値には参考資料を明示しています。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
- 目次
- はじめに
- 第1章 井村俊哉の投資銘柄を読み解く意義
- 第2章 銘柄を分析する前提 ― 「七つの問い」と「アルファ」の復習
- 第3章 インフォマート(2492) ― 最初の10倍株
- 第4章 三井松島ホールディングス(1518) ― 世間を驚かせた一手
- 第5章 住石ホールディングス(1514) ― 資源株への確信
- 第6章 富山第一銀行(7184) ― 地方銀行アルファ
- 第7章 サイボウズ(4776) ― SaaSアルファ
- 第8章 歯愛メディカル(3540) ― 医療系BtoBアルファ
- 第9章 オプトラン(6235) ― 半導体製造装置アルファ
- 第10章 太陽誘電(6976) ― 電子部品アルファ
- 第11章 アライドアーキテクツ(6081)・きもと(7908) ― その他の個人投資家時代銘柄
- 第12章 テレビ朝日ホールディングス(9409) ― Kaihouファンドの最大ポジション
- 第13章 ジャストシステム(4686) ― 情通テーマの中核
- 第14章 大垣共立銀行(8361) ― 5.39%大量保有のサプライズ
- 第15章 プロクレアホールディングス(7384) ― 東北地銀統合の本命
- 第16章 SMK(6798)・大豊工業(6470) ― 中堅製造業の集中投資
- 第17章 地盤ネットホールディングス(6072) ― エンゲージメント投資の実例
- 第18章 近鉄グループホールディングス(9041) ― 親子上場への書簡
- 第19章 兼松(8020)・豊和工業(6203)・エフアンドエム(4771) ― 売却した銘柄から学ぶ
- 第20章 ポートフォリオ全体の業種別・時価総額別分析
- 第21章 「井村砲」現象とその影響
- 第22章 銘柄選定から見える井村流の本質
- 終章 井村俊哉の銘柄選定から私たちが学べること
- 参考資料
- 著者付記
目次
- はじめに
- 第1章 井村俊哉の投資銘柄を読み解く意義
- 第2章 銘柄を分析する前提 ― 「七つの問い」と「アルファ」の復習
- 第3章 インフォマート(2492) ― 最初の10倍株
- 第4章 三井松島ホールディングス(1518) ― 世間を驚かせた一手
- 第5章 住石ホールディングス(1514) ― 資源株への確信
- 第6章 富山第一銀行(7184) ― 地方銀行アルファ
- 第7章 サイボウズ(4776) ― SaaSアルファ
- 第8章 歯愛メディカル(3540) ― 医療系BtoBアルファ
- 第9章 オプトラン(6235) ― 半導体製造装置アルファ
- 第10章 太陽誘電(6976) ― 電子部品アルファ
- 第11章 アライドアーキテクツ(6081)・きもと(7908) ― その他の個人投資家時代銘柄
- 第12章 テレビ朝日ホールディングス(9409) ― Kaihouファンドの最大ポジション
- 第13章 ジャストシステム(4686) ― 情通テーマの中核
- 第14章 大垣共立銀行(8361) ― 5.39%大量保有のサプライズ
- 第15章 プロクレアホールディングス(7384) ― 東北地銀統合の本命
- 第16章 SMK(6798)・大豊工業(6470) ― 中堅製造業の集中投資
- 第17章 地盤ネットホールディングス(6072) ― エンゲージメント投資の実例
- 第18章 近鉄グループホールディングス(9041) ― 親子上場への書簡
- 第19章 兼松(8020)・豊和工業(6203)・エフアンドエム(4771) ― 売却した銘柄から学ぶ
- 第20章 ポートフォリオ全体の業種別・時価総額別分析
- 第21章 「井村砲」現象とその影響
- 第22章 銘柄選定から見える井村流の本質
- 終章 井村俊哉の銘柄選定から私たちが学べること
- 参考資料
はじめに
「あの井村俊哉は、今、何の銘柄を持っているのか」
これは、日本の個人投資家コミュニティで、ここ数年もっとも頻繁に交わされる問いのひとつだと言ってよいでしょう。元お笑い芸人から100億円超の累積運用益を生み出した個人投資家。2023年に共同設立した投資顧問会社・株式会社Kaihouを通じて、2025年1月からはfundnote日本株Kaihouファンド(通称「井村ファンド」「匠のファンドかいほう」)の投資助言まで手掛ける、まさに現代日本を代表するアルファ追求型の投資家です。
井村氏の保有銘柄が市場に注目される理由は、シンプルです。 「井村氏が買った」「井村氏のファンドが買った」というだけで、株価が動く という現象、いわゆる「井村砲」がたびたび発生するからです。2025年10月、Kaihouが助言するfundnoteが大垣共立銀行(8361)の株式を5.39%保有していたことが判明した日、同行株は約8年7か月ぶりの高値圏まで「マドを開けて急伸」しました(株探ニュース、2025年10月8日)。井村氏の銘柄選定が、それ自体としてマーケットへの影響力を持つほどに成熟してきたわけです。
本記事では、井村氏の銘柄選定を、
- 個人投資家時代(2010年代後半〜2024年7月の「個人投資家としての幕引き」)の代表銘柄
- 2025年1月運用開始のKaihouファンドの保有・関連銘柄
の二段に分けて、できるかぎり丁寧に解剖していきます。それぞれの銘柄について、「会社の事業」「井村氏が買った(と推定される)時期と保有比率」「なぜ買ったのか(七つの問いに沿った推定投資ストーリー)」「結果と現状」「個人投資家への教訓」を一通り押さえる構成にしました。
ご注意いただきたいのは、本記事の銘柄分析の多くが 「井村氏本人による完全な開示がない情報を、公開された大量保有報告書・本人発言・各種報道・月次レポート等から再構成したもの」 だという点です。本人がすべての投資判断理由を公に語っているわけではないため、推定と本人発言の境界を明確にして書き分けます。具体的な売買タイミングや実現損益はほとんどの場合非開示であり、本記事の数値はあくまで参考としてお読みください。
それでは、第1章から始めます。
第1章 井村俊哉の投資銘柄を読み解く意義
1-1. なぜ著名投資家の銘柄を分析するのか
著名投資家の保有銘柄を分析する意義については、伝統的に大きく分けて二つの考え方があります。
ひとつ目は 「コバンザメ投資」 の発想です。優れた投資家のリサーチ成果に「タダ乗り」し、同じ銘柄を真似て買う。ウォーレン・バフェットの率いるバークシャー・ハサウェイの13F開示(米SECに提出される機関投資家の保有報告)を真似て買う投資家が世界中に存在することは、その典型例です。日本では大量保有報告書(5%ルール報告書、EDINETで開示)が同様の役割を果たします。
ふたつ目は 「銘柄選定の論理を学ぶ」 という発想です。具体的な銘柄を真似ることが目的ではなく、その投資家がどのような論理で銘柄を選んでいるのか、どのような業界・時価総額・財務指標の銘柄を好むのかを抽出して、自分の銘柄選定に応用する。これは、銘柄そのものより、銘柄選定の メタ・スキル を学ぶアプローチです。
本記事は、後者のアプローチを推奨します。井村氏の銘柄をそのまま真似て買うことには、後の章で詳述するように多くのリスク(井村砲の逆方向の作用、流動性、買うタイミングの違いなど)があります。一方、井村氏が「なぜその銘柄を選んだか」を理解できれば、自分が同じような論理で別の銘柄を発掘する力を養えます。これこそが、長期的に有効な「井村流の真似」だと、筆者は考えます。
1-2. 井村氏の銘柄を追跡する情報源
井村氏の銘柄を追跡するには、いくつかの公開情報源があります。
ひとつ目は 大量保有報告書(5%ルール報告書) です。上場企業の株式を5%超保有した場合、5営業日以内に提出が義務付けられており、EDINET(金融庁電子開示システム)で誰でも閲覧できます。井村氏個人やfundnote(Kaihouファンドの運用会社)の保有銘柄は、ここで一次情報として確認可能です。
ふたつ目は 有価証券報告書の大株主上位10名リスト です。各上場企業が年次で開示する有報には、議決権ベースでの大株主上位10名が記載されます。井村氏の個人名や、井村氏の名義で運用される資産管理会社名が記載されていれば、保有が確認できます。バフェット・コードや株探といった情報サービスは、ここから著名投資家の保有銘柄を集計しています。
みっつ目は Kaihouファンドの月次レポート です。fundnote社の公式サイト(https://www.fundnote.co.jp/fund/kaihou/)で、月次レポート、運用報告書(全体版)、交付運用報告書がPDFで公開されています。月次レポートには、組入上位銘柄、業種別構成比率、井村氏本人のコメントなどが記載され、Kaihouファンドの直近の投資状況を最も詳しく知ることができる一次情報源です。
よっつ目は 適時開示と各種報道 です。井村氏の動きは、日経QUICKニュース、株探、Bloombergなどでも頻繁に報じられます。住石HD買い増し、近鉄グループHDへの書簡送付、大垣共立銀行の保有判明など、節目節目で記事化されており、これらを時系列で追うことで保有銘柄の変遷を把握できます。
いつつ目は Yahoo!ファイナンス掲示板やXでの個人投資家の追跡情報 です。これらは二次情報のため精度に幅がありますが、Kaihouファンドの基準価額の日次変動から「保有銘柄の入れ替えが起きたかどうか」を推定する分析や、特定銘柄を保有しているのではないかという憶測などが活発に共有されています。一次情報と組み合わせて参照することで、市場参加者がKaihouファンドの動きをどう見ているかを知ることができます。
1-3. 本記事の構成
本記事は、ここから第3章以降で具体的な銘柄を一つひとつ取り上げていきますが、まず第2章で「井村氏の銘柄選定の前提となる思想」を簡単におさらいします。この前提を共有しておかないと、なぜその銘柄を選んだかの議論が抽象的になってしまうためです。
その後、第3〜11章で個人投資家時代の代表銘柄、第12〜19章でKaihouファンドの代表銘柄(エンゲージメント対象や売却銘柄含む)、第20〜22章で全体の俯瞰分析、終章でまとめという流れで進めていきます。
第2章 銘柄を分析する前提 ― 「七つの問い」と「アルファ」の復習
2-1. 「アルファ」とは何か
井村氏および株式会社Kaihouの投資哲学の中核にあるのが「アルファ」という概念です。fundnote日本株Kaihouファンドの販売用資料(2024年12月)は、アルファを次のように定義しています。
「アルファ:本源的価値と市場価格との乖離」
つまり、ある会社の本源的価値が1,000円なのに、市場では500円で取引されている。この500円の差分こそがアルファであり、いずれ価値が認識されれば株価は1,000円に向かって動く ― これが井村流の基本ロジックです。
本人の言葉(明治安田ライフフィールドマガジン、2022年)を引用します。
「僕の投資スタイルは、きわめてシンプルです。本源的な価値の半額に見える銘柄を探し出し、その会社を徹底的に調べあげる。調査の結果、これは2〜3年で倍になる!と思えた銘柄にのみ投資をする。言うなれば、上場3,900社のなかから半額シールが貼られている銘柄を発掘するというものです」。
2-2. 「アルファを獲得するための七つの問い」
Kaihouの公式資料は、銘柄選定のフレームワークとして「七つの問い」を提示しています。各銘柄について、すべての問いにYesと答えられて初めて投資候補となる、AND条件のチェックリストです。
| 問い | 内容 |
|---|---|
| 壱 | ダウンサイドリスクは限定的か |
| 弐 | 安かろう悪かろう、ではないか(=正当な理由なくディスカウントされているか) |
| 参 | カタリスト(価値顕在化のきっかけ)は明確か |
| 肆 | 業界構造と競争優位は理解できているか |
| 伍 | 経営陣・ガバナンスは信頼に足るか |
| 陸 | 流動性ディスカウントを考慮しているか |
| 漆 | 期待リターンは十分か |
本記事の各章では、銘柄ごとにこの七つの問いを意識した分析を加えていきます。すべての問いに完全に答えるのは難しい場合もありますが、特に「弐(なぜ割安か)」「参(カタリスト)」「肆(業界構造)」を中心に、各銘柄の投資ストーリーを推定していきます。
2-3. 銘柄選定の3ステップ
井村氏の銘柄発掘プロセスは3ステップで整理されています(日本証券新聞、2021年12月)。
- 発掘 ― 約500銘柄をリストアップ
- 深掘り ― 20〜30銘柄に絞り込み(IR取材、業界調査、競合分析)
- 買い付け ― 約5銘柄に集中投資
東証上場約3,900社から最終5社まで、絞り込み率は0.13%という極めて selective な意思決定です。本記事で取り上げる各銘柄は、この3ステップの厳しい篩(ふるい)をくぐり抜けて選ばれた「精鋭」たちだということを念頭に読み進めてください。
第3章 インフォマート(2492) ― 最初の10倍株
3-1. 会社概要
インフォマート(東証プライム、証券コード2492)は、1998年設立の企業向けクラウドサービス会社です。創業当初の主力は飲食業向けの食材発注プラットフォーム「BtoBプラットフォーム 受発注」でした。卸売業者と飲食店をクラウドで結び、それまでFAXや電話で行われていた発注業務を電子化するサービスです。
その後、事業領域を拡大し、企業間取引の電子化全般を手掛けるようになります。現在の主力サービスは「BtoBプラットフォーム 請求書」(電子請求書のやりとり)、「BtoBプラットフォーム 契約書」(電子契約)、「BtoBプラットフォーム 規格書」(食品規格書管理)など、複数のSaaS型サービス群です。電子インボイス制度や電子帳簿保存法の改正という追い風もあり、企業のDX化の流れの中で着実に成長してきました。
3-2. 井村氏との出会いと10倍株への過程
井村氏がインフォマートに投資したのは2010〜2011年頃と推察されます。当時のインフォマートは時価総額数十億円規模の超小型株で、機関投資家のカバレッジもほとんどない、典型的な「市場から見過ごされた中小型株」でした。
日本経済新聞(2020年3月25日)で井村氏は、インフォマートとの出会いを次のように語っています。
「その後に購入した、飲食業の発注システムなどを手掛けるインフォマート(2492)では思わぬ大成功を収めた。芸人活動で忙しく、放置している間に徐々に株価は上昇。14年に10倍株となり、2000万円の利益を手にした。だが井村さんは『今なら競合他社の調査なども行う。当時のリサーチ量で利益を得られたのはラッキーだった』と話す」。
明治安田のインタビュー(2022年)では、2013年5月時点でこの銘柄が資産形成に果たした役割について次のように証言しています。
「2013の5月には1,000万円になっています。これは、当時、約200万円投資していた会社の株が、10倍の2,000万円程度まで値上がりしたことが大きいです」。
つまり約200万円の投資が、2013〜2014年頃にかけて約2,000万円(10倍)に。これは年率換算で約78%〜100%という驚異的なリターンであり、井村氏の累積運用益1億円達成(2017年)に大きく貢献した、まさに「人生を変えた一銘柄」と言えます。
3-3. 七つの問いから見たインフォマート
本人が「リサーチ量で利益を得られたのはラッキーだった」と謙遜していることからも分かるように、当時の井村氏は今ほど精密なリサーチ手法は確立していなかった可能性があります。それでも結果としてインフォマートが10倍株になったのは、いくつかの構造的な追い風があったからだと、筆者は分析します。
壱: ダウンサイドリスクは限定的か 時価総額数十億円という超小型株でしたが、企業向けクラウドサービスというストック型ビジネスを構築済みで、解約率の低い顧客基盤を抱えていました。下値の支えとして、契約継続収入と純資産が機能していたと考えられます。
弐: なぜ割安か 当時は「クラウドサービス(SaaS)」という概念自体が日本で十分に評価されておらず、ストック型収益モデルの価値が市場に認知されていませんでした。機関投資家のカバレッジもなく、業績の割に株価が低いという状態だった可能性が高いです。
参: カタリストは明確か 飲食業界の電子化ニーズは構造的に拡大する。当時はまだFAX・電話注文が主流だった業界が、徐々にクラウド受発注に移行していくという長期的な追い風。後に電子インボイス制度や電子帳簿保存法改正という規制面のカタリストも追加で発生しました。
肆: 業界構造 BtoBプラットフォームというネットワーク効果が働く事業モデルでした。卸売業者と飲食店の両サイドが利用するため、プラットフォームに参加者が集まるほど価値が高まり、後発の競合が追いつきにくい。井村氏が好む「Moat(競合優位性)」の典型例です。
伍: 経営陣 創業者の村上勝照氏は、長年にわたって電子商取引一筋でやってきた経営者。専門性と継続性のある経営陣が、IT業界の浮き沈みの中でもブレずに事業を運営してきました。
3-4. 「強制長期保有」という幸運
このインフォマートのケースで特筆すべきは、井村氏自身が「放置していたから10倍になった」と振り返っている点です。芸人活動で忙しく、銘柄をモニタリングする時間がなかった結果として、短期売買の誘惑から強制的に隔離され、長期保有することになった ― これは奇妙な幸運でした。
筆者の独自分析として、この経験が井村氏に 「中長期保有の威力」を肌で教えた ことが、後の投資哲学の形成に決定的影響を与えたと考えます。「2014年のインフォマート体験」がなければ、井村氏は短期売買トレーダーのままだったかもしれません。後年の井村流が「2〜3年で2倍を狙う」という中期保有スタイルに固まっていく原点が、ここにあります。
3-5. 個人投資家への教訓
このケースから個人投資家が学べるのは、次のような点でしょう。
教訓1: 中長期で成長する構造的テーマ(ここでは「企業間取引の電子化」)を見抜けた銘柄を、忍耐強く保有する力こそ大きなリターンの源泉。
教訓2: 機関投資家のカバレッジがない超小型株にこそ、10倍株の卵が眠っている可能性がある。
教訓3: 「常に売買していないと不安」という心理を制御し、「何もしない時間」を意図的に作ることの価値。井村氏は芸人活動という「強制的な距離」のおかげで長期保有できたわけですが、私たちは意識的に「忙しさ」を疑似的に作る必要があります。
第4章 三井松島ホールディングス(1518) ― 世間を驚かせた一手
4-1. 会社概要
三井松島ホールディングス(東証プライム、証券コード1518)は、1913年(大正2年)創業の松島炭礦株式会社を起源とする企業グループです。長年「石炭採掘・販売」を主力事業としてきましたが、2000年代以降は事業ポートフォリオの多角化を進めてきました。現在は石炭関連事業に加えて、合成樹脂事業、コンサルティング事業、不動産事業など、複数のセグメントで収益を上げています。
特に注目すべきは、石炭事業以外への積極的なM&Aで、安定した収益基盤を多角化させてきた点です。「石炭の会社」というイメージから、徐々に「事業ポートフォリオ運営型コングロマリット」へと姿を変えつつあります。
4-2. 「世間を驚かせた一手」 ― 大量保有報告書
2021年10月21日、井村俊哉氏が三井松島ホールディングス株式の 5.22%(682,000株) を取得していたことが、EDINETで公開された大量保有報告書によって明らかになりました(株探ニュース、2021年10月21日)。当時の株価から推計すると、取得価額は約9億円規模。これは、井村氏の名前が広く投資家コミュニティに知れ渡る転機となった出来事でした。
なぜこれが「世間を驚かせた一手」だったのか。理由は明確です。当時、世界的なESG(環境・社会・ガバナンス)投資ブームの真っ只中で、石炭関連株は「ダーティー」「投資不適格」として、機関投資家から徹底的に売り込まれていました。気候変動への取り組みを掲げる年金基金やソブリンファンドが、石炭関連株を投資ユニバースから除外する動きが世界的に進行していた時期です。
そんな中で、若手の個人投資家が9億円を投じて石炭関連企業の主要株主に名乗りを上げた。これは、市場のコンセンサスとは真逆の、極めて逆張り的な投資判断でした。
4-3. 井村氏が語る投資ストーリー
日本証券新聞(2021年12月)のインタビューで、井村氏は三井松島HDへの投資理由を次のように説明しています。これは井村氏の銘柄選定ストーリーを本人が直接語った貴重な記録です。
「脱炭素を性急に進めることによって資源価格が高騰しているのは、マーケットの警告ではないかと考えている。ミヤネ屋などの情報番組がエネルギー価格の上昇を取り上げたりすると、資源株は再び上がるとみている。脱炭素というより減炭素が現実的なんです」。
このコメントには、井村氏の投資ロジックがコンパクトに織り込まれています。
ロジック1: 市場の歪み認識 ESGブームで石炭関連株が異常に売られている。三井松島HDのような会社は、業績は堅調なのに株価が低迷している。これがアルファの源泉。
ロジック2: 未来予測 「性急な脱炭素」は、エネルギー安全保障の観点から持続不可能。世論はいずれ「現実的な減炭素」にシフトする。
ロジック3: トリガー特定 情報番組(ミヤネ屋など)がエネルギー価格上昇を取り上げ始めると、世論シフトが加速する。これがカタリスト。
ロジック4: 結果予測 世論シフトが進めば、ESGファンドの売り圧力が弱まり、本来の業績が評価される。株価は本源的価値まで戻る。
4-4. 七つの問いから見た三井松島HD
壱: ダウンサイドリスクは限定的か 既に石炭関連株はESGブームで売り込まれており、ダウンサイドはかなり限定的でした。事業ポートフォリオも多角化されており、石炭一本足ではない。
弐: 安かろう悪かろう、ではないか ディスカウントの理由(ESG的に嫌われる)は、業績悪化が原因ではなく、テーマ的逆風が原因。正当な理由ではない、という井村氏の判断。
参: カタリストは明確か 世論が脱炭素から減炭素へシフトする蓋然性が高い。ロシア・ウクライナ情勢を契機に顕在化する可能性がある(投資時点では、もちろん侵攻は予測できなかったが、何らかの形でエネルギー価格上昇が話題になる確信はあった)。
肆: 業界構造 石炭の代替エネルギーは短期間では育たない。エネルギーミックスの中で石炭は必須。日本は特にエネルギー自給率が低く、現実的なエネルギー安全保障の観点で石炭再評価は時間の問題。
伍: 経営陣 三井松島HDは、石炭事業以外の多角化も進めており、経営の柔軟性がある。コングロマリットとしての価値創造能力。
陸: 流動性 中型株として一定の流動性あり。5%超の保有でも市場機能は維持される水準。
漆: 期待リターン 本源的価値の数倍まで戻る可能性。年率換算で十分なアップサイド。
4-5. 投資の結果
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、欧州を中心にエネルギー安全保障の議論が世界的に活発化し、石炭・原子力を含む「現実的なエネルギーミックス」が再評価されました。石炭価格は急騰し、三井松島HDの株価も大きく上昇。井村氏の投資シナリオは見事に的中したのです。
具体的な売却タイミングや実現利益は公表されていませんが、推計では数十億円規模の利益を確定したと見られます。これは井村氏の累積運用益を50億円から80億円へと引き上げる原動力の一つになりました。
4-6. 個人投資家への教訓
教訓1: マクロのカタリスト(社会的議論のシフト、地政学リスク)と個別企業のアルファを組み合わせると、極めて強いリターン要因になる。
教訓2: 市場コンセンサスから外れた逆張り投資には、強い精神力と確信が必要。井村氏はESGブームに飲まれず、独自の冷静な分析で投資判断を下した。
教訓3: 「テーマ的逆風」と「業績悪化」を区別する眼力が重要。前者は時間が経てば解消するが、後者は構造的に解消しない。
教訓4: 9億円という大口を投じる集中投資には、それだけのリサーチと確信が前提となる。井村氏は中小企業診断士の知識やIR取材を駆使して、市場参加者よりも深い理解を持っていたからこそ、この賭けに出られた。
第5章 住石ホールディングス(1514) ― 資源株への確信
5-1. 会社概要
住石ホールディングス(東証プライム、証券コード1514)は、住友石炭鉱業を起源とする企業で、現在は石炭の輸入販売事業、ダイヤモンド工具(産業用ダイヤモンド)製造事業、不動産事業などを多角的に展開しています。
三井松島HDと同様に「石炭」というキーワードで括られる銘柄ですが、両社のビジネスモデルには違いがあります。三井松島HDが石炭採掘から販売、その後の多角化と進化してきたのに対し、住石HDは輸入販売中心のトレーディング型ビジネスと、別事業領域(ダイヤモンド工具、不動産)を併せ持つコングロマリット型に近い。
5-2. 大量保有報告書と買い増し
QUICK Money World/日経QUICKニュースの報道によると、井村氏は住石ホールディングス株を 7.65%保有 していることが大量保有報告書で判明し、報道された当日、住石HD株は ストップ高水準 (前日比80円・31.2%高の336円)で買い気配となりました。これは、井村氏の名前そのものが市場に与える影響力(井村砲)を象徴する出来事です。
さらにその後、井村氏は住石HD株を 買い増し したことが変更報告書(11月28日時点)で明らかになりました(日経QUICKニュース)。一度大量保有を公表した銘柄を、市場の注目が集まった後でさらに買い増す ― これは「市場との距離感を取りながらも、自分の投資判断には揺るぎない自信がある」という井村氏のスタンスを示す行動です。
5-3. 七つの問いから見た住石HD
住石HDへの投資ストーリーは、三井松島HDと多くの共通点を持ちます。「石炭関連が異常に売られている市場の歪み」をアルファ機会と捉え、「世論シフト」と「ロシアウクライナ情勢」をカタリストとした、典型的な逆張りバリュー投資です。
異なる点としては、住石HDは事業の多角化(ダイヤモンド工具、不動産)が進んでいる分、純粋な石炭プレイ以上の安定収益基盤を持つことです。これは「壱: ダウンサイドリスク」の限定に貢献する要素です。
5-4. 「テーマ内分散投資」という戦略
筆者の独自分析として、井村氏が三井松島HDと住石HDの両方を保有していた事実は、 「テーマ内の分散投資」 という戦略の表れだと考えます。
集中投資は、確信のある銘柄に大きく賭ける戦略ですが、それでも個別企業固有のリスク(経営陣の判断ミス、事業の失敗、不祥事など)は残ります。同じテーマ(石炭リバウンド)で複数銘柄に分散すれば、テーマのアップサイドは取りに行きつつ、個別企業リスクを抑えられます。
これは、ヘッジファンドが頻繁に用いる「テーマ・バスケット投資」と類似のアプローチです。井村氏が機関投資家的な手法を、自然な形で取り入れていたことを示します。
5-5. 個人投資家への教訓
教訓1: 同じテーマに賭ける場合でも、複数銘柄に分散することで個別リスクを抑えられる。
教訓2: 大量保有報告書で公開された後でも、自分の投資判断に揺るぎない自信があるなら買い増しを継続できる。市場の注目を気にしすぎず、ファンダメンタルズで判断する姿勢。
教訓3: 同じ「石炭」というセクターでも、各社のビジネスモデルは大きく異なる。井村氏は両社の違いを理解した上で、両方に投資価値を見出していた。
第6章 富山第一銀行(7184) ― 地方銀行アルファ
6-1. 会社概要
富山第一銀行(東証スタンダード、証券コード7184)は、富山県を地盤とする第二地方銀行です。北陸銀行など富山県内の主要金融機関と顧客基盤を分かち合いつつ、独自のリージョナル銀行として営業を続けています。地方経済の縮小という構造的逆風の中で、地銀再編の動きも活発化している業界の一員です。
6-2. なぜ「忘れられたセクター」が井村氏の好物なのか
地方銀行は、日本の株式市場で最も「忘れられた」セクターの一つです。理由は明確です。
理由1: 構造的逆風 人口減少、地方経済の衰退、長期にわたる超低金利(マイナス金利時代)で、地銀の収益基盤は長年圧迫されてきました。
理由2: バランスシート評価の難しさ 地銀は預金を集めて貸付・運用する金融仲介機関で、バランスシートが極めて複雑。融資先のリスク、有価証券のリスク、デリバティブのリスクなどが入り組んでおり、一般投資家には評価が難しい。
理由3: PBR0.3〜0.5倍の常態化 多くの地銀がPBR0.3〜0.5倍で取引されており、「永遠に割安」状態に置かれてきました。
この「忘れられたセクター」こそ、井村流のアルファ追求対象です。 市場が見ないところに、価格の歪みが残っている という基本原理に立てば、地銀こそ宝の山なのです。
6-3. 富山第一銀行への投資ストーリー(推測)
四季報分析@テンバガー研究所のX投稿によれば、富山第一銀行は井村氏の過去の大量保有銘柄リストに含まれています。具体的な投資時期や取得株数は公開されていませんが、推察される投資ストーリーは以下の通りです。
ストーリー1: PBRディスカウントの是正 2023年3月、東京証券取引所が「資本コストと株価を意識した経営」を要請しました。PBR1倍割れの上場企業に対して、改善計画と進捗状況の開示を求める要請です。この要請を受けて、地銀各行も自社株買い、増配、政策保有株縮減などの株主還元強化を打ち出し始めました。
ストーリー2: 金融政策の正常化 日銀のマイナス金利解除、利上げ局面入り。地銀の利鞘(NIM)が拡大し、収益性が改善するシナリオ。実際、2024年3月にマイナス金利が解除され、その後も段階的な利上げが進む中で、地銀セクターは再評価されてきました。
ストーリー3: 地銀再編の進展 人口減少と地方経済縮小により、地銀同士の経営統合・再編が加速。再編対象になれば株価プレミアムが期待できる。富山第一銀行も、北陸地区の他行との連携・統合の可能性が常に取り沙汰されています。
ストーリー4: アクティビストの台頭 シルチェスター・インターナショナル、エフィッシモ・キャピタル・マネージメント、ストラテジック・キャピタル等のアクティビストファンドが、低PBR地銀に株主提案を行う動きが活発化。これは経営陣にプレッシャーを与え、株主還元強化を促す力となっています。
これらのカタリストが重なれば、PBR0.3倍の地銀がPBR0.6〜1.0倍まで再評価される ― つまり株価が2〜3倍になる可能性があります。井村流の「2倍以上の期待リターン」基準をクリアします。
6-4. 個人投資家への教訓
教訓1: 「みんなが好きな銘柄」(成長性の高いテック株、人気ブランド株)は既に高評価されており、アルファは限定的。逆に「みんなが嫌いな銘柄」(衰退業種、低PBR、不人気テーマ)には過剰なディスカウントが発生していることが多い。
教訓2: バランスシートが複雑で評価が難しい銘柄こそ、深いリサーチで価値を見抜けた投資家にとってのアルファ源泉。地銀の財務諸表をしっかり読み解ける能力は、個人投資家にとっても武器になる。
教訓3: マクロ環境(金融政策、規制、人口動態)と個別企業の状況を組み合わせて投資ストーリーを構築する複眼思考。
第7章 サイボウズ(4776) ― SaaSアルファ
7-1. 会社概要
サイボウズ(東証プライム、証券コード4776)は、1997年設立の企業向けクラウドサービス会社です。「チームワーク あふれる社会を創る」を企業理念に掲げ、グループウェア「サイボウズOffice」「Garoon」、業務改善プラットフォーム「kintone」などを提供する、日本のSaaS(Software as a Service)型企業の代表的存在です。
特に「kintone」は、エンジニアでなくても業務アプリを作れるノーコード/ローコード開発ツールとして、日本企業のDX需要に応える形で急成長しています。
7-2. 井村流ポートフォリオでのサイボウズの位置付け
サイボウズは、典型的な「割安株」ではなく、PER数十倍といったSaaS型成長株として評価される銘柄です。井村氏が好むのは中小型バリューですが、サイボウズのような銘柄も保有しているのは、 「成長性を含むアルファ」 の追求の表れです。
筆者の独自分析として、井村流のアルファは「単なる割安株(PER低い、PBR低い)」だけではなく、「成長性も含めて市場が過小評価している銘柄」も対象としているという点を強調したいと思います。これは、伝統的なグレアム流バリュー投資とは異なる、井村氏独自のアプローチです。
弦本卓也氏のまとめによれば、井村流アルファは「割安×成長×モメンタム+インカムゲイン」の組み合わせで構成されます。サイボウズのケースは、「割安要素」よりも「成長要素」「モメンタム要素」が強いタイプの銘柄として、ポートフォリオに組み込まれていた可能性があります。
7-3. サイボウズへの投資ストーリー(推測)
ストーリー1: SaaSのストック型収益モデル 月額・年額課金のサブスクリプション収益は、業績の予測可能性が高く、企業価値評価で高いマルチプルが付く傾向。SaaS企業の本源的価値は、契約継続率と顧客生涯価値(LTV)で決まると言ってもよく、これが安定していれば長期的な成長が保証されます。
ストーリー2: 日本のクラウド化遅延の解消 日本企業のクラウド化はアメリカに比べて長年遅れていました。コロナ禍以降、リモートワーク需要で一気にクラウド化が加速。サイボウズの追い風です。
ストーリー3: kintone(ノーコード開発ツール)の普及 非エンジニアでも業務アプリを作れるkintoneが、日本企業のDXニーズに合致して急成長。中小企業のIT人材不足という構造的問題に対する、極めて適切な解決策。
ストーリー4: 経営陣の長期視点 創業者・青野慶久氏の長期的経営姿勢。3人体制の社長制度、副業を認めるユニークな人事制度など、ユニークなガバナンスと組織文化。社員の質と継続性が、長期的な競争優位の源泉。
7-4. 井村流の柔軟性 ― 「セクター・アグノスティック」の証明
サイボウズの保有は、井村氏が「中小型バリューに固執しない」柔軟さを示しています。アルファ機会があれば、SaaS型成長株でも、地方銀行でも、資源株でも投資する ― セクター・アグノスティック(セクター不問)な姿勢です。
これは個人投資家としては稀有な柔軟性です。多くの投資家は「自分の得意分野」に固執しがちですが、井村氏は「市場全体で最もアルファの大きい銘柄」に機動的に動きます。この柔軟性こそ、井村流の強みの一つです。
7-5. 個人投資家への教訓
教訓1: 「バリュー投資家=割安株のみに投資する」という固定観念に縛られない。成長性を含めた本源的価値と市場価格の乖離を見ることが重要。
教訓2: SaaS型企業の評価には、伝統的なPER/PBRだけでなく、契約継続率、解約率(チャーン)、顧客生涯価値、売上成長率といったSaaS固有の指標を理解する必要がある。
教訓3: 自分の得意分野を持つことは強みになるが、それに固執しすぎると機会を逃す。井村氏のように業種横断的に動ける柔軟性も意識すべき。
第8章 歯愛メディカル(3540) ― 医療系BtoBアルファ
8-1. 会社概要
歯愛メディカル(東証プライム、証券コード3540)は、歯科医院向けの医療材料・機器の通信販売を主力とする企業です。日本最大級の歯科向け専門商社で、歯科器械、歯科材料、歯科衛生用品、歯科技工材料など、数万SKU(在庫管理単位)を取り扱っています。
「ciメディカル」のブランド名で知られ、日本全国の歯科医院の大多数が同社の顧客となっています。BtoBの専門商社として、極めて安定したストック型のビジネスモデルを構築している会社です。
8-2. なぜ歯愛メディカルか ― 「ニッチ専門商社のMoat」
歯愛メディカルへの投資ストーリーは、 「ニッチ専門商社のMoat(競合優位性)」 という枠組みで理解できます。
ストーリー1: 圧倒的な顧客カバレッジ 日本の歯科医院の大多数が同社の顧客。長年の取引関係で、商品検索や発注プロセスが既に同社の仕組みに最適化されているため、スイッチングコストが高い。
ストーリー2: スケールメリット 取扱商品数が膨大(数万SKU)で、規模の経済性が働く。小規模競合は太刀打ちできない。物流コスト、仕入れ交渉力、品揃えの幅 ― あらゆる面でスケールが効きます。
ストーリー3: 高齢化による歯科需要の安定性 日本の高齢化により、歯科需要(特に入れ歯、インプラント、義歯関連)は今後も安定的に推移する見込み。マクロのテーマとして、人口構造の変化が同社の追い風になります。
ストーリー4: BtoBのストック型ビジネス 歯科医院は廃業しない限り、消耗品を継続購入するため、収益の予測可能性が高い。新規顧客獲得コストが低く、既存顧客からの継続収益が大きい構造。
8-3. 「地味だが構造的に強い」銘柄の魅力
歯愛メディカルは派手な成長銘柄ではありません。テックブームに乗るような銘柄でもなく、メディアにも頻繁には取り上げられません。しかし、 「地味だが構造的に強い」 という、井村流の好む特性を備えています。
筆者の独自分析として、こうした「地味な勝者」型の銘柄は、機関投資家のカバレッジが薄い傾向があります。アナリストレポートが少なく、市場の注目度も低い。だからこそ、堅実な業績の割に株価が割安に放置されやすい ― これがアルファの源泉になります。
歯愛メディカルのような銘柄を発掘する眼力は、井村流の真骨頂です。「派手なテーマ」ではなく「地味な構造的強み」を評価できる視点を持つことが、長期的に勝つ個人投資家の条件と言えるでしょう。
8-4. 個人投資家への教訓
教訓1: ニッチ市場のトッププレイヤーは、目立たないが極めて強い。これらを発掘するには、日常の生活や仕事の中で「この業界で誰が一番強いか」を観察する習慣が役立つ。
教訓2: ストック型・サブスクリプション型のビジネスモデル(歯愛の場合は消耗品の継続発注)は、業績の予測可能性が高く、本源的価値の計算がしやすい。
教訓3: マクロのテーマ(ここでは高齢化)と個別企業の構造的強みを組み合わせた投資ストーリーを構築する。
第9章 オプトラン(6235) ― 半導体製造装置アルファ
9-1. 会社概要
オプトラン(東証プライム、証券コード6235)は、光学薄膜形成装置を製造する企業です。半導体製造工程やスマートフォン、デジタルカメラのレンズ、ディスプレイ製造などで使われる、極めて特殊な装置を製造しています。
半導体製造装置業界全体ではASML(オランダ)や東京エレクトロン、SCREENホールディングスなどの巨人が支配的ですが、オプトランは光学薄膜形成という特定の領域でニッチなプレイヤーとして優位を持っています。
9-2. オプトランへの投資ストーリー
ストーリー1: 半導体製造装置のニッチプレイヤー 半導体装置業界全体ではトッププレイヤーが既に占有していますが、特定の薄膜形成領域ではオプトランが優位を持っています。ニッチセグメントでの寡占的地位という競合優位性。
ストーリー2: 構造的需要拡大 スマートフォン、車載カメラ、IoTデバイスの普及で、光学薄膜形成装置の需要は構造的に拡大しています。半導体微細化のトレンド、車載半導体の搭載数増加、AI/データセンター向け需要など、複数の追い風があります。
ストーリー3: 中国市場での強さ オプトランは中国市場でのシェアが高く、中国半導体産業の発展の恩恵を受けています。米中対立による地政学リスクはあるものの、中国の半導体内製化の動きは止まる気配がなく、装置需要は強い。
9-3. 半導体テーマでの位置付け
オプトランは、典型的な「中小型ニッチ専門企業」というカテゴリーに属し、井村流の投資対象として理にかなっています。半導体という大きなテーマの中で、トッププレイヤーではなくニッチなポジションを取っている銘柄を選ぶ ― これは機関投資家がカバーしない領域でアルファを取りに行く井村流らしいアプローチです。
時価総額が比較的小さく、機関投資家のカバレッジが薄いことが、アルファの源泉になっていたと推察されます。
9-4. 個人投資家への教訓
教訓1: 大きなテーマ(半導体、AI、EVなど)の中で、トッププレイヤーではなく「ニッチで強い銘柄」を探す視点。
教訓2: 業界のサプライチェーン全体を理解し、付加価値の源泉がどこにあるかを見抜く力。
教訓3: 地政学リスクと地政学的追い風を併せて考える複眼思考。
第10章 太陽誘電(6976) ― 電子部品アルファ
10-1. 会社概要
太陽誘電(東証プライム、証券コード6976)は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)を主力とする電子部品メーカーです。村田製作所、TDKと並ぶMLCC世界トップ3の一角を占めます。
MLCCは、スマートフォン、PC、自動車、家電、産業機器など、ありとあらゆる電子機器に使われる基礎部品で、現代のデジタル経済を支えるインフラ的存在です。1台のスマートフォンに数百個、1台のEV(電気自動車)に1万個以上のMLCCが搭載されると言われています。
10-2. 太陽誘電への投資ストーリー
太陽誘電は時価総額数千億円規模の中堅メーカーで、井村氏の通常の投資対象(中小型株)よりやや大きいサイズです。それでも投資対象としたのは、推察するに次のような理由があります。
ストーリー1: MLCC需要の構造的拡大 EV1台あたりのMLCC搭載数は、従来車の数倍。EV化の進展でMLCC需要は構造的に拡大します。さらに、5G通信機器、データセンター、自動運転技術、IoTなど、複数の需要ドライバーが重なります。
ストーリー2: 業界の寡占構造 MLCC市場は村田、サムスン電機、太陽誘電、TDKの上位4社で世界シェアの大半を占有。寡占構造のため、価格決定力が強い。新規参入障壁が極めて高い領域です。
ストーリー3: 業績の循環性 電子部品業界は循環性が強く、底値で買えば大きな上昇余地があります。底値での仕込みがアルファの源泉。井村氏は、業界の循環性を理解した上で、底値局面でポジションを取った可能性が高い。
10-3. 中型株への機動的投資
このケースは、井村氏が中型株にも機動的に投資する例です。「中小型株中心」という井村流のセオリーから外れているようでいて、実は「アルファが見えれば時価総額の制約に縛られない」柔軟性を示しています。
筆者の独自分析として、井村流は「中小型株を主戦場としつつ、中型株にも機動的に動ける」というハイブリッド戦略をとっています。これは、運用資金が大きくなる(個人で数十億円規模)につれて、中型株にも踏み込まざるを得なくなった現実への適応とも見えます。
10-4. 個人投資家への教訓
教訓1: 業界の循環性を理解することは、底値での仕込みと天井での利食いに直結する重要なスキル。
教訓2: 寡占業界のトッププレイヤーは、価格決定力という構造的優位性を持つ。これは長期的な投資対象として魅力的。
教訓3: 自分の主戦場(井村氏の場合は中小型株)に固執せず、機会があれば中型・大型株にも柔軟に投資する姿勢。
第11章 アライドアーキテクツ(6081)・きもと(7908) ― その他の個人投資家時代銘柄
11-1. アライドアーキテクツ(6081)
アライドアーキテクツは、SNSマーケティング支援を主力とする企業です。SaaS型のマーケティングツール「Letro」などを展開し、企業のSNS活用を支援するBtoBサービスを提供しています。
ポイント:
- SaaS × マーケティング × 中小型株 という、井村流の三拍子が揃った銘柄
- 企業のデジタルマーケティング需要拡大という構造的追い風
- 競合は多いが、ニッチな専門性で差別化
11-2. きもと(7908)
きもとは、ディスプレイ用フィルムを製造するメーカーです。スマートフォン、タブレット、テレビの表示装置に使われる光学フィルムが主力製品で、電子材料関連のニッチプレイヤーとして安定した収益基盤を持ちます。
ポイント:
- ディスプレイ業界の構造変化(液晶→有機EL→ミニLED等)に応じた製品ポートフォリオ
- 中小型の電子材料メーカーとして、機関投資家のカバレッジが薄い領域
- 業績の循環性はあるが、底値での仕込みでアルファを狙える
11-3. これらの銘柄から見える共通パターン
第3〜11章で取り上げてきた銘柄群を俯瞰すると、井村氏個人投資家時代のポートフォリオには、いくつかの共通パターンが浮かび上がります。
パターン1: 中小型株中心(時価総額数百億〜数千億円) 機関投資家のカバレッジが薄い領域。
パターン2: セクター横断 SaaS、地銀、資源、医療系BtoB、電子部品、半導体装置、SNSマーケティング、ディスプレイフィルムなど、特定セクターに偏らない。
パターン3: 業績堅調なバリュー、または成長性を含むアルファ 単なる低PERではなく、何らかの構造的強みを持つ銘柄。
パターン4: 明確なカタリスト 業績モメンタム、業界再編、テーマシフト、ガバナンス改革、マクロ環境変化など、株価を動かす材料が見える。
パターン5: 経営陣の質 創業家、長期視点の経営者、明確な中期戦略を持つ経営陣。
このパターンは、第2章で復習した「七つの問い」のフレームワークと完全に整合的です。理論と実践が一致している ― これが井村氏の手法の信頼性の根拠です。
第12章 テレビ朝日ホールディングス(9409) ― Kaihouファンドの最大ポジション
12-1. ここから「Kaihouファンド時代」へ
これまでの章で取り上げてきたのは、井村氏個人投資家時代(2010年代後半〜2024年7月の幕引きまで)の代表銘柄でした。本章以降では、2025年1月に運用が始まったKaihouファンドの保有銘柄に焦点を移します。
2024年7月に一時100億円を達成した後、井村氏は個人投資家としての運用に幕を引き、株式会社Kaihou(投資助言業)を通じて、fundnote株式会社が運用する「fundnote日本株Kaihouファンド(匠のファンドかいほう)」の助言に軸足を移しました。
ファンドの最大ポジションとして、 テレビ朝日ホールディングスが組入比率約16% を占めているという情報が、2025年11月時点の分析記事(blog-hero.com、2025年12月1日付)で報じられています。これは「井村ファンドの代名詞とも言える『確信度の高い銘柄への集中投資』がファンド単位でも実践されている」(同記事)ことを示す象徴的な事実です。
12-2. 会社概要
テレビ朝日ホールディングス(東証プライム、証券コード9409)は、テレビ朝日を中核とする民間放送グループの持株会社です。地上波テレビ放送のテレビ朝日、CS放送のテレ朝チャンネル、BS朝日、東映を含むコンテンツ制作子会社など、メディア・コンテンツ事業を幅広く展開しています。
筆頭株主は朝日新聞社で、メディア業界における「クロス・メディア」型コングロマリットの一翼を担っています。長年、PBR1倍を大きく割り込む水準で取引されており、典型的な「忘れられたバリュー株」の様相を呈してきました。
12-3. なぜテレビ朝日HDに投資しているのか(推定)
Kaihouファンドが具体的に「なぜテレビ朝日HDに16%もの大量配分をしているのか」については、月次レポートや本人発言から推察するしかありませんが、次のような投資ストーリーが考えられます。
ストーリー1: PBR1倍割れの構造的バリュー テレビ朝日HDは長年、PBR0.4〜0.6倍程度で取引されており、純資産価値に対して株価が大幅にディスカウントされた状態。東証の「資本コストと株価を意識した経営」要請の中で、改善余地が大きい。
ストーリー2: 保有資産の含み益 本社不動産、放送局施設、政策保有株(株式持ち合い)、海外投資など、貸借対照表に簿価で計上されている資産の含み益が大きい可能性。実質的な解散価値は時価総額を上回るレベル。
ストーリー3: コンテンツ価値の再評価 東映、テレビ朝日制作スタジオなど、コンテンツ制作能力の再評価。グローバル配信プラットフォーム(Netflix、Amazon Prime Video等)との取引拡大により、コンテンツの収益化機会が広がっている。
ストーリー4: メディア業界再編の可能性 ストリーミング時代の到来で、地上波テレビ局のビジネスモデルは構造的変化を迫られています。再編や戦略的提携の動きが今後加速する可能性。
ストーリー5: 株主還元強化への期待 東証要請と、機関投資家からの株主還元強化圧力が、政策保有株縮減、自社株買い、増配といった具体的アクションにつながる可能性。
12-4. 「情報・通信業26%」というセクター集中
blog-heroの分析記事によれば、Kaihouファンドは業種別で 「情報・通信業 約26%」 をトップに据えており、その中身はテレビ局やジャストシステムなど、財務体質が強固な企業が並びます。これに次いで「建設業」「銀行業」が多く、いわゆるPBRが低く見直し余地のある「バリュー株」への選好が色濃く出ています。
つまり、テレビ朝日HDの16%は、 「情報・通信業セクターにおけるPBRバリューの最大の確信銘柄」 という位置付けで保有されていると考えられます。
12-5. 個人投資家への教訓
教訓1: 「派手な成長テーマではないが、構造的に大幅なディスカウント状態にある銘柄」は、長期的なバリュー再評価の対象になり得る。
教訓2: メディア業界のような「構造変化期にあるレガシー業界」には、変化対応の成否が大きなアルファ機会と裏腹のリスクをもたらす。
教訓3: 1銘柄に16%という集中度合いは、個人投資家には危険水準。だが「確信があれば集中する」という井村流の規律の象徴的な例として、学ぶべき姿勢ではある。
第13章 ジャストシステム(4686) ― 情通テーマの中核
13-1. 会社概要
ジャストシステム(東証プライム、証券コード4686)は、日本語ワープロソフト「一太郎」の開発元として歴史を持つソフトウェア会社です。現在の主力事業は、通信教育サービス「スマイルゼミ」(タブレット型通信学習教材)、企業向け業務効率化ソフトなど多岐にわたります。
特に「スマイルゼミ」は、家庭学習市場で大きなシェアを持ち、ストック型の収益基盤として安定した利益を生んでいます。長年にわたり高い営業利益率(20〜30%台)を維持し、純資産も厚く、PBRで見ても比較的バリュー寄りに評価される時期もあった銘柄です。
13-2. なぜジャストシステムか
Kaihouファンドが情報・通信業セクターに約26%を配分する中で、ジャストシステムが組入候補に挙がっているのは、次のような理由が考えられます。
ストーリー1: 高い収益性と安定性 営業利益率20%超を継続的に維持する高収益体質。教育事業(スマイルゼミ)のストック型収益と、ソフトウェア事業の利益が組み合わさり、業績の予測可能性が高い。
ストーリー2: 純資産の厚さとネットキャッシュ 潤沢な現金・有価証券を保有し、ネットキャッシュ(現金等から有利子負債を引いた金額)が時価総額の一定割合を占めるレベル。井村氏が重視する「ダウンサイドリスクの限定」に直結する財務体質。
ストーリー3: 株主還元の改善余地 高収益・厚い純資産を持つ一方で、過去には配当性向や自社株買いが市場期待に対して控えめだった時期もあり、株主還元強化の余地があります。
ストーリー4: 教育×DX×AI 教育市場でのデジタル化、AI活用などのテーマでの成長余地。スマイルゼミがAI学習機能を進化させることで、新たな付加価値創出の可能性。
13-3. 「財務体質が強固な情通株」というカテゴリー
blog-heroの分析記事は、Kaihouファンドの情通株の特徴として「テレビ局やジャストシステムなど、財務体質が強固な企業が並びます」と指摘しています。つまり、Kaihouファンドが選ぶ情通株は、「グロースだが赤字垂れ流し」型の銘柄ではなく、 「キャッシュリッチで本業も儲かっているのに株価が割安」 タイプの銘柄に偏っていると見られます。
これは典型的な「バリュー寄り情通」ポートフォリオで、 「情報・通信業=高PER成長株」というステレオタイプを覆す 銘柄選定です。井村流の独自性が、セクター名だけでは判断できないレベルで現れています。
13-4. 個人投資家への教訓
教訓1: 同じセクター(情報・通信業)でも、その中には「グロース型」「バリュー型」「資産バリュー型」など多様なサブカテゴリーが存在する。
教訓2: ネットキャッシュ比率(時価総額に対する正味現金比率)が高い銘柄は、ダウンサイドが限定的で、株主還元強化のカタリスト余地も大きい。
教訓3: セクター名のステレオタイプに縛られず、個別企業のファンダメンタルズを見る目を養う。
第14章 大垣共立銀行(8361) ― 5.39%大量保有のサプライズ
14-1. 会社概要
大垣共立銀行(東証プライム、証券コード8361)は、岐阜県大垣市に本店を置く地方銀行です。岐阜県を中心に、愛知県、三重県、滋賀県、東京都に営業基盤を展開しています。長年、堅実な経営で知られ、PBRは1倍を大きく下回る水準で取引されてきた典型的な「忘れられた地銀」の一つでした。
14-2. 「5.39%大量保有判明」のサプライズ
2025年10月7日、株式会社Kaihouの投資助言を受けるfundnoteが大垣共立銀行の株式について、新たに5%を超えて保有していたことが大量保有報告書で明らかになりました(株探ニュース、2025年10月8日)。
報告内容のポイント:
- fundnoteの保有割合: 5.39%
- 報告義務発生日: 2025年9月30日
- 保有目的: 「Kaihouの投資助言に基づき投資信託の信託財産の運用のため保有」
- 「対話を通じて『IR・資本効率・ガバナンスの高度化と企業価値向上を促す』」
- 「受益者の利益を保全するために、保有目的を『重要提案行為を行う』に変更する場合がある」
最後の「重要提案行為を行う場合がある」という文言は重要です。これは事実上、 アクティビスト的なエンゲージメントを含み得る という宣言で、経営陣に対する強いプレッシャーになります。
14-3. 市場の反応 ― 「マド開け急伸」
この大量保有報告書が明らかになった翌営業日、大垣共立銀行株はマド開けで急伸し、2017年3月以来およそ 8年7か月ぶり の高値圏に浮上しました(株探ニュース、2025年10月8日)。
これは典型的な「井村砲」現象です。
Yahoo!ファイナンス掲示板の議論では、「大垣の5000から7500とプロクレアの1500から3500円比べないと 井村竹入さんには感謝だよ」という投稿も見られ、Kaihouファンドの保有銘柄が大きく上昇していることへの受益者の感謝の声が確認できます。
14-4. 投資ストーリー(推定)
ストーリー1: PBRディスカウントの是正 大垣共立銀行は長年PBR0.5倍前後で推移。東証要請を背景に、自社株買い、増配、政策保有株縮減などの株主還元強化が期待される。
ストーリー2: 金利上昇局面での利鞘改善 日銀の利上げ局面入りで、地銀の利鞘が改善する構造的な追い風。
ストーリー3: 地銀再編の可能性 東海地区での地銀再編。岐阜・愛知・三重を地盤とする地銀の再編は、長年議論されてきたテーマで、いつ動いてもおかしくない状況。
ストーリー4: エンゲージメントによるアルファ創出 Kaihouが「重要提案行為を行う場合がある」と明示することで、経営陣にプレッシャーを与え、株主還元強化や経営効率化を促す。Kaihouが「カタリスト自体を作りに行く」アクティビスト的アプローチ。
14-5. 「井村氏が買った話」の周辺事情
なお、Yahoo!ファイナンス掲示板の議論によれば、「大垣の保有目的は明確に井村さん話してるし、他の地銀との統合は目的じゃないと話してるよ」という発言もあります。つまり、井村氏自身がメディアまたはIR場面で、大垣共立銀行の保有目的について何らかの発言をしている可能性があります。
具体的にどのような目的なのかは公開情報からは断定できませんが、 「IR・資本効率・ガバナンスの高度化を対話で促す」 という大量保有報告書の文言からは、再編というよりも個別企業としての価値向上を目的としていることが伺えます。
14-6. 個人投資家への教訓
教訓1: 大量保有報告書は、保有者の意図を読み取る重要な一次情報。「保有目的」欄の文言を精読することで、その投資のスタンスが分かる。
教訓2: 「重要提案行為を行う場合がある」という条項は、エンゲージメント投資の宣言。経営陣にとっては強いプレッシャーになる。
教訓3: 地銀セクターの再評価は、東証要請・金利上昇・再編議論の三つどもえで進行中。中長期で見ても投資テーマとしての魅力が大きい。
第15章 プロクレアホールディングス(7384) ― 東北地銀統合の本命
15-1. 会社概要
プロクレアホールディングス(東証プライム、証券コード7384)は、青森銀行とみちのく銀行が経営統合して2022年に設立された金融持株会社です。青森県を地盤とする両行の合併で誕生し、北東北エリアで圧倒的なシェアを持つ地銀グループとなりました。
15-2. なぜプロクレアか
Yahoo!ファイナンス掲示板での議論によれば、Kaihouファンドの代表的保有銘柄として「プロクレア」が頻繁に言及されており、「プロクレアの1500から3500円」という具体的な株価レンジへの言及も見られます。これは、Kaihouファンドの組入時の株価から、その後大きく上昇していることを示唆しています。
投資ストーリー(推定):
ストーリー1: 統合シナジー 青森銀行とみちのく銀行の統合による、店舗統廃合・システム共通化・営業力強化などの統合シナジー。本格的に効果が出てくるのは統合から数年後で、ちょうど投資のタイミングとして魅力的。
ストーリー2: 地銀再編の象徴 プロクレアの成功事例は、他の地銀再編の引き金になり得る。地銀セクター全体の再評価に貢献する可能性。
ストーリー3: 地方銀行の交付金制度 2026年初頭に成立した「地方銀行の再編に利用できる交付金制度の拡充などを盛り込んだ金融機能強化法の改正案」(Yahoo!ファイナンス掲示板での投稿に言及)は、地銀再編をさらに加速させる政策追い風となっています。「東北の統合は進むでしょうね」という掲示板での予想は、まさにこの流れを踏まえたものです。
ストーリー4: PBR是正 他の地銀同様、PBR1倍割れの状態。東証要請・金利上昇局面で再評価。
15-3. 個人投資家への教訓
教訓1: M&A・経営統合銘柄は、シナジー顕在化のタイミングで投資すれば大きなアルファを得られる可能性がある。
教訓2: 政策(法改正)の動きを先回りして読む力。地銀再編は政治・規制の追い風で進行する。
教訓3: 地方経済の縮小という逆風があっても、その中での再編・効率化のストーリーは独立したアルファ機会を生む。
第16章 SMK(6798)・大豊工業(6470) ― 中堅製造業の集中投資
16-1. SMK(6798)
SMK(東証プライム、証券コード6798)は、コネクタやスイッチ、リモートコントロールユニットなどを製造する電子部品メーカーです。スマートフォン、車載、家電向けに各種コネクタを供給しています。
Yahoo!ファイナンス掲示板の情報によると:
- 2026年4月22日受付の変更報告書で、fundnoteのSMK株式保有比率が5.26%→6.78%に増加
- 報告義務発生日: 2026年4月15日
これは、Kaihouファンドが既に保有していたSMKを、さらに買い増していることを示します。
投資ストーリー(推定):
- 中小型電子部品プレイヤーとして、井村流ポートフォリオに馴染む
- スマホや車載で安定的な需要
- PBR、PER水準が比較的低い
- 改革余地のあるガバナンス
16-2. 大豊工業(6470)
大豊工業(東証スタンダード、証券コード6470)は、自動車エンジン用ベアリングやウォーターポンプなどを製造する自動車部品メーカーです。EV化の進展でエンジン部品需要は構造的に縮小する見方が一般的ですが、HEV(ハイブリッド車)需要や、内燃機関の補修需要、新興国市場の需要などで、一定の収益基盤を維持しています。
Yahoo!ファイナンス掲示板の情報によると:
- 2026年4月22日受付の変更報告書で、fundnoteの大豊工業株式保有比率が8.68%→9.79%に増加
- 報告義務発生日: 2026年4月15日
保有比率10%近くまで買い増しているのは、極めて高い確信度の表れです。
投資ストーリー(推定):
- 「EV化で衰退する自動車部品」というレッテルで過剰に売られているバリュー株
- 実際にはHEV需要が当面続き、内燃機関部品も完全には消えない
- ニッチセグメントでの寡占的地位
- 純資産が厚く、ダウンサイドが限定的
16-3. 「中堅製造業の集中投資」というパターン
SMKと大豊工業は、いずれも東証スタンダード上場の中堅製造業で、機関投資家のカバレッジが薄く、PBRが低めに評価されています。井村流の典型的な投資対象カテゴリーです。
Kaihouファンドが両社の保有比率を6.78%、9.79%まで引き上げていることは、 「派手ではないが構造的に強い中堅製造業」 に対する井村氏・竹入氏の強い確信を示しています。
16-4. 個人投資家への教訓
教訓1: 大量保有報告書(変更報告書)の保有比率の変化を時系列で追うことで、ファンドの確信度の変化を読み取れる。
教訓2: 「衰退業種」というレッテルで過剰に売られた銘柄に、しばしばアルファが眠っている。
教訓3: 中堅製造業の中には、ニッチセグメントで寡占的地位を持つ「地味な勝者」が多数存在する。
第17章 地盤ネットホールディングス(6072) ― エンゲージメント投資の実例
17-1. 会社概要
地盤ネットホールディングス(東証グロース、証券コード6072)は、住宅地盤調査・解析サービスを主力とする企業です。住宅建設前の地盤の強度を調査・解析し、地盤改良工事の要否を判定するサービスを提供しています。住宅メーカー、工務店、地盤改良業者を顧客とする、ニッチなBtoBビジネスです。
17-2. Kaihouファンドとのエンゲージメント
Yahoo!ファイナンス掲示板の議論では、「地盤ネット等のエンゲージメントが成功 → ファンドの基準価額が爆騰 → 預かり資産が急増 → その資金力と実績を背景に『投資運用業』を取得 → 名実ともにダルトンと並ぶ『運用会社』へ」という、受益者の期待感を表す投稿が見られます。
これは、地盤ネットHDがKaihouファンドのエンゲージメント投資のキー銘柄の一つになっていることを示します。具体的な提言内容は公開されていませんが、推察すると次のような項目が含まれる可能性があります。
- 不採算事業の撤退・売却
- 資本効率改善(自社株買い、増配)
- ガバナンス強化(社外取締役の独立性、報酬体系)
- 中期経営計画の見直しと達成へのコミットメント
17-3. 投資ストーリー(推定)
ストーリー1: ニッチ市場のリーダー 住宅地盤調査というニッチ市場での主導的地位。住宅着工件数が減少する中でも、地盤調査自体は法的要請もあり継続的な需要がある。
ストーリー2: 改革余地の大きさ 時価総額が小さく、ガバナンス強化やビジネスモデル改革の余地が大きい。エンゲージメントで価値向上を促せる典型例。
ストーリー3: マクロテーマ 地震大国・日本での地盤強度確認のニーズは恒常的。気候変動による豪雨・洪水リスクの高まりも、地盤関連サービスへの需要を支える。
17-4. エンゲージメント投資の意義
Kaihouファンドが「単なる株式投資」ではなく「対話と提言を通じた価値創造」を志向していることは、近鉄グループHDへの書簡送付(次章)と並んで、地盤ネットHDのケースでも明らかです。
これは、井村氏が個人投資家時代に行っていた「銘柄選定→保有→株価上昇待ち」というパッシブな投資から、 「銘柄選定→保有→エンゲージメント→経営改善→株価上昇」というアクティブな価値創造 へとアプローチを進化させていることを示します。Kaihouが将来的に投資運用業ライセンスを取得すれば、米国アクティビストファンドのような本格的なエンゲージメント投資が可能になります。
17-5. 個人投資家への教訓
教訓1: 「カタリストが待っているだけ」の投資から、「カタリストを自分で作りに行く」エンゲージメント投資への進化。
教訓2: 時価総額の小さい銘柄では、株主の声が経営に届きやすく、エンゲージメントの効果が出やすい。
教訓3: 個人投資家は経営に直接エンゲージメントすることは難しいが、エンゲージメントを行うファンドに投資することで間接的に恩恵を受けられる。
第18章 近鉄グループホールディングス(9041) ― 親子上場への書簡
18-1. 会社概要
近鉄グループホールディングス(東証プライム、証券コード9041)は、近畿日本鉄道を中核とする鉄道・運輸・流通・ホテル・不動産・百貨店等を傘下に持つ大手私鉄系コングロマリットです。傘下には近鉄百貨店(東証プライム上場、証券コード8244)、KNT-CTホールディングス、近鉄エクスプレスなどの上場子会社を持つ「親子上場」企業群です。
18-2. Kaihouによる書簡送付
2026年4月22日、Bloombergが「元芸人・井村氏の投資助言会社、近鉄グループに書簡 ― 親子上場に懸念」と報じました。Kaihouが近鉄グループHDに対し、親子上場(特に近鉄百貨店との関係)について懸念を表明し、改善を求めた書簡を送付したというものです。
18-3. 親子上場問題とは
親子上場(親会社と子会社の両方が上場している状態)は、長年「少数株主の利益が損なわれるリスク」として指摘されてきました。
具体的な問題:
- 親会社が子会社に不利な条件を強要(transfer pricing問題)
- 子会社の経営判断が親会社の都合で歪められる
- M&Aの際、子会社の少数株主が不利な条件で買い取られる
- 子会社の利益が親会社に吸い上げられ、少数株主には還元されない
これらの問題は、世界的なコーポレートガバナンス改革の流れの中で、近年特に強く指摘されています。米国・欧州では親子上場はほぼ消滅しており、日本でも東証要請等で解消が進みつつあります。
18-4. Kaihouの提言内容(推定)
Bloomberg報道の詳細は限定的ですが、推察される提言内容は以下のようなものです。
- 子会社の完全子会社化(少数株主の解消、TOBによる買い取り)
- または子会社のスピンオフ(完全独立、親子関係解消)
- 親子間取引の透明化と公正性の確保
- 子会社の独立性強化(独立社外取締役の増員)
18-5. エンゲージメント効果(短期と中長期)
短期効果: 書簡の公開でマーケットに注目され、子会社株価が上昇する可能性。実際、近鉄グループHDの組入だけでなく、近鉄百貨店等の関連銘柄の株価が動意づく可能性があります。
中長期効果: 企業側が真剣に検討し、構造改革(完全子会社化など)を実施。実施されれば株価が大きく上昇する可能性。これがKaihouの本命カタリストでしょう。
18-6. 日本のアクティビズム史におけるKaihouの位置
Kaihouが近鉄グループHDに書簡送付したという事実は、 「日本でも投資助言会社がアクティビスト的な動きを取れる」 ことを示した記念碑的な事例です。
日本のアクティビズムは、海外アクティビスト(エリオット、サードポイント、バリューアクト等)や、日系のストラテジック・キャピタル、エフィッシモ、3Dインベストメント・パートナーズなどが中心でした。そこに、井村俊哉氏という「元お笑い芸人の個人投資家」のキャリアを持つ人物が共同代表を務める投資助言会社が、エンゲージメント投資の領域に踏み込んだ ― これは日本の資本市場の成熟と多様化の象徴的な出来事です。
18-7. 個人投資家への教訓
教訓1: 親子上場・複層上場の問題は、日本のコーポレートガバナンス改革の大きなテーマ。今後も多くの企業で構造改革が進む可能性が高い。
教訓2: アクティビスト投資には大きなアップサイドがあるが、それを実行するには資金力、専門性、法的知識、執行力が必要。個人投資家は、これを実行できる優れたファンドに投資することで間接的に恩恵を受けられる。
教訓3: 親子上場銘柄に投資する際は、「いつか親会社が完全子会社化するかもしれない」というカタリスト・シナリオを念頭に置くと、長期的な投資判断に役立つ。
第19章 兼松(8020)・豊和工業(6203)・エフアンドエム(4771) ― 売却した銘柄から学ぶ
19-1. 売却銘柄の重要性
著名投資家の保有銘柄を分析する際、 「買った銘柄」だけでなく「売った銘柄」も同等に重要 です。なぜ売却したのか、その理由を分析することで、その投資家の投資哲学と判断基準をより深く理解できるからです。
blog-hero.com(2025年12月1日付)によれば、Kaihouファンドは2025年中に以下の銘柄を売却しています。
- 兼松(8020): 8月末時点で売却済み(商社株の上昇局面で利益確定したと思われる)
- 豊和工業(6203): 9月下旬に全売却(防衛関連として話題になったが手仕舞い済み)
- エフアンドエム(4771): 10月下旬に売却報告(売却後株価が下落)
19-2. 兼松(8020) ― 商社株の利益確定
兼松(東証プライム、証券コード8020)は、鉄鋼、食料、電子・デバイス、車両・航空などを取り扱う中堅総合商社です。2024年から2025年にかけて、日本の商社株は、ウォーレン・バフェットの五大商社買い増し報道や、商社が次々と打ち出した株主還元強化(自社株買い、増配)を受けて、大きく上昇しました。
Kaihouファンドが兼松を「利益確定」で売却したというのは、井村流の重要な原則を示しています。
原則1: 「2倍に到達したら売る」 井村氏のターゲットリターンは「2〜3年で2倍」。兼松も大きく上昇した局面で、本源的価値に到達したと判断したのでしょう。
原則2: 「アルファが解消されたら売る」 商社株全体がリレーティング(再評価)された結果、もはやアルファ(本源的価値との乖離)が小さくなった。井村流は「割安銘柄を買う」ものであり、もはや割安ではなくなったら売る。
19-3. 豊和工業(6203) ― テーマ株からの撤退
豊和工業(東証スタンダード、証券コード6203)は、工作機械、自動車部品、特装車などを製造する中堅メーカーで、防衛省向けの装備品も製造しています。2025年に「防衛関連株」として注目されました。
「9月下旬に全売却」した理由は推察するしかありませんが、次のような可能性が考えられます。
可能性1: テーマ過熱 防衛関連株が一気に注目され、本源的価値以上に評価された段階で利食い。
可能性2: シナリオ崩壊 投資時に想定したシナリオが、何らかの理由で変わった。例えば、防衛予算の伸びが想定を下回ったり、業績モメンタムが想定と違ったり。
可能性3: より魅力的な機会への乗り換え 別の銘柄でより高い期待リターンが見えたため、ポジションを入れ替えた。
19-4. エフアンドエム(4771) ― 売却で株価下落
エフアンドエム(東証プライム、証券コード4771)は、中小企業向けの経営コンサルティング、人事労務アウトソーシング、税務支援などを手掛ける会社です。
「10月下旬に売却報告。これに伴い株価が下落する場面もありました」(blog-hero.com)というのは、 「井村砲」の逆方向作用 の典型例です。Kaihouが買い増す時に株価が上昇するのと同じく、Kaihouが売却する時には株価が下落しやすい。これは、市場参加者がKaihouの動きを「重要な情報」として受け止めているからこそ起きる現象です。
このリスクは、Kaihouファンドの受益者にとっては、特定銘柄の売却時に基準価額が一時的に押される要因にもなります。
19-5. 個人投資家への教訓
教訓1: 「持ったら売らない」ではなく、「アルファが解消されたら売る」というルールベースの判断。
教訓2: テーマ株は過熱しやすく、過熱した瞬間に利食う規律が重要。
教訓3: 著名投資家の動きを真似る場合、「買い」のタイミングだけでなく「売り」のタイミングも追跡する必要がある。売却が知れ渡る前に売り抜けられるかが、コバンザメ投資の生死を分ける。
第20章 ポートフォリオ全体の業種別・時価総額別分析
20-1. Kaihouファンドの業種別構成
blog-hero.com(2025年12月1日付)の分析によれば、Kaihouファンドの業種別構成は以下のようになっています(2025年7月末時点ベース)。
- 情報・通信業 約26%(テレビ朝日HD、ジャストシステム等の財務体質強固なメディア/ソフト)
- 建設業(地盤ネットHD等を含む)
- 銀行業(大垣共立銀行、プロクレアHD等の地銀)
- その他(SMK、大豊工業等の中堅製造業)
これに加えて、月次レポート(2025年12月時点・推定)では、井村氏自身が「高市政権が誕生し、Kaihou社のハウスビューとして日本株マクロの方向感と年単位の頑強なトレンドを発見できた為、2026年を見越した布陣へとPFを大胆に組み替えています。11月末時点で新PFへの移行」と述べており、2025年後半から2026年にかけて積極的なポートフォリオ組み替えが進んでいることが示唆されています。
20-2. 「井村流ポートフォリオ」のセクター志向の分析
Kaihouファンドのセクター志向を読み解くと、いくつかの特徴が見えます。
特徴1: 派手なテーマを追わない AI、半導体、EVといった派手な成長テーマには、大量のポジションを取っていないように見えます。これは「みんなが買っている銘柄は既に割高」という井村流の基本姿勢の表れです。
特徴2: バリュー寄りの情報・通信業 情通26%といっても、その中身は財務体質強固なテレビ局やソフトウェア会社。高PERグロースではなく、PBRディスカウントを持ったバリュー寄りの情通株。
特徴3: 銀行・建設・製造業など、PBRが低めの伝統的セクター 東証要請を受けて改革余地が大きい、いわゆる「東証PBR改革テーマ」とも親和性が高い。
特徴4: 機関投資家のカバレッジが薄い時価総額帯 Yahoo!ファイナンス掲示板の議論で「時価総額1000億以上は保有ないのだから、かんぽ持ってるわけないでしょ」「プロクレアが時価総額1000億超えたけど」という発言があることから、Kaihouファンドは概ね時価総額1,000億円以下の中小型株を主戦場としていると推察されます。
20-3. 時価総額別の主戦場
井村氏個人投資家時代から、Kaihouファンドの現在まで一貫しているのは、 時価総額1,000億円以下の中小型株を主戦場としている ことです。これは井村流の構造的な競争優位の源泉です。
機関投資家(大手アセットマネジメント、年金基金等)は、運用規模の大きさから、時価総額が小さい銘柄には投資できません。アクティブファンドが30銘柄に分散しても、1銘柄に投じる金額が大きすぎて、小型株の発行済み株式の数十%を占めてしまうからです。
この「機関投資家が踏み込めない領域」に、Kaihouファンドは集中投資しています。 「機関投資家が機関投資家に進化しすぎて入れない市場」で個人投資家的機動力を発揮する ― これがKaihouの戦略的位置取りです。
20-4. ポートフォリオ集中度
blog-heroの分析によれば、テレビ朝日HD一銘柄だけで資産の約16%を占めるという集中度合いは、井村氏個人時代の集中投資の哲学がそのままファンドに引き継がれていることを示します。
公募投信としてはかなり集中度の高いポートフォリオで、これがハイリターン・ハイリスクの両面につながります。Kaihouファンドの基準価額が運用開始から1年余りで80%以上上昇している(2026年5月時点)のは、この集中投資が機能している結果です。一方で、特定銘柄の不調がポートフォリオ全体に与える影響も大きく、相応のボラティリティを覚悟する必要があります。
20-5. 月次レポートから読む井村氏の市場観
2025年12月時点の月次レポートに記された井村氏のコメントは、彼の市場観を端的に示しています。
「Kaihouの井村俊哉です。好敵手として意識しているTOPIXは史上最高値を更新しています。この指数を長期チャートで眺めて下さい。高所恐怖症じゃなくてもその高さに震えてしまう事でしょう。このチャートだけで結論を出すならば、今は株を買う局面ではないと言わざるを得ません。但し、森と木の状態が異なるのはよくある話。大型株を中心に日本株のバリュエーションは割高圏に切り上がっていますが、中小型株は別世界です」。
ここから読み取れること:
- TOPIX(大型株中心)は割高圏に達している
- しかし中小型株は「別世界」=まだ割安
- 「森(マクロ・大型株)より木(個別中小型株)」の物色姿勢
- 高市政権誕生で、「日本株マクロの方向感と年単位の頑強なトレンドを発見」=政治情勢を反映したポートフォリオ組み換え
これは「マクロ環境と個別銘柄のミクロ要因を同時に見る」井村流の典型的なスタンスを示しています。
第21章 「井村砲」現象とその影響
21-1. 「井村砲」とは
「井村砲」とは、 井村氏(またはKaihouファンド)が保有することが判明した銘柄が、その発表をきっかけに大きく株価上昇する現象 を指す、市場参加者の俗称です。
具体例:
- 住石HD: 大量保有報告書判明日にストップ高水準で買い気配
- 大垣共立銀行: マド開け急伸、8年7か月ぶり高値圏
- その他Kaihouファンドの組入が判明した中小型株多数
21-2. 井村砲のメカニズム
井村砲がなぜ発生するのか、メカニズムを整理します。
ステップ1: 井村氏/Kaihouが、深いリサーチでアルファ銘柄を発見し、保有を取得 ステップ2: 5%超の保有なら、大量保有報告書がEDINETで公開される(または、有報の大株主リストで判明) ステップ3: 報道される / SNSで拡散される ステップ4: 多数の個人投資家・機関投資家が「井村氏が買った銘柄だ」と注目し、買い向かう ステップ5: 株価が短期的に急上昇 ステップ6: 業績改善や本源的価値の認知が後追いで確認される ステップ7: 株価がさらに上昇し、本源的価値まで到達
このプロセスでは、井村氏自身が「カタリスト」として機能していることが特徴です。本源的価値はもともとあったわけですが、彼の発見・公開が、価値認知の加速を促した ― これがジョージ・ソロスの「再帰性」の典型例です。
21-3. 井村砲の副作用
井村砲は諸刃の剣です。受益者にとってはプラスの面が大きいですが、いくつかの副作用もあります。
副作用1: イナゴの群がり 井村氏の動きを真似ようとする短期投資家(「イナゴ」)が群がり、短期的な株価変動が激しくなります。本来の中長期投資シナリオが、短期トレーダーのノイズで揺さぶられる。
副作用2: 売却時の値崩れリスク 井村氏がいつか売却する時、「井村氏が売った=何か悪材料があるのか?」と他の投資家が一斉に売りに走り、株価が急落する可能性。エフアンドエムの売却時の株価下落は、この典型例。
副作用3: 自身の機動性低下 公開された後は、井村氏自身がその銘柄を機動的に売買しにくくなる。少しでもポジションを変えると注目され、自身の動きが市場の判断材料になってしまう。
副作用4: 過剰評価への誘導 井村砲で短期的に株価が急騰した結果、本源的価値を上回って取引される可能性。これは長期的な視点で見れば、後の反落を招くリスクがあります。
21-4. 個人投資家への教訓 ― 井村砲を真似て勝てるのか
「井村氏が買った銘柄を真似て買えば勝てるのか」 ― これは多くの個人投資家が抱く疑問です。結論を先に言えば、 「条件付きでイエス。ただし注意点も多い」 となります。
条件1: 早期に情報をキャッチできるか 大量保有報告書はEDINETで誰でも見られますが、見られるまでにタイムラグがあります。報道される頃には既に株価が上昇している可能性が高い。
条件2: 高値掴みを避けられるか 井村砲発動後の急騰局面で買うと、その後の反落で損失を被る可能性があります。
条件3: 長期保有できる胆力があるか 井村氏の保有期間は2〜3年。短期で利食う発想で真似ると、本来のリターンを取り損ねます。
条件4: 売却タイミングを誤らないか 井村氏の売却が判明する前に売り抜けるのは難しい。判明してから売ると、既に値崩れしている可能性が高い。
これらの条件を踏まえると、個人投資家にとっては、 「井村氏の銘柄を直接真似る」よりも「井村流の銘柄選定論理を学んで自分で銘柄を発掘する」 ほうが長期的に有効だと、筆者は考えます。あるいは、井村氏が助言するKaihouファンドに投資することで、間接的に井村流のリターンを享受する方法もあります。
第22章 銘柄選定から見える井村流の本質
22-1. 銘柄群から抽出される井村流のエッセンス
第3〜19章で取り上げてきた銘柄群を俯瞰すると、井村流の本質が浮かび上がります。
本質1: 「市場が見ないところを見る」執念 インフォマートのような時価総額数十億の超小型株、地銀のような「忘れられたセクター」、テレビ朝日HDのような「レガシー業界」、中堅製造業など、機関投資家のカバレッジが薄い領域こそ井村流の主戦場。
本質2: 「半額シール」の発見 本源的価値の半分程度で取引されている銘柄を発見する眼力。三井松島HDも住石HDも大垣共立銀行も、いずれも「市場が嫌っている」ために割安になった銘柄。
本質3: カタリストへのこだわり 単なる割安株(バリュー・トラップ)ではなく、「2〜3年で本源的価値に到達するきっかけ」が見える銘柄を選ぶ。マクロカタリスト(脱炭素→減炭素、金利上昇、東証要請)と、ミクロカタリスト(株主還元強化、業績モメンタム、ガバナンス改革)の組み合わせ。
本質4: セクター・アグノスティック SaaS、地銀、資源、医療系BtoB、電子部品、半導体装置、メディア、商社、製造業など、特定セクターに固執しない柔軟性。アルファのある場所に動く。
本質5: 集中投資の規律 5〜10銘柄程度に集中。1銘柄が16%を占めるような集中度。「確信があるからこそ集中する」「集中するからこそ深くリサーチする」という相互強化のループ。
本質6: 中長期保有 「2〜3年で2倍」がターゲット。年間取引回数は数回程度。短期売買の誘惑を排除する規律。
本質7: エンゲージメントへの進化 個人投資家時代の「パッシブな保有」から、Kaihouファンド時代の「アクティブなエンゲージメント」へ。地盤ネットHDや近鉄グループHDへの対話・提言は、井村流の進化形。
22-2. 「井村流ポートフォリオ」の理論的位置付け
井村流の銘柄選定を、世界の投資理論の系譜の中に位置付けてみましょう。
| 投資家/学派 | 共通点 | 相違点 |
|---|---|---|
| ベンジャミン・グレアム | 「本源的価値と市場価格の乖離」の追求 | グレアムは資産バリュー中心、井村は成長+カタリスト含む |
| ウォーレン・バフェット | 「Moatを持つ良い会社を割安で買う」哲学 | バフェットは大型優良株永久保有、井村は中小型2-3年保有 |
| ピーター・リンチ | 「中小型株、現場主義」 | リンチはセクター特化、井村はセクター不問 |
| フィリップ・フィッシャー | 「成長株への長期投資」 | フィッシャーはグロース重視、井村は割安重視 |
| 米国アクティビスト | 「エンゲージメント」 | 米国アクティビストは攻撃的、Kaihouは対話的 |
| 日本のバリュー投資家(さわかみ等) | 「日本株バリュー」 | さわかみは大型株中心、井村は中小型 |
この比較から見えるのは、井村流が 「複数のバリュー/グロース投資の系譜を、日本の中小型株市場という特殊な土俵に適用したハイブリッド型」 だということです。世界のどの著名投資家の単純コピーでもない、独自の合成手法。これが井村俊哉のオリジナリティです。
22-3. 「井村流の進化」 ― 個人投資家からエンゲージメントファンドへ
井村氏の投資手法は、時間とともに進化しています。
フェーズ1(2010-2014): 短期売買中心の個人投資家。インフォマート10倍株は「放置の結果」だった。
フェーズ2(2015-2020): 中長期投資への移行。リサーチ手法の体系化。1億円→数十億円へ。
フェーズ3(2021-2024): 三井松島HD、住石HDなど大量保有銘柄を増やす。資産100億円達成。Zeppyで投資啓蒙。
フェーズ4(2025-): Kaihouファンド運用開始。エンゲージメント投資の本格化。地盤ネット、近鉄グループへの対話・提言。
このフェーズ4は、井村流の進化の最終段階だと、筆者は考えます。 「銘柄を発見する」だけでなく「銘柄の価値を顕在化させる」 という、より能動的なアプローチへの移行。これは米国アクティビストファンドの世界では一般的ですが、日本でこれを実現できる個人投資家(出身)は極めて少ない。井村氏は、その最前線にいます。
終章 井村俊哉の銘柄選定から私たちが学べること
「銘柄を真似る」より「選定論理を学ぶ」
本記事の冒頭でも触れましたが、井村氏の銘柄をそのまま真似て買うことには、多くのリスクがあります。情報のタイムラグ、井村砲の逆方向作用、流動性の問題、買うタイミングの違い ― いずれも個人投資家が直面する困難です。
それよりも価値があるのは、 井村氏が「なぜその銘柄を選んだか」の論理を学んで、自分の銘柄発掘に応用する ことです。
個人投資家への10の処方箋
本記事を通じて見えてきた、井村流から学べる個人投資家への処方箋を10個に整理します。
処方箋1: 七つの問いを自分なりにカスタマイズして適用する 本家を完全に真似るのは困難。「ダウンサイドリスク」「カタリスト」「経営陣の質」の3問だけでも、保有銘柄ごとに毎四半期チェックする習慣をつける。
処方箋2: 「半額シール」を意識して銘柄を探す 本源的価値に対して市場価格が大幅に低い銘柄、なおかつそのディスカウント理由が「正当ではない」ものを探す視点。
処方箋3: 機関投資家がカバーしない領域に注目する 時価総額500億円以下、アナリストレポートがない、地味な業種など、競争の少ない領域。
処方箋4: マクロカタリストとミクロアルファを組み合わせる 個別銘柄の分析だけでなく、マクロ環境の変化(規制、金融政策、社会的議論)を読む複眼思考。
処方箋5: PBR1倍割れ・東証要請関連銘柄をフォローする コーポレートガバナンス報告書の「資本コストと株価を意識した経営」記述を精読し、改革の本気度を測る。
処方箋6: 大量保有報告書(EDINET)を週次でチェック 著名投資家やアクティビストの動きを早期に察知する習慣。
処方箋7: 「持つだけでなく、対話する」可能性も考える 個人投資家でも、株主総会への参加、議決権行使、株主提案の支持などで、企業に意思を伝えられる。
処方箋8: ポートフォリオの集中度と分散度のバランス 井村流の完全集中(5銘柄)は危険。コア(インデックス70-80%) + サテライト(井村流確信銘柄20-30%)のハイブリッド型が現実的。
処方箋9: 売却の規律を持つ 「アルファが解消されたら売る」「シナリオが崩れたら売る」というルールベース判断。利益確定の規律。
処方箋10: 「夢中になれる」スタイルを選ぶ 井村流が苦行に感じる人には別の手法(インデックス、高配当、ロボアド等)のほうが向いている。自分が夢中になれる手法こそ続けられる。
井村俊哉の物語 ― 投資の可能性
最後に、井村氏のキャリアそのものが投資の世界に示すメッセージについて触れます。
茨城県水戸の進学校から群馬大学工学部を出て、お笑い芸人として年収3万円。彼女から500円玉貯金を借りる底辺の挫折。震災相場での目覚め。中小企業診断士の合格。芸人引退と1億円達成。Zeppyでの啓蒙活動。三井松島HDの大量保有報告書による世間への登場。50億、80億、100億円達成。そして、個人投資家としての「幕引き」と、Kaihouファンドという新しいフェーズへの移行。
この物語が示すのは、 「特別なエリート教育や家柄がなくとも、執念とコスパ思考があれば、投資の世界で頂点に立てる」 という事実です。そして頂点に立った後、 「自分の利益だけでなく、社会全体への還元へと舵を切れる」 という選択肢があるという事実です。
井村氏が選ぶ銘柄を学ぶことは、単なる「銘柄探し」ではなく、 「投資という活動を通じて、自分自身がどんな投資家になりたいかを考える」 ことでもあります。本記事が、皆さんの投資判断の一助になれば幸いです。
参考資料
一次情報(本人発言・公式資料)
- 株式会社Zeppy公式プロフィール「井村俊哉」(https://zeppy.jp/channel/imuratoshiya/)
- 株式会社Zeppy公式サイト(https://zeppy.jp/)
- 株式会社Kaihou関連資料: fundnote日本株Kaihouファンド販売用資料(2024年12月)
- fundnote株式会社「fundnote日本株Kaihouファンド」公式ページ(https://www.fundnote.co.jp/fund/kaihou/)
- fundnote日本株Kaihouファンド 月次レポート(2025年12月時点、井村俊哉氏コメント含む)
- 著書: 井村俊哉『年収3万円のお笑い芸人でも1億円つくれたお金の増やし方5.0』日経BP社、2018年
- 共著: 井村俊哉ほか『1億円を作る! 億り人がやっている株探の超スゴい裏ワザ大全』宝島社、2021年
- 井村俊哉X(旧Twitter): @imuvill
インタビュー記事(準一次情報)
- 日本経済新聞「私の投資論」2014年3月27日
- 日本経済新聞「勝てる投資家への道(2) 元お笑い芸人の井村俊哉さん」2020年3月25日
- 日本経済新聞「個人投資家の井村俊哉氏が助言の投信、1月に募集開始」2024年12月25日
- 日本証券新聞「話題の”10億り人”秘伝を開陳『会社を調べ尽くすこと』『2倍高候補に集中投資』そして… Zeppy代表、元芸人 井村俊哉氏に聞く」2021年12月7日
- ZUU online「果てしないインプットの末にたどり着く適正価格を見抜く眼力 2桁億円を稼ぐ元芸人投資家・井村俊哉さんの手法に迫る!」2021年9月
- 明治安田ライフフィールドマガジン「資産30億を有する投資家・井村俊哉|億り人にきく!投資のいろは」2022年
- TAC NEWS「運用益50億円の元芸人中小企業診断士が語る『資格のコスパ』」2023年9月
- 日経ヴェリタス「元タレント投資家・井村俊哉さん『来年は森より木』激動23年相場・2300人調査③」2023年12月26日
- Forbes JAPAN「年収3万円から資産50億に。極意は『アルファ追求』」Forbes JAPAN編集部
公式プレスリリース・大量保有報告書・適時開示
- fundnote株式会社プレスリリース「Kaihouが助言し国内株式に集中投資する『fundnote日本株Kaihouファンド』運用開始のお知らせ」2025年1月27日
- fundnote株式会社「【新規設定のお知らせ】Kaihouが助言し国内株式に集中投資する『fundnote日本株Kaihouファンド(愛称:匠のファンド かいほう)』」2024年12月25日
- 株探ニュース「三井松島HDについて、井村俊哉氏は保有割合が5%を超えたと報告 [大量保有報告書]」2021年10月21日
- 株探ニュース「大垣共立がマド開け急伸、元芸人・井村氏助言のfundnoteの5%超保有が判明」2025年10月8日
- 日経QUICKニュース「井村俊哉氏が住石ホールディングス(1514)株を7.65%保有」(大量保有報告書)
- 日経QUICKニュース「井村俊哉氏が住石ホールディングス株を買い増し」変更報告書
- 日経QUICKニュース「住石HD(1514)が買い気配となる」(ストップ高水準)
- 関東財務局 金融商品取引業者登録: 株式会社Kaihou(関東財務局長(金商)第3416号)
- Bloomberg「元芸人・井村氏の投資助言会社、近鉄グループに書簡 ― 親子上場に懸念」2026年4月22日
- EDINET(金融庁電子開示システム) ― 大量保有報告書および変更報告書
二次情報(分析・整理記事)
- Wikipedia「井村俊哉」(2026年1月時点)
- 弦本卓也「お笑い芸人でZeppy代表の井村俊哉さんに学ぶ株式投資」2022年3月13日(https://tsurupon.co.jp/zeppy-toshiya-imura/)
- つばめ投資顧問・栫井駿介「【井村俊哉】100億円利益を出した個人投資家がファンドを運用! どれだけ儲かる?」2025年1月14日
- マネーボイス「100億円投資家・井村俊哉さんのファンドに乗っかるべきか? 運用方針と6つのリスクを解説=栫井駿介」2025年1月
- 株についてあれこれ考えるブログ「【2025年最新】井村ファンドの保有銘柄は? どこで買える? NISAで買える?」2025年12月1日(https://blog-hero.com/kaihou-fund-portfolio-review/)
- 四季報分析@テンバガー研究所(X投稿)「井村俊哉氏 過去の大量保有銘柄+α」
- サラリーマン投資家 備忘録「Kaihou〜井村ファンド〜アルファを獲得するための七つの問い」2025年1月10日
データソース
- バフェット・コード「井村俊哉さんが保有する銘柄一覧と評価額」(https://www.buffett-code.com/shareholder/21b73aff918b73f298aed2da0541ce90)
- バフェット・コード「井村俊哉が大量保有する企業詳細」
- 株探「【井村俊哉】が保有する株式一覧・時価総額」(https://kabutan.jp/holder/lists/?holdername=%E4%BA%95%E6%9D%91%E4%BF%8A%E5%93%89)
- 株探「【井村俊哉】が提出した大量保有報告書・変更報告書記事一覧」(https://kabutan.jp/holder/lists/?edicode=E37132)
- Yahoo!ファイナンス「fundnote 日本株Kaihouファンド【BK311251】掲示板」(https://finance.yahoo.co.jp/quote/BK311251/forum)
- Yahoo!ファイナンス「fundnote 日本株Kaihouファンド【BK311251】基準価格・投資信託情報」
- 日本経済新聞「fundnote日本株Kaihouファンド[BK311251]: 投資信託」(https://www.nikkei.com/nkd/fund/?fcode=BK311251)
- みんかぶ投資信託「fundnote日本株Kaihouファンド(匠のファンドかいほう)」(https://itf.minkabu.jp/fund/BK311251)
- QUICK Money World「井村俊哉」関連記事一覧(https://moneyworld.jp/news/list?tag=230184)
- TDnet(東京証券取引所適時開示情報伝達システム)
関連書籍(背景理論)
- ベンジャミン・グレアム『証券分析』『賢明なる投資家』
- ピーター・リンチ『One Up On Wall Street』『株で勝つ』
- フィリップ・フィッシャー『株式投資で普通でない利益を得る』
- ウォーレン・バフェット関連書籍多数
- ナシーム・タレブ『スキン・イン・ザ・ゲーム』
- ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー』
- マイケル・ポーター『競争の戦略』『競争優位の戦略』
著者付記
本記事は、井村俊哉氏のこれまでの公開発言、著作、Kaihou社およびfundnote社の公式資料、各種媒体のインタビュー記事、大量保有報告書、業界二次情報を基に、井村氏の投資銘柄を体系的にまとめたものです。
具体的な銘柄の保有時期、取得価額、売却タイミング、実現損益等の詳細は、多くの場合公開されていません。本記事の各章での投資ストーリーの「推定」「推察」とした部分は、執筆者(AI)による解釈であり、井村氏ご本人および株式会社Kaihouの公式見解を代弁するものではありません。
Kaihouファンドの最新の保有銘柄、月次レポート、運用報告書、組入上位銘柄は、fundnote株式会社の公式サイト(https://www.fundnote.co.jp/fund/kaihou/)で公表されています。投資判断の際は、必ず最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。
(本記事 約32,000字)

