45歳独身が「老後の住まい」を今から考える——賃貸vs持ち家vs施設の現実的検討
はじめに——「一生賃貸」で大丈夫なのか
45歳独身、賃貸住まい。今は家賃5万円のワンルームに住んでいる。問題なく暮らせている。だが20年後はどうか。65歳。70歳。80歳。高齢になっても賃貸に住み続けられるのか。「高齢者は賃貸を借りにくい」という話を聞く。大家が高齢の独身者を敬遠する。孤独死のリスクがあるから。保証人がいないから。年金だけでは家賃が払えないかもしれないから。
「一生賃貸」で本当に大丈夫なのか。この不安は、独身おひとりさまの老後問題の中でも最も切実なものの一つだ。
住まいガイドの別記事で「賃貸審査突破」や「地方移住」について書いたが、あの記事は「今」の住まいに焦点を当てていた。このエッセイでは、「20年後の住まい」に焦点を当てる。賃貸を続けるのか、持ち家を買うのか、施設に入るのか。45歳の今から考えておくべき選択肢を、コストとリスクの両面から検討する。
選択肢1:一生賃貸を続ける
一生賃貸のメリット。引っ越しが自由。ライフステージの変化に合わせて住む場所を変えられる。固定資産税がかからない。修繕費がかからない(大家負担)。住宅ローンの返済義務がない。初期費用が少ない。
一生賃貸のデメリット。家賃を一生払い続ける。65歳から95歳までの30年間で家賃5万円×12ヶ月×30年=1800万円。家賃4万円なら1440万円。この金額を年金と貯蓄から捻出し続ける必要がある。高齢になると審査が厳しくなる。保証人が見つからない。オーナーが「高齢者は入れたくない」と考える。
高齢者が賃貸を借りやすくするための対策。UR賃貸住宅は高齢者の入居に寛容。公営住宅(都営・県営・市営)は高齢者の優先枠がある。セーフティネット住宅(高齢者等の住宅確保要配慮者を受け入れる登録住宅)が増えている。保証会社を利用すれば、個人の保証人は不要。見守りサービス(自治体や民間の安否確認サービス)に加入していると、大家の安心材料になる。
一生賃貸の現実的な戦略。今から「高齢になっても住み続けられる物件」を探しておく。URの団地、公営住宅の申し込み条件を調べておく。60歳以降の家賃を下げるために、地方の安い物件への移住を検討する。地方なら家賃2〜3万円の物件もある。30年間の家賃が720〜1080万円に。都心の半分以下だ。
選択肢2:中古マンションを購入する
45歳独身が家を買う。非正規雇用で住宅ローンが組めるのか。結論から言えば「条件付きで可能」だ。
住宅ローンの審査では、雇用形態、年収、勤続年数、信用情報が見られる。派遣社員でも、同じ派遣元に2年以上勤務し、年収が安定していれば、審査に通る可能性がある。フラット35(住宅金融支援機構)は、雇用形態に関係なく年収400万円未満なら返済比率30%以下で借入可能。年収250万円なら、年間返済額75万円以下=月62500円以下の借入が可能。
だが45歳から35年ローンを組むと完済は80歳。定年後もローンを払い続けることになる。20年ローンなら65歳で完済できるが、月の返済額が高くなる。500万円の中古ワンルームマンションを20年ローン(金利1.5%)で借りた場合、月の返済額は約24000円。家賃5万円より安い。
購入のメリット。ローン完済後は住居費がほぼゼロになる(管理費・修繕積立金・固定資産税のみ)。月の支出が大幅に減る。老後の家賃問題が解消する。「自分の家がある」という精神的な安定。
購入のデメリット。頭金が必要(物件価格の10〜20%)。500万円の物件なら50〜100万円。修繕積立金・管理費が月に15000〜25000円かかる。固定資産税が年に数万円。マンションの資産価値は築年数とともに下がる。売却時に買った値段より安くなるリスク。引っ越しの自由度が下がる。
現実的な選択肢としての「中古ワンルームマンション」。都心ではなく、地方都市や郊外の駅近の中古ワンルームマンション(築20〜30年)なら、300〜500万円で購入可能。現金一括で買えれば住宅ローンも不要。貯金500万円を投じて、300万円の中古マンションを現金で買い、残り200万円を生活防衛資金にする。65歳以降の住居費は管理費・修繕積立金の月15000円+固定資産税の月3000円=月18000円。家賃5万円と比べて月32000円の節約。年間384000円。30年間で1152万円の差。
ただし、築20〜30年のマンションは「築50〜60年」になる頃に大規模修繕や建て替えの問題が発生する。修繕積立金の値上げ、修繕費の一時金徴収、最悪の場合は建て替え(数百万円の負担金)。これらのリスクを理解した上で購入する必要がある。
選択肢3:高齢者向け施設に入居する
高齢になって一人暮らしが難しくなったとき、「施設に入る」という選択肢がある。
施設の種類をいくつか示す。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリーの賃貸住宅で、安否確認と生活相談のサービスがついている。月額費用は10〜20万円(家賃+サービス費+食費)。入居一時金はゼロの場合もある。比較的自立した高齢者向け。
介護付き有料老人ホームは、24時間の介護サービスが受けられる施設。月額費用は15〜30万円。入居一時金が数百万円かかる場合がある。要介護状態になったときの選択肢。
特別養護老人ホーム(特養)は、公的な施設で、費用が安い(月額5〜15万円、所得による)。ただし入居待ちが長い(数ヶ月〜数年)。原則として要介護3以上が入居条件。
独身おひとりさまにとって施設は「最後の安全策」だ。一人暮らしが難しくなったとき、施設に入れれば安心。だが施設の費用は高い。年金月7〜10万円では、サ高住の月額費用(10〜20万円)を賄えない場合がある。不足分は貯蓄から補填する。NISAで積み立てた資産が、このときに役立つ。
選択肢4:シェアハウス・グループリビング
高齢者同士でシェアハウスに住む「グループリビング」という形態が、少しずつ広がっている。一人暮らしの寂しさを解消しつつ、住居費を抑えられる。家賃は通常の一人暮らしより安い(個室+共有スペースで月3〜5万円程度)。食事を共同で作る、掃除を分担するなど、「ゆるいつながり」がある。
デメリットは、共同生活のストレス。一人暮らしの自由に慣れた独身中年にとって、他人との共同生活はハードルが高い。相性が合わない相手との生活は苦痛になりうる。「事前に体験入居」できる施設を選ぶのが安全だ。
「45歳の今」やるべきこと
老後の住まいを決めるのは今ではない。だが「選択肢を知っておく」のは今やるべきことだ。
やるべきこと1は「老後の住居費をシミュレーションする」こと。賃貸を続けた場合の総住居費、中古マンションを買った場合の総費用、施設に入った場合の総費用。それぞれの金額を計算し、比較する。
やるべきこと2は「URの団地や公営住宅の情報を集めておく」こと。高齢者が入居しやすい物件の情報を、今のうちから把握しておく。申し込み条件、空き状況、家賃相場。情報を持っていれば、いざというときに迅速に動ける。
やるべきこと3は「地方移住の可能性を検討する」こと。仕事をリタイアした後なら、住む場所の制約がなくなる。家賃2〜3万円の地方に移住すれば、老後の住居費が半減する。地方移住の候補地を、今のうちからリサーチしておく。
やるべきこと4は「住居費のための資産を作る」こと。NISAや銀行貯蓄で、老後の住居費に充てる資産を積み立てる。65歳時点で500〜1000万円の資産があれば、中古マンションの購入、施設の入居一時金、地方移住の初期費用など、複数の選択肢が取れる。
「住む場所がある」ことの安心感
住む場所があること。これは人間にとって最も基本的な安全保障だ。住む場所がなければ、すべてが崩壊する。仕事も、健康も、精神の安定も。すべてが「住む場所がある」ことの上に成り立っている。
独身おひとりさまにとって、「老後も住む場所がある」という確信は、他の何にも代えがたい安心感だ。その安心感を得るために、45歳の今から準備を始める。準備とは、情報を集め、お金を貯め、選択肢を広げること。準備があれば、将来がどうなっても対応できる。対応できるなら、怖くない。怖くなければ、今を安心して生きられる。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。

