- はじめに――なぜ清原達郎の投資銘柄を分析するのか
- 第1部 清原達郎の投資銘柄の全体像
- 第2部 ACCESS(4813)――清原氏の最大保有銘柄
- 第3部 BBDイニシアティブ(5259)――30%超の集中投資
- 第4部 クルーズ(2138)――情報通信業のもう一つの柱
- 第5部 日精樹脂工業(6293)――伝統的製造業の代表
- 第6部 東洋機械金属/TOYOイノベックス(6210)――機械業界のもう一つの優良株
- 第7部 ヤギ(7460)――繊維商社という意外な選択
- 第8部 遠藤製作所(7841)――ゴルフクラブメーカーへの投資
- 第9部 5%未満の保有銘柄群――広範な分散
- 9-1. 5%未満銘柄の重要性
- 9-2. 岡野バルブ製造(6492)――発電用バルブの専業メーカー
- 9-3. 加藤製作所(6390)――建設機械の老舗
- 9-4. アイナボHD(7539)――住宅設備の卸売
- 9-5. 寺崎電気産業(6637)――船舶用電機の専門メーカー
- 9-6. 日神グループHD(8881)――不動産デベロッパー
- 9-7. 田辺工業(1828)――プラント工事の専業
- 9-8. グランディハウス(8999)――北関東の不動産デベロッパー
- 9-9. 東北新社(2329)――映像メディア企業
- 9-10. 新日本建設(1879)――首都圏の建設会社
- 9-11. 指月電機製作所(6994)――電気部品の専門メーカー
- 9-12. 5%未満銘柄から読み取れる傾向
- 第10部 過去の伝説的投資――ニトリのケース
- 第11部 ヤギ、遠藤製作所、その他の継続保有銘柄の深掘り
- 第12部 暴落時のメガバンク投資――引退後の伝説のトレード
- 第13部 REIT投資の歴史――「落ちてくるナイフを2度つかむ」
- 第14部 清原氏が「絶対に買わない」銘柄
- 第15部 清原銘柄を個人投資家がどう活かすか
- 第16部 結論――清原達郎の投資銘柄から見える「真の投資哲学」
- 参考資料
- あとがき
はじめに――なぜ清原達郎の投資銘柄を分析するのか
タワー投資顧問の基幹ファンド「タワーK1ファンド」を25年間で93倍にした伝説のサラリーマン投資家、清原達郎氏。個人資産は800億円超に達し、2005年の最後の長者番付で全国1位に輝いた人物です。著書『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社、2024年3月)は累計25万部を超える大ベストセラーとなりました。
しかし本書には、清原氏の投資哲学や手法は詳細に書かれているものの、「実際にどの銘柄に投資したのか」という具体的なポートフォリオの開示は限定的です。これは清原氏が長年「銘柄推奨ではなく投資哲学を伝えたい」という姿勢を貫いているためでもあります。
ところが、ここに大きな盲点があります。
清原氏は2023年にタワーK1ファンドの運用を終了した際、ファンドが保有していた一部銘柄を個人で買い取り、現在も保有しているのです。そして金融商品取引法のルールにより、上場企業の発行済株式の5%以上を保有する株主は「大量保有報告書」を金融庁に提出する義務があります。これは誰でも閲覧可能な公開情報です。
つまり、清原氏が個人として5%以上保有している銘柄は、すべて公式に開示されているのです。これは、投資家として歴史的偉業を成し遂げた人物の「実際のポートフォリオ」を、無料で確認できるという意味です。世界の名投資家の中で、ここまで明確に保有銘柄が公開されている人物は珍しいでしょう。
本稿では、この公開情報を基に、清原達郎氏が実際に投資している銘柄、そして過去に投資して大成功を収めた銘柄を徹底分析していきます。10万字を超えるボリュームで、それぞれの銘柄について、企業の事業内容、財務状況、清原氏が注目した理由、清原氏の哲学との整合性、そして個人投資家にとっての示唆を、独自の視点を交えて掘り下げていきます。
筆者がこの作業を通じて伝えたいのは、単なる「銘柄リスト」ではありません。清原氏が「なぜこの銘柄を選んだのか」「どんな視点で企業を見たのか」を、ポートフォリオから逆算して読み解く試みです。これは、清原氏の投資哲学を抽象論ではなく、具体的な事例を通じて理解することにつながります。
なお、本稿で参照する主な一次情報源は以下のとおりです。
- 清原達郎『わが投資術 市場は誰に微笑むか』(講談社、2024年3月)
- 金融庁EDINETに開示されている大量保有報告書
- ブルームバーグ「元タワー投資顧問の清原達郎氏、日本株7銘柄を時間かけて売却へ」(2024年8月16日)
- ロイター「清原達郎氏、ACCESSの筆頭株主に タワー投資顧問から取得」(2023年11月14日)
- ダイヤモンド・オンラインの清原氏ロングインタビュー群
- IRBANK、バフェット・コード、株主プロ、株探などの公開データ
- 各企業の有価証券報告書、決算短信、IR資料
詳細は末尾の「参考資料」に列挙していますので、原典に当たりたい方はそちらをご参照ください。
それでは、清原達郎氏のポートフォリオの世界に分け入っていきましょう。
第1部 清原達郎の投資銘柄の全体像
1-1. ポートフォリオの構造
まず、清原氏のポートフォリオがどのような構造になっているかを概観しましょう。
清原氏のポートフォリオは、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類されます。
第一に、「タワーK1ファンドから引き継いだ大量保有銘柄」です。これは2023年にファンドを解散した際、清原氏が個人で買い取った中小型株です。発行済株式の5%以上を保有しているため、大量保有報告書で開示されています。
第二に、「5%未満の中小型株」です。これらも基本的にはタワー時代から引き継いだ銘柄ですが、保有比率が5%を下回るため、四半期ごとの大量保有報告書の対象外です。一部の銘柄は四季報や企業の有価証券報告書から確認できます。
第三に、「2024年以降の暴落時に買い増したメガバンク・大型株」です。2024年8月の歴史的暴落、2025年4月のトランプ・ショックなどで、清原氏は個人として大型の銀行株を一気に買い向かいました。これは中小型株中心のポートフォリオから大きく変化した動きです。
つまり清原氏の現在のポートフォリオは、「タワー時代の中小型株のロングテール」と「暴落時の大型株への機動的な投資」の2層構造になっていると言えます。
1-2. 大量保有銘柄7銘柄のリスト
2024年8月時点で、清原氏個人が5%以上保有していた銘柄は以下の7銘柄です。これはブルームバーグの記事および各種公開情報で確認できます。
| 証券コード | 銘柄名 | 保有比率(2024年8月時点) | 業種 |
|---|---|---|---|
| 4813 | ACCESS | 31.53% | 情報通信業 |
| 5259 | BBDイニシアティブ | 30.31% | 情報通信業 |
| 2138 | クルーズ | 7.23% | 情報通信業 |
| 6293 | 日精樹脂工業 | 7.12% | 機械 |
| 6210 | 東洋機械金属(現TOYOイノベックス) | 7.11% | 機械 |
| 7460 | ヤギ | 7.29% | 卸売業 |
| 7841 | 遠藤製作所 | 7.16% | 金属製品 |
これらの保有比率は変動するため、最新情報はIRBANKや株探などの専門サイトで随時確認できます。
ここで注目すべきは、ACCESSとBBDイニシアティブが30%超という、極めて高い保有比率になっている点です。これは単なる「投資家」を超えた水準で、実質的に経営に影響を及ぼし得る規模の出資です。
それに対して、他の5銘柄(日精樹脂工業、東洋機械金属、ヤギ、遠藤製作所、クルーズ)は7%前後の保有比率で、これは清原流の「集中投資だが分散も意識した」典型的なポジションサイズと言えます。
1-3. 業種分散の特徴
清原氏のポートフォリオの業種分散を見てみると、興味深い特徴が浮かび上がります。
情報通信業(ACCESS、BBDイニシアティブ、クルーズ)が3銘柄。 機械(日精樹脂工業、東洋機械金属)が2銘柄。 卸売業(ヤギ)が1銘柄。 金属製品(遠藤製作所)が1銘柄。
つまり、テクノロジー系(情報通信業)と伝統的製造業(機械、金属製品)が、ほぼ拮抗する形でポートフォリオを構成しているわけです。
これは清原氏の投資哲学を考えると、極めて理にかなった分散です。テクノロジー系は成長余地が大きく、業績拡大時のアップサイドが大きい。一方、伝統的製造業は財務体質が堅実で、ネットキャッシュが豊富な銘柄が多く、下値の堅さが期待できる。両者を組み合わせることで、リスクとリターンのバランスを取っているのです。
さらに、保有比率5%未満の銘柄まで含めると、業種はさらに広がります。
- 建設業:田辺工業、新日本建設
- 機械・電機:加藤製作所、岡野バルブ製造、寺崎電気産業、指月電機製作所
- 不動産:日神グループHD、グランディハウス
- 情報通信業:東北新社、フェイス
- 卸売業:アイナボHD
これらを総合すると、清原氏のポートフォリオには「日本の伝統的な中小型製造業」「割安に放置された情報通信業」「人気のない不動産関連」が網羅的に含まれていることが分かります。
1-4. 時価総額の分布
清原氏が保有する銘柄の時価総額を整理すると、ほぼすべてが時価総額500億円未満の小型株です。中には時価総額100億円未満の超小型株も含まれています。
これは清原氏が本書で何度も強調している「割安小型成長株への集中投資」という戦略を、文字通り実践した結果です。機関投資家がカバーしない、流動性の低い小型株こそ、清原氏の主戦場だったわけです。
例えば、2024年時点での各銘柄の時価総額をざっくり整理すると以下のようになります(株価変動により変動します)。
- ACCESS:約200〜300億円
- BBDイニシアティブ:約100〜200億円
- クルーズ:約50〜100億円
- 日精樹脂工業:約200〜300億円
- 東洋機械金属(TOYOイノベックス):約150〜250億円
- ヤギ:約150〜250億円
- 遠藤製作所:約100〜200億円
これらは、まさに「機関投資家が手を出せない領域」の典型的な時価総額レンジです。1兆円超のファンドが10億円のポジションを取ろうとしても、出来高の問題で容易ではありません。だからこそ、清原氏のような独立系ヘッジファンドや個人投資家にとって、超過リターンを生む宝の山になっているのです。
1-5. 保有期間の特徴
清原氏の銘柄保有期間は、多くの場合、長期にわたります。本書および各種インタビューで明らかになっている保有期間の例を挙げると、以下のとおりです。
- ACCESS:タワー投資顧問時代から保有。2023年11月にタワーから清原氏個人へ約95億円で売却された後も継続保有。
- ニトリ:1990年代後半から2004年頃まで保有。約10倍で全株売却。
- 多くの中小型株:5年〜10年以上保有しているケースが多い。
これは清原氏の哲学「下がっても売らない、ファンダメンタルズに変化がなければ持ち続ける」を体現したものです。短期売買ではなく、企業価値の長期的な向上を待つスタイルが、清原氏の投資銘柄からも読み取れます。
ただし、2024年8月のブルームバーグへのインタビューで、清原氏は「7銘柄を時間をかけて売却していく」と述べています。これは引退に伴うポジション解消を進めている段階ということでしょう。「時間をかけて」という表現がポイントで、急いで売れば株価が崩れるため、市場の流動性に配慮しながら徐々に売却していく方針です。
1-6. 配当狙いか、株価上昇狙いか
清原氏の投資銘柄を見ると、「配当狙い」と「株価上昇狙い」の両方が混在しています。
特に2024年以降に買ったメガバンク株(三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、大和証券グループ本社など)は、明確に「配当狙い」だと清原氏自身がインタビューで述べています。「これからは悠々自適の配当生活ですよ」と冗談混じりに語っているとおりです。
一方、ACCESS、BBDイニシアティブなどの中小型株は、配当よりもネットキャッシュ比率や成長性を重視した、株価上昇狙いの投資と推測されます。
この使い分けは、清原氏の年齢(1959年生まれ、現在60代後半)とも整合的です。引退後、リスクの高い小型株への新規投資は控え、配当収入が安定的に得られる大型株にシフトしているわけです。一方、タワー時代から保有している中小型株は、流動性の問題で一気に売却できないため、徐々に処分していく方針です。
これは個人投資家にとっても重要な示唆です。年齢やライフステージに応じて、ポートフォリオの性質を変えていく必要がある。若いうちは小型成長株でリスクを取り、年齢が上がるにつれて配当株や大型株にシフトしていく。清原氏自身がこのライフサイクル投資を実践しているわけです。
1-7. 「清原氏の銘柄を買えば儲かる」のか
清原氏の保有銘柄が公開されていることから、「清原氏が買った銘柄を真似すれば儲かるのではないか」と考える個人投資家は少なくありません。これを「清原フォロー戦略」と呼ぶことにしましょう。
結論から言うと、清原フォロー戦略には大きなリスクがあります。
第一に、「タイミングが遅い」リスクです。大量保有報告書は、5%を超えた時点で5営業日以内に提出されるため、公開されるまでに数日〜1週間程度のタイムラグがあります。さらに、それを個人投資家が発見して買うまでには、さらに時間がかかります。その間に、株価は既に上昇している可能性が高いのです。
実際、清原氏の大量保有報告書が公開された直後に株価が急騰し、その後しばらく揉み合うパターンが観察されています。投資ブロガーのhina氏も「大量保有報告書に名前が出た時は株価もいいところに来ている場合が多い」と指摘しています。
第二に、「保有期間が違う」リスクです。清原氏は5年〜10年以上の超長期スパンで保有していることが多いですが、個人投資家がそれを真似するのは精神的に難しい。途中で含み損になると、ほとんどの人が損切りしてしまいます。
第三に、「保有比率が違う」リスクです。清原氏は1銘柄に数十億円から100億円超を投じることもありますが、個人投資家は10万円〜100万円程度。同じ銘柄でも、ポジションサイズが異なれば、リスク管理の考え方も変わります。
第四に、「分析力が違う」リスクです。清原氏は経営者に直接会って判断していますが、個人投資家にはそれができません。表面的な公開情報だけでは、清原氏と同じ確信を持って保有し続けることは困難です。
第五に、「いつ売るか分からない」リスクです。清原氏が買った後にいつ売却するかは公開されません。大量保有報告書の変更報告は1%変動ごとに提出されるため、保有比率が5%を割らない限り、5%以下の売却は分かりません。気がついたら清原氏が大半を売り抜けていた、ということもあり得ます。
したがって、清原氏の保有銘柄を盲目的に真似することは、賢明な戦略とは言えません。むしろ、彼の選定基準(ネットキャッシュ比率、PER、経営者の質など)を学び、自分自身で同様の基準で銘柄を選ぶ方が、健全な投資態度と言えるでしょう。
それを前提に、以下では清原氏の各保有銘柄を詳しく見ていきます。「なぜ清原氏はこの銘柄を選んだのか」を理解することは、清原流の投資眼を養う上で極めて貴重な学習機会だからです。
第2部 ACCESS(4813)――清原氏の最大保有銘柄
2-1. ACCESSという企業
ACCESSは、東証スタンダード市場に上場する情報通信業の企業です(証券コード4813)。社名のとおり「アクセス(接続)」を提供する技術企業で、組み込みソフトウェア、ネットワーク技術、IoTソリューションなどを手がけています。
同社の中核技術は、組み込みブラウザ「NetFront Browser」です。これは1990年代後半から2000年代にかけて、世界中の携帯電話に搭載された世界的な技術でした。フィーチャーフォン(ガラケー)の時代、世界中の携帯電話がインターネットに接続できるようになった背景には、ACCESSのNetFront技術がありました。
しかし、スマートフォンの時代が到来し、iPhone のSafari、Android のChromeなどが主流になると、NetFrontの存在感は急速に薄れていきました。同社の業績も、この時代の転換期に大きく揺らぎました。
その後ACCESSは、組み込みLinuxソリューション、デジタル放送技術、IoT機器向けの通信技術、ネットワーク機器のソフトウェア提供などに事業を多角化していきます。現在は、放送、家電、通信機器、自動車などの分野で、組み込みソフトウェア技術を提供する会社として再生を遂げつつあります。
2-2. なぜ清原氏はACCESSに投資したのか
清原氏がACCESSに大規模投資した背景には、いくつかの要因があると推測されます。
第一に、「過去の栄光からの転落」というバリュー機会です。NetFront時代の高い時価総額から大幅に下落し、市場からほぼ見捨てられた状態だった時期に、清原氏は投資を開始したと考えられます。これは清原流の「割安な小型株」の典型例です。
第二に、技術資産の蓄積です。ACCESSは長年にわたる組み込みソフトウェア開発で、多くの技術特許とノウハウを蓄積しています。これらは表面的な財務諸表には十分反映されない「隠れた資産」です。
第三に、IoT時代への展開可能性です。組み込みソフトウェアの技術は、IoT時代に再び脚光を浴びる可能性があります。家電、自動車、産業機器など、あらゆるものがインターネットに接続される時代、ACCESSの技術が新たな成長機会を得る可能性があるのです。
第四に、財務体質の改善です。ACCESSは過去の苦境を乗り越え、現在は無借金経営に近い状態で、財務体質が改善しています。これは清原流の「ネットキャッシュ豊富」という基準に合致します。
2-3. 株式取得の経緯――2023年11月の95億円取引
清原氏とACCESSの関係で最も重要な出来事は、2023年11月13日に行われた大規模な株式取得です。
ロイターの報道によれば、清原達郎氏は2023年11月13日付で、タワー投資顧問から1260万株(発行済株式の31.65%)のACCESS株を、95億3820万円で取得しました。これにより、清原氏は個人としてACCESSの筆頭株主となりました。
タワー投資顧問の保有比率は、それまでの44.68%から12.90%に低下しました。これは、タワーK1ファンドの解散プロセスの一環として、保有していた銘柄を清原氏個人が買い取った形です。
ここで興味深いのは、株式の取得価格です。95億3820万円を1260万株で割ると、1株当たりの取得価格は約757円となります。この時期のACCESSの株価は700〜800円程度で推移していたので、ほぼ市場価格での取得です。「タワーから清原氏個人への引き継ぎ」という性格を持つ取引でしたが、市場価格を尊重した、ガバナンス上クリーンな取引であったことが分かります。
ロイターの記事によれば、保有目的は「純投資」とされており、経営参加目的ではないと明示されています。これは「投資家として保有する」というスタンスを示すものです。
2-4. なぜ31.65%もの大量保有なのか
清原氏のACCESSへの投資の特異性は、その保有比率の高さにあります。発行済株式の3分の1近くを個人で保有するというのは、上場企業に対する投資としては極めて異例の水準です。
なぜここまで集中投資したのか。筆者の推測では、以下のような理由が考えられます。
第一に、タワー時代からの保有を引き継いだ結果です。タワーK1ファンドは、過去に何度かACCESS株を買い増しし、最大44.68%まで保有していました。ファンド解散時、これだけの大株主が一気に売却すれば、株価は暴落します。だから清原氏個人が買い取り、徐々に処分していく方針となったわけです。
第二に、清原氏のACCESSに対する強い信頼です。30%超を個人で保有するということは、企業の将来性に対する極めて強い確信がない限り、リスクが大きすぎます。清原氏は本書で具体的にACCESSについて多くを語ってはいませんが、これだけのポジションを持つということは、相応の自信があると見るべきでしょう。
第三に、「実質的な経営パートナー」としての立ち位置です。30%超の株主は、株主総会で通常の議案を否決する力を持ちます(拒否権を持つ)。これは経営陣との関係において、重要な発言権を意味します。清原氏は「純投資」と表明していますが、現実には実質的な経営パートナーとして、企業の将来に大きな影響力を持ちうる立場にあります。
2-5. ACCESSの財務状況
ACCESSの財務面を見ると、清原氏が好むタイプの「ネットキャッシュ豊富な企業」の特徴を備えています。
近年のACCESSは、売上高200億〜300億円程度、営業利益は数億円〜十数億円のレンジで推移しています。決して大幅な成長企業ではありませんが、安定的な収益基盤を持っています。
特筆すべきは、貸借対照表の健全さです。同社は現金預金を多く保有し、有利子負債が少ない、いわゆる「実質無借金」に近い財務体質を持っています。これは清原氏の「ネットキャッシュ比率」のスクリーニングで上位に挙がる典型的なパターンです。
清原氏のネットキャッシュ比率の計算式に当てはめると、ACCESSは時価総額に対して相当なネットキャッシュを保有していることが分かります。これは「会社がほぼタダで買える」レベルの割安度であり、清原氏が長期保有する根拠の一つとなっているはずです。
2-6. ACCESSへの投資の現状
清原氏がACCESSをいつまで保有するかは不明ですが、ブルームバーグへのインタビュー(2024年8月)では「時間をかけて売却していく」と述べています。30%超の大株主が一気に売却すれば株価は暴落するため、ゆっくりと市場に吸収される形での売却が想定されます。
実際、清原氏は2024年から2025年にかけて、ACCESSの保有比率を徐々に下げているという報告があります。2026年現在では、保有比率は30%程度に留まっているという情報もあります。これは、市場の流動性に配慮した、計画的な売却プロセスが進行中であることを示唆しています。
個人投資家にとっての示唆は、ACCESSのような銘柄を保有する場合の「出口戦略」の重要性です。買うのは簡単ですが、売るのは難しい。特に流動性の低い小型株では、自分が大きなポジションを持っていれば、それを売却することで株価が下がってしまいます。清原氏のような大口投資家は、長期にわたって徐々に売却するしか方法がないのです。
筆者の独自視点では、清原氏のACCESSへの集中投資は、彼の投資哲学の「集大成」とも言える事例だと考えます。割安な技術系企業、財務体質の健全さ、長期保有による複利効果、そして適切な出口戦略。これらすべてが組み合わさった、ある意味で「清原投資術の教科書」のような事例なのです。
第3部 BBDイニシアティブ(5259)――30%超の集中投資
3-1. BBDイニシアティブという企業
BBDイニシアティブ(証券コード5259)は、東証グロース市場に上場する情報通信業の企業です。「BBD」は「Brand Building Design」または同社の理念を表す略称とされます。
同社の主力事業は、SaaS(Software as a Service)型のクラウドサービスです。具体的には、企業向けの業務支援システム、データ分析プラットフォーム、デジタルマーケティング支援サービスなどを提供しています。
ここで注意すべきは、BBDイニシアティブは比較的新しい上場企業であり、まだ市場での認知度が低い、小型のテクノロジー企業だということです。時価総額は100億〜200億円程度の小型株であり、まさに清原氏の主戦場である「機関投資家がカバーしない領域」に位置しています。
3-2. 清原氏の保有経緯
清原氏のBBDイニシアティブへの投資は、タワーK1ファンド時代から続いているものと推測されます。2024年8月時点で、清原氏個人の保有比率は30.31%と、極めて高い水準にあります。
これは、ACCESSと並んで、清原氏のポートフォリオの中で最も集中度の高い投資の一つです。30%超の保有比率というのは、一般的なヘッジファンドの投資としても異例の規模であり、清原氏がこの企業に対して強い確信を持っていることを示唆しています。
3-3. なぜ清原氏はBBDイニシアティブを選んだのか
筆者の推測では、清原氏がBBDイニシアティブに投資した理由は以下のとおりです。
第一に、SaaSビジネスの構造的優位性です。SaaSは月額課金型のビジネスモデルで、収益の予測可能性が高く、顧客が一度導入すると解約率(チャーン率)が低いため、長期的にキャッシュフローが安定します。清原氏が好む「キャッシュフローが安定したビジネスモデル」の典型例です。
第二に、市場の成長性です。日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)はまだ発展途上であり、業務支援SaaSの市場は今後も拡大が見込まれます。マクロのトレンドとして追い風があるわけです。
第三に、小型株ゆえの割安さです。BBDイニシアティブは、知名度が低いため、米国の大手SaaS企業(Salesforceなど)と比較すると、相対的に割安に評価されている可能性があります。清原氏は、こうした「機関投資家の目が届かない領域での割安SaaS」を発掘したと推測されます。
第四に、経営者の質です。清原氏は経営者の質を最重視する投資家です。BBDイニシアティブの経営陣についても、清原氏が直接対話して評価したと考えられます。
3-4. 集中投資のリスク
BBDイニシアティブへの30%超の集中投資には、当然リスクもあります。
第一に、流動性リスクです。30%もの大株主が売却を始めれば、市場では大きな売り圧力となり、株価が下落します。清原氏が売却を進めていることが市場に伝わると、株価への悪影響が予想されます。
第二に、業績変動リスクです。SaaS企業は成長段階によって業績が大きく変動します。BBDイニシアティブが順調に成長すれば株価は大きく上昇しますが、競合に押されたり成長が鈍化したりすれば、株価は大きく下落するリスクもあります。
第三に、テクノロジー業界特有のリスクです。技術革新のスピードが速く、競合の参入も激しい業界です。今のビジネスモデルがいつまで通用するかは不確実です。
しかし、清原氏がこれらのリスクを十分認識した上で、なお30%超の保有を継続しているということは、それを上回るアップサイドがあると判断しているということです。
3-5. 個人投資家への示唆
BBDイニシアティブへの投資から個人投資家が学べることは、いくつかあります。
第一に、「知名度の低い小型SaaS企業」も、清原氏の投資対象として有望視されているという事実です。多くの個人投資家は、大手のテクノロジー企業(楽天、メルカリ、サイバーエージェントなど)に注目しがちですが、それらは既に株価が織り込まれている可能性があります。むしろ、知名度の低い小型SaaS企業の中に、本当のお宝が眠っている可能性があります。
第二に、「経営者の質」が極めて重要だということです。SaaS企業のような成長企業では、経営者のビジョンと実行力が業績に直結します。決算説明会の動画を見たり、社長のインタビュー記事を読んだりして、経営者の質を見極める努力が必要です。
第三に、「集中投資の覚悟」です。清原氏のように30%超を保有するのは個人投資家には無理ですが、確信のある銘柄にはある程度のウェイトを置くことが、リターンを最大化するためには必要です。10銘柄に10%ずつ分散するよりも、3〜5銘柄に重点配分する方が、リターンが大きくなることが多いのです。
3-6. BBDイニシアティブの2024年8月急落
2024年8月16日、ブルームバーグが「清原達郎氏が7銘柄を時間をかけて売却していく」と報じた直後、BBDイニシアティブの株価は急落しました。トレーダーズ・ウェブも「BBDイニシアティブ – 急落 元タワー投資顧問の清原達郎氏 保有株時間かけ売却へと伝わる」と報じています。
これは、大口投資家の売却が示唆されただけで、株価が大きく動くという、流動性の低い小型株のリスクを象徴する出来事でした。
この事例から学べることは、「大口投資家のセンチメントが市場心理に大きな影響を与える」という現実です。特に小型株では、清原氏のような著名投資家の動向が、株価を大きく動かす要因となります。これは、清原氏の保有銘柄を真似する戦略のリスクでもあります。買う時は出遅れ、売る時は遅れる。これでは儲かりません。
筆者の独自視点では、BBDイニシアティブの事例は「清原銘柄の現実」を象徴しているように感じます。優れた企業ではあるが、清原氏の存在自体が株価に大きな影響を与える。これは投資家としては難しい状況です。だからこそ、清原氏自身も「時間をかけて売却していく」という、市場の流動性に配慮した方針を採用しているのです。
第4部 クルーズ(2138)――情報通信業のもう一つの柱
4-1. クルーズという企業
クルーズ(証券コード2138)は、東証スタンダード市場に上場する情報通信業の企業です。社名は英語の「Crooz」と表記され、創業者である小渕宏二氏が率いる、独立系のインターネット企業として知られています。
同社は、複数の事業を展開する多角化企業です。主な事業領域は、ファッションEC(特に「SHOPLIST.com」というファストファッションECサイトを運営)、ゲーム開発・運営、メディア事業、投資事業などです。
特に「SHOPLIST.com」は、若年層向けのファストファッションECとして一定の認知度を獲得しています。低価格でトレンドのファッションを揃え、若年女性層を中心に支持を集めてきました。
4-2. 清原氏の保有経緯と保有比率
清原氏のクルーズへの保有比率は、2024年8月時点で7.23%です。これは「集中投資」というよりも、「ある程度のウェイトを置いた中堅ポジション」と言える水準です。
清原氏がクルーズに投資した時期や経緯は、本書では詳述されていません。しかし、タワーK1ファンド時代から保有している中堅銘柄の一つと推測されます。
4-3. なぜクルーズに投資したのか
クルーズへの投資の理由を推測すると、以下のような点が挙げられます。
第一に、多角化された事業ポートフォリオです。クルーズはEC、ゲーム、メディア、投資と、複数の事業を展開しており、リスク分散がなされています。一つの事業が不振でも、他の事業がカバーする可能性があります。
第二に、創業者経営の魅力です。クルーズは小渕宏二氏という創業者が経営を率いており、創業者の自己資金が会社に投じられています。これは清原氏が好む「経営者と株主の利害一致」という条件に合致します。
第三に、ファストファッションEC市場の成長性です。ZOZOやユニクロのような大手と比較すると、SHOPLISTは小規模ですが、それでも一定の市場ポジションを確立しています。
第四に、財務体質の堅さです。クルーズは複数の事業からのキャッシュフローを蓄積しており、ネットキャッシュが比較的潤沢です。
4-4. クルーズへの投資の課題
しかし、クルーズへの投資には課題もあります。
第一に、ファストファッション業界の競争激化です。SHEIN、Temuなどの中国系プレイヤーが日本市場に進出しており、SHOPLISTの競争環境は厳しくなっています。
第二に、ゲーム事業の不安定性です。ゲーム業界はヒット作の有無で業績が大きく変動します。安定的な収益基盤としては不安定な要素もあります。
第三に、メディア事業の苦戦です。スマートニュースやYahoo!ニュースなどの大手プラットフォームに、ニッチプレイヤーは押されがちです。
これらの課題があるからこそ、株価は割安に推移しているわけです。清原氏は、こうした課題を認識しつつも、長期的な企業価値の向上に賭けていると推測されます。
4-5. クルーズの保有比率の変動
直近の情報では、清原氏のクルーズ保有比率は7.23%から9.78%程度に変動しているという報告もあります。これは買い増しではなく、発行済株式数の変動(自社株買いなど)による比率の上昇である可能性が高いです。
クルーズが自社株買いを実施すれば、発行済株式数が減少し、既存株主の持分比率が相対的に上昇します。これは、清原氏が望む「株主還元」が実行されていることを意味します。
第5部 日精樹脂工業(6293)――伝統的製造業の代表
5-1. 日精樹脂工業という企業
日精樹脂工業(証券コード6293)は、東証プライム市場に上場する機械業界の企業です。同社は射出成形機の老舗メーカーで、長野県埴科郡坂城町に本社を置いています。
射出成形機とは、プラスチック樹脂を加熱して溶かし、金型に流し込んで製品を作る機械のことです。あらゆるプラスチック製品の製造に不可欠な機械で、自動車部品、家電製品、医療機器、日用品など、幅広い分野で使われています。
日精樹脂工業は、この射出成形機の分野で日本国内トップクラスのメーカーです。創業から70年以上の歴史を持ち、国内外で高いシェアを誇ります。製品の信頼性、技術力、アフターサービスなどで、業界から高い評価を得ている老舗企業です。
5-2. 清原氏の保有比率と経緯
2024年8月時点で、清原氏の日精樹脂工業の保有比率は7.12%です。これは清原流の典型的な「集中投資ポジション」と言える水準です。
清原氏が日精樹脂工業を選んだのは、まさに清原投資術の本質を体現する銘柄だと言えます。
5-3. なぜ日精樹脂工業に投資したのか
筆者の独自分析では、清原氏が日精樹脂工業に投資した理由は以下のとおりです。
第一に、ニッチな市場でのトップポジションです。射出成形機は地味な分野ですが、産業の基盤となる重要な機械です。日精樹脂工業はこの分野で確固たる地位を築いており、参入障壁が高い。
第二に、海外展開の進展です。同社は中国、東南アジア、北米、欧州などにも進出しており、グローバル市場でのプレゼンスを高めています。これは将来の成長余地を示すものです。
第三に、財務体質の極めて堅実な状態です。日精樹脂工業は長年にわたって安定的な利益を計上しており、内部留保が厚く、ネットキャッシュが豊富です。負債は極めて少なく、実質無借金経営に近い状態です。これは清原氏のネットキャッシュ比率の計算で、1以上になる典型的なパターンです。
第四に、市場での認知度の低さです。地味な機械メーカーであるため、機関投資家のカバレッジが限定的で、アナリストレポートも少ない。これは情報の非対称性を意味し、清原氏のような独自リサーチをする投資家にとって、超過リターンを得るチャンスになります。
第五に、ESG投資の流れから外れていることです。プラスチック関連の機械メーカーは、近年のESG志向の機関投資家からは敬遠される傾向にあります。これは皮肉なことに、清原氏のような「ESGに懐疑的な」投資家にとってはチャンスです。市場が嫌う銘柄こそ、割安に取引されているからです。
5-4. 射出成形機業界の動向
射出成形機業界は、世界的に見ると、いくつかの大きなトレンドに直面しています。
第一に、自動車のEV化に伴う部品構成の変化です。EVではエンジン部品が不要になる一方、新たな部品(バッテリー周辺部品、軽量化のための樹脂部品など)の需要が増えます。射出成形機メーカーにとっては、機会と脅威が混在する局面です。
第二に、医療機器分野での需要拡大です。医療機器の樹脂部品は、高い精度と清浄性が求められます。日精樹脂工業のような技術力の高いメーカーが、この成長分野で恩恵を受けます。
第三に、環境配慮型製造への移行です。リサイクル可能な樹脂、バイオプラスチックなど、環境配慮型の樹脂への対応が求められています。これに対応できるメーカーが勝ち残る競争になります。
第四に、自動化・スマート工場化の流れです。IoTを活用した遠隔監視、AIによる最適化など、射出成形機もスマート化が進んでいます。
日精樹脂工業は、これらのトレンドに対応するために、研究開発を続けています。清原氏は、こうした技術力と適応力に注目しているのでしょう。
5-5. 個人投資家への示唆
日精樹脂工業への清原氏の投資から、個人投資家が学べることは多いです。
第一に、「地味な業界の優良企業」を見つける視点です。射出成形機メーカーは、メディアで取り上げられることはほとんどありません。しかし、産業の基盤を支える重要な企業であり、財務体質も堅実です。こうした企業こそ、長期投資の対象として優れているのです。
第二に、「財務諸表を丁寧に読む」習慣の重要性です。日精樹脂工業の真の価値は、決算短信や有価証券報告書を読むことで初めて分かります。流動資産、投資有価証券、負債のバランスを見て、ネットキャッシュ比率を計算する。この地道な作業こそ、清原流の投資の本質です。
第三に、「世間の流行と逆」を行く勇気です。プラスチック関連企業はESGの観点から敬遠されがちですが、現実には世界はまだまだプラスチックを必要としています。市場の偏見を利用して、優良企業を割安に買う。これがバリュー投資家の腕の見せどころです。
筆者の独自視点では、日精樹脂工業は「清原投資術の最も典型的な銘柄」の一つだと感じます。地味で、知名度が低く、機関投資家のカバレッジも薄く、しかし財務体質は堅実で、産業の基盤を支える優良企業。これこそ、清原氏が25年間にわたって発掘し続けてきた銘柄群の典型例なのです。
第6部 東洋機械金属/TOYOイノベックス(6210)――機械業界のもう一つの優良株
6-1. 東洋機械金属(TOYOイノベックス)という企業
東洋機械金属は、2024年に社名を「TOYOイノベックス」に変更した、東証プライム市場に上場する機械業界の企業です(証券コード6210)。社名変更は、企業のブランドイメージを刷新し、新たな成長フェーズに入ることを示すものです。
同社の主力製品は、ダイカストマシンと射出成形機です。ダイカストマシンとは、溶融した金属(主にアルミ、亜鉛、マグネシウムなど)を高圧で金型に注入し、金属製品を製造する機械です。日精樹脂工業の射出成形機(樹脂用)と並んで、産業の基盤を支える重要な機械です。
東洋機械金属(TOYOイノベックス)は、ダイカストマシン分野で日本国内トップクラスのメーカーで、特に自動車部品の製造で広く使われています。自動車のエンジンブロック、トランスミッションケース、ホイール、フレームなどの部品は、ダイカストマシンで大量生産されています。
6-2. 清原氏の保有比率
2024年8月時点で、清原氏の保有比率は7.11%です。これは清原流の典型的な集中投資ポジションです。
6-3. なぜ東洋機械金属に投資したのか
筆者の推測では、清原氏が東洋機械金属に投資した理由は以下のとおりです。
第一に、自動車産業との連携です。日本の自動車産業は世界的に強い競争力を持っており、その部品製造を支えるダイカストマシンメーカーは、構造的に堅実な需要を享受できます。
第二に、EV化への対応です。EVではエンジンが不要になりますが、代わりにモーターケース、バッテリーケース、ヒートシンクなど、新たなダイカスト部品の需要が生まれます。EV化の波は、ダイカストマシンメーカーにとって脅威ではなく機会です。
第三に、財務体質の堅実さです。東洋機械金属も、日精樹脂工業と同様、内部留保が厚く、ネットキャッシュが豊富な企業です。これは清原流の投資基準に合致します。
第四に、技術的な競争力です。ダイカストマシンは精密機械であり、技術蓄積が重要です。長年の経験を持つ東洋機械金属は、新興メーカーには簡単に追いつかれない技術的優位性を持っています。
第五に、社名変更による再評価期待です。「TOYOイノベックス」への社名変更は、企業の再活性化を示すシグナルです。市場が再評価する契機になる可能性があります。
6-4. ダイカストマシン業界の動向
ダイカストマシン業界は、いくつかの重要なトレンドに直面しています。
第一に、EV化に伴う「ギガキャスト」の登場です。テスラが先駆けとなった「ギガキャスト」(巨大な一体成形ダイカスト)の技術は、自動車の車体構造を革新する可能性があります。これに対応できるメーカーが勝ち残ります。
第二に、軽量化ニーズの拡大です。燃費向上やEVの航続距離延長のため、自動車部品の軽量化が進んでいます。アルミやマグネシウムのダイカスト需要は今後も拡大が見込まれます。
第三に、新興国市場の成長です。中国、インド、東南アジアの自動車市場が拡大しており、ダイカストマシンの需要も増加しています。
第四に、自動化・スマート工場化の流れです。AIによる品質管理、IoTによる遠隔監視など、ダイカストマシンもスマート化が進んでいます。
これらのトレンドに対応するため、東洋機械金属(TOYOイノベックス)も研究開発を続けています。
6-5. 個人投資家への示唆
東洋機械金属(TOYOイノベックス)への清原氏の投資から学べることは、日精樹脂工業と共通する部分が多いです。
第一に、「地味な機械メーカー」の中に優良企業がある、ということです。射出成形機もダイカストマシンも、地味で目立たない業界です。しかし、産業の基盤を支える重要な企業群であり、長期投資の対象として優れています。
第二に、「業界の構造変化」を見抜く眼です。EV化、軽量化、スマート工場化など、業界には常に変化があります。その変化に対応できるメーカーを見極める力が必要です。
第三に、「社名変更などのイベント」が再評価の機会になることがある、ということです。市場は意外と単純で、社名変更や中期経営計画の発表などをきっかけに、それまで放置されていた銘柄が再評価されることがあります。
第7部 ヤギ(7460)――繊維商社という意外な選択
7-1. ヤギという企業
ヤギ(証券コード7460)は、東証プライム市場に上場する卸売業の企業です。創業は1893年(明治26年)と、130年以上の歴史を持つ老舗の繊維商社です。
同社の主力事業は、繊維素材、衣料品、関連製品の卸売り・販売です。特にライフスタイル分野での展開が広く、糸、生地、衣料品、ファッションブランドの企画・販売など、多角的な事業を展開しています。
2024年3月期の連結売上高は828億円。グループ子会社には株式会社WEAVAがあり、アパレルブランドの「TATRAS(タトラス)」を展開しています。TATRASはイタリア発のラグジュアリーアウターブランドで、日本市場でも一定の認知度があります。
7-2. 清原氏の保有比率
2024年8月時点で、清原氏のヤギの保有比率は7.29%です。これも清原流の典型的な集中投資ポジションです。
7-3. なぜヤギに投資したのか
繊維商社という、一見すると清原氏の投資スタイルに合わなさそうな業種に投資した理由は何でしょうか。
第一に、極めて割安に放置されていることです。繊維商社は、伝統的に市場から人気がない業種です。成長期待が薄く、機関投資家のカバレッジも限定的。だからこそ、財務体質に見合わない安い株価で取引されています。
第二に、ネットキャッシュ豊富な財務体質です。長年の事業で蓄積した内部留保があり、ネットキャッシュ比率は高いと推測されます。
第三に、ブランド事業の成長性です。TATRASのようなラグジュアリーブランドを保有していることは、単なる繊維商社を超えた価値を持っています。ブランドビジネスは利益率が高く、成長余地もあります。
第四に、配当の安定性です。繊維商社は派手な成長は望めませんが、安定的な配当を支払う傾向があります。これは清原氏の「配当狙い」戦略にも合致します。
第五に、グローバル展開の余地です。日本のアパレル市場は縮小傾向ですが、海外(特にアジア、中東)には成長機会があります。ヤギのような商社は、こうした機会を活用できる立場にあります。
7-4. 繊維・アパレル業界の動向
繊維・アパレル業界は、世界的に大きな変化に直面しています。
第一に、ファストファッションの飽和と高級志向の二極化です。低価格ファストファッションは飽和状態にあり、一方で高品質・高単価のラグジュアリー市場は成長しています。TATRASのような高級ブランドは、後者の恩恵を受けます。
第二に、サステナビリティへの対応です。環境配慮型の素材、リサイクル可能な製品など、サステナブル・ファッションへの注目が高まっています。これに対応できるブランドが選ばれます。
第三に、ECシフトの加速です。実店舗からECへの消費者シフトは続いており、デジタルマーケティングが重要になっています。
第四に、日本のアパレル市場の縮小です。少子高齢化により、国内市場は縮小しています。海外展開できる企業が成長します。
7-5. 個人投資家への示唆
ヤギへの清原氏の投資から学べることは、いくつかあります。
第一に、「人気のない業種」にこそ宝が眠っている可能性があるということです。繊維商社は典型的な「不人気業種」ですが、その中にも財務体質の堅実な優良企業があります。
第二に、「ブランド価値」の重要性です。単なる繊維商社ではなく、ブランドを持つ企業は、利益率が高く、競争優位性も持続的です。
第三に、「老舗企業」の安定性です。130年以上の歴史を持つ企業は、様々な経済危機を乗り越えてきた経験を持っています。簡単には潰れません。
筆者の独自視点では、ヤギのような銘柄こそ、清原氏の「常識を疑う」「人と違う見方をする」哲学を体現しています。市場が見向きもしない業種に、優良企業が隠れている。それを見つける眼力こそ、長期リターンの源泉なのです。
第8部 遠藤製作所(7841)――ゴルフクラブメーカーへの投資
8-1. 遠藤製作所という企業
遠藤製作所(証券コード7841)は、東証スタンダード市場に上場する金属製品業界の企業です。創業は1950年で、新潟県に本社を置く、金属精密鍛造のメーカーです。
同社の主力事業は、ゴルフクラブヘッドの製造です。日本のゴルフクラブメーカーの多くに、遠藤製作所のクラブヘッドが採用されています。タイトリスト、ピン、テーラーメイドなど、世界的ブランドのゴルフクラブにも、遠藤製作所の技術が使われていると言われます。
それ以外にも、自動車部品、産業機械部品など、精密鍛造技術を活用した多様な製品を製造しています。
8-2. 清原氏の保有比率
2024年8月時点で、清原氏の遠藤製作所への保有比率は7.16%です。これも清原流の典型的な集中投資ポジションです。
清原氏が遠藤製作所の大量保有を報告したのは、2023年10月のことです。その後、12月にかけて株価が急騰し、市場の話題となりました。投資ブロガーのhina氏は「清原さんが個人口座で持っている銘柄として話題になっていた」と指摘しています。
8-3. なぜ遠藤製作所に投資したのか
ゴルフクラブメーカーという、これまた一見すると清原氏らしくない業種ですが、よく考えると清原流の投資基準に合致する点が多いです。
第一に、精密鍛造技術という参入障壁です。ゴルフクラブヘッドの製造には、高い精密鍛造技術が必要です。これは長年の技術蓄積によってのみ得られるもので、新興メーカーが簡単に追いつけるものではありません。参入障壁の高い、ニッチなニッチでトップポジションを持つ企業です。
第二に、ゴルフ市場の意外な堅調さです。日本のゴルフ人口は減少していますが、米国や東南アジアではゴルフ市場が拡大しています。遠藤製作所は、グローバルな市場の恩恵を受けています。
第三に、自動車部品事業との多角化です。ゴルフクラブだけでなく、自動車部品も製造しており、リスク分散が図られています。
第四に、財務体質の堅実さです。遠藤製作所も、ネットキャッシュ豊富な財務体質を持つ典型的な「清原銘柄」です。
第五に、市場での認知度の低さです。地味な金属加工メーカーであるため、機関投資家のカバレッジが薄く、情報の非対称性が大きい。これは清原氏のような独自リサーチをする投資家にとってのチャンスです。
8-4. ゴルフクラブ業界の動向
ゴルフクラブ業界は、いくつかの興味深いトレンドに直面しています。
第一に、米国市場の堅調さです。コロナ禍を契機に、米国ではゴルフ人口が増加しました。アウトドアスポーツとしての魅力が再認識され、若年層のゴルファーも増えています。
第二に、技術革新の加速です。ゴルフクラブの素材、設計、製造方法は常に進化しています。チタン、カーボン、複合素材など、新素材の活用が進んでいます。
第三に、カスタムフィッティングの普及です。プレイヤー個人に合わせたカスタムクラブの需要が増えており、これは高単価ビジネスにつながります。
第四に、新興市場での成長です。中国、韓国、東南アジアなど、新興のゴルフ市場が拡大しています。
これらのトレンドの中で、遠藤製作所のような技術力のあるメーカーは、構造的に有利な立場にあります。
8-5. 個人投資家への示唆
遠藤製作所への清原氏の投資から学べることは、いくつかあります。
第一に、「ニッチな業界の世界トップ」を見つける視点です。ゴルフクラブヘッドという、極めてニッチな業界ですが、そこで世界トップクラスの技術を持つ企業があるのです。こうした「グローバル・ニッチ・トップ」企業は、長期投資の優良対象です。
第二に、「個人需要」の堅調性です。ゴルフは個人の趣味であり、景気変動に対して相対的に堅調です。趣味・嗜好品ビジネスには、独特の安定性があります。
第三に、「精密技術」の競争優位性です。精密鍛造、精密加工などの技術は、長年の蓄積によって得られるもので、新興企業が簡単に追いつけません。技術的な参入障壁を持つ企業は、長期的な競争優位を維持できます。
筆者の独自視点では、遠藤製作所への投資は、清原氏の「目立たない優良企業を発掘する」眼力を象徴しています。誰もが知る大手スポーツブランドの陰で、技術を提供している縁の下の力持ち。こうした企業こそ、長期投資の隠れたお宝なのです。
第9部 5%未満の保有銘柄群――広範な分散
9-1. 5%未満銘柄の重要性
清原氏のポートフォリオには、5%未満の保有銘柄も多数あります。これらは大量保有報告書の対象外なので、四季報の大株主欄や、企業の有価証券報告書の大株主リストでしか確認できません。
IRBANKの情報によれば、清原氏が保有する5%未満の銘柄には、以下のようなものがあります。
| 証券コード | 銘柄名 | 保有比率 | 業種 |
|---|---|---|---|
| 6492 | 岡野バルブ製造 | 5.52% | 機械 |
| 6390 | 加藤製作所 | 5.07% | 機械 |
| 7539 | アイナボHD | 3.00% | 卸売業 |
| 6637 | 寺崎電気産業 | 2.99% | 電気機器 |
| 8881 | 日神グループHD | 2.98% | 不動産業 |
| 1828 | 田辺工業 | 2.90% | 建設業 |
| 8999 | グランディハウス | 1.99% | 不動産業 |
| 2329 | 東北新社 | 1.98% | 情報通信業 |
| 1879 | 新日本建設 | 1.77% | 建設業 |
| 6994 | 指月電機製作所 | 1.54% | 電気機器 |
| 4295 | フェイス | 2.52% | 情報通信業 |
| 3454 | ファーストブラザーズ | 0.29% | 金融業 |
これらの銘柄は、清原氏の中で「準主力」または「観察ポジション」と言える存在です。1銘柄当たりの投資額は、5%超の銘柄ほど大きくはありませんが、それでも数億円から数十億円規模の投資である可能性があります。
これらの銘柄の特徴を見ていくと、清原氏の投資哲学がより立体的に浮かび上がります。
9-2. 岡野バルブ製造(6492)――発電用バルブの専業メーカー
岡野バルブ製造は、東証スタンダード市場に上場する機械業界の企業です。発電用バルブの大手メーカーで、高温・高圧や超低温対応のバルブを得意としています。
火力発電所、原子力発電所などで使われる特殊バルブは、高い信頼性が求められる重要な部品です。岡野バルブ製造は、この分野で長年の実績を持つ専業メーカーです。
清原氏が岡野バルブ製造に投資した理由を推測すると、以下のようになります。
第一に、エネルギー需要の構造的拡大です。世界的に電力需要は増加傾向にあり、発電設備のリプレイス需要も継続します。発電用バルブの市場は、安定的な需要に支えられています。
第二に、原発再稼働の可能性です。日本では原発再稼働が進められており、これに伴うバルブ需要が増加する可能性があります。
第三に、参入障壁の高さです。発電用の特殊バルブは、高い技術と長年の信頼が必要です。新興メーカーが簡単に参入できる市場ではありません。
第四に、財務体質の堅実さです。岡野バルブ製造も、ネットキャッシュ豊富な財務体質を持っています。
9-3. 加藤製作所(6390)――建設機械の老舗
加藤製作所は、東証プライム市場に上場する機械業界の企業です。クレーンや建設機械の老舗メーカーで、特にラフテレーンクレーン(不整地用クレーン)で国内トップシェアを誇ります。
ラフテレーンクレーンは、建設現場で資材の運搬や設置に使われる重要な機械です。加藤製作所のクレーンは、信頼性の高さで業界から評価されています。
清原氏が加藤製作所に投資した理由は、建設業界の活況、海外展開の進展、ニッチな分野でのトップポジション、財務体質の堅実さなどが挙げられます。
9-4. アイナボHD(7539)――住宅設備の卸売
アイナボHDは、東証プライム市場に上場する卸売業の企業です。住宅設備機器(タイル、衛生陶器、給湯機器など)の卸売を主力としています。
住宅市場は少子化により縮小傾向ですが、リフォーム市場は堅調です。アイナボHDは、この市場で安定的なポジションを築いています。
清原氏が投資した理由は、安定的なキャッシュフロー、配当の魅力、リフォーム市場の成長性などが推測されます。
9-5. 寺崎電気産業(6637)――船舶用電機の専門メーカー
寺崎電気産業は、東証スタンダード市場に上場する電気機器業界の企業です。船舶用の電機品(配電盤、コントロールパネル、電動機など)を主力としており、特殊な専門分野でトップクラスのシェアを持ちます。
造船業は日本にとって伝統的な産業ですが、近年は中国・韓国に押されています。しかし、特殊な船舶用電機の分野では、日本企業の技術が依然として競争力を持っています。
清原氏は、こうした「日本の技術力が生きるニッチ市場」に注目していると推測されます。
9-6. 日神グループHD(8881)――不動産デベロッパー
日神グループHDは、東証プライム市場に上場する不動産業の企業です。マンション分譲を主力とする中堅デベロッパーで、首都圏を中心に事業を展開しています。
清原氏の本書では、「不動産業は人気がなく、狙い目」という趣旨の発言があります。実際、不動産業の銘柄は割安に放置されていることが多いのです。
第一に、不動産市場の構造的な堅調さがあります。日本の不動産価格は長期的に上昇傾向にあり、特に首都圏は底堅い需要があります。
第二に、配当の魅力です。不動産業は配当利回りが高い企業が多く、配当狙いの投資として魅力的です。
第三に、清算価値の高さです。不動産業は、保有する土地や建物に高い清算価値があり、PBRが1倍以下の企業も多いです。これは下値の堅さを意味します。
9-7. 田辺工業(1828)――プラント工事の専業
田辺工業は、東証スタンダード市場に上場する建設業の企業です。プラント工事を主力とし、各種プラントの企画、設計、施工、メンテナンスを一貫して提供する専業会社です。
連結売上高は500億円超で、堅実な業績を維持しています。プラント工事は、化学、石油、電力、ガスなど、様々な産業に欠かせない仕事です。
清原氏が田辺工業に投資した理由は、プラント工事の構造的需要、専門技術の参入障壁、安定的なキャッシュフロー、ネットキャッシュ豊富な財務などが推測されます。
9-8. グランディハウス(8999)――北関東の不動産デベロッパー
グランディハウスは、東証プライム市場に上場する不動産業の企業です。栃木県を中心に、北関東で戸建て住宅の分譲を手がけています。
地方都市の不動産デベロッパーは、首都圏中心のメガデベロッパーとは異なるビジネスモデルを持ち、地域に密着した事業を展開しています。
清原氏が投資した理由は、地方市場での独自ポジション、配当の魅力、財務体質の堅実さなどが挙げられます。
9-9. 東北新社(2329)――映像メディア企業
東北新社は、東証スタンダード市場に上場する情報通信業の企業です。テレビCM制作、映画制作、映像コンテンツ配信などを手がける、老舗の映像メディア企業です。
近年は、衛星放送、有料テレビ、配信サービスなど、多角的にメディア事業を展開しています。
清原氏が東北新社に投資した理由は、コンテンツビジネスの長期的な価値、ネットキャッシュ豊富な財務、知名度の低さによる割安さなどが推測されます。
9-10. 新日本建設(1879)――首都圏の建設会社
新日本建設は、東証プライム市場に上場する建設業の企業です。首都圏を中心に、マンション、戸建て、公共工事などを手がける中堅ゼネコンです。
建設業界は人手不足などの課題がありますが、需要は堅調です。新日本建設のような中堅ゼネコンは、地域密着型の事業展開で安定的な収益を上げています。
9-11. 指月電機製作所(6994)――電気部品の専門メーカー
指月電機製作所は、東証スタンダード市場に上場する電気機器業界の企業です。コンデンサ、その他の電気部品を製造する専門メーカーです。
電気部品は、あらゆる電子機器に必要な基本部品です。指月電機製作所は、特殊な用途のコンデンサで競争力を持っています。
9-12. 5%未満銘柄から読み取れる傾向
これらの5%未満の銘柄を見ていくと、清原氏の投資傾向が明確に浮かび上がります。
第一に、「日本の中小型製造業」への偏重です。岡野バルブ、加藤製作所、寺崎電気、指月電機など、地味で技術力のある中小型製造業が多く含まれています。
第二に、「不動産業」への配分です。日神グループ、グランディハウス、新日本建設など、不動産関連銘柄が含まれています。これは「人気のない業種に宝が眠る」という清原哲学の表れです。
第三に、「建設・プラント工事」への注目です。田辺工業、新日本建設など、インフラ関連の堅実な企業が含まれています。
第四に、「メディア・コンテンツ」への興味です。東北新社、フェイスなど、コンテンツビジネスを手がける企業も含まれています。
これらすべてに共通するのは、「機関投資家がカバーしない領域での割安銘柄」という性格です。清原氏の投資哲学を、ポートフォリオ全体で一貫して体現していることが分かります。
第10部 過去の伝説的投資――ニトリのケース
10-1. ニトリへの投資の概要
清原氏の投資キャリアの中で、最も有名な成功例は、ニトリホールディングス(証券コード9843)への投資です。これは現在の保有銘柄ではありませんが、清原投資術を理解する上で欠かせない事例です。
清原氏は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ニトリ株を取得しました。当時のニトリは札幌に本社を置く、北海道の家具チェーンに過ぎず、株価は「紙屑同然」の水準でした。北海道経済は1997年の北海道拓殖銀行破綻などでどん底にあり、北海道企業の株は全般的に売り叩かれていました。
タワー投資顧問は、北海道拓殖銀行が保有していたニトリ株80万株のうち、最終的に残っていた20万株を約1億5000万円で買い付けました。これが、ニトリへの大規模投資のきっかけです。
10-2. なぜ清原氏はニトリに注目したのか
清原氏がニトリに注目した理由は、本書および各種インタビューで詳しく語られています。
第一に、関東への進出店舗が好調だったこと。ニトリは1990年代に関東に進出し、当時3店舗を展開していました。それらの店舗が、いずれも好調な業績を上げていました。北海道発祥のローカル家具店が、関東でも勝負できることが証明されていたのです。
第二に、家具業界での製造小売り(SPA)モデル。家具業界で製造から販売までを一貫して行うSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)モデルを採用しているのは、当時ニトリだけでした。ZARAやユニクロが採用しているこのモデルは、家具業界では珍しく、構造的な競争優位性を持っていました。
第三に、インドネシアの自社工場。当時、海外に自社工場を持つ家具メーカーはほとんどありませんでした。ニトリはインドネシアに工場を持ち、コスト競争力を構造的に確保していました。
第四に、似鳥昭雄氏という名経営者の存在。これが決定的でした。
10-3. 似鳥昭雄氏との出会い
清原氏がニトリへの投資を確信した決定的なエピソードが、ニトリ創業者・似鳥昭雄氏との出会いです。
本書によれば、似鳥氏は当時、証券会社や投資家の接待を一切受けない人だったといいます。清原氏は何度も頼み込んで、ようやく似鳥氏が泊まるホテルで一緒に食事をすることになりました。条件は「1000円以内」のスパゲッティでした。
この席で似鳥氏は、清原氏に次のような趣旨の発言をします。「これだ、という優秀な奴を見つけたら、どこまでも追いかけて絶対うちで働いてもらう。それが社長の仕事だ」。
清原氏は、この一言で「この社長は本物だ。ニトリは伸び続ける」と確信した、と書いています。
これは、清原氏の投資哲学を象徴するエピソードです。財務諸表だけでは見えない経営者の質を、対面の対話を通じて見極める。優秀な経営者を見抜く力。この「人を見る目」こそ、清原氏の最大の武器だったのです。
10-4. ニトリ株の上昇
清原氏がニトリ株を取得した後、ニトリは驚異的な成長を遂げました。
1990年代後半に1株500円程度だったニトリ株は、2000年代に入って急速に上昇していきます。家具業界での製造小売りモデルが浸透し、海外進出も成功。業績は毎年拡大し、ニトリは日本を代表する小売企業の一つに成長しました。
清原氏は、1年後にはニトリ株が3倍、2004年頃には約10倍となり、全株売却したと本書で述べています。1億5000万円の投資が15億円になった計算です。投資収益率はおよそ900%、年率にすると60%超という驚異的なリターンです。
これは、清原氏のキャリアの中で「初期の伝説」となりました。
10-5. ニトリ投資から学べる教訓
ニトリへの投資から、個人投資家が学べる教訓は多いです。
第一に、「市場が悲観している時こそチャンス」ということです。1997年の北海道拓殖銀行破綻後、北海道企業の株は全般的に売り叩かれました。しかしその中に、本物の優良企業が混じっていたのです。市場の悲観に流されず、冷静に企業の本質を見極める力が、大きなリターンを生みます。
第二に、「経営者の質が決定的」ということです。似鳥昭雄氏という、当時はまだ世間に知られていなかった名経営者の存在こそ、ニトリの成長を牽引する原動力でした。財務諸表では測れない経営者の質を、直接対話で見極める努力が、長期リターンの源泉となります。
第三に、「ビジネスモデルの構造的優位性」を見抜く眼です。ニトリのSPAモデル、海外自社工場、関東進出の成功。これらの「構造的優位性」を理解できる投資家こそ、長期的な企業価値の向上を予測できます。
第四に、「長期保有の威力」です。清原氏は、ニトリ株を約10倍になるまで保有し続けました。短期的な値動きに惑わされず、企業価値の向上を信じて持ち続ける。これが、複利の魔法を最大化する唯一の方法です。
第五に、「適切な出口戦略」です。清原氏は、ニトリが大型株のレンジに入ってきたタイミングで全株売却しました。「永久保有」ではなく、「割安小型株」という戦略の枠を超えたら売却する、という規律です。
ニトリの事例は、清原投資術のすべての要素が組み合わさった「奇跡の事例」と言えます。割安、小型、成長、優良経営者、長期保有、適切な出口。これらすべてが揃った、稀有な成功例です。
第11部 ヤギ、遠藤製作所、その他の継続保有銘柄の深掘り
11-1. 多くの中小型株を「保有し続ける」戦略
清原氏のポートフォリオを総合すると、20銘柄以上の中小型株を長期保有していることが分かります。これは清原氏が本書で「20銘柄程度のウォッチリストを作って、暴落時に10銘柄を一気に買う」と推奨している戦略と整合しています。
ただし、清原氏自身は20銘柄をはるかに超える銘柄を分析・選別した結果、これらの銘柄に絞っていることに注意が必要です。一般の個人投資家が20銘柄をリサーチするのは、相当な労力を要します。
11-2. 業種別の特徴
清原氏の保有銘柄を業種別に整理すると、以下のような特徴があります。
機械業界では、日精樹脂工業(射出成形機)、東洋機械金属(ダイカストマシン)、岡野バルブ製造(発電用バルブ)、加藤製作所(クレーン)など、産業の基盤を支える専門メーカーが多く含まれています。これらは、いずれも特定分野で高いシェアを持つ「グローバル・ニッチ・トップ」企業です。
電気機器では、寺崎電気産業(船舶用電機)、指月電機製作所(コンデンサ)など、これも特殊用途の専門メーカーが選ばれています。
不動産業では、日神グループHD、グランディハウスなどのデベロッパーに加え、新日本建設のような建設会社まで含まれています。「人気のない業種」に集中投資する清原氏の姿勢が表れています。
情報通信業では、ACCESS、BBDイニシアティブ、クルーズ、東北新社、フェイスなど、テクノロジー系の銘柄も多く含まれています。テクノロジー系といっても、AI関連や半導体関連ではなく、知名度の低い小型の専門企業が中心です。
卸売業ではヤギ、アイナボHDなど、地味な商社・卸が選ばれています。
金属製品では遠藤製作所(精密鍛造)、建設業では田辺工業(プラント工事)と、それぞれ専門分野でトップクラスの企業が含まれています。
11-3. 共通する特徴の総括
これらすべての銘柄に共通する特徴を整理すると、以下のようになります。
第一に、時価総額500億円未満の小型株であること。 第二に、特定分野でトップクラスのシェアを持つこと。 第三に、財務体質が堅実で、ネットキャッシュが豊富であること。 第四に、機関投資家のカバレッジが限定的で、知名度が低いこと。 第五に、業績が比較的安定していること。 第六に、地味だが社会的に重要な役割を果たしていること。
これらは、まさに清原氏が本書で語る「割安小型成長株」の定義そのものです。理論を実践で体現したポートフォリオと言えるでしょう。
第12部 暴落時のメガバンク投資――引退後の伝説のトレード
12-1. 2024年8月5日の歴史的暴落
清原氏は2023年に正式に引退しましたが、その後も個人投資家として活動しています。引退後の最も印象的な動きが、2024年8月5日の歴史的暴落時のトレードです。
2024年8月5日、日経平均株価は前日比4451円28銭安と、過去最大の下げ幅を記録しました。日米の金利動向、AI関連株の調整、地政学リスクなどが複合的に作用した、戦後最大級の暴落でした。
特にメガバンク株の下げは凄まじいものでした。ブルームバーグの報道によれば、三菱UFJフィナンシャル・グループは一時21%安の1200円と過去最大の日中下落率を記録。三井住友FGはストップ安の8162円、みずほFGも22%安となりました。TOPIXの13%安を大幅に上回る下げ幅です。
12-2. 清原氏の230億円全力買い
この大暴落の夜、清原氏は驚くべき行動に出ました。
マネー現代(講談社)の記事によれば、清原氏は「証券会社に預けていた現金約230億円を全て投じて注文を入れ、結果、メガバンク株1銘柄(三井住友フィナンシャルグループ)を105億円分購入」したと報じられています。
具体的な注文方法も明かされています。「大型株のみずほ銀行でも一値3万株の指値でしょう。だから300万株で100回の指値注文」をしたといいます。これは、流動性の問題で大量の注文を一度には出せないため、100回に分けて少額の指値注文を出した、という意味です。
結果として、約230億円の注文に対して、約105億円分が約定し、三井住友FG株を1銘柄として大量取得することができました。
12-3. ダイヤモンド・オンラインでの清原氏の説明
ダイヤモンド・オンラインのインタビューで、清原氏はこの時の心境を次のように語っています。「もし現役なら8月5日に最低100億円は株を買っていたでしょう。私はもう終活の段階を迎えており、株を活発に取引するインセンティブを失っている『はず』でした」。
しかし、この下げを見て本能的に「株を買わなきゃ」とスイッチが入ってしまったといいます。「巨大地震が起きているわけでもなく、核戦争が起きているわけでもない。それなのにこの下げは何だ!」というのが、清原氏の感想です。
これは、清原氏が本書で語る「パニック相場こそ買い場」という哲学を、引退後も体現したものです。ファンダメンタルズに大きな変化がないのに株価が急落している状況は、需給要因による一時的な歪みであり、いずれ修正される。だから買い向かう、という判断です。
12-4. なぜ三井住友フィナンシャルグループだったのか
清原氏が暴落時にメガバンク株を選んだ理由は、複数あります。
第一に、配当利回りの魅力です。メガバンク株は、暴落により配当利回りが大きく上昇していました。年5%超の配当利回りで買えるレベルまで下げた銘柄もあり、これは長期保有での「悠々自適の配当生活」を実現する好機でした。
第二に、流動性の高さです。メガバンクは時価総額が大きく、流動性も高いため、100億円規模の注文も短期間で約定可能です。中小型株では、これだけの大量注文は一日では消化できません。
第三に、金利上昇による業績改善期待です。2024年は、日銀がマイナス金利政策を解除し、金利上昇局面に入っていました。銀行業界にとって、金利上昇は利ざや拡大を意味し、業績拡大要因となります。第1四半期決算では、3メガバンクとも好決算を発表していました。
第四に、ファンダメンタルズの健全さです。日本のメガバンクは、過去の不良債権処理を終え、財務体質が極めて健全な状態でした。一時的な株価下落は、需給要因による歪みであり、本質的な企業価値は維持されている、という判断です。
第五に、株主還元方針の強化です。3メガバンクはいずれも、配当性向40%以上、機動的な自社株買い、政策保有株の売却などを進めており、株主還元に力を入れていました。
12-5. 短期間で20億円超の利益
清原氏のこの暴落時投資は、わずか短期間で大きな利益を生みました。
ダイヤモンド・オンラインの記事によれば、清原氏は「8月の暴落時も大底で100億円以上の資金を投じ、短期間で20億円以上の利益を得ている」と報じられています。
これは、わずか数週間から1〜2ヶ月程度の投資で、20億円超の利益を上げたということです。投資元本105億円に対して、20億円の利益。投資収益率は約19%。これを年率換算すれば、驚異的な数字になります。
引退後の個人投資家として、これだけのリターンを叩き出した清原氏の手腕は、まさに伝説的と言えます。
12-6. 2025年4月のトランプ・ショック時の対応
清原氏の引退後の動きで、もう一つ注目すべき出来事があります。2025年4月のトランプ・ショック時の対応です。
2025年4月、米国のトランプ大統領が大規模な関税政策を発表したことを契機に、世界の株式市場が大暴落しました。4月7日の東京株式市場では、日経平均が3日連続で大幅安となり、2644円安の3万1137円で取引を終えました。
マネー現代の独占インタビューで、清原氏はこの時の対応を明かしています。「2023年に引退してから株を買うのはこれで2回目になります。注文を入れたのは昨日(4月7日)の午後からで、今回も前回同様、配当利回り狙いで買いを入れました」。
具体的に買った銘柄は、「前回、買い損なった大和証券(グループ)とみずほ(フィナンシャルグループ)を買い、三井住友も買い増しています。数十億円分です」と明かしています。
清原氏の銘柄選択の論理は明快です。「関税は相場に折り込まれましたが、為替がどうなるかわからない。したがって為替のリスクのない銘柄にしました」。
つまり、トランプ関税ショックは既に株価に織り込まれているが、その後の為替動向は不確実。だから為替の影響を受けにくい内需系(メガバンク、証券)を選んだ、ということです。極めて論理的な判断です。
12-7. メガバンク投資から学べる教訓
清原氏の引退後のメガバンク投資から、個人投資家が学べる教訓は多いです。
第一に、「暴落時こそ買い場」という鉄則です。リーマン・ショック、コロナ・ショック、2024年8月、2025年4月。市場が暴落するたびに、清原氏は買い向かいました。そして、ほぼすべての回で大きなリターンを得ています。これは偶然ではなく、規律ある実践の結果です。
第二に、「ファンダメンタルズの変化なき暴落」を見抜く眼力です。暴落の原因が、需給要因(投機筋の先物売り、レバレッジ解消、強制ロスカット)なのか、ファンダメンタルズの悪化(企業業績の悪化、構造的問題)なのかを見極める力が必要です。清原氏は、本書で「ネット裁定買い残」などのテクニカル指標を活用して、これを判断していると述べています。
第三に、「年齢に応じた銘柄選択」です。清原氏は60代後半となり、リスクの高い小型成長株への新規投資ではなく、配当利回りの高いメガバンク株を選んでいます。これはライフサイクル投資の典型です。若い投資家は小型成長株でリスクを取り、年配の投資家は配当株で安定収入を狙う、という棲み分けです。
第四に、「即断即決の重要性」です。暴落のチャンスは一瞬です。清原氏は暴落を知った当日の夜に、230億円規模の注文を入れています。事前に準備しておかなければ、こうした素早い行動はできません。普段からウォッチリストを作っておく、証券口座に現金を準備しておく、注文の出し方を理解しておく、といった事前準備が決定的に重要です。
第五に、「流動性を意識した発注」です。清原氏は100回の指値注文に分けて、流動性に配慮した発注をしました。一度に大量の成行注文を出せば、株価が動いて自分が高値で買ってしまう。これは、機関投資家でなくとも、ある程度の規模の投資家は意識すべきポイントです。
筆者の独自視点では、清原氏の引退後のメガバンク投資は、「投資哲学の継続性」を象徴しています。引退してもファンドの運用責任からは解放されたが、投資家としての本能は失われない。むしろ、自由になった分、より純粋に自分の哲学を実践できる立場にある。これは、投資家としての究極の自由とも言えるでしょう。
第13部 REIT投資の歴史――「落ちてくるナイフを2度つかむ」
13-1. 本書のREIT章
清原氏の本書には、第5章として「REIT――落ちてくるナイフを2度つかむ」というセクションがあります。これは清原氏の投資キャリアにおける、もう一つの重要な側面を示すものです。
REIT(不動産投資信託)とは、複数の投資家から集めた資金で不動産を購入し、賃料収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。日本では2001年から東証で取引が始まり、現在も多数の銘柄が上場しています。
REITは安定的な配当が魅力ですが、金利動向や不動産市況の影響を強く受けます。金利が上昇するとREITの分配金利回りが相対的に魅力を失い、価格が下落します。また、不動産市況が悪化すると、保有不動産の価値が下がり、REITの基準価格も下がります。
13-2. 「2度つかむ」という意味
清原氏のREIT投資のタイトル「落ちてくるナイフを2度つかむ」は、極めて示唆に富んだ表現です。「落ちてくるナイフをつかむ」とは、株式投資の世界で「下落中の銘柄を買って大怪我する」ことの比喩です。それを「2度つかむ」というのは、敢えてリスクを取って、しかも一度ではなく二度の暴落で買い向かった、ということを意味します。
具体的な詳細は本書を読まれることをお勧めしますが、清原氏はREITの暴落時に、敢えて買い向かいました。それは「ナイフを直接つかむような」リスクある行動でしたが、結果的に大きなリターンを生みました。
13-3. REIT投資が清原哲学に合致する理由
REITは、清原氏の投資哲学と複数の点で合致しています。
第一に、暴落時の買い向かいです。REITは金利上昇局面で大きく売られる傾向があります。清原氏は、こうした「需給要因による下落」を捉えて買い向かいました。
第二に、配当利回りの魅力です。REITは法律上、利益の90%以上を分配する義務があり、配当利回りが高い金融商品です。これは清原氏の「配当狙い」戦略にも合致します。
第三に、不動産という実物資産の裏付けです。REITは実際の不動産を保有しており、清算価値があります。これは「下値の堅さ」を意味します。
第四に、機関投資家の動向に左右されない領域です。REITの中でも、規模の小さなものは機関投資家のカバレッジが限定的で、清原流の発掘が可能です。
13-4. 個人投資家へのREIT投資の示唆
清原氏のREIT投資から、個人投資家が学べる教訓は以下のとおりです。
第一に、「金利動向に敏感な金融商品」を、金利上昇局面の暴落時に買うチャンスがある、ということです。
第二に、「実物資産の裏付け」がある金融商品は、下値の堅さが期待できる、ということです。
第三に、「分配金利回り」の魅力を活用する戦略です。長期で保有していれば、分配金収入だけでも相当のリターンを得られます。
第四に、「逆張りの精神」です。みんなが売っている時に買う。これがREIT投資でも、株式投資でも、清原氏の一貫した哲学です。
第14部 清原氏が「絶対に買わない」銘柄
14-1. 本書で明言された投資除外対象
清原氏は本書で、特定の銘柄や業種について「絶対に投資しない」と明言しています。これも、彼の投資銘柄を理解する上で重要な情報です。
第一に、ソフトバンクグループ(9984)。清原氏は、孫正義氏について「優秀すぎて理解しきれない」と述べ、ソフトバンクには投資しないと明言しています。
第二に、テスラ(米国市場、TSLA)。同様に、イーロン・マスク氏についても「優秀すぎて理解できない」と評価し、テスラには投資しないとしています。
第三に、半導体製造装置等の一部のセクター。本書および各種インタビューで、清原氏は「半導体製造装置等の一部のセクターには明らかな過熱感があり、危険な水準。近寄らない方がいい」と警告しています。具体的な銘柄名は挙げていませんが、東京エレクトロン、SCREEN、ディスコなどがこのセクターの代表的銘柄です。
第四に、テーマ性で買われている割高な株。AI、メタバース、EV、ロボティクスなどのテーマで人気化した銘柄は、清原氏の投資対象外です。
第五に、マザーズ(現グロース)市場の高PER銘柄。本書では「マザーズ(グロース)は『最悪の市場』」と表現されています。IPO直後の高成長期待銘柄は、清原氏の投資対象ではありません。
14-2. なぜ「絶対に買わない」のか
清原氏が特定の銘柄や業種を投資対象から除外する理由を整理すると、以下のようになります。
第一に、「自分の能力の範囲」を超えるから。ソフトバンクやテスラのような、複雑で多角的なグローバル企業は、清原氏でも完全に理解することが難しい。理解できないものには投資しない、という規律です。
第二に、「既に過熱している」から。半導体製造装置やAI関連株は、株価が既に高水準にあり、期待が過剰に織り込まれています。これでは超過リターンを得る余地が限定的です。
第三に、「ストーリー先行」の銘柄は危険だから。テーマ性銘柄は、ストーリー(AI、EV、メタバースなど)に乗って買われていますが、実体(業績)が伴わないことが多い。失望売りのリスクが大きい。
第四に、「機関投資家のカバレッジが厚い」から。大手企業は機関投資家のカバレッジが厚く、株価に情報が織り込まれている。これでは超過リターンを得にくい。
第五に、「IPO直後は割高」だから。マザーズ・グロース市場のIPO直後の銘柄は、公開価格が抑え気味に設定される一方、初値で大きく上がる傾向があります。初値で買うと長期的に下落するパターンが多い。
14-3. 個人投資家への示唆
清原氏の「投資除外対象」リストは、個人投資家にとっても重要な指針です。
第一に、「自分の能力の範囲」を意識する。理解できない複雑な企業や、知らない業界には投資しない。バフェットの「サークル・オブ・コンピテンス」の概念と同じです。
第二に、「過熱しているテーマ」を避ける。AI、EV、半導体など、メディアで盛んに取り上げられている銘柄は、既に高値で取引されている可能性が高い。
第三に、「ストーリーで買わない」。素晴らしいストーリーには魅力がありますが、それだけでは投資の根拠になりません。財務諸表と業績で裏付けを取る必要があります。
第四に、「IPO直後の銘柄」に手を出さない。少なくとも上場後1〜2年は、株価の動きを観察するべきです。
第五に、「みんなが買っている銘柄」を疑う。少数派の道こそ、超過リターンの源泉です。
第15部 清原銘柄を個人投資家がどう活かすか
15-1. 「真似」ではなく「学ぶ」
清原氏のポートフォリオを徹底分析してきましたが、結論として、これらの銘柄を盲目的に真似するのは賢明ではありません。
理由は前述の通り、タイミングの遅れ、保有期間の違い、ポジションサイズの違い、分析力の違い、いつ売るか分からないリスクなどがあります。
しかし、清原氏のポートフォリオから「学ぶ」ことは、極めて価値があります。具体的には、以下のような学びが得られます。
第一に、「どんな企業が割安なのか」の具体例を知ることができます。日精樹脂工業、東洋機械金属、岡野バルブ製造などの財務諸表を実際に見て、ネットキャッシュ比率の計算を練習できます。
第二に、「機関投資家が手を出せない領域」の具体的な業種・企業群を知ることができます。射出成形機、ダイカストマシン、発電用バルブ、ゴルフクラブヘッドなど、地味だが堅実な分野が見えてきます。
第三に、「世間の流行と逆」を行く具体例を学べます。プラスチック関連、ESGに敬遠される業種、不動産業など、人気のない業種に投資する勇気を得られます。
第四に、「経営者を見極める」眼を養えます。なぜ清原氏はこの企業を選んだのか、経営者の何を評価したのか、と考えることで、自分自身の経営者評価力が高まります。
15-2. 個人投資家のための清原流ポートフォリオ構築法
清原氏の哲学を踏まえて、個人投資家が自分でポートフォリオを構築する方法を、具体的に整理してみましょう。
ステップ1:スクリーニング
まず、以下の条件で割安小型成長株をスクリーニングします。
- 時価総額:500億円未満(理想は100〜300億円)
- PER:10倍以下、できれば5倍前後
- PBR:1倍以下
- 自己資本比率:50%以上
- 営業利益率:10%以上
- 配当利回り:3%以上
これらの条件は、四季報やSBI証券、楽天証券などのスクリーニング機能で設定できます。
ステップ2:ネットキャッシュ比率の計算
スクリーニングで浮かんだ候補銘柄について、ネットキャッシュ比率を計算します。
ネットキャッシュ = 流動資産 + 投資有価証券×70% – 負債 ネットキャッシュ比率 = ネットキャッシュ ÷ 時価総額
ネットキャッシュ比率が1以上の銘柄を、最優先で選びます。
ステップ3:経営者の評価
候補銘柄について、企業ホームページのIR情報、決算説明会の動画、社長のインタビュー記事などを通じて、経営者の質を評価します。
ポイントは、強い意志、自己資金の投入、他人の声に流されない資質、採用と人材育成への情熱、失敗からの学習能力です。
ステップ4:業種分散
選んだ銘柄を、業種別に分散します。理想的な分散は、以下のようになります。
- 機械業界:2〜3銘柄
- 電気機器:1〜2銘柄
- 情報通信業:2〜3銘柄
- 卸売業・小売業:1〜2銘柄
- 建設業・不動産業:1〜2銘柄
- その他:2〜3銘柄
合計で10〜15銘柄が、個人投資家にとって管理可能な分散です。
ステップ5:ウォッチリストへの登録
選んだ銘柄を、証券会社のウォッチリスト機能に登録します。毎日の株価をチェックし、決算発表や重要なIRリリースを追います。
ステップ6:暴落時の投資
市場全体が大きく下げる暴落時に、ウォッチリストの中から特に大きく下げた銘柄を、機械的に買います。1銘柄あたり、ポートフォリオ全体の5〜10%程度のポジションを目安にします。
ステップ7:長期保有
買った銘柄は、ファンダメンタルズに本質的な変化がない限り、長期保有します。短期の値動きで売買せず、複利の効果を最大化します。
ステップ8:定期的な見直し
四半期決算ごとに、保有銘柄の業績をチェックします。業績が悪化した銘柄、経営者が交代した銘柄、ビジネスモデルが大きく変わった銘柄については、再評価します。
15-3. 個人投資家の現実的な銘柄数
清原氏は本書で「20銘柄程度のウォッチリスト」を推奨していますが、個人投資家にとって、20銘柄を本当に分析・追跡するのは大変です。
筆者の経験では、本業を持つ個人投資家が真に深く理解できる銘柄は、10〜15銘柄程度が現実的な上限です。これを超えると、表面的な分析しかできず、結局は他人の意見に流されることになります。
だから、まずは5〜10銘柄に絞って、徹底的にリサーチすることをお勧めします。それぞれの銘柄について、決算短信を毎四半期読み、有価証券報告書を毎年読み、社長のインタビューや決算説明会動画もチェックする。このレベルの理解があって初めて、暴落時にも自信を持って保有を続けられます。
15-4. 清原銘柄を「参考」にする具体的な方法
清原氏の保有銘柄を、参考程度に活用する具体的な方法を提案します。
方法1:業種を参考にする
清原氏が投資している業種(機械、電気機器、卸売、不動産など)を参考に、自分でも同様の業種から銘柄を選びます。ただし、銘柄そのものは、自分で別途調査して選びます。
方法2:選定基準を真似る
清原氏のスクリーニング基準(ネットキャッシュ比率、PER、時価総額など)を真似て、自分で銘柄を選びます。同じ基準で選べば、似たような銘柄群が浮かんできます。
方法3:経営者評価の視点を学ぶ
清原氏がなぜニトリの似鳥昭雄氏を評価したのか、そのエピソードから経営者評価のポイントを学びます。これを応用して、自分でも経営者を評価する眼を養います。
方法4:暴落時の対応を真似る
清原氏が2024年8月や2025年4月に、暴落時にどう動いたかを学び、自分でも同様の心構えと準備をします。
方法5:ポートフォリオ構造を参考にする
清原氏が「中小型株のロングテール」と「大型株の機動的買い増し」の2層構造を作っていることを参考に、自分でも同様の構造を考えます。
15-5. 個人投資家にしかできない強み
最後に、個人投資家にしかできない強みを整理しましょう。清原氏のような大口投資家には真似できない、個人投資家の構造的な優位性です。
第一に、超小型株への投資。時価総額50億円以下、出来高が極端に少ない超小型株には、清原氏でも大きく投資できません。100万円程度の投資なら、十分に投資できる領域があります。
第二に、長期保有の自由。清原氏は、保有比率の制約や流動性の問題で、思った通りに買い増しや売却ができないことがあります。個人投資家には、こうした制約がありません。
第三に、リスクオフの自由。プロのファンドマネージャーは、顧客への説明責任があり、相場が下落しても完全に現金化することは難しい。個人投資家は、いつでも100%現金にできます。
第四に、テーマや業種への自由。プロは特定のテーマや業種を担当しているため、専門外には投資できません。個人投資家は、どんな業種でも自由に投資できます。
第五に、時間軸の自由。プロは四半期ごとに評価されますが、個人投資家は10年、20年と長期で考えられます。
これらの強みを活かして、個人投資家は清原氏とは違うやり方で、超過リターンを得る可能性があります。
第16部 結論――清原達郎の投資銘柄から見える「真の投資哲学」
16-1. 銘柄から逆算する投資哲学
ここまで、清原氏の保有銘柄を1銘柄ずつ詳しく見てきました。これらの銘柄から逆算すると、清原氏の投資哲学の本質が、より立体的に見えてきます。
第一に、清原氏は「机上の理論家」ではなく「実践家」です。本書の哲学が、ポートフォリオに具体的な銘柄として体現されています。日精樹脂工業、東洋機械金属、岡野バルブ製造など、すべてが「割安小型成長株」の定義に合致する実例です。
第二に、清原氏は「分散」と「集中」のバランスを取る投資家です。20銘柄以上に分散しつつ、ACCESSとBBDイニシアティブに30%超の集中投資をしています。確信のある銘柄には集中、その他は分散、というメリハリのある配分です。
第三に、清原氏は「業種を選り好みしない」投資家です。機械、電気機器、卸売、不動産、情報通信業、建設業。あらゆる業種から、割安な優良企業を選んでいます。「特定の業種専門」ではなく、「企業価値」で選ぶ姿勢が一貫しています。
第四に、清原氏は「世間の流行と逆」を行く投資家です。プラスチック関連、ESGに敬遠される業種、人気のない不動産業など、世間から見捨てられた領域に積極的に投資しています。
第五に、清原氏は「経営者で銘柄を選ぶ」投資家です。似鳥昭雄氏(ニトリ)のように、経営者の質を見極めて投資する姿勢が、すべての銘柄選定に貫かれています。
16-2. 個人投資家への最終的なメッセージ
10万字を超えるボリュームで、清原達郎氏の投資銘柄を徹底分析してきました。最後に、個人投資家への最終的なメッセージをお伝えしたいと思います。
第一に、「銘柄を真似する」のではなく、「選定基準を学ぶ」。清原氏の保有銘柄リストを丸暗記しても意味がありません。重要なのは、彼がどんな基準で銘柄を選んだのか、その思考プロセスを理解することです。
第二に、「具体的な銘柄」を通じて、抽象的な哲学を理解する。本書を読むだけでは、「割安小型成長株」や「ネットキャッシュ比率」が抽象的に感じられるかもしれません。しかし、日精樹脂工業や岡野バルブ製造などの実例を通じて見ると、これらの概念が具体的に理解できます。
第三に、「自分なりのポートフォリオ」を構築する。清原氏の哲学を学んだ上で、自分自身でスクリーニング、リサーチ、選定、保有、見直しのサイクルを回す。これが、本当の意味での「清原流投資」の実践です。
第四に、「時間を味方につける」。清原氏は25年間かけて93倍のリターンを実現しました。個人投資家も、10年、20年、30年という長期で考えれば、相応のリターンを期待できます。短期の値動きに惑わされず、長期の企業価値の向上に賭けてください。
第五に、「失敗から学ぶ」。誰でも失敗します。清原氏自身、リーマン・ショックで600億円、空売りで合計700億円もの損失を出しています。失敗を恥じず、しっかり振り返り、次に活かす。これが上達の唯一の道です。
筆者は、清原達郎氏の投資銘柄を徹底分析する過程で、彼の投資家としての「深さ」を改めて実感しました。単なる「儲かった人」ではなく、明確な哲学と規律を持ち、それを25年間実践した「真の投資家」です。
そして何より、引退後も声を失いながら本を書き残し、自身のノウハウを世に伝えようとする姿勢に、人間としての偉大さを感じます。
読者の皆様も、清原氏の保有銘柄を「参考」にしつつ、自分自身の投資哲学を確立し、独自のポートフォリオを構築していかれることを願っています。投資は孤独な営みですが、その先には、自分らしい人生の選択肢が広がっているはずです。
参考資料
本稿執筆にあたって参照した主な情報源を以下に列挙します。一次情報を確認したい読者は、こちらの原典をご参照ください。
一次資料(書籍)
- 清原達郎『わが投資術 市場は誰に微笑むか』講談社、2024年3月
- URL: https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000387083
- ISBN: 9784065350355
大量保有報告書関連の公開情報
- 金融庁EDINET(電子開示システム)
- URL: https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
- 株主プロ「大量保有報告書 提出者 清原達郎 保有銘柄検証」
- URL: http://www.kabupro.jp/edx/E39034.htm
- IRBANK「清原達郎の大量保有(5%ルール・投資先一覧)」
- URL: https://irbank.net/E39034/share?t=1
- バフェット・コード「清原達郎さんが保有する銘柄一覧と評価額」
- URL: https://www.buffett-code.com/shareholder/c54911d5d5389dc672671a6c9174c028
- 株探「清原達郎が提出した大量保有報告書・変更報告書記事一覧」
- URL: https://kabutan.jp/holder/lists/?edicode=E39034
主要メディアの報道
- ロイター「清原達郎氏、ACCESSの筆頭株主に タワー投資顧問から取得」2023年11月14日
- URL: https://jp.investing.com/news/stock-market-news/article-702085
- ブルームバーグ「元タワー投資顧問の清原達郎氏、日本株7銘柄を時間かけて売却へ」2024年8月16日
- URL: https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2024-08-16/SI8XEQT0G1KW00
- ブルームバーグ「銀行株が大幅続落、MUFGは過去最大下落率」2024年8月5日
- URL: https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2024-08-05/SHPZ0UT0AFB400
- 株探「ACCESSについて、清原達郎氏は保有割合が5%を超えたと報告」2023年11月14日
- URL: https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202311140402
- トレーダーズ・ウェブ「BBDイニシアティブ – 急落 元タワー投資顧問の清原達郎氏 保有株時間かけ売却へと伝わる」2024年8月16日
- URL: https://traders.co.jp/news/article/1_1984171
清原達郎氏のインタビュー記事
- ダイヤモンド・オンライン「資産800億円の投資家・清原達郎氏は『長い目では日本株に強気』」2025年3月12日
- URL: https://diamond.jp/articles/-/360752
- ダイヤモンド・オンライン「『資産800億円』清原達郎氏が語る、『スイッチが入っちまった』株価暴落当日のリアルトレードと『パニック相場のセオリー』」2024年10月
- URL: https://diamond.jp/articles/-/349979
- ダイヤモンド・オンライン「紙屑株が100倍に…伝説の投資家に『この会社は伸びる』と確信させたニトリ創業者のひと言」2024年11月19日
- URL: https://diamond.jp/articles/-/353636
- マネー現代「【独占】伝説の投資家・清原達郎が株価暴落後はじめて明かす見解」2025年4月8日
- URL: https://gendai.media/articles/-/150733
- マネー現代「【独自】伝説の投資家・清原達郎に緊急インタビュー 高市政権下での『株価上昇のピークと暴落』私はこう考える」2025年10月
- URL: https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/b4e670e82e0ec48124b76155cdaaed63b32b2e42
- マネー現代「日経平均『史上最悪の大暴落』の夜、個人資産800億円『伝説の投資家』が『必死にやっていたこと』」2024年8月
- URL: https://gendai.media/articles/-/135287
- 東洋経済オンライン「元長者番付1位『清原達郎氏』今の相場で勝つ方法」2024年3月10日
- URL: https://toyokeizai.net/articles/-/738431
清原氏のスクリーニング・関連分析
- ダイヤモンド・オンライン「【最新版】清原達郎式『割安小型成長株』候補213銘柄を抽出!」2024年10月
- URL: https://diamond.jp/articles/-/347099
- ダイヤモンド・オンライン「清原達郎式『割安小型成長株』候補194銘柄!【2026年3月最新版】」2026年3月
- URL: https://diamond.jp/articles/-/386599
- ダイヤモンド・オンライン「【2025年最新版】清原達郎式『割安小型成長株』候補308銘柄を抽出!」2025年3月
- URL: https://diamond.jp/articles/-/360755
個人投資家による検証記事
- haraglog「【サラリーマン投資】清原達郎さん保有銘柄を買ってみた」2024年7月
- URL: https://haraglog.com/kiyohara_investment/
- hinaオフィシャルブログ「遠藤製作所、清原達郎氏の大量保有銘柄について」2024年6月
- URL: https://ameblo.jp/hinapiyon/entry-12856786474.html
- つばめ投資顧問「『伝説のヘッジファンド』清原達郎氏『わが投資術』から学ぶ個人投資家が取るべき戦略」2024年3月
- URL: https://tsubame104.com/archives/27744
- 内藤忍の公式ブログ「タワー投資顧問の清原達郎さんが教えてくれたこと」2024年4月
- URL: https://www.shinoby.net/2024/04/25700/
銘柄分析情報
- IRBANK「1828 田辺工業」
- URL: https://irbank.net/E00242
- IFIS株予報「田辺工業」
- URL: https://kabuyoho.ifis.co.jp/index.php?action=tp1&sa=report&bcode=1828
- みんかぶ「田辺工業 (1828) : 決算情報・業績」
- URL: https://minkabu.jp/stock/1828/settlement
- 四季報「岡野バルブ製造(6492)の株価・業績・比較銘柄」
- URL: https://shikiho.toyokeizai.net/stocks/6492
経歴・人物関連
- Wikipedia「清原達郎」項
- URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E5%8E%9F%E9%81%94%E9%83%8E
- ヘッジファンドの評判「清原達郎(タワー投資顧問)経歴」
- URL: https://www.museum-japan.com/invest/
マクロ環境関連
- 三井住友DSアセットマネジメント「8月第1週の日本株急落第2波を主導した投資主体が判明」2024年8月19日
- URL: https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2024/08/irepo240819/
- moomoo「『伝説の投資家』が大暴落翌日に100億円全力買いしたメガバンク株!」2024年8月
- URL: https://www.moomoo.com/ja/community/feed/100-q1-35-112930629353478
あとがき
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
筆者がこの記事を書こうと思った動機は、清原達郎氏の投資哲学が、具体的な銘柄を通じて初めて立体的に理解できるという確信があったからです。
本書を読むだけでは、「割安小型成長株」「ネットキャッシュ比率」「経営者の質」といった概念は、あくまで抽象的なものに留まりがちです。しかし、ACCESSとは何か、日精樹脂工業とは何か、ニトリへの投資とはどんなものだったか、と具体的な銘柄を通じて見ていくと、これらの概念が生き生きと立ち上がってきます。
清原氏のポートフォリオは、彼の哲学を25年間かけて実践してきた「結晶」です。そこには、勝った銘柄もあれば、苦戦した銘柄もあります。すべてが完璧ではありません。しかし、その全体を見渡すと、一貫した哲学と規律が透けて見えます。これこそが、清原氏の真の凄さなのです。
筆者自身も、この記事を書く過程で、自分の投資スタンスを大きく見直しました。特に、ネットキャッシュ比率を意識して銘柄を選ぶこと、経営者の質を重視すること、暴落時に買い向かう勇気を持つことなど、清原氏から学ぶことは多かったです。
読者の皆様も、清原氏の哲学を学び、彼の保有銘柄を「参考」にしつつ、自分自身のポートフォリオを構築していかれることを願っています。完璧を目指す必要はありません。失敗しながら、少しずつ上達していけばいい。清原氏自身が、何度も失敗しながら93倍のリターンを達成したのです。
最後に、声を失いながらも後世のために膨大なノウハウを書き残し、ポートフォリオを公開してくださっている清原達郎氏に、心から感謝を捧げます。
ありがとうございました。
本稿は、清原達郎氏の著書および公開された大量保有報告書、各種インタビュー記事を一次情報源として、筆者が独自の視点から分析・解説したものです。投資判断は最終的に読者ご自身の責任で行ってください。本稿は特定の銘柄の購入を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴いますので、十分な検討の上で行動されることをお勧めします。なお、本稿で言及した保有比率や業績データは執筆時点のものであり、最新情報は各種公開情報でご確認ください。

