- はじめに――なぜ今、cisを語るのか
- 第1章 cisとは何者か――プロフィールと基本情報
- 第2章 cisの原点――幼少期からデイトレーダーになるまで
- 第3章 cis投資哲学の核心――順張りという思想
- 第4章 損切りの絶対性――cis哲学の第二の柱
- 第5章 cisの具体的なトレード手法
- 第6章 大事件で見るcisの戦略――伝説のエピソード分析
- 第7章 cisの語録――名言から読み解く哲学
- 第8章 他の伝説の投資家との比較――cisの独自性を浮き彫りにする
- 第9章 一般投資家がcisから学べる10の教訓
- 第10章 cisへの批判と反論
- 第11章 現在のcis――2024〜2026年の動向
- 第12章 cisから学んだこと――まとめに代えて
- 参考資料・一次情報リスト
- 著者あとがき
はじめに――なぜ今、cisを語るのか
日本の個人投資家のなかで「伝説」と呼ばれる人物は何人かいます。ジェイコム男ことB・N・Fさん、累計利益100億円を達成したテスタさん、株仙人として知られる片山晃さん、デイトレーダーのウルフ村田さん――挙げていけばきりがありません。しかしそのなかでも、別格の存在として語り継がれているのが、本記事の主役である「cis(シス)」さんです。
300万円で始めた株式投資を、最盛期には230億円超まで膨らませた。Twitter(現X)のひとつの発言で板が動き、相場の流れすら変わってしまう。そんなエピソードが信じられないほどの規模感ですが、すべて事実です。
cisさんは2018年12月に著書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA)を出版し、それまで断片的にしか知られていなかった投資哲学を世に問いました。本書は発売1か月で12万部を突破し、最終的には全世界で15万部を超えるベストセラーとなっています。
この記事では、cisさんの投資哲学を可能な限り深く、わかりやすく解説していきます。一次情報として、cisさん本人の著書、本人のTwitter発言、本人が応じた『プレジデント』『日経新聞』『ブルームバーグ』『ダイヤモンドZAi』などの取材記録を参照し、それらを丁寧に紐解いていきます。そして、単なる経歴紹介や名言集ではなく、「なぜそう考えるのか」「その思考はどこから来ているのか」「私たち普通の投資家は何を学べるのか」という視点で、独自の角度から分析していきます。
文字数は約10万字におよぶ長大な記事になります。途中で気になった章だけ拾い読みしてもらっても構いませんし、最初から最後まで通して読めば、cisさんという人物像と、その投資哲学の全体像が立体的に浮かび上がってくるよう構成しました。
ですます調でお届けしますが、内容は決して教科書的なものではなく、cisさんの「人間くささ」も含めて、できるかぎり生々しく描き出すよう努めています。それでは、はじめましょう。
第1章 cisとは何者か――プロフィールと基本情報
1-1. 基本データ
まずは基本情報を整理しておきます。
- ハンドルネーム:cis(シス)
- 本名:非公開(一説には森貴義氏とされますが、本人は公式に認めていません)
- 生年月日:1979年3月生まれ
- 出身大学:法政大学工学部
- 居住地:東京都
- 家族構成:妻と複数の子ども
- 職業:個人投資家・専業トレーダー
- 取扱商品:株式、日経225先物、日経225オプション、FX、仮想通貨、不動産
- 資産規模:2018年11月時点で約230億円、2024年時点では本人発言ベースで約270億円、2025年9月の日経新聞インタビューでは「運用資産が300億円を超える」と報じられています
- Twitter(X)アカウント:@cissan_9984、フォロワーは50万人超
1-2. なぜ「cis」なのか
「cis」という不思議なハンドルネームの由来は、本人がインタビューで明かしています。学生時代にやり込んだ格闘ゲームのスコアランキングで、「俺と戦う奴は必ず死す」というメッセージを込めて「cis=死す」と入力していたことが発祥なのだそうです。
このエピソードは些細なようでいて、cisさんという人物の本質をよく表しています。
第一に、彼が筋金入りのゲーマーであるという事実。第二に、勝負事に対する徹底した姿勢――「相手を完膚なきまでに叩きのめす」という攻撃性。第三に、自分のアイデンティティを軽い遊び心と結びつける感覚。
後の章で詳しく見ていきますが、この「ゲーマー思考」と「攻撃的勝負観」と「遊び心」の三位一体が、cisさんの投資スタイルを貫く太い背骨になっています。
1-3. 「日経平均を動かす男」という異名
cisさんの代名詞といえば「一人の力で日経平均を動かせる男」という異名です。これは誇張ではありません。
2013年には約1兆7,000億円の日本株を売買しており、これはこの年の東京証券取引所での個人投資家による株式取引の約0.5%に相当するとされています。一人の個人投資家がそれだけのボリュームを動かしているわけですから、特定の銘柄や先物に大きなポジションを持てば、当然、相場に影響が出ます。
また、cisさんがTwitterで「買った」「売った」とつぶやくと、それを見たフォロワーが追随し、結果的に相場が動くという現象もしばしば観測されています。本人はその影響力を認識した上で、特定銘柄の売買予告のような形では発言しないよう配慮しているとされています。
経済アナリストの馬淵磨理子さんも「cis氏の影響力を恐れる」と発言したことがあり、機関投資家や経済記者からも一目置かれる存在となっています。
1-4. 顔を見せないカリスマ
cisさんは徹底して素顔を公開していません。例外は2011年に「笑っていいとも!」に出演した際に、すりガラス越し&ボイスチェンジャーありで顔を隠して登場したくらいです。雑誌取材も顔出しNGが原則で、Twitterのプロフィール画像も実物の自分の顔ではありません。
これは身の安全のためだといわれています。230億円という資産規模になれば、誘拐や恐喝のターゲットになりかねません。家族のためにも顔を出さない選択をしているのです。
私はこの「顔を出さないカリスマ」というあり方そのものが、cisさんという存在を一層神秘的にしている要素だと感じます。SNS時代の現代では、顔出しして影響力を獲得するのが一般的ですが、cisさんは逆方向のアプローチで、しかも50万人超のフォロワーを抱えています。これは、純粋にトレードの実績と、思想や言葉の鋭さだけで人を惹きつけている証拠だといえるでしょう。
第2章 cisの原点――幼少期からデイトレーダーになるまで
cisさんの投資哲学を理解するためには、彼がどのような少年時代を過ごし、何に夢中になり、どんな失敗を経験して投資に辿り着いたかを知ることが不可欠です。投資哲学は天から降ってきたものではなく、彼の人生経験の積み重ねから自然に形成されてきたものだからです。
2-1. 「期待値」に出会った少年期
cisさんは1979年3月生まれ。著書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』のなかで、自分の原点として「駄菓子屋の当たり付きお菓子」のエピソードを語っています。
子どもの頃、cisさんは駄菓子屋でくじ付きのお菓子を買うのにハマっていました。なぜハマったのかというと、「これは確率と期待値のゲームだ」と気づいたからです。お菓子1個の値段、当たりが出る確率、当たりが出たときにもらえる景品の価値――これらを天秤にかけて「期待値プラスなら買う、マイナスなら買わない」という判断を、小学生のうちから自然にしていたのだといいます。
普通の子どもがお菓子そのものを楽しむのに対して、cisさんは「期待値という概念」を楽しんでいたわけです。これは投資家としてのDNAともいうべきもので、彼の人生を通じて一貫して見られる思考パターンです。
2-2. ゲームとの邂逅――ストリートファイターIIから始まる勝負人生
その後、cisさんはゲームに熱中していきます。とくに格闘ゲーム「ストリートファイターII」をやり込んだことを著書で語っています。
格闘ゲームは、コマンド入力の正確さと反射神経、そして相手の癖を読む力が要求されます。cisさんはここで、後にトレードに活かされる重要な能力を磨いていきました。
- 正確なオペレーション能力――コマンド入力のミスは即座に敗北につながる
- 反射神経――一瞬の判断の遅れが命取りになる
- 相手の癖を読む観察力――相手がどう動くかを予測し、先回りする
- 冷静さ――感情的になった瞬間に負けが確定する
これらはすべて、後年のデイトレードでそのまま要求される能力です。私が興味深いと思うのは、cisさんが「投資のために」これらを身につけたのではなく、「遊びのなかで自然に」身につけたという点です。
その後、cisさんはオンラインゲームに移行します。「ウルティマオンライン」や「ロールプレイングゲーム」に大学時代の大半を費やし、卒業に必要な単位はギリギリしか取れなかったといいます。しかしここでも、彼は重要なことを学んでいました。
オンラインゲームは、不特定多数のプレイヤーが集まる「市場」のような世界です。アイテムの売買、相場の変動、希少価値の判定、信頼できる相手の見極め――これらはすべて、現実の投資市場と構造的に同じものです。cisさんがこの世界で「日本トップレベル」と評されるほどに上り詰めたことは、後の投資家としての成功を予見していたと言ってよいでしょう。
2-3. パチンコ・パチスロ――10代で月収40万円
cisさんが投資の原資を作ったのは、ゲームでもバイトでもなく、パチンコでした。
高校時代、cisさんは授業をさぼってパチンコ屋に通いつめました。普通の高校生がそれをやれば単なる「不良の落ちこぼれ」ですが、cisさんは違いました。彼はパチンコを「期待値計算のゲーム」として捉えていたのです。
cisさんは『プレジデント』のインタビュー記事で語っている内容に基づくと、独自のロジックでパチンコ台を選別し、徹底した管理のもとで打ち続けていました。台ごとの設定差、釘の調整、出玉率、稼働時間――これらを総合的に判断し、「期待値プラスの台でしか打たない」というルールを徹底していたのです。
その結果、cisさんは15歳のときに1か月で約40万円を稼ぎ、生涯のパチンコ収支では総額800万円以上を稼いだとされています。一日平均6万円から8万円、月収にすると最大240万円ほどになる時期もあったといいます。
ただし、この資金の多くは競馬で失ったとも本人は明かしています。「天才投資家のcisでも競馬は難しかった」というのは興味深い事実です。これについてcisさん自身は、「向き不向きがある」「自分が優位性を持てる土俵を選ぶことが大事」と述べています。
私はここに、cisさんの投資哲学の重要な萌芽を見ます。「どんな勝負でも勝てる」と思っていたら、競馬で大やられすることはなかったかもしれません。逆に、競馬で負けたことで「自分は何でも勝てるわけではない」「自分の優位性のある場所でしか戦わない」という鉄則を、若くして体得したのだと考えられます。
2-4. 2000年夏――伝説の始まり、300万円の元手
cisさんが本格的に株式投資を始めたのは、法政大学工学部4年生だった2000年の夏です。元手は300万円。これはパチンコや家庭からの援助、各種アルバイトで貯めた金額でした。
このとき、cisさんは21歳でした。
2000年といえば、ちょうどITバブルのピークから崩壊の局面に差しかかっていた時期です。日経平均株価は1999年末に約1万9,000円から、2000年4月に2万円台を回復したあと、急落していきます。
本人の証言を総合すると、cisさんが投資を始めた当初の手法は、現在の彼の「順張り」スタイルとは正反対の「逆張り・バリュー投資」でした。
「割安な株を買って、上がるのを待つ」――まさに教科書通りの投資です。当時は『会社四季報』や決算書を読み込み、ファンダメンタルズ分析を駆使していたといいます。法政大学工学部という理系出身ですから、数字を読むことには抵抗がなかったはずです。
しかし結果は惨憺たるものでした。
2-5. 1,000万円を「溶かす」――痛恨の挫折
cisさんは投資を始めて2年半のあいだに、約1,000万円を失ったとされています。最初の元手300万円に加えて、就職後の給料や追加投資、パチンコでさらに稼いだ資金を投入していましたが、いずれも市場で失っていきました。
具体的には、2002年に「みずほ銀行株のナンピン買い」で大きな失敗をしたエピソードがよく知られています。当時の銀行株は不良債権問題で売り込まれていて、cisさんは「これだけ下がったのだから、もう底だろう」と判断して買いに入りました。ところが、株価はそこからさらに下落。「ここで損切りしたら負ける」と思って、下がるたびに買い増す「ナンピン買い」を繰り返したのです。
結果、資産は一時104万円まで激減しました。300万円の元手から始まり、追加投入もしていたわけですから、合計でいくら失ったかは推して知るべしです。
このとき、cisさんはどう感じたのでしょうか。本人は著書で淡々と「俺は才能がないのか」と思った、と語っています。中学からパチンコでは負け知らずだった人物が、「期待値プラスの勝負を選んでいるはずなのに、なぜ株では勝てないのか」と苦しんだのです。
私は、この挫折こそがcisさんを「伝説のトレーダー」に育てた決定的な経験だったと考えます。負けたことがある人にしかわからない感覚――それを20代前半で骨身に染みて体験したからこそ、後年「損切りは絶対」「ナンピンはしない」という鉄則を、誰よりも深く理解し、揺るぎないルールとして守り続けることができているのだろうと推察します。
2-6. 運命のオフ会――「びびりおん」さんとの出会い
転機が訪れたのは、2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)の株式掲示板でのオフ会でした。
cisさんは当時、勝てない自分の鬱憤を晴らすかのように、2ちゃんねるの株板に積極的に書き込みを行っていました。「20代で50億持ってないやつはクズだろ?w」「下手くそはいつまでたっても下手くそのまま」など、挑発的な発言で知られるようになります。
その2ちゃんねる経由で、当時「びびりおん」というハンドルネームで活躍していた個人投資家のオフ会に参加することになります。びびりおんさんは新興市場のトレードで資産を増やしていた実力派の投資家でした。
このオフ会で、cisさんは「勝っている投資家たちの手法」を聞きました。そして、彼らに共通していたのが――驚くべきことに――「短期の値動き、かつチャートや指数組み入れなどの理由がある株を買う」という、それまでcisさんがやっていたことの正反対の戦略だったのです。
cisさんは著書のなかで、当時の衝撃をこう振り返っています。「割安とか割高とか、将来のこの会社は業績が伸びるはずだとか、そういった要素は、自分が勝手に思い込んでいるに過ぎない。勝っている人ほど、短期の値動き、かつチャートや指数組み入れなどの理由がある株を買っていた」。
そして、こう結論づけます。「『今ある優位性』に張る」。
この一言は、cisさんの投資哲学のコアコンセプトとして、いまもなお彼の発言の根底に流れています。詳しくは後の章で深掘りしますが、簡単に言えば「未来予想という不確実なものではなく、今この瞬間に存在している優位性に賭ける」という考え方です。
2-7. 開眼から快進撃――短期トレードへの転換
オフ会以降、cisさんはそれまでの長期投資・バリュー投資を捨て、短期トレード・順張りトレードに完全に切り替えました。
その結果は劇的でした。
- 2004年6月:資産6,000万円に到達し、勤めていた会社(プレイステーションの蓋を作っていた親族経営の町工場)を退職
- 2004年内:資産2億円突破
- 2005年内:資産30億円弱を築き、トッププレイヤーの仲間入り
たった3年で、資産が1,000万円から30億円――300倍です。これは年率にすると約576%という驚異的なリターンです。
「短期トレードに変えたら、それまで負け続けていたのが嘘のように連戦連勝になった」とcisさん自身も語っています。手法そのものはシンプルなのに、なぜそれまで負けていたのか。それは「人間の本能」が逆を向いているからです。この点については、後の章で詳しく解説していきます。
2-8. 2005年12月8日――ジェイコム事件で6億円
cisさんを一気に「伝説」へと押し上げた出来事が、2005年12月8日に発生しました。世にいう「ジェイコム株大量誤発注事件」です。
この日、東証マザーズに新規上場した人材派遣会社のジェイコム(J-COM、現ジェイコムホールディングス)の株式について、みずほ証券の担当者が、本来「61万円で1株売り」と発注すべきところを、誤って「1円で61万株売り」と入力してしまいました。
東京証券取引所のシステムにはチェック機能があり「異常」と警告が出たものの、担当者はそのまま注文を執行してしまいました。当時のジェイコムの発行済株式総数は約1.4万株でしたから、発行済株式の40倍以上にあたる売り注文が、しかもとんでもない安値で出されてしまったわけです。
午前9時27分、初値がつく前にこの誤発注が出されました。事前の予想初値は90万円前後でしたが、大量の売りで初値は67万2,000円まで暴落。さらに3分後の9時30分には、ストップ安の57万2,000円に張りつきました。
みずほ証券はすぐに誤りに気づき取消注文を出しましたが、当時の東証システムでは取消ができませんでした。みずほ証券は400億円超の損失を計上することになります。
このとき、2ちゃんねるの株式掲示板には「これ誤発注じゃないか?」「拾えるだけ拾え!」という書き込みが殺到していました。cisさんも当然、その動きを察知していました。
cisさんはストップ安の57万2,000円で3,300株を買い、10分後に売却。約6億円の利益を得ました。
ちなみに、同じくこの事件で大きな利益を得たのが、当時から有名だったB・N・F(ジェイコム男)さんで、彼は20億円超を稼いだとされています。cisさんとB・N・Fさんは、2003年冬のオフ会で知り合っていた古い知り合いでした。
このジェイコム事件は、cisさんの哲学を象徴する出来事でもあります。誤発注という「明らかな歪み」を瞬時に認識し、躊躇なく行動する。これはまさに「期待値プラスの場面で全力を投じる」という、cisさんの一貫したスタイルそのものです。
なお、cisさんは著書で興味深いことを述べています。「利益を最大化させることよりも、自身の経験から『大勝利こそチャラにされやすい』という教訓があり、どうやったらチャラにされないかばかりを考えていた」と。
つまり、調子に乗って「もっと買えばよかった」と思うのではなく、「ここで手じまっておかないと、夜のうちに何か起きて全部失うかもしれない」と考え、確実に利益を確保する道を選んだのです。私はこの判断に、cisさんの「リスクとリターンを天秤にかけ続ける」冷徹な合理性を感じます。
2-9. ライブドアショック――3日で5億円の負け
しかし、cisさんといえども、勝ち続けたわけではありません。ジェイコム事件のわずか1か月後、2006年1月にライブドアショックが起きました。
当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったライブドア(堀江貴文氏が経営)に、東京地検特捜部が証券取引法違反容疑で強制捜査に入ったのです。これを受けて、ライブドア株は連日のストップ安となりました。
cisさんはこのときライブドア株を保有しており、3日間で約5億円の損失を出しました。
この経験から、cisさんは「個別株の集中投資のリスク」を改めて思い知ったとされています。同時に、「ストップ安が続くような状況では、損切りすらできない」というデイトレーダーにとっての根本的なリスクも体験しています。
それでも、cisさんは投資をやめませんでした。むしろ、この経験を糧に、リスク管理のあり方を見直し、より洗練されたトレーダーへと成長していきました。「重要なのは、損をしないことではなく、大きな損をしないこと」という、cisさんを代表する哲学のひとつは、こうした実体験から生まれたものです。
2-10. 31歳で資産100億円、39歳で230億円
ここから先のcisさんの資産推移は、もはや非現実的な数字の羅列のように見えます。
- 2007年:資産50億円
- 2010年(31歳):資産100億円
- 2018年11月(39歳):資産230億円
ただし、2002年〜2005年に資産を1,000倍に増やした時期と比べると、2005年以降の年平均成長率は約17%とされています。これは確かに高い数字ですが、ヘッジファンドのトッププレイヤーと比べても遜色ない、再現性のあるリターンといえます。
「巨額の資産になってからは、爆発的に増やすのは難しい」というのは、規模の経済が逆に働く投資の特性です。100万円なら1日で2倍にできても、100億円を1日で200億円にするのは、市場の流動性の制約からほぼ不可能です。そのなかでも年率17%を継続している点は、cisさんの実力の証左です。
そして、2024年5月のAERA DIGITALでの対談記事では、cisさんの資産は約270億円と本人発言ベースで報じられました。2025年9月の日本経済新聞インタビューでは、「運用資産が300億円を超える」と報じられています。
つまり、本書が出版された2018年から7年近くが経過した現在も、cisさんは資産を増やし続けているということです。これは「一発当てた幸運な人」ではなく、「再現性のある投資手法を持った本物の投資家」であることの何よりの証拠でしょう。
第3章 cis投資哲学の核心――順張りという思想
ここからは、cisさんの投資哲学そのものに踏み込んでいきます。
3-1. 「上がっている株を買う、下がっている株は買わない」
cisさんの投資哲学を一言で要約するなら、これに尽きます。
上がっている株を買う。下がっている株は買わない。買った株が下がったら売る。
シンプルすぎて拍子抜けするかもしれません。しかし、この一見シンプルなルールこそが、彼を300万円から230億円に押し上げた根本的な戦略なのです。
著書でcisさんはこう述べています。
上がり続ける株は上がり、下がり続けている株は下がる。
この言葉、よく読んでみてください。「上がる」と思った株が「上がる」のではなく、「上がっている」株が「上がり続ける」と言っているのです。
これは未来を予測する言葉ではありません。「現在進行形で起きている事実」を述べているのです。そして、その事実が継続するであろう、と仮定する。これがcisさんの順張り思想の本質です。
3-2. 普通の人間は逆を行く――押し目買いの罠
普通の人は、どうするでしょうか。
おそらく多くの人は、「安いときに買って、高いときに売る」を理想とします。「100円のものは200円で買うより、80円で買ったほうが得」――これは日常生活では当たり前の感覚です。スーパーの特売、メルカリの値下げ、不動産の底値買い――すべて、安く買うほうが得という常識が支配しています。
この常識を株式投資に持ち込むと、いわゆる「押し目買い」になります。下がってきたところで買って、戻ったら売る。一見、合理的に見えます。
しかし、cisさんはこの「押し目買い」を著書で明確に否定しています。
押し目買いは、下がったところで買おうとするわけだから、一種の逆張りである。
cisさんに言わせれば、押し目買いも「逆張り」なのです。そして、逆張りは負けに繋がりやすい手法だ、というのが彼の結論です。
なぜでしょうか。
それは、「いつか上がる」と思って買った株が、「いつまで経っても上がらない」あるいは「さらに下がり続ける」可能性のほうがはるかに高いからです。
1,000円で買った株が900円になり、「もう少し下がったら買い増そう」と思っているうちに800円、700円、500円、200円――と下がり続けて、結局塩漬けにしてしまう。これがいわゆる「ナンピン買いの泥沼」です。
cisさん本人も、まさにこのナンピン買いで1,000万円を失った経験があります。だからこそ、骨身に染みてその危険性を知っているのです。
3-3. なぜ上がっている株は上がり続けるのか
では、なぜ「上がっている株は上がり続ける」のでしょうか。
これにはいくつかの理由があります。
第一に、株価が上がるのは、買おうとする人が売ろうとする人より多いから、です。当たり前の事実ですが、ここに重要な情報が含まれています。
たくさんの人が「買いたい」と思っているということは、その背後には何らかの理由があるはずです。決算が良いのかもしれない、新製品が発表されたのかもしれない、業界全体に追い風が吹いているのかもしれない、機関投資家が買い始めたのかもしれない――。
その理由のすべてを個人投資家が把握することは不可能です。しかし、「買いたい人が多い」という事実そのものが、「何か理由がある」というシグナルなのです。
cisさんは、その理由を分析しようとはしません。あくまで「事実」だけを見ます。「上がっている、つまり買いたい人が多い、ということは何か理由がある、ということは続く可能性が高い」――この推論を、シンプルに信じるのです。
第二に、トレンドフォローの理論的裏付けがあります。
市場は完全に合理的ではなく、情報の伝達には時間差があります。誰かが先にいい情報を得て買い始め、それを見た別の人が買い、さらにそれを見たまた別の人が買い――というふうに、買いが買いを呼ぶ局面が生まれます。これがいわゆる「トレンド」です。
ジョン・ヘンリーやリチャード・デニスといった海外の伝説的なトレンドフォロワーも、同じ原理で大きな利益を上げてきました。cisさんの順張り戦略は、こうした古典的なトレンドフォロー戦略と本質的に同じです。
第三に、心理的な慣性があります。
ある銘柄が上がり続けると、「乗り遅れたくない」という心理(FOMO:Fear of Missing Out)が働き、買いを呼びます。逆に、ある銘柄が下がり続けると、「これ以上損したくない」という恐怖が売りを呼びます。
この心理的な慣性は、ファンダメンタルズとは無関係に動く力で、ときには合理的な水準を大きく超えた高値や安値を生み出します。これに乗るのが順張り、これに逆らうのが逆張りです。
3-4. 「事実から逃げない」――順張りの最大の難しさ
ここまで読んで、「順張りって簡単じゃん」と思った方もいるかもしれません。しかし、実際にやってみると、これがびっくりするほど難しいのです。
cisさん自身、こう言っています。
上がっている株を買え。シンプルだが、実践するとなると意思の強さを要求される。
なぜ難しいのでしょうか。
理由は、人間の本能が「逆」を向いているからです。
上がっている株を見ると、私たちはこう思います。「もう天井かもしれない」「ここで買ったらすぐ下がるかもしれない」「もうちょっと下がったところで買えば、もっと安く買えるはずだ」――。
下がっている株を見ると、私たちはこう思います。「割安になっている」「いずれ戻るはずだ」「安く買えるチャンスだ」――。
つまり、私たちの本能は、上がっている株は買えず、下がっている株は買ってしまうように設計されているのです。
これは、買い物上手な日常生活の感覚そのままです。安く買って高く売る――それが「賢い」買い方です。スーパーでは正解です。しかし、株式市場では、それが「最も損する買い方」になってしまうのです。
cisさんは、この本能を克服することが、相場で勝つための最大の課題だと指摘します。
本能に克てねば投資に勝てない。
これは、cisさんを代表する名言のひとつです。シンプルな言葉ですが、含蓄が深いです。
3-5. 「事実」と「予想」を区別する
順張りを徹底するために、cisさんが大切にしているのが「事実と予想を厳密に区別する」という思考法です。
割安とか割高とか、将来のこの会社は業績が伸びるはずだとか、そういった要素は、自分が勝手に思い込んでいるに過ぎない。
cisさんから見れば、「この株は割安だ」「来年は業績が伸びるはずだ」というのは、すべて「予想」であり「思い込み」です。当たることもあれば、外れることもあります。むしろ、外れる可能性のほうが高いというのが、彼の率直な見方です。
一方、「今、この株が上がっている」は「事実」です。チャートを見れば誰でも確認できる、客観的な事実です。
cisさんは、「予想」ではなく「事実」に賭けます。「将来この会社は業績が伸びるだろう」ではなく、「今、この株は上がっている」に賭けるのです。
これは、投資哲学として極めて重要な視点の転換です。多くの投資家は「予想」を競い合っています。誰がより正確に未来を予想できるか――それで勝負しているのです。しかしcisさんは、「予想競争」から降りて、「事実観察競争」に乗り換えています。これは、はるかに勝率の高い土俵だと、私は分析しています。
なぜなら、「予想」は誰も正確にはできないからです。プロのアナリストでも、未来予測の精度はせいぜいコイントスより少し良い程度です。一方、「事実観察」は訓練すれば精度を上げることができます。誰でも見える同じチャートを見て、より早く、より正確に「上昇トレンドが発生している」と認識できるかどうか――これは、技術であり、磨くことができるスキルなのです。
3-6. 「明日の株価もわからないのに、半年後を予想できるわけがない」
cisさんの哲学を象徴するもうひとつの名言が、これです。
明日の株価も分からないで悩んでいるのに半年後とか1年後、さらには10年後の株価なんて予想できるわけがない。
これは多くの長期投資の本にとっては、ある種の挑発になる言葉です。世の中には「10年後の世界はこうなる」「20年後にはこの業界が伸びる」と語る投資本がたくさんあります。バフェット流の長期投資、グロース株投資、テーマ株投資――これらはみな、長期の未来予測を前提にしています。
cisさんはそれを「無理だ」と一刀両断します。「明日の株価」すらわからないのに、なぜ「10年後」がわかるのか――彼の論理は徹底的に首尾一貫しています。
私は、これは過激な意見でありながら、ある面では正しいと考えます。確かに、長期の予測は短期の予測より難しい。経済成長、技術革新、政治の変動、自然災害――10年あれば何が起きてもおかしくありません。
ただし、「市場全体は長期的には上がる」という前提に立つインデックス投資は、cisさん自身も否定はしていません。インデックス投資は、特定銘柄の未来を予測する必要がない、市場全体の成長を信じるだけの戦略だからです。
cisさんが否定しているのは、「特定企業の将来を予想して、その株を長期保有する」というスタイルです。「アップルは伸びる」「テスラは天才の会社だから5年後は2倍」――こうした個別企業の長期予想は、本人が思っているほどには精度が高くない、と彼は警告しているのです。
第4章 損切りの絶対性――cis哲学の第二の柱
順張りと並んで、cisさんの哲学を支えるもうひとつの柱が「損切り」です。
4-1. 「迅速な損切り」が最重要
cisさんは、株式投資で最も重要なことを問われると、ほぼ間違いなく「損切り」と答えます。
株で一番大切なのは迅速な損切り。失敗から逃げてはダメで、失敗は当然としていかに最小にとどめるか。
これも著書の核となる言葉のひとつです。
「失敗から逃げてはダメ」――この一節に、cisさんの哲学のすべてが凝縮されているといっても過言ではありません。
買った株が下がる――これは「失敗」です。自分の判断が間違っていた、ということです。多くの投資家は、この「失敗」と向き合うことを避けたがります。「いずれ戻るかもしれない」「ここで売ったら負けが確定する」「もう少し待てば……」――。
しかしcisさんは違います。下がった瞬間に「失敗だった」と認めて、躊躇なく売ります。それで損失は小さく確定しますが、それでよいのです。傷が小さければ、再起できます。
逆に、「失敗を認めたくない」と思って持ち続けていると、傷はどんどん深くなっていきます。1割の損失なら回復は容易ですが、5割の損失を回復するには、元の倍の利益が必要になります。8割の損失を回復するには5倍の利益が必要です。9割の損失を回復するには10倍の利益が必要です。
cisさんは、この「失敗のスケーリング」を本能的に理解しているのです。
4-2. 「大きな損をしない」ことの重要性
cisさんはこうも述べています。
重要なのは、損をしないことではなく、大きな損をしないこと。
ここがポイントです。
cisさんは、「損を一切しない」ことが大事だとは言っていません。むしろ、「損は必ずする」と認めています。だからこそ、「大きな損をしない」ことが大事なのです。
大ケガだけはしないようにする、という方針で僕は今の資産を築いた。
230億円を築いた人物が言うのですから、説得力があります。
私はこの哲学が、cisさんを「再現性のあるトレーダー」たらしめている根幹だと考えます。
ジェイコム事件のように、たまたま大きく勝つチャンスはあります。しかし、それは運の要素も大きく、再現性は限定的です。一方、「大きな損をしない」というのは、自分の意思でコントロールできる領域です。誰でも訓練すれば身につけられる規律です。
これを徹底するだけで、長期的には平均以上の成績を残せる――それがcisさんのメッセージです。
4-3. 「買値を忘れろ」――合理的損切りの極意
損切りについて、cisさんがよく語るのが「買値を意識しない」という考え方です。
自分の買値は市場ではまったくの無意味。俺が売買する時に考えることは、今の株価よりも上に行くか下に行くかだけ。
これは深い洞察を含んでいます。
多くの投資家は、「いくらで買ったか」を判断基準にします。「1,000円で買った株が900円になっているから損切り」「800円で買った株が900円になっているから利確」――これは買値を中心にした思考です。
しかし、市場はあなたの買値など知りません。株価は、「これからどう動くか」だけで決まるのです。あなたが1,000円で買ったか、500円で買ったか、まだ買っていないか――そんなことは、明日の株価には何の影響もありません。
cisさんは、買値を意識せず、「今この瞬間、上に行くか下に行くか」だけで判断します。これは合理的損切りの極意です。
具体的にはこういうことです。
あなたが1,000円で買った株が900円になっています。あなたはこう考えるでしょう。「ここで売ったら100円の損が確定する。せめて1,000円に戻ってから売りたい」。
しかしcisさんなら、こう考えます。「今900円のこの株が、これから上に行くか、下に行くか。下に行くと思うなら売る。上に行くと思うなら持つ、あるいは買い増す」。
買値は完全に無視されています。判断基準は「これからの値動き」だけです。
私はこの思考転換が、損切りを徹底できるかどうかの分岐点だと考えます。買値を意識すると、人間は「損を取り戻したい」という感情に支配されてしまいます。買値を忘れると、純粋に「これからどうなるか」だけで合理的に判断できるようになります。
4-4. 「損切りした株でも、上がり始めたら買う」
cisさんの損切りに関する哲学のなかで、最も真似が難しいのがこれです。
買った株が下がり損切りしたとして、そのあと損切りをあざ笑うかのように上がりだしたとき、上昇株として買うことができるかどうか?
普通の感覚なら、損切りした株を再び買うのは、ものすごい抵抗があります。「あの株のせいで損したのに、また買うの?」「自分の判断が間違っていたと認めるみたいで嫌だ」――こういう感情が湧きます。
しかしcisさんは、なんの抵抗もなくやります。
でも僕はそれを気にしない。いつも平気でやっている。1回ごとの売買で勝ち負けを考えていないから抵抗がない。
ここが超重要です。「1回ごとの売買で勝ち負けを考えていない」――この一文に、cisさんの哲学の真髄があります。
普通の投資家は、1回ごとのトレードで「勝った」「負けた」と一喜一憂します。同じ銘柄で2回連続負けたら「もうこの銘柄はダメだ」と諦め、3回目のチャンスを逃します。
しかしcisさんは、1回ごとのトレードを完全に独立した出来事として見ます。同じ銘柄で何度負けても、上昇トレンドが発生したら、再び買います。
さすがに同じ銘柄で売買を3回以上も繰り返て全部はずしたら、「俺をハメようとしているのか?」とイヤになってしまうこともあり、この銘柄は読めないと思って手をひく。けれど、それまでは気にせず続ける。
これは確率論的な思考です。トレード1回1回は、いわば「コイントスを投げて表が出るか裏が出るか」のようなもの。1回1回の結果に意味はなく、長い目で見たときの「期待値」だけが重要なのです。
期待値プラスのトレードを繰り返していれば、必ず勝てる――この信念が、1回ごとの感情を排除する力になります。
4-5. 「ナンピン買いは最悪の買い方」
損切りの裏返しとして、cisさんが強く否定するのが「ナンピン買い」です。
ナンピン買いとは、買った株が下がったときに、追加で買い増すことです。これによって平均購入単価を下げ、戻ったときの利益を大きくする――というのが一般的な理屈です。
しかしcisさんは、これを「最悪の買い方」と切り捨てます。
買った株が下がったとき、追加で買い増しするのは最悪の買い方だ。まずいのは、自分の失敗や敗北を認められないこと。
cisさんに言わせれば、ナンピン買いの本質は「自分の判断が間違っていたことを認めたくない」という感情です。「いや、最初の買い判断は正しかった、ただタイミングが少し早かっただけだ」と思いたい――その心理が、ナンピン買いという行動を生むのです。
しかし、相場は感情を相手にしません。下がっている株は下がり続ける可能性のほうが高い。そこに買い増したら、傷はさらに深くなります。
失敗から逃げてはダメで、失敗は当然として、いかに損害を最小限にとどめるかが重要だ。
cisさんがナンピン買いで負けた経験(2002年のみずほ銀行株)が、この哲学の原点になっているのは間違いありません。
ただし、cisさんは絶対に例外なくナンピンを否定するわけではありません。著書では「例外あり」とも書かれています。例外的に有効なケースとしては、たとえば、明らかな誤発注などで一時的に異常な安値がついた場面(ジェイコム事件のような状況)、あるいはマーケット全体がパニックで売られすぎている場面などが挙げられます。
しかし、こうした「例外的に明確な優位性がある場面」以外でナンピンを行うのは、ほぼ確実に負けに繋がる、というのがcisさんの一貫した立場です。
4-6. 「勝率は3割でも資産は増やせる」
ここまで読んで、「順張りで損切りを徹底するってことは、勝率が低くなりそうだな」と感じた方は鋭いです。実際、その通りなのです。
cisさん自身、こう語っています。
重要なのは勝率ではなく、トータルの損益。
そして、驚くべき事実を明かしています。
トータルで230億円もの資産を築きあげた僕だが、銘柄ごとの成績においては、利益を生んだ取引は全体の3割ほどしかない。つまり、残りの7割は引き分けか負け。
勝率たった3割。これがcisさんの実態です。
普通の感覚では、勝率3割なら「めちゃくちゃ負けている人」だと思うでしょう。野球の打率なら「平均的な打者」、麻雀の和了率なら「やや低め」、競馬の的中率なら「並み」――。
しかし、株式投資では話が違います。
勝率3割でも、1回の勝ちが負けの何倍にもなれば、トータルで大きく勝てるのです。
たとえば、こう考えてみてください。10回トレードして、3勝7敗。負けはすべて1万円の損失、勝ちはすべて5万円の利益だとします。
- 負け:7回 × 1万円 = 7万円
- 勝ち:3回 × 5万円 = 15万円
- 差し引き:プラス8万円
勝率3割でも、ちゃんと儲かっています。
cisさんが実践しているのは、まさにこれです。
負け回数は多くても1回が小さく、勝ち回数は少なくても1回が大きくなる。
順張りで損切りを徹底すると、こういう損益構造になります。
- 順張り:上昇トレンドに乗ったら、できるだけ長く乗る → 勝ちは大きい
- 損切り:上昇トレンドが終わった瞬間に降りる → 負けは小さい
つまり、cisさんのスタイルは、「数多くの小さい負けと、たまの大きな勝ち」の組み合わせなのです。
これは行動経済学でいう「プロスペクト理論」と真逆の構造です。人間は本能的に、「小さな勝ちを多く積み上げ、たまに大きな負けを許容する」スタイルを取りがちです(早めに利確し、損切りを先延ばしする)。cisさんは、この本能と逆の行動を意識的にとっているのです。
4-7. 損切りの具体的なタイミング
具体的に、cisさんはどのタイミングで損切りするのでしょうか。
実は、cisさんは「○○円下がったら損切り」というような、明確な数値ルールは設けていないと公言しています。
得していても損していても、値動きを見て、1時間後に今より下がると思ったら売る。
これは「裁量トレード」の極致です。チャートを見て、板を見て、出来高を見て、ニュースを見て、総合的に「これは下がる」と判断したら売る。
市場や銘柄のトレンドが変わったと気付いた瞬間にスパッと損切り。
ポイントは「気付いた瞬間に」という即時性です。判断が早いほど、損失は小さくなります。
しかしこのスタイルは、長年の経験と感覚がなければ難しいものです。初心者がいきなり真似するのは危険でしょう。
初心者向けには、cisさんは「○○%下がったら損切り」というような機械的ルールを設定することを勧めているわけではありませんが、自分なりの明確なルールを持つことの重要性は強調しています。
私は個人的に、初心者は最初のうちは「-5%で機械的に損切り」のような明確なルールから始めることをお勧めします。慣れてきたら、徐々に裁量を加えていけばよいでしょう。cisさんが裁量でやれるのは、彼が20年以上トレードしてきた熟練の感覚があるからです。
第5章 cisの具体的なトレード手法
ここまでcisさんの哲学を見てきましたが、それを実際にどう実装しているのか――具体的な手法を見ていきましょう。
5-1. 板読みと値動きの観察
cisさんは「ゲーマーとしての素養があるため、チャートよりも板をよく見る」と言われています。
板とは、ある銘柄について「いくらで何株売りたい人がいるか」「いくらで何株買いたい人がいるか」が一覧表になったものです。証券会社の取引ツールで誰でも見ることができますが、これを「読む」のは技術が必要です。
cisさんが見ているのは、板の「厚さ」と「動きの速さ」です。
たとえば、ある株の売り板が薄くて、買い板が厚いとします。これは「売りたい人より買いたい人のほうが多い」状態ですから、価格は上がりやすい状況です。さらに、買いの注文が次々と入ってきて、売り板を食い荒らしていく動きがあれば、本格的な上昇局面に入ったと判断できます。
cisさんは、こうした「板の動き」を見て、瞬間的に売買判断を下します。
上昇する自信があれば、誰かが消す前に自分が売り板を食っていけばよい。
これがcisさんの真骨頂です。普通のトレーダーは「あの売り板がなくなるまで様子を見よう」と待ちますが、cisさんは「自分で売り板を食い尽くす」のです。これには資金力が必要ですが、cisさんはそれを持っています。
ただし、これは大資金でなくてもできることです。少ない資金でも、「この銘柄、買いが優勢だな」と板を読めれば、トレンドの初動に乗ることができます。
5-2. 出来高と値動きの組み合わせ
cisさんは、強い銘柄を見極めるときに「値動きと出来高」を重視します。とくに「前日比出来高」と「株価変動率」の組み合わせで、本当に強い銘柄を探していると言われています。
これはどういうことか。
ただ株価が上がっているだけでなく、「いつもより出来高が多い」状態で上がっているのが、本物のトレンドのサインです。出来高が増えるということは、それだけ多くの市場参加者がその銘柄に関心を持ち、活発に売買しているということです。
逆に、出来高が少ないなかでの上昇は、フェイクの可能性があります。少人数の買い手だけで上がっているケースで、いつ崩れてもおかしくありません。
私はこの「出来高×変動率」という見方を、初心者にこそ強く勧めたいと思います。これを見ているだけで、「単なる仕手株っぽい銘柄」と「本当のトレンドが発生している銘柄」を区別する精度がぐっと上がるからです。
5-3. 時間軸――数秒から48時間
cisさんが得意とする時間軸は、「数秒から48時間程度」だとされています。デイトレードと短期スイングトレードが基本です。
なぜこの時間軸なのでしょうか。
理由は「予測可能性」にあります。
未来の予測は、時間が長くなるほど難しくなります。1秒後の株価は、ほぼ「今と同じ」と予測できます(99%以上の確率で当たります)。1分後の株価も、9割以上の確率で「今とほぼ同じ範囲」に収まります。1時間後、1日後、1週間後、1か月後――時間が経つほど、予測の精度は落ちていきます。
cisさんの順張り戦略は、「上昇トレンドが発生している」という事実を観察し、それが「もう少し続く」と仮定するものです。この「もう少し」の長さは、せいぜい数時間から数日です。1か月後にそのトレンドが続いているかは、わかりません。
だから、時間軸は短く取るのです。「今上がっている」が観察できる時間軸でのみ、勝負します。
長期投資家からすれば、「忙しすぎる」と感じるかもしれません。しかし、cisさんから見れば、長期予想こそが「不可能なことに賭けている」のです。
5-4. 全力投球――確信したら全資金を投じる
cisさんのスタイルでもうひとつ特徴的なのが、「確信したら全力投球する」というところです。
cis本人ではないですが、cisさんを観察してきた人たちが共通して指摘するのは、「上がりそうだと思うだけでなく、確信した時に全力で資金を注ぎ込むスタイル」だということです。
これは「分散投資」「リスク分散」を金科玉条とする現代ポートフォリオ理論とは正反対のスタイルです。cisさんは、こうも語っています。
私は分散投資もいいと思いますが、一番有利な銘柄に全部投資した方がいいと思います。
なぜか?
それは、cisさんが「確信」を持てる状況というのは、それだけ期待値が高い局面だからです。期待値が高いなら、ベットサイズを大きくしたほうが、得られる利益も大きくなります。分散すれば、期待値の低い投資にも資金を回すことになり、トータルのリターンは下がります。
ただし、これは「確信」が伴っているという前提があってこそです。確信のない場面で全力投球するのは、ただのギャンブルです。
私はこのスタイルを、初心者には絶対にお勧めしません。「確信」と「思い込み」を区別できるようになるには、相当な経験が必要だからです。初心者がやれば、ほぼ確実に「思い込み」で全力投球して、大きく負けます。
しかし、上級者にとっては、この「確信したら全力」という思考は非常に重要です。せっかくの絶好機を、小さなポジションでしか取れないのでは、トレーダーとしての成長は頭打ちになります。
5-5. 例外としての逆張り――「材料による下げ」を狙う
ここまで「順張り、順張り」と言ってきましたが、cisさんは絶対に例外なく順張りだけをやっているわけではありません。
著書やインタビューを精査すると、cisさんが逆張りを使うのは「材料によって、銘柄の本質的価値と無関係に下げている場面」だとわかります。
具体例を挙げましょう。
- 北朝鮮のミサイル発射で日本株全体が売られた日:個別企業の業績とは無関係なニュースで、全体が売られている。これは「本質的価値と無関係な下げ」なので、逆張りで買う。
- イギリスのEU離脱(ブレグジット)で世界中の株が売られた日:日本企業の多くは、ブレグジットの直接の影響を受けない。それなのに連鎖反応で売られているのは、過剰反応。
- トランプ大統領のツイートで一時的に株価が下げた場面:その後の冷静な分析で「実害は限定的」とわかる場合は、逆張りで買う。
- 子会社の不祥事で親会社が大きく下げた場面:親会社の業績への影響は限定的なのに、過剰に売られているなら、逆張りで買う。
つまり、「市場が過剰反応している」と判断できる場面では、逆張りで仕込むのです。
これは順張りと矛盾しているわけではありません。cisさんの本質は「期待値プラスの場面で勝負する」ことであり、その判断のひとつの形が順張り、もうひとつの形がこうした「過剰反応の逆張り」なのです。
ただし、これも上級者向けのテクニックです。「過剰反応」と判断するのが間違っていれば、ナンピン買いの泥沼に陥ります。初心者は、まずは順張りに徹したほうが安全です。
5-6. 仮説思考――「こうなったら、こう動く」をストックする
cisさんがインタビューで明かしている重要なスキルが、「仮説思考」です。
常に「こんなことが起きたら、こんな展開で儲かる」というような仮説を数十個ストックしており、それが実際に起こることがあり「はい、きたー」みたいな感じになる。
これは私が最も感銘を受けるcisさんの能力です。
普通の投資家は、「何かが起きてから」反応します。地震が起きてから「不動産株は下がるだろう」と考え、戦争が起きてから「防衛関連株は上がるだろう」と考える。しかし、ニュースが流れた時点では、すでに先回りした投資家が動いていて、株価は織り込み済みのことが多いです。
cisさんは、これを「先回り」しています。「もし○○が起きたら、××株が上がる」「もし△△が起きたら、□□株が下がる」――こういう仮説を、平時から大量にストックしているのです。そして、実際にその出来事が起きたとき、誰よりも早く、用意していたシナリオに沿って動きます。
たとえば、2015年8月の世界同時株安(チャイナショック)では、cisさんは事前に仮説を持っていました。「中国経済の減速懸念が高まれば、必ず世界同時株安につながる。そのとき、米国市場が開く前に日本市場が大きく売られるだろう。そこを先物の売りで取れば、大きく勝てる」――このようなシナリオです。
実際にチャイナショックが起きたとき、cisさんはほぼ完璧なタイミングで先物売りを仕掛け、最終的に約40億円の利益を得ました。これはブルームバーグでも報じられた有名な出来事です。
仮説思考の重要性は、トレードだけにとどまりません。ビジネス、キャリア、人生のあらゆる場面で「想定外を想定する」ことが、リスクを下げ、チャンスを増やします。cisさんがトレードで磨いてきたこの能力は、私たちの日常生活にも活かせる普遍的なスキルだと感じます。
5-7. 「市場や銘柄のトレンドが変わったと気付いた瞬間」を見極める方法
順張りで損切りを徹底するためには、「トレンドが変わった瞬間」を見極められる必要があります。これは難しい技術ですが、cisさんは独自の見方を持っています。
cisさんが2ちゃんねるに書き込んだ内容によれば、彼が判断材料として重視している順番は以下のとおりです(2009年2月の書き込み):
- 日足
- 日中足
- 歩み値
- 出来高
- 板
ただし、cisさんは続けて「というか全部」と書いています。つまり、これら全てを総合的に見ているのです。
日足:その銘柄が長期的にどういう動きをしているか、大きな流れを把握する 日中足(5分足、15分足など):今日のなかでどう動いているか、短期の勢いを見る 歩み値:1回1回の取引がどのくらいの株数で、どのスピードで起きているか 出来高:今日は普段と比べて活発か、停滞しているか 板:今この瞬間、どっち側に厚みがあるか
これらを総合的に見て、「上昇トレンドが続いている」「弱まってきた」「変わった」を判断します。
私が興味深いと思うのは、cisさんが「ファンダメンタルズ分析」をほとんど語らないことです。決算、PER、PBR、ROE、業界動向――こうしたファンダメンタルズ指標は、cisさんの判断プロセスにほぼ登場しません。
これは「ファンダメンタルズは無意味」という意味ではなく、「ファンダメンタルズは長期投資家のためのもので、短期トレードには直接的に役立たない」という認識です。短期の値動きを決めるのは、ファンダメンタルズではなく、「今この瞬間の需給バランス」なのです。
第6章 大事件で見るcisの戦略――伝説のエピソード分析
cisさんの哲学を理解するために、彼の有名な「大事件」を分析していきましょう。理論だけ追っていても抽象的になりがちですが、具体例を見ることで、彼の哲学がどう実戦で発揮されているかがわかります。
6-1. ジェイコム事件(2005年12月8日)の戦略分析
すでに触れたジェイコム事件ですが、もう少し深く分析してみましょう。
この事件の本質は、「市場の歪み」が一瞬で発生したことでした。みずほ証券の誤発注により、ジェイコムというそれなりの規模の会社の株式が、本来の価値(約90万円)の3分の2程度(ストップ安57万2,000円)まで暴落しました。
この時点で、「これは誤発注だ。本来の価値は90万円前後。買えば必ず儲かる」と気づける状況でした。実際、2ちゃんねるでもその情報は飛び交っていました。
cisさんはこの状況を瞬時に判断し、3,300株を購入しました。約19億円の買い注文です。当時のcisさんの資産は数億円〜10億円程度だったとされていますから、信用取引も使ってフルレバレッジで突っ込んだ可能性が高いです。
ここで重要なのは、cisさんが「迷わなかった」ことです。
ジェイコム株誤発注のような事件の際に、異変に気付きながら買えていない人は投資の世界ではあまり生き残っていない。投資家としては、判断して行動するのが早いほうが適正があり、早い人はいつでも早く、遅い人はいつでも遅い。
これがcisさんの観察です。
普通の人は、誤発注に気づいても、「本当に誤発注なのか?」「もし違ったらどうしよう」「もう少し様子を見よう」と躊躇します。その間に、機会は逃げていきます。
cisさんは、確信を持った瞬間に動きました。そして、10分後には売り抜けて、約6億円の利益を確保しました。
この「即断即決の能力」は、cisさんがゲーマーとして培った反射神経と、若い頃からパチンコや競馬で磨いてきた勝負勘の集大成だといえます。
6-2. ライブドアショック(2006年1月)――5億円の負けから学んだこと
ジェイコム事件のわずか1か月後、cisさんは大きな負けを経験します。ライブドアショックです。
2006年1月16日、東京地検特捜部が、ホリエモンこと堀江貴文氏が率いるライブドアに、証券取引法違反容疑で強制捜査に入りました。翌17日からライブドア株は連日のストップ安となり、cisさんは3日間で約5億円の損失を出しました。
このときcisさんは、なぜ大きな損失を出してしまったのでしょうか。
考えられる要因は2つあります。
第一に、「ライブドア株を保有していた」こと自体。当時のライブドアは、堀江氏のカリスマ性と、買収を繰り返す積極経営で、市場の寵児でした。cisさん自身、それまで何度かライブドア株でトレードをして、利益を上げていた可能性が高いです。
第二に、「ストップ安が続いて損切りができなかった」こと。ストップ安というのは、その日の値幅制限の下限まで売り注文が殺到し、買い手がつかない状態です。この状態では、損切りしようにも売れません。
ここでcisさんは、デイトレードの根本的なリスクを思い知ったわけです。
損切りできないリスク。流動性のリスク。これらは、平時には見えないが、いざというときに牙を剥く。
この経験から、cisさんは「ある一定以上の規模になったら、大型株や先物中心にトレードする」という方針に切り替えています。小型株や新興株は、流動性が低く、ライブドアショックのような事態が起きたときに身動きが取れなくなるリスクが高いからです。
リスク管理の本質は、「平時の利益最大化」ではなく、「有事に致命傷を負わないこと」――これは投資だけでなく、人生のあらゆる場面に通じる教訓だと思います。
6-3. 2015年8月のチャイナショック――40億円の利益
cisさんの仮説思考が炸裂したのが、2015年8月のチャイナショックです。
このとき、中国経済の減速懸念が世界中の市場をパニックに陥れました。8月24日には日経平均株価が一時2,000円安となり、世界中の投資家が阿鼻叫喚の地獄に陥っていました。
しかしcisさんは、この日、ほぼ完璧なタイミングで先物売りを仕掛けていました。そして、Twitterで4万人のフォロワーに対し、自分の動きを次々と発信していました。
「米国の寄付き前に、すごいみんな恐怖で売るんじゃないかということで、ちょっと狙っていた」 「僕はこういうすごい乱高下する時、めちゃくちゃ得意―」 「先物売り増してお散歩お祈り開始!」 「負けている時はあまりつぶやかないので、勝っているときに言いたくなる」
これらはBloombergで報じられた当時のcisさんのツイートです。
最終的に、cisさんはこの日のトレードで約40億円の利益を得ました。「謎の36歳デイトレーダー」としてBloombergのメインの記事になり、世界中に名前が知られるきっかけとなりました。
このエピソードから学べることは、いくつかあります。
第一に、仮説思考の威力。cisさんは「中国経済の減速懸念が広がれば、米国市場が開く前に日本市場が大きく売られる」というシナリオを事前に持っていました。だから、その兆候が見えた瞬間に動けました。
第二に、乱高下相場での得意分野。cisさんは「乱高下する時、めちゃくちゃ得意」と自認しています。これは、彼の順張り戦略が、トレンドが鮮明に出る場面で最大の効果を発揮するからです。穏やかなレンジ相場では、cisさんの順張りスタイルは「だまし」に何度も引っかかります。しかし、トレンドが大きく出る乱高下相場では、彼のスタイルが力を発揮します。
第三に、情報発信の戦略性。cisさんは「負けているときはつぶやかない、勝っているときに言いたくなる」と本音を漏らしています。これは人間として自然な感情ですが、投資家としては微妙なところでもあります。フォロワーは「cisが今やっている取引」を真似しようとしますから、勝っているときばかり発信していると、「常に勝っている」イメージが作られてしまいます。
ただ、cisさんは何度も「自分も負けることはある」「下手な日もある」と公言しているので、このあたりは正直に認めている部分でもあります。
6-4. 一撃19億円――2018年2月6日の伝説
cisさんの代表的なエピソードといえば、これも外せません。2018年2月6日、cisさんは1回のトレードで19億円を稼ぎました。
この日、日経平均株価は大幅に続落していました。前日のニューヨーク市場でダウ平均が史上最大の下げ幅(一時1,597ドル安)を記録したのを受けて、日本市場も大きく下げる展開でした。
cisさんは前日の段階で、空売り(株価が下がると利益が出るポジション)を仕掛けていました。そして翌日、想定通りに日経平均が下落したことで、19億円という利益を一度に獲得したのです。
cisさんは、この日のツイートで簡潔に報告しています。
一撃19億
たった4文字で19億円の利益を報告するという、なんとも淡々とした投稿でした。これがcisさんらしさです。
このエピソードから学べる重要な点は、cisさんが「日経平均」という個別株よりも遥かに大きな市場でも、同じ哲学を貫いていることです。
個別株では、急騰急落するときに乗ったり降りたりすることで利益を得られます。しかし日経平均という大きな指数では、なかなか急激な値動きは出ません。それでも、何かのきっかけ(米国市場の急落、政治的なイベント、災害など)で大きく動く瞬間があります。
cisさんは、そういう瞬間を狙って先物やオプションで大きく勝負を仕掛けるのです。
この日もそうでした。米国市場の異常な動きを見て、「明日、日本市場も連鎖反応で大きく下げる」という仮説を立て、空売りを仕込み、翌日にそれを回収した。これがcisさんのスタイルです。
6-5. 仮想通貨投資――2017年〜2018年のビットコインバブル
cisさんは株式投資だけでなく、仮想通貨にも積極的に参入しました。2017年11月頃から仮想通貨(暗号資産)のトレードを始めたとされています。
当時、ビットコインは世界的な大バブルの最中でした。2017年初頭に約1,000ドルだったビットコインは、2017年12月には2万ドル近くまで急騰しました。
cisさんはこの動きに乗りました。本人のTwitterでも、ビットコインを買い増していく様子を実況していました。
懲りずにビットコインさらに買い増し増し! ビットコインだけでかなりのポジションになってしまった ビットコインバブル早く来ないかなぁ・・・
これは2017年12月のツイートです。
そして、cisさんはアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)にも手を出していました。とくにモナコインという、日本発の仮想通貨を積極的に買っていました。
550円からこつこつ買ってたモナコインももう倍になってしまった 10日しかたってないが! モナコイン億円分以上保有してるのはなんか感慨深いものがある
これは2017年12月5日のツイートです。
ビットコインとモナコインで、cisさんは数億円規模の利益を得たとされています。2018年のインタビューでは、「仮想通貨でも4〜5億円の利益がありましたが、税金が重いので手元にはあまり残りませんでした」と述べています。
cisさんが仮想通貨でも順張りスタイルを貫いていたことは、注目に値します。「これから上がるものを上がるときに買う」――この原則は、市場が違っても変わらないのです。
ただし、仮想通貨の税制は株式とは大きく異なります。株式の譲渡益は一律20.315%の税率ですが、仮想通貨の利益は「雑所得」となり、cisさんのような高所得者の場合は最高税率55%(所得税45%+住民税10%)が課されます。
このため、cisさんは「仮想通貨の効率は悪い」と述べています。それでも、儲かるところでは儲ける――これがcisさんのスタイルです。
6-6. リーマンショックと不動産投資――「不動産は罰ゲーム」
2008年のリーマンショックも、cisさんにとっては大きなチャンスでした。世界中の市場が崩壊したこの局面で、cisさんはどう動いたのでしょうか。
実は、cisさんはこのときに不動産投資を始めています。リーマンショックで都心の不動産価格が大きく下落したので、「勉強のために」「近くにコンビニがなかったので、近くのビルを買ってコンビニを入れたい」という、なんとも豪快な理由で、約10億円でビル2棟を購入しました。
しかしcisさんは、後にこの不動産投資を「罰ゲーム」と表現しています。
やめておけばよかった。時価で20億円を超える不動産を入手したものの、表面利率が2%を切る上に、大家としての義務に追われて煩わしく、投資用の現金に素早く替えることもできない。
ここに、cisさんの「流動性重視」の哲学が表れています。
cisさんは、株式や先物のような「いつでも売れる」資産を好みます。なぜなら、市場の状況が変わったときに、即座に対応できるからです。
一方、不動産は「現金化に時間がかかる」資産です。売りたいときに売れない。買い手を探さなければいけない。仲介手数料、税金、登記費用と、コストもかかる。
230億円を株式市場で動かしているcisさんにとっては、不動産は「足かせ」のような資産なのです。
「不動産投資は罰ゲーム」という表現は、cisさんの著書のキャッチフレーズのひとつになっています。これは普遍的な真理ではなく、cisさんの個人的なスタイルに依存する判断ですが、「資金の流動性を重視する」という哲学は、多くの投資家にとって参考になる視点だと思います。
6-7. 「お祈り」と「お散歩」――cis流のリスク管理
cisさんは、自分のトレード行動を独特の言葉で表現することがあります。「お祈り」「お散歩」もその一例です。
「お祈り」とは、ポジションを持ったまま、市場が思った方向に動くのを「祈る」状態のことです。普通は皮肉な表現ですが、cisさんは「お祈りタイム」を意識的に管理しています。
先物売り増してお散歩お祈り開始!
これはチャイナショックの日のツイートですが、ポジションを取った後の時間を「お散歩しながらお祈り」と表現しているのです。
「お散歩」というのは、ポジションを取った後に席を立って、しばらく離れることです。これは、市場の細かい動きに振り回されないための、cisさん流のメンタル管理術なのです。
ポジションを取った瞬間から、市場は気になります。1秒ごとにチェックしたくなります。しかし、それでは判断が感情的になりがちです。だから、いったん席を立って、心を落ち着かせる。物理的に距離を置くことで、客観性を保つ。
これは、ベテランのトレーダーが共通して持つ知恵だと思います。「常に画面を見ているほうが勝てる」と思いがちですが、実は逆で、「適度に画面から離れるほうが、冷静な判断ができる」のです。
第7章 cisの語録――名言から読み解く哲学
cisさんは2ちゃんねるやTwitterで、数多くの名言を残してきました。そのなかから特に重要なものを抜粋し、それぞれに解説を加えていきます。
7-1. 「マーケットのことはマーケットでしか学べない」
本を読んでいるだけでは相場に勝てない。マーケットのことはマーケットでしか学べない。
これはcisさんの一貫した立場です。彼は「相場に役立った本はあるか」と聞かれたとき、「ない」と答えたことがあります。
ただし、これは「本を読むな」という意味ではないと思います。むしろ「本を読むだけでわかった気になるな」という戒めです。
実際にお金を入れて、損をしたり儲けたりして、ようやく相場の本質がわかる。本に書かれている戦略を頭で理解しているだけでは、いざ市場の渦中に巻き込まれたときに、本能のままに行動してしまいます。
私はこの考え方に強く共感します。多くの投資本は「順張りせよ」「損切りせよ」と書いていますが、実際にやってみると、本能の壁にぶつかります。100回読んでも、1回の実体験には敵わない――これが投資の世界の真実です。
7-2. 「マーケットはリスク回避傾向が強い」
マーケットはリスク回避傾向が強いので、アブナイと思ったら必要以上に売られる。
これは、市場心理を端的に表した名言です。
人間は、利益への期待よりも、損失への恐怖のほうが強い生き物です(プロスペクト理論)。だから、「ヤバい」と感じた瞬間、市場参加者は一斉に売りに走ります。本来の価値よりはるかに低い水準まで売られることが、頻繁に起こります。
cisさんは、この「過剰反応」を観察し、両側から利益を得ています。
- 売られる場面:先回りして売る(あるいは空売り)
- 売られすぎた場面:逆張りで買い戻す
シンプルですが、市場心理の本質を理解していなければできない芸当です。
7-3. 「経済は相対的、投資はゼロサム」
経済は相対的なものであり、投資やトレードはその最たるもの。結局はゼロサムゲーム。
cisさんは投資を「ゼロサムゲーム」と定義します。誰かが勝てば、その分誰かが負ける。市場全体で見れば、利益と損失は相殺される――というのが厳密な定義です。
ただし、cisさん自身もインタビューで補足しています。
投資は勝ちと負けの合計の差し引きがゼロになる「ゼロサムゲーム」だとよく言われるでしょう。つまり、負ける人がいなければ勝つ人もいないという見方です。もちろん手数料はありますから、その見方的には厳密には「マイナスサムゲーム」ですけど。 でも、市場全体の富の総量が増えるときもあります。
つまり、長期的には経済成長によって市場全体の富は増える(プラスサム)が、短期的には市場参加者同士で奪い合う(ゼロサムまたはマイナスサム)――という二重構造を、cisさんは正しく理解しています。
長期投資の世界では、「市場全体が成長する」という前提に立てば、誰もがwin-winになりえます。インデックス投資が成立する理由です。
しかし、短期トレードの世界では、勝者と敗者が必ず存在します。あなたが勝つということは、誰かが負けているということです。
この自覚を持つことは重要です。「自分は誰よりも上手いから勝てる」という自信がない限り、短期トレードに手を出すべきではない――cisさんの哲学はそう告げています。
7-4. 「自分の予想通りに動かないときは、自分が気づいていない『何か』がある」
自分の予想通りに動かない時は自分が気づいていない「何か」がある可能性が高い。
これは、損切りの判断基準として極めて重要な指針です。
買ったあと、自分の予想と違う動きをした――そのとき、多くの投資家は「これは一時的なノイズだ」と考えます。「自分の予想が正しくて、市場が間違っている」と思いたいのです。
しかしcisさんは逆です。「市場のほうが正しくて、自分が間違っている」と考えます。
自分の予想通りに動かないということは、市場には自分が知らない情報や要因がある。自分は無知だ。だから損切りする。
これは謙虚さの極致です。230億円を築いた天才トレーダーですら、「自分は無知だ」という前提に立っているのです。
私はこの姿勢が、長期にわたって相場で生き残る秘訣だと考えます。プライドが高い投資家は、自分の判断ミスを認めず、損切りができず、傷を深くしてしまいます。cisさんのように、「自分は無知だ、市場のほうが知っている」と思える人だけが、本当の意味で勝ち続けることができるのです。
7-5. 「集中力、決断力、継続力――普通の仕事と同じ」
集中力や決断力、継続力といった普通の仕事でも求められるような能力はたいてい相場にも求められる。
これは、トレードを特殊なものとして神秘化しない、cisさんの冷静な視点を表しています。
トレードに必要な能力は、特別なものではありません。集中力、決断力、継続力――どれも、普通のビジネスマンや職人が日々磨いている能力です。
ただ、相場では、これらの能力が「お金」という形で直接的に試されます。集中が切れた瞬間に大きく負けたり、決断が遅れた瞬間にチャンスを逃したり、継続できなかった瞬間に勝ちパターンを失ったり――。
この厳しさが、トレードの世界の特徴です。「ミスが許されない」のではなく、「ミスが容赦なく数字で表れる」のです。
逆に言えば、普段の仕事で集中力・決断力・継続力を磨いている人は、それをそのままトレードに転用できるはずです。これらの能力を磨かずに、トレードだけうまくいくということは、cisさんの観察によれば、ありえないのです。
7-6. 「含み益は確定しないと絵に描いた餅、含み損は損じゃない厨」
含み益は確定しないと絵に描いた餅、含み損は損じゃない厨。 自分の持ち数量に対して流動性が十分ならば評価額≒資産 オヤジと初心者と下手くそに多い。
これはやや辛辣な言い方ですが、cisさんの本音が表れた名言です。
「含み益は絵に描いた餅、含み損は本当の損ではない」という考え方を持っている投資家は多いです。要するに、「実現するまでは、利益も損失も確定していないから気にしない」というスタンスです。
しかしcisさんは、これを「下手くそな考え方」と切り捨てます。
なぜなら、自分の保有資産に対して市場の流動性が十分にあれば(つまり、いつでも売れる状態なら)、含み益は実質的に資産であり、含み損は実質的に損失だからです。
「いつでも売れる株を保有している」状態と「同じ金額の現金を保有している」状態は、ほぼ等価です。だから、含み損が出ているなら、それは「現金が減った」のと同じ意味を持ちます。
cisさんがこの考え方を強調するのは、「含み損は損じゃない」と思っている人は、損切りができないからです。「含み損のままなら、まだ負けじゃない」と自分を慰め、塩漬けにする。そして、損失はどんどん拡大していく。
含み損は本当の損だ――そう自覚することで、初めて適切な損切りができるようになる、というメッセージです。
7-7. 「優秀な人はわざわざ勤めないでしょ」
優秀な人はわざわざ勤めないでしょ・・・俺のまわりは25くらいで数億円持ってる人多いですよ。
これはcisさんの過激な発言として知られています。当然、これは挑発的なジョークの側面が大きいです。
しかし、もう少し深掘りすると、cisさんの「自分で稼ぐ力」への信念が見えてきます。
cisさん自身も、サラリーマンとして親族の町工場に勤めていた経験があります(プレイステーションの蓋を作る作業をしていたそうです)。しかし、トレードの収入が会社員の収入を大きく超えた時点で、即座に退職しました。
cisさんの考えでは、「自分で稼ぐ力」を持っていれば、組織に縛られる必要はありません。
ある程度腕があるトレーダーなら1億あれば最低最悪でも年間3,000万は稼げる。年間3,000万円あれば十分でしょ。リーマンなんて体壊したら稼げなくなるし、トレーダーのほうがリーマンより遥かに安定してるよ。
これも挑発的ですが、一面の真理を含んでいます。サラリーマンも、健康を害したり、会社が倒産したりすれば、収入は途絶えます。腕のあるトレーダーは、市場がある限り、稼ぎ続けることができます。
ただし、これは「腕がある」が大前提です。腕がないままトレーダーになっても、ただ資産を溶かすだけです。cisさんの発言は、「腕のあるトレーダーは強い」という主張であって、「サラリーマンを辞めてトレーダーになれ」という勧誘ではありません。
7-8. 「ヘッジは無駄」
cisさんは、リスクヘッジについても独自の見解を持っています。
ヘッジとは、たとえば株を買うのと同時に、それと逆の動きをする商品(プットオプションなど)を買って、リスクを限定することです。
教科書的には、ヘッジはリスク管理の基本中の基本です。しかしcisさんは、「ヘッジは無駄」と切り捨てます。
ヘッジするくらいなら、最初からポジションを小さくしたほうがいい。
これがcisさんのロジックです。
ヘッジには、コスト(保険料)がかかります。プットオプションを買うにも、空売りで両建てするにも、何らかの費用が発生します。それは、平時には「無駄なコスト」として、利益を減らします。
cisさんに言わせれば、「リスクが怖いなら、ポジションを減らせばよい」のです。ヘッジというのは、「リスクを取りたいけど、減らしたくもない」という、矛盾した欲求の産物にすぎない、というわけです。
これは過激な意見ですが、cisさんのような短期トレーダーには適している考え方です。なぜなら、彼らは「いざとなったら即座に損切りできる」からです。常に流動性のある銘柄しか持たないので、ヘッジを使うまでもなく、自分でリスクを管理できるのです。
ただし、長期投資家や、流動性の低い資産を持つ投資家にとっては、ヘッジは有効なツールです。cisさんの「ヘッジは無駄」という主張は、彼のスタイルに限定された真理であり、誰にでも当てはまるわけではないことには注意が必要です。
7-9. 「意味もなく下がりそうだからつなぎ売りってのは、ただの手数料の無駄」
意味もなく下がりそうだからつなぎ売りってのはただの手数料の無駄でしょ。
つなぎ売りとは、保有している株を保ったまま、空売りもすることです。これによって、株価が下がっても損失を相殺できます。
しかしcisさんは、「明確な理由なくつなぎ売りするのは、手数料の無駄」と一刀両断します。
つなぎ売りには、空売りの手数料、貸株料が継続的にかかります。これは「気休めの保険」のために払うコストです。
cisさんの考えでは、「下がりそうだ」と思うなら、保有株を売ればよい。それで完結です。わざわざつなぎ売りで両建てする必要はない、というわけです。
これも、cisさんの「シンプルさを重視する」哲学の表れです。複雑なポジションは、リスクを見えにくくし、判断を鈍らせる――そう彼は考えているのです。
第8章 他の伝説の投資家との比較――cisの独自性を浮き彫りにする
cisさんの哲学を、より立体的に理解するために、他の伝説の投資家たちと比較してみましょう。
8-1. cis vs B・N・F(ジェイコム男)
B・N・Fさん、本名・小手川隆氏は、cisさんと並び日本の二大個人投資家として知られる人物です。
両者を比較してみましょう。
共通点:
- 2000年前後に少額の元手で投資を開始
- 2ちゃんねるの株掲示板出身
- 2005年のジェイコム事件で大きな利益(B・N・Fは20億円、cisは6億円)
- トレンドフォロー(順張り)を基本戦略とする
- 損切りが早い
- 資産が増えてからは不動産投資にも進出
相違点:
- B・N・Fは公開メディアにほとんど出ず、cisはTwitterで日々情報発信
- B・N・Fは短期の逆張り(リバウンド狙い)も得意とするのに対し、cisは順張り中心
- B・N・Fは2010年代以降ほぼ表舞台から消えており、cisは現在も活発に活動
両者の手法には共通点が多いですが、性格や戦略には微妙な差があります。
B・N・Fさんは「下落相場の短期リバウンドを取る」のが得意とされています。元手160万円を1億円以上に増やした初期の手法は、まさにこの逆張りでした。一方、cisさんは「上昇トレンドに乗る」のが本質です。
ただ、両者とも「市場の歪み」を見抜く眼力は共通しており、それゆえに同じ事件(ジェイコム)で大きな利益を上げることができたのです。
cisさんの著書には、B・N・Fさんとの交流についても触れられています。2003年冬のオフ会で初めて会い、その後何度か対談もしています。お互いを認め合っている関係といえるでしょう。
8-2. cis vs テスタ
テスタさんは、2005年に300万円で投資を始め、2024年2月に累計利益100億円を達成した、近年の代表的なカリスマトレーダーです。テスタさんもデイトレード出身で、現在は中長期投資もミックスしたスタイルになっています。
cisさんとテスタさんは、何度か対談しています。
共通点:
- デイトレード出身
- 順張りベースの手法
- 損切りの重要性を強調
相違点:
- テスタさんは高勝率を維持するスタイル(毎月勝つ、毎年勝つ)
- cisさんは勝率3割でも、トータルで大勝するスタイル
- テスタさんは寄付(フィランソロピー)に積極的(児童養護施設への寄附を継続)
- cisさんは寄付よりも投資に集中
テスタさんは「20年連続で勝ち続けている」ことを誇っていますが、cisさんはむしろ「勝率は気にしない、トータルだ」というスタンスです。
これは戦略の違いというより、性格や得意分野の違いだと私は感じます。テスタさんは「コツコツ積み上げる職人型」、cisさんは「大波を狙うサーファー型」。どちらも有効な戦略ですが、その人の性格や認知能力によって向き不向きがあります。
テスタさんは、cisさんを「神」と呼んで尊敬しています。100億円稼いだ人物が「神」と呼ぶ存在――それがcisさんなのです。
8-3. cis vs 片山晃(五月)
片山晃さん(ハンドルネーム「五月」)は、65万円で株式投資を始め、160億円超の資産を築いた個人投資家です。
片山さんは、cisさんやテスタさんと違い、中長期のグロース投資が中心です。徹底的に企業を調査し、有望な中小型成長株を見つけて長期保有する――いわゆる「バフェット流」に近いスタイルです。
共通点:
- 個人投資家として大成功を収めた
- 独自の方法論を確立
- 公開情報を活用する
相違点:
- 投資の時間軸(cisは秒〜日、片山は年〜数年)
- 分析の対象(cisは値動きと需給、片山は企業のファンダメンタルズ)
- 集中投資 vs 分散
- 業績予想への姿勢(cisは無視、片山は重視)
cisさんと片山さんは、ある意味では正反対の投資スタイルです。しかし、両方とも莫大な資産を築いている――この事実は、私たちに重要なことを教えてくれます。
投資に「絶対唯一の正解」はない。
順張りでも逆張りでも、短期でも長期でも、バリューでもグロースでも――自分に合ったスタイルを見つけ、それを徹底できるかどうかが、最終的な勝敗を分けるのです。
cisさん自身も、この点については謙虚です。
自分のやり方が唯一の正解だとは思っていない。自分にはこのやり方が合っている、というだけのこと。
これは私が大事だと思うcisさんの一面です。彼は自分のスタイルに自信を持ちながら、他のスタイルを否定はしません。それぞれの投資家が、自分の得意分野で勝負することの大切さを、cisさんは理解しているのです。
8-4. cis vs ウォーレン・バフェット
世界最高の投資家といわれるウォーレン・バフェットと比較してみましょう。
共通点:
- 投資哲学を明文化し、世に問うた
- 巨額の資産を築いた
- シンプルな原則を貫いている
相違点:
- バフェットは「優良企業を長期保有」、cisは「短期の値動きに乗る」
- バフェットは「市場は非効率だが、企業価値は数十年かけて反映される」と考える
- cisは「予想は不可能、事実だけを見る」と考える
バフェットとcisは、投資の世界の両極端を代表する存在です。どちらも正しく、どちらも莫大なリターンを生み出している――これが投資の世界の面白さです。
ただし、注意したいのは、両者の「再現性」の違いです。
バフェットのスタイルは、再現性が低いとされています。彼ほどの企業分析能力を持つ人は稀ですし、彼が築いた人脈や情報網も簡単には真似できません。バフェットを真似たつもりで失敗した投資家は無数にいます。
cisさんのスタイルは、シンプルなだけに「真似しやすい」ように見えます。しかし、実際には「本能との闘い」が必要で、これも再現性は低いです。順張りで損切りを徹底するというのは、簡単に言うほど簡単ではないのです。
つまり、どちらも「真似しやすそうで、実は真似が難しい」のです。
第9章 一般投資家がcisから学べる10の教訓
ここまでcisさんの哲学を詳しく見てきました。では、私たち一般投資家は、cisさんから何を学べるのでしょうか。
230億円を230円から作るのは無理でも、彼の哲学のエッセンスは、私たちの投資にも応用できるはずです。
教訓1:本能と逆を行く
cisさんの哲学の最大の核心は「本能と逆を行く」ことです。
人間の本能は、利確を早く、損切りを遅くするように設計されています。これは進化の過程で身についた、生存に有利な本能です。「目の前の小さな利益は確実に取り、損失は時間が解決してくれることを期待する」――こうした行動は、原始時代には有効でした。
しかし、株式市場では真逆が正解です。利益は伸ばし、損失は早く切る。これができるかどうかで、長期的な成績は決定的に変わります。
実践のヒント:
- 買う前に「いくらで損切りするか」を決める
- 「もう少し戻ったら売る」という発想を捨てる
- 自分の感情と逆の行動を選ぶ訓練をする
教訓2:事実を観察する、予想しない
cisさんは「事実」と「予想」を厳密に区別します。私たちもこれを真似するべきです。
「この株は割安だ」――これは予想です。 「この株は今、上がっている」――これは事実です。
予想に賭けるのではなく、事実に賭けるほうが勝率は高くなります。
実践のヒント:
- 「私は思う」「私は予想する」という発想を捨てる
- 「今、何が起きているか」だけを見る
- 起きていないことを想像しすぎない
教訓3:勝率より、損益の総額
cisさんが繰り返し強調するのが、「勝率ではなくトータル」です。
勝率5割で平均勝ち額と平均負け額が同じなら、長期的にはトントン(実際は手数料で負け)。勝率3割でも、勝ち額が負け額の3倍なら、長期的には勝てる。
実践のヒント:
- 「今月は何勝何敗だったか」より、「今月のトータル損益はいくらか」を記録する
- 「1回1回のトレードに一喜一憂しない」訓練をする
- 数字で自分のスタイルを把握する
教訓4:シンプルさを保つ
cisさんの手法は、根本的にはシンプルです。「上がっているものを買い、下がっているものは売る」――これだけです。
複雑な戦略や、多種多様なテクニカル指標、難解な経済理論――これらは、判断を鈍らせ、行動を遅らせるだけです。
実践のヒント:
- 自分のルールを「3つ以内」に絞る
- 使うチャートやインジケーターを最小限にする
- 「シンプルでないと、続かない」と自覚する
教訓5:流動性を重視する
cisさんは、「いつでも売れる」資産を好みます。出来高の少ない小型株、不動産、未公開株などは、緊急時に処分できないリスクがあります。
実践のヒント:
- 売買する銘柄は、十分な流動性のあるものを選ぶ
- 一日の出来高が少ない銘柄は、ポジションを小さくする
- 「もし明日売りたくなったら、本当に売れるか」を考える
教訓6:自分の得意分野で戦う
cisさんはパチンコや株式投資で大成功しましたが、競馬では負けています。「向き不向きがある」と本人も認めています。
私たちも、自分の得意分野を見つけ、そこで集中して戦うべきです。
実践のヒント:
- 日中働いている人は、デイトレードよりスイングや中長期に向いている可能性が高い
- 数字に強い人と、感性に強い人では、向いている手法が違う
- 「向いていない」と感じたら、無理に続けない
教訓7:負ける可能性を常に意識する
cisさんは、自分が「無敗」だなどとは決して言いません。むしろ、「自分も負ける」「ある時期は1年負け続けた」と正直に語ります。
そして、負けたときの損失を最小限にすることに、最も注意を払っています。
実践のヒント:
- 「自分は天才ではない」と謙虚に認める
- 致命的な損失を避けるために、ポジションサイズを管理する
- 「これで全資金を失っても再起できるか」を常に考える
教訓8:本能を制御する仕組みを作る
「本能と逆を行け」と言われても、簡単にはできません。だから、本能を制御する「仕組み」を作ることが大事です。
実践のヒント:
- 損切り注文を自動で発注する(OCO注文、逆指値注文)
- トレード日記をつけて、感情で動いた取引を振り返る
- 一定の損失を出したらその日は終了するなど、自分にルールを課す
教訓9:仮説思考を磨く
cisさんは、平時から「もし○○が起きたら××株が動く」という仮説を大量にストックしています。これによって、いざというときに先回りできます。
実践のヒント:
- 「もしFRBが利上げしたら、ハイテク株はどうなる?」など、シナリオ思考を習慣化する
- ニュースを見たときに「この情報で動く株はどれか?」と即座に考える
- 起きていない出来事についても、想定をしておく
教訓10:マーケットでしか学べない
最後に、cisさんが繰り返す警告です。
本を読んでいるだけでは相場に勝てない。
この記事をここまで読んでくださった方も、ぜひ実践に移してください。少額からでよいので、実際にお金を入れて、勝ち負けを経験してください。100回の読書より、1回の実体験のほうが、何倍も学びが大きいのです。
実践のヒント:
- まずは少額(数万円〜数十万円)から始める
- 損しても痛くない金額で、たくさん試行錯誤する
- 失敗を恐れず、失敗から学ぶ
第10章 cisへの批判と反論
cisさんは多くのファンを抱える一方で、批判もされてきました。代表的な批判とそれへの反論を見ていきましょう。
10-1. 「資産230億円を証明していない」
cisさんは、自身の資産を「230億円」「270億円」「300億円超」と本人発言ベースで公表してきましたが、納税証明書のような客観的な証拠は公開していません。
このため、「本当に230億円もあるのか」「実はバーチャルトレーダーなのではないか」「数字を盛っているだけではないか」という疑問の声は、5ちゃんねるなどで根強くあります。
これに対する反論としては、以下のような点が挙げられます。
- 2013年に約1兆7,000億円の日本株を売買していたという事実は、日経新聞やブルームバーグなど信頼できるメディアで報じられている
- 数十億円の利益を出したエピソードは、リアルタイムでTwitterで報告されており、後から検証されている
- SBI証券、楽天証券などのスクリーンショットがTwitterで公開されており、桁外れの取引履歴が確認できる
- 機関投資家や経済アナリストからの証言(馬淵磨理子氏など)も多数ある
完全に証明されているわけではありませんが、状況証拠は非常に強いです。少なくとも「数十億円以上の規模で運用している」のは間違いないと考えられます。
10-2. 「真似できないので、参考にならない」
cisさんの著書を読んだ人のなかには、「結局、cisだからできるのであって、凡人には真似できない」と感じる人もいます。
確かに、彼の手法をそのまま真似することはほぼ不可能でしょう。230億円という資金力、何十年もの経験、ゲーマーとしての反射神経――これらは簡単に得られるものではありません。
しかし、cisさんの「哲学」の部分は、誰でも参考にできます。
- 順張りを意識する
- 損切りを徹底する
- 勝率より総額を見る
- 本能と逆を行く
- 流動性を重視する
これらの原則は、資金規模や経験年数に関係なく適用できます。「全部は真似できなくても、エッセンスは取り入れられる」――これがcisさんの本の最大の価値だと、私は感じます。
10-3. 「危険な投資を煽っている」
cisさんは「全力投球」「集中投資」を肯定し、「分散投資より一番有利な銘柄に全力」と発言しています。これに対して、「初心者を危険な投資に誘導している」という批判があります。
これは一理ある批判です。実際、cisさんの本を読んで「俺もcisみたいに儲けてやる」と思って全力投球した結果、大損した個人投資家は少なくないでしょう。
ただ、cisさん自身は「これは私のスタイル」と明言しており、誰にでも勧めているわけではありません。本の中でも「初心者はIPO銘柄のデイトレから少額で始めるべき」など、初心者向けのアドバイスも書いています。
問題は、読者がcisさんの哲学を「自分のスタイル」に翻訳できるかどうかです。これは読者側のリテラシーの問題でもあります。
10-4. 「ゲーマー思考は危険」
cisさんが「相場をゲームとして楽しんでいる」と公言することについても、批判があります。「人生をかけたお金の動かし方を、ゲーム感覚で扱うのは不謹慎だ」という意見です。
これも理解できる批判ですが、私はcisさんの「ゲーム感覚」をネガティブには捉えません。
ゲーム感覚というのは、「冷静に確率と期待値を計算する姿勢」のことです。感情に左右されず、淡々と最適手を打つ――これは、ギャンブルではむしろ「正しい姿勢」です。
「人生がかかっているから真剣に」と力んで取り組むほうが、感情的になりやすく、判断を誤りやすいのです。「これはゲームだ」と割り切ることで、かえって冷静な判断ができる――cisさんの姿勢はこういう論理です。
ただし、これは「失っても困らない金額で投資をする」という前提があってこそ成立する哲学です。生活費や老後資金まで投じて「ゲーム感覚で」やるのは、確かに危険です。
第11章 現在のcis――2024〜2026年の動向
最後に、現在のcisさんがどのような活動をしているかを見ていきましょう。
11-1. 2024年5月:テスタさんとの対談で資産270億円公表
2024年5月30日のAERA DIGITALの対談記事で、cisさんは資産が約270億円であることを明かしました。本のなかでの230億円から、約6年で40億円ほど増えていることになります。
ただし、cisさん自身は「資産を増やすことに執着していない」とも述べています。230億円を超えたあたりから、彼のモチベーションは「お金を増やす」ではなく「相場を楽しむ」「ゲームをプレイする」に重心が移ってきているように見えます。
11-2. 2025年9月:日経新聞のインタビュー
2025年9月、日本経済新聞のインタビューで、cisさんは日経平均株価が史上最高値を更新したことについて、以下のように語りました。
「日本株は(世界から)取り残されていた」 「最高値は日本株の実力が評価されたわけではなく、(出遅れの修正にすぎない)」 「現在の日本株はバブルとは思わない」
このインタビューでは、cisさんの運用資産が「300億円を超える」と報じられています。230億円→270億円→300億円超と、着実に資産は増え続けているわけです。
注目すべきは、cisさんが「バブルではない」と判断している点です。一般的には、日経平均が史上最高値を更新すると「バブル懸念」が話題になります。しかしcisさんは、「日本株は他国に比べて出遅れていただけ。最高値更新は当然の動き」という冷静な分析をしています。
これは、彼が「過剰反応に逆張りする」哲学を持ち続けている証拠でもあります。多くの人が「バブルかも」と恐れるなかで、cisさんは「いや、まだ実力相応だ」と判断する――この視点の独立性が、彼の強みなのです。
11-3. TwitterでのSNS活動
cisさんは現在もTwitter(X)で活発に発言しています。アカウント名は「@cissan_9984」で、フォロワーは50万人を超えています。
最近の発言内容は、株式投資のことだけでなく、ゲーム(特にドラクエ)、麻雀、競馬、子育てなど多岐にわたります。230億円超を持ちながら、「庶民的な日常」をつぶやくところに、cisさんらしい飄々とした性格が表れています。
cisさんのツイートを定期的にチェックすることは、個人投資家にとって有益な学びの機会になります。ただし、cisさんが「○○を買った」と言ったときに、その瞬間に追従買いをするのは危険です。cisさんはすでに買い終わっていて、私たちが買うのは天井かもしれません。
参考にすべきは、cisさんの「考え方」「判断プロセス」であり、「具体的な売買タイミング」ではないのです。
11-4. 著書の継続的な人気
『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』は、2018年12月の発売以来、いまも書店で売れ続けています。発売1か月で12万部突破、最終的に世界で15万部超の大ベストセラーです。
また、2020年には『【日めくり】cis語録 230億円トレーダーの勝つ至言』という日めくりカレンダーも発売され、こちらも投資家の間で人気となっています。
これらの本がいまも読み継がれているのは、cisさんの哲学が「時代を超えた普遍性」を持っているからだと思います。テクニカルな手法は時代で変わりますが、「順張り」「損切り」「本能との闘い」といったテーマは、20年前も今も、20年後も変わらない真理だからです。
第12章 cisから学んだこと――まとめに代えて
ここまで、cisさんの投資哲学を約10万字にわたって解説してきました。長い旅にお付き合いいただき、ありがとうございました。
最後に、私がcisさんを徹底的に分析してきて、感じたことをまとめます。
12-1. cis哲学の本質は「謙虚さ」である
意外に思われるかもしれませんが、私はcisさんの哲学の本質は「謙虚さ」だと感じます。
230億円を稼いだ天才トレーダーが、「自分は無知だ」「自分の予想は当たらない」「だから事実だけを見る」と言っているのです。これほど謙虚な姿勢があるでしょうか。
多くの個人投資家は逆です。「自分はこの銘柄を理解している」「自分の予想は正しい」「市場が間違っているだけだ」――こうした自信過剰が、損失を拡大させていきます。
cisさんは、自分の予想能力を信じていません。だから、「上がっているという事実」だけを判断材料にします。だから、「予想と違って下がったら」即座に損切りします。
この謙虚さこそが、cisさんを長期にわたって生き残らせている最大の理由です。
12-2. cis哲学の核心は「本能と逆を行く規律」
cisさんの哲学を、もう一段抽象化すると、「本能と逆を行く規律」だと言えます。
人間の本能は、相場で勝つように設計されていません。むしろ、相場で負けるように設計されています。利確は早く、損切りは遅く、ナンピンしたくなり、勝っているときは慢心し、負けているときは取り返したくなる――これらすべてが、本能の働きです。
cisさんは、この本能を意識的に克服しています。意志の力で、本能と逆方向に行動するのです。
これは簡単ではありません。むしろ、極めて難しいことです。だからこそ、本能のままに行動する多くの投資家から、cisさんは突出した成果を上げられるのです。
12-3. cis哲学が私たちに与える希望
cisさんの哲学は、私たちに希望を与えます。
「天才的なファンダメンタルズ分析力がなくても、人脈や情報網がなくても、莫大な元手がなくても、シンプルな原則を守るだけで勝てる」――これがcisさんのメッセージです。
確かに、cisさんが特別な存在であることは間違いありません。彼の集中力、判断速度、勝負勘――これらは一朝一夕で身につくものではありません。
しかし、彼の「哲学」は、誰でも理解できます。「順張り」「損切り」「本能と逆を行く」「事実だけを見る」――これらは、知識として習得できます。
問題は、習得した知識を実践に落とし込めるかどうか、です。
ここで、cisさんがすでに警告してくれています。
本を読んでいるだけでは相場に勝てない。マーケットのことはマーケットでしか学べない。
知識を実践に変えるためには、市場に飛び込み、自分の身銭を切って、勝ったり負けたりする経験を積むしかありません。
そして、その経験のなかで、徐々に「本能と逆を行く」ことができるようになっていく――これが、私たちがcisさんを目指す道のりです。
12-4. 投資以外の領域への応用
cisさんの哲学は、投資以外の領域にも応用できます。
ビジネスにおいて:
- 「予想ではなく事実を見る」――データドリブンな意思決定
- 「損切りを早く」――失敗プロジェクトからの撤退
- 「シンプルさを保つ」――複雑な戦略より、シンプルで一貫した戦略
人生において:
- 「向いていないことは無理にやらない」――自分の強みに集中する
- 「本能と逆を行く」――惰性に流されない選択
- 「期待値を計算する」――合理的な意思決定
学習において:
- 「マーケットでしか学べない」――実践を伴わない学習は身につかない
- 「集中力、決断力、継続力」――基礎能力の重要性
- 「謙虚さ」――自分が知らないことを知る
これらの応用は、cisさん自身が明言しているわけではありません。しかし、彼の哲学を深く理解すれば、自然と人生のさまざまな局面に活かせるはずです。
12-5. 最後に――読者の方々へ
この記事をここまで読んでくださった方は、おそらく投資に真剣な関心をお持ちなのだと思います。
私からの最後のメッセージは、シンプルです。
「cisを神格化しないでください。」
cisさんは確かに伝説のトレーダーですが、彼も人間です。失敗もしてきました。負けたこともあります。彼自身、それを正直に認めています。
cisさんを神格化して、「彼の言うことが絶対正しい」と思い込んでしまうと、それは「予想」を信じる行為になってしまいます。これは、cisさんの哲学から最も遠い行為です。
cisさんの哲学を学ぶ最良の方法は、彼を一人の優れた投資家として尊敬しつつ、自分の頭で考え、自分の経験から学び、自分なりのスタイルを確立することです。
cisさんも、誰かを真似て成功したわけではありません。びびりおんさんから影響を受けた点はあるにせよ、最終的には自分の試行錯誤と経験から、独自の哲学を築き上げました。
私たちも同じです。cisさんの哲学を入り口として、自分自身の投資哲学を構築していくこと――これが、本当の意味で「cisから学ぶ」ことだと、私は信じています。
長い記事を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
あなたの投資ライフが、cisさんのように――いや、cisさんとは違うかもしれない、あなた自身の固有の哲学に基づいて――豊かなものになることを、心から願っています。
参考資料・一次情報リスト
本記事の執筆にあたり、以下の一次情報および信頼性の高い二次情報を参照しました。
一次情報(cis本人の著書・発言)
- cis 著『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』(KADOKAWA、2018年12月21日発売、ISBN: 978-4041069691)
- cisさん本人が初めて自身の投資哲学を体系的に語った著書。本記事の中核資料。
- cis 著『【日めくり】cis語録 230億円トレーダーの勝つ至言』(KADOKAWA、2020年)
- 名言集。日めくりカレンダー形式。
- cisさんのTwitter(X)アカウント @cissan_9984
- 2010年代から現在に至るまでの本人のリアルタイム発言。
- 2ちゃんねる(5ちゃんねる)株式掲示板での過去書き込み
- 2000年代初頭からのcisさん本人の書き込み(ハンドルネーム:cis ◆YLErRQrAOE)。
インタビュー・対談記事
- 「謎の36歳デイトレーダーの読み的中-市場パニックで利益40億円」(ブルームバーグ日本語版、2015年8月28日)
- チャイナショックでの40億円利益の報道。
- 「1000億円目指すデイトレーダーcis-コツはゲームで学んだ」(ブルームバーグ日本語版、2014年9月26日)
- cisさんの目標やトレード哲学について。
- “Mystery Man Moving Japan Made More Than 1 Million Trades”(Bloomberg Markets、2014年9月16日)
- 英語メディアでの大規模インタビュー。
- 「ひと月で利益8億円も すご腕投資家の稼ぎ方」(日本経済新聞電子版、2015年3月17日)
- cisさんを含む個人投資家の活動を報じた記事。
- 「日経平均株価の最高値「バブルとは思わない」 著名個人投資家cis氏」(日本経済新聞、2025年9月)
- 2025年時点でのcisさんの相場観。運用資産300億円超と報じる。
- 「230億円稼いだ男の『100万円投資』入門 『勝率3割』でも資産は増やせる」(プレジデント、2019年1月、https://president.jp/articles/-/27199)
- 本出版記念のインタビュー。
- 「資産270億円cis×利益100億円テスタ対談『5年で1200万円を50億円に増やした特殊能力とは』」(AERA DIGITAL、2024年5月30日)
- テスタさんとの対談。資産270億円を公表。
- 「世界同時株安で37億円稼いだスーパー億り人『cis』とは何者か?」(週刊ポスト、2015年9月18日号)
- チャイナショック時のcisさんの取引を報じる。
- 「ダイヤモンドZAi 2007年10月号」(ダイヤモンド社)
- cisさんとB・N・Fさんの対談記事を掲載。
- 「億超えトレーダーが絶対に教えたくない アベノミクス株投資の法則」(扶桑社、2013年)
- cisさんを含む複数の億トレーダーへのインタビュー。
Web記事・解説サイト
- 「伝説の投資家・cisが語った230億円稼ぐための投資哲学」(日興フロッギー、SMBC日興証券)
- https://froggy.smbcnikko.co.jp/series-name/biographies-cis/
- 「伝説の投資家・cisさんが語る『株で勝つために必要な3つの鉄則』とは?」(ダイヤモンド・ザイ、2019年3月、2022年3月更新)
- https://diamond.jp/zai/articles/-/197252
- 「cisさんは、なぜ株で230億円もの資産を築けたのか?」(ダイヤモンド・ザイ、2019年3月)
- https://diamond.jp/zai/articles/-/197112
- 「一撃で19億円稼いだ個人投資家cis」(ダ・ヴィンチWeb)
- https://ddnavi.com/article/d617061/a/
- 「資産230億、cisさんの著書『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』」(トウシル 楽天証券)
- https://media.rakuten-sec.net/articles/-/21332
- 「cis (投資家) – Wikipedia」
- https://ja.wikipedia.org/wiki/Cis_(投資家)
- 2025年最新の更新内容を参照。
- 「資産200億円トレーダーcis氏とは?」(株式日記)
- cisさんの活動を継続的にまとめているサイト。
- 「cis氏の投資手法をまとめ!トレンドフォロー順張りから株の極意を学ぶ!」
- https://cashqa.com/cis-shuhou/
- 「cisの名言5選・人気投資家を考察」(イチログ)
- https://ichiroblog.com/2020/08/28/cis/
- 「cis本の名言まとめ」(トレードペディア)
- https://www.investor-gon.com/cis-book/
- 「cis – 心に残る名言集・格言」
- https://meigen.keiziban-jp.com/cis
- 「『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』の書評」(calil)
- 著書の詳細な書評。
- 「徒然日記20250918/cis:一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」(24hirofumi、note、2025年9月)
- 2025年時点での読者レビュー。
- 「資産230億!有名投資家cis株の仮想通貨・ビットコイン関連発言まとめ」(ANGO)
- 仮想通貨投資についての発言まとめ。
- 「【2大トレーダー】cis氏、BNF氏の手法に共通する特徴」(川合一啓の株式トレード攻略ブログ)
- https://traderkawai.com/big2trader/
- 「【書評・要約】『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』cis著」(かぼたりあんの足跡)
- https://kabotarian.hatenablog.com/entry/2022/02/12/184547
動画・その他のメディア
- 「フジテレビ 笑っていいとも!」(2011年11月10日放送)
- cisさんの唯一のテレビ出演(顔・声を加工)。
- YouTubeチャンネル「億万株姫☆あばねちゃん」「【株板相場師列伝】最高勝ち額はいくら!?cis 驚愕の投資!!【後編】」(2025年4月19日公開)
- https://www.youtube.com/watch?v=yLz3avKEgmU
- 「SBIマネーワールド cis座談会」
- cisさんのトレード環境や情報収集方法についての回答。
著者あとがき
この約10万字の記事は、cisさんという個人投資家の哲学を、できるかぎり一次情報に基づいて、忠実に、しかし独自の分析と解釈を加えてまとめたものです。
cisさんに直接お会いしたわけではありませんから、本記事の内容にはどうしても解釈の幅があります。しかし、本人の著書、本人のSNS発言、本人が応じた信頼性の高いメディアのインタビュー――これらを徹底的に読み込み、相互に参照することで、cisさんの哲学の輪郭を、できるかぎり正確に描き出すよう努めました。
最後にもう一度、cisさんの最も重要な言葉を引用して、この記事を締めくくります。
本を読んでいるだけでは相場に勝てない。マーケットのことはマーケットでしか学べない。
この記事を読み終えたあなたが、次に取るべき行動は、おそらく、書店に行ってcisさんの本を買うことではありません。
少額からでよいので、証券口座を開設し、実際の株を買ってみることです。そして、上がったり下がったりする値動きのなかで、自分の感情と向き合い、自分なりの哲学を築いていくことです。
cisさんの哲学は、あくまで地図です。地図を眺めているだけでは、目的地には辿り着けません。実際に歩き始めて初めて、地図の意味がわかります。
そのとき、本記事が、あなたの旅路にとってわずかでも光となるなら、これ以上の喜びはありません。
長文にお付き合いいただき、心より御礼申し上げます。
※本記事は教育・情報提供を目的としており、特定の投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

