クレジットカードの審査に落ちた回数を正直に書く
正直に書く。4回。
クレジットカードの審査に落ちた回数。正直に書く。4回だ。
4回。人生で4回、クレジットカードの審査に落ちている。4回という数字が多いのか少ないのか、基準がわからない。だが「4回も落ちた」と言えば、たいていの人は驚くか、同情するか、あるいは「何かあったの?」と聞いてくる。
何かあったのか。あったと言えばあったし、なかったと言えばなかった。犯罪歴があるわけでも、自己破産したわけでもない。ただ、「属性」が弱かっただけだ。非正規雇用、低年収、勤続年数の短さ。これらのスペックが、クレジットカードの審査基準を満たさなかった。
クレジットカードの審査は、ある意味で「社会的信用の通知表」だ。通知表をもらって、評価が「不可」だった。それを4回繰り返した。4回連続の「不可」。成績不振の学生が留年を繰り返すような気分だった。
1回目、25歳
最初の審査落ちは25歳のときだ。
大学を卒業して就職に失敗し、派遣で働き始めて1年目。それまでクレジットカードを持ったことがなかった。現金主義。というより、クレジットカードを作る機会がなかっただけだ。大学時代は親のカードの家族カードを使っていたが、社会人になって独立したタイミングで、自分のカードを作ろうと思った。
ネットで「年会費無料 クレジットカード」と検索し、大手流通系のカードに申し込んだ。年会費無料。審査が緩いと評判のカード。これなら通るだろう。
申込みフォームに入力した。氏名、生年月日、住所。そして「ご職業」。選択肢は、正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、自営業、無職、その他。「派遣社員」を選んだ。年収の欄に「200万円」と入力した。勤続年数は「1年未満」。
1週間後、メールが届いた。「誠に申し訳ございませんが、今回はご希望に沿いかねる結果となりました」。不合格。審査落ち。
理由は開示されない。だが推測はできる。派遣社員、年収200万円、勤続年数1年未満。この3点セットが、審査基準に達しなかったのだろう。クレジットカード会社にとって、私は「返済能力が不確実な人間」だった。
ショックだった。就職で100社落ちた人間が、今度はクレジットカードでも落ちた。社会的信用がないことを、また一つ証明された気分だった。
2回目、28歳
2回目は28歳。派遣の仕事を変えて、少し年収が上がった。250万円くらい。勤続年数も2年になった。
今度こそ通るだろう。年収は上がったし、勤続年数も延びた。同じ流通系のカードに再申込みした。
結果。また落ちた。「ご希望に沿いかねる結果となりました」。同じ文面。同じ結果。
なぜだ。年収は上がったのに。勤続年数も延びたのに。考えられる理由は「前回の審査落ちの履歴」だ。クレジットカードの審査履歴は、信用情報機関に記録される。前回の審査落ちから半年以内に再申し込みすると、「この人は以前審査に落ちた人だ」とわかってしまう。審査落ちの履歴は、それ自体がマイナス要素になる。
つまり、一度落ちると次も落ちやすくなる。審査落ちが審査落ちを呼ぶ。負のスパイラルだ。就活で不採用が続くのと同じ構造。一度のつまずきが連鎖する。
3回目、32歳
3回目は32歳。前回の審査落ちから4年空けた。信用情報の申込み履歴は、通常5年で消える。4年空ければ、まだ残っているかもしれないが、だいぶ薄れているはず。
今度は別のカード会社に申し込んだ。審査が比較的緩いと言われている消費者金融系のカードだ。流通系でダメなら、消費者金融系なら通るかもしれない。
年収は280万円。勤続年数は3年。派遣社員だが、同じ派遣会社に3年在籍している。これならどうだ。
結果。落ちた。3度目の審査落ち。
消費者金融系でも落ちるのか。ここまで来ると、自分の何が問題なのかわからなくなる。年収か。雇用形態か。住居形態(賃貸)か。電話番号(携帯のみ、固定電話なし)か。
あるいは、「クレジットヒストリー」の問題かもしれない。クレジットヒストリーとは、クレジットカードやローンの利用・返済履歴のことだ。この履歴が豊富であれば、「この人はきちんと返済する人だ」という信用の証明になる。
だが私にはクレジットヒストリーがない。カードを持ったことがないから、使ったことも返済したこともない。履歴がゼロ。これを業界では「スーパーホワイト」と呼ぶらしい。一見きれいに見えるが、実は「信用の実績がない」ということであり、審査ではマイナスに働く。
つまり、カードを持っていないからカードの審査に通らない。カードの審査に通らないからカードを持てない。持てないから実績がない。実績がないから審査に通らない。鶏と卵の問題だ。
4回目、35歳
4回目は35歳。3年空けた。今度こそ通りたい。
戦略を変えた。ネットで「審査に通りやすいクレジットカード」を徹底的に調べた。「年収制限なし」「主婦でも作れる」「審査が甘い」。こういうカードをリストアップした。
その中から、ある流通系のカードを選んだ。スーパーマーケットが発行しているカード。年会費無料。審査が甘いことで知られている。ポイント還元率は低いが、そんなことは気にしない。通ることが最優先だ。
申込み。待つこと1週間。メールが届いた。
「カードの発行手続きを進めさせていただきます」。
通った。
4回目にして、初めてクレジットカードの審査に通った。35歳。人生で初めて、自分名義のクレジットカードを手にした。
届いたカードを封筒から取り出したとき、少し手が震えた。大げさだと思うだろうが、本当だ。4回落ちて、5年間以上かけて、ようやく手に入れた一枚。プラスチックの薄い板。この薄い板が、社会的信用の最低ラインを通過した証明書だった。
カードを持って変わったこと
クレジットカードを手にして、変わったことがいくつかある。
まず、ネット通販が使えるようになった。それまでは、代引きかコンビニ払いしか選べなかった。代引きは手数料がかかる。コンビニ払いは面倒。クレジットカードがあれば、ワンクリックで決済できる。この利便性は、持っている人には当たり前だが、持っていなかった人間には革命だ。
次に、ETCカードが作れるようになった。もっとも車を持っていないので使う機会はないが、レンタカーを借りたときに使える。高速道路をETCで通過する。それだけのことが、クレジットカードがなければできなかった。
そして、ポイントが貯まるようになった。普段の買い物をカードで払えば、ポイントが還元される。還元率は0.5%。月に3万円使えば、150ポイント。年間1800ポイント。大した額ではないが、ゼロよりはある。「ゼロよりまし」が、また発動している。
最も大きな変化は、心理的なものだ。「クレジットカードを持っている」という事実が、わずかだが自己肯定感を上げてくれた。社会的に信用された証拠を、財布の中に持っている。この薄いプラスチックの板が、私の社会的信用の最低保証だ。
「審査に落ちる」ということの意味
クレジットカードの審査に落ちるということは、「あなたにはお金を貸す信用がありません」と通告されることだ。
カード会社は、申込者の返済能力を評価する。年収、雇用形態、勤続年数、居住形態、過去の信用情報。これらのデータをスコアリングし、基準を満たさなければ不合格。人間を数値化し、数値で合否を判定する。
この判定は、合理的だ。カード会社は慈善事業ではない。貸した金が返ってこないリスクを最小化するのは、ビジネスとして当然だ。返済能力が低い人間に貸さないのは、リスク管理として正しい。
正しいのだが、落とされる側は傷つく。「返済能力がない」と言われるのは、「社会的に信用されていない」と言われるのと同義だ。年収が低い。雇用が不安定。信用がない。この三拍子が揃った人間は、クレジットカードすら持てない。
クレジットカードは、現代社会のインフラだ。ネット通販、公共料金の支払い、各種サービスの契約。カードがないと、利用できないサービスがたくさんある。カードが持てないということは、社会インフラの一部から排除されるということだ。
経済的な排除は、生活の質を下げ、さらなる経済的不利を生む。カードが使えないから、代引き手数料を払う。カードがないから、ポイント還元を得られない。カードがないから、割引キャンペーンに参加できない。持っている人が当たり前に享受しているメリットを、持っていない人は享受できない。格差が格差を拡大する構造が、クレジットカードの世界にもある。
同じ境遇の人へ
もしこれを読んでいる人の中に、クレジットカードの審査に落ちた経験がある人がいたら、伝えたいことがある。
まず、恥ずかしいことではない。審査に落ちるのは、人格の問題ではなく、属性の問題だ。年収と雇用形態というスペックが基準に達しなかっただけであり、人間としての価値とは無関係だ。
次に、諦めなくていい。審査基準はカード会社によって異なる。ある会社で落ちても、別の会社では通ることがある。流通系、消費者金融系、ネット銀行系。それぞれ基準が違う。「審査が甘い」と評判のカードを探して、申し込んでみてほしい。
そして、審査落ちの間隔を空けること。短期間に複数のカードに申し込むと、「多重申込み」として信用情報にマイナスの影響がある。半年以上、できれば1年以上空けてから再申し込みするのがベターだ。
デビットカードやプリペイドカードという代替手段もある。審査なしで作れるものが多く、ネット通販にも使える。クレジットカードの代わりにはなるが、信用情報の構築にはならない。あくまで「つなぎ」として使う。
4回落ちて5回目で通った私が言うのだから、少しは説得力があるだろう。あるいはないかもしれない。4回も落ちた人間のアドバイスに、説得力があるかどうか。それは聞く側の判断だ。
このエッセイは、就職氷河期世代のひとりの個人的な記憶と感想に基づいています。クレジットカードの審査に落ちた経験がある人は、きっと少なくないはずです。
